噂
美濃、稲葉山城城下・・・・
城下の街では住民たちがとある噂を話し合っていた。その噂は美濃中に知れ渡り、そして美濃を収める斎藤家の本拠地である稲葉山城にまで届いていた
「・・・・・・・」
その時、町を歩いていた前髪の隠れた少女はその噂を耳を傾けていた
「おい。聞いたかあの噂」
「ああ、最近。現れた集団だろ?確か何ていう集団だったけ?」
「たしかナチスという集団らしい」
「ナチス?どういう意味だそれ?」
「なんでもその集団は那智党と言ってな。組員には村人もいるらしいが素浪人が多いらしい。そのため那智素浪人組なんて呼ばれていてそれを縮めて『
「どんな連中だ?」
「それがさ。なんでもそこの頭が驚くほどの頭の切れる人物でな多かれ少なかれその地に住んでいる者は皆裕福になって暮らしにも困っていないそうだ。その話を聞きつけその地に引っ越す村の人も多いいそうな」
「それだったら、他の野盗やら地侍どもが奪いに来るんじゃないか?」
「いや。それがよ。なんでもその集団鉄砲を持っていて撃退したんだとよ」
「鉄砲?それはすごいな?」
「それだけじゃない。噂では鉄の車や鉄の獣を従えているらしい」
「おいおいそれは流石に嘘じゃないか?」
「旅の商人がこの目で見たそうだ。その獣が咆哮を上げると遠くにある地面が吹き飛んだらしい」
「へ~恐ろしいこったな。それでそいつらは何処にいるんだ?」
「なんでも浅井の領地の近江国境近くのところらしいぞ。なんでもあそこにはもともと領主がいたんだけどな。浅井の軍が押し寄せてきた時、その領主が逃げて代わりにそいつらが追っ払って。それ以降その集団の棟梁がその領主のいた城に居座っているらしい」
「それはいいこった。噂を聞く限りその組織の頭は農民でも商人でも平和にそして平等に生きるという理想を掲げているみたいだよ」
「へ~それが本当なら、いっそのこと美濃は斎藤一族よりもその那智素が納めてくれればいいんじゃねえか?最近の竜興様は母君の義龍様が病に伏して、家督を継いだと思えば政をするどころか遊んでばっかりで何にもしない。先代竜興様は病に伏しても家臣や領民の声をちゃんと耳を傾け政をするお人なのにな・・・・・」
「こらこら。大声出すな。斎藤家の武士に聞かれたらどうする?この前も多くの人が斬り殺されたり捕まったんだぞ?」
「ああ。そうだったな。あ~あ。織田でも那智素でも誰でもいいから早くこの暮らしがよくなるといいな」
「まったくだ・・・・・・あ、そうだ。例の組織の頭がその地でまた演説をするらしいぜ。見に行ってみるか」
「まあ、退屈しのぎにはなりそうだな。行ってみるか」
と、そのうわさ話をしていた商人たちはその場を去り、そしてその話を聞いていた少女は
「・・・・・ナチス・・・・・ですか」
と小さくつぶやくとどこかへと去っていったのだった
そしてところ変わって稲葉山城ないではある武士がとある人物に呼び出されていた
「義龍様・・・・安藤守就ただいま参りました」
「・・・入れ」
とある寝室に呼び出されたのは安藤守就。道三の家臣として仕え稲葉良通や氏家直元らと並んで西美濃三人衆と称された 人物であり現在は義龍の家臣である
安藤が部屋に入るとそこには布団に横たわり、具合が悪そうな表情をする女性がいた。
彼女こそがこの稲葉山城城主であり斎藤家当主の斎藤竜興である
「殿・・・・本日はいかような?」
「安藤よ・・・・・・娘の竜興はどうしている?政はしているのか?」
「は?」
「無理に気を使わなくていい。正直に言ってちょうだい・・・・」
「はぁ‥‥恐れながら申し上げます。ご息女の竜興様は政には興味を示さず毎日酒やら遊びやらと自由気ままにしております」
「・・・・・飛騨守は何をしている。あいつは娘の重臣のはずだが?」
「はぁ・・・・彼女もまた遊びやら豪勢な食事やらと贅沢三昧をしているそうで、なんでも部下に命じ町人やラ商人らの物資や矢銭やらを奪っているとか・・・・・」
「はぁ・・・・・余計に具合が悪くなりそうな話だな・・・・・半兵衛は・・・・詩乃はどうしている?」
「はい。彼女はしっかりと我が斎藤家のために忠義を尽くしてくれています」
「そうか・・・・竜興はともかく彼女がいればまだ大丈夫だと思うが時間の問題だな・・・・竜興があのままであるのなら詩乃もここに愛想をつかすであろうな・・・・」
「御屋形様・・・・・」
少し悲しげに言う義龍に安藤は心配な表情をすると義龍が
「それよりも安藤よ・・・・・お前は那智素と呼ばれる組織のことはもう耳にしておるな?」
「はい。最近力を強めている、卍の旗印のならず者の集団と聞き及びそのお頭は『総統』と呼ばれているようです」
「・・・なら安藤よ。その総統と呼ばれている者をここに呼んできてくれ」
「え?あのならず者をですか?」
「町の噂では悪い噂はない。それはその者が優秀である可能性がある。織田にも浅井にも渡したくはない。こっちに引き込むのだ。だが連れてきていい人物かはお前が見て判断してくれ・・・・わかったな?」
「・・・・はっ・・・・畏まりました」
そういい安藤は下がると義龍は
「私の息があるうちに見定めなければならぬ・・・・その集団が良い方向へ導くものなのか・・・・・」
そう言い静かに目を閉じ、軽く咳をするのであった
一方、弘樹たちでは、
「いや~まさか。俺が総統になってこの土地を統治するとはな・・・・・」
弘樹が広場を歩きぽつりとつぶやくと
「これも弘樹さんの活躍のおかげです。あの時弘樹さんが立ち上がって浅井の兵を追い返さなかったら村の人もただでは済まなかったでしょう」
「まあ、村の人が無事だったのはよかったな」
弘樹の隣には、なぜかナチスの親衛隊服を着た桔梗がいた。すると・・・
「弘樹殿。たった今、新兵の訓練が終わりましたぞ」
そこへ、ドイツ国防軍の軍服を着た美緒さんがやってきた
「ああ。ご苦労様。美緒さん。あれ?ヨウコさんは?」
「ヨウコなら。村の人と一緒に狩りに出てるよ」
「そうか…まあヨウコさんらしいな」
「それにしてもこの南蛮の軍服でしたかな?少しぴっちりした感じでなれませんな」
襟をむずがゆくいじる美緒に弘樹は
「まあ、初めて着る人にはそう感じるかな?」
「それにしても数日前に出てきたあれがまさか弘樹さんの世界の武器とは驚きでしたね?」
「まったくだ。機関銃とか小銃とか…何よりあのパンツァーとかいう鉄の塊には驚きましたよ」
「あはは…実は俺もびっくりしている」
弘樹が苦笑してそう言う。なぜ彼女らがこの時代にはないナチスの軍服を着ているのか、そして彼女たちの言う武器が出てきたのかは
ことの発端は数日前に遡るのであった・・・・・