「ここが噂に聞いた。那智党の土地ね~」
「確かに街の雰囲気は活気に満ちているね一二三ちゃん?」
数時間前、弘樹の土地に二人の少女がやってきていた。二人は甲斐の武田氏の諜報部門『歩き巫女』の諜報員、および家臣の武藤一二三昌幸と山本湖衣勘助である。
二人がこの地に来た理由は最近噂になっている那智党のことを調べるよう武田家当主。武田晴信に命じられたからである
「那智党。正式名は国民社会主義労働者党・・・いきなり現れた集団。いったい何者なんだろ?」
「確かに。それは私も気になるところさ。しかもその組織の棟梁が南蛮の服を着てしかもかなりの知恵を持っている…とね。武田の脅威になるかどうか調べる必要があるね」
と、そういい町を歩く二人
「はてさて…まずは何処から調べてみる必要があるかな?」
「そんなこと言って、本当はどう調べるか見当がついているんでしょ?」
「ふふ…正解。実は町に入って。こういうのが配られていたのさ」
そう言い一二三が見せたのは一枚のビラだった
「これって・・・・」
「夕方。那智党の党首である那智弘樹が演説をするらしい。彼を知る千載一遇の機会だとは思わないかい?」
「確かにそうだけど。一二三ちゃんも気づいているんでしょ?当たり中、草の気配がするよ。那智党の草が私たちを監視しています」
「私たちだけじゃないさ。さっき浅井の間者や織田の間者、そして美濃斎藤家の者まで来ていた。それに対する警戒だろうね。まあ虎穴に入らずば虎児を得ずさ。まずは彼の演説とやらを聞こうじゃないか」
「あっ!ちょっと待って一二三ちゃん!」
先に行く一二三に湖衣は追いかけるのであった
そして夕方の廃寺にて二人は演説場に行くとそこには数百人の人だかりが集まっていた
「すごい数・・・・・これ全員。彼の話を聞きに来たということなのでしょうか?」
「恐らくね」
湖衣と一二三が話す中、別のところでは斎藤義龍の命令で弘樹のことを調べに来た安藤守就。そして町の町人たちの噂を聞きつけやってきた前髪の隠れた少女も来ていた。そして演説を聞きに来た人々はガヤガヤと話声が絶えない。すると。寺の講壇に一人の少年が現れた。見慣れないカーキー色の南蛮風な服。この時代にはない軍帽。そして腕とその背後には那智党の旗印であるハーケンクロイツのマーク。
「(この少年が那智弘樹・・・・)」
一二三や安藤、そして前髪の隠れた少女は講壇に現れた少年が那智党党首である弘樹だと確信する。
そして高壇上に上がった彼は何も言わずただじっと立っていて、たまに机を動かしたり帽子をちょっといじったりしていた。その様子を見た湖衣は
「なぜ、喋らないんでしょうか?」
「さぁ?でも何か考えがあるんだろうね?」
と、そう話す中、演説を聞きに来た民衆の声がだんだんと静になり、彼の注目をし始めるようになる。そして演説場は息が詰まるような静寂に包まれた
そして弘樹は深く息を吸い込むと、沈黙の中で声を響かせるのであった
「本年に・・・西美濃にて小さな勢力国家が誕生した・・・・私、国民社会主義労働者党・・・那智党はその戦乱の世に平和な世を目指すために参戦したのだ。今、この日ノ本…日本という国家は戦乱の世に包まれ東の果てから西の果てまで戦という戦火に包まれている・・・・このままでは日ノ本は奈落へとまっしぐらだ。その戦火の中。我々那智党がなぜその中に参戦した経緯。そして我々の理想と野望を大まかに述べようと思います」
静にそして力強く弘樹は民衆に訴えかける。なぜ自分たち那智党が結成されたか何のために動いているのか、何度も同じ言葉を繰り返し民衆に語った。そして話はいま日本についてのことになると次第に言葉は力強く高まってくるのだった
「応仁の乱以降、いったいこれまでの指導者たちは我々国民をどこへ導いてきたんだ!国が疲弊し、戦や疫病や不作によって多くの民が死んでいった!!さらに!天下統一や領土拡大やらの野望のために数々の国が荒れ果てさらに重い税や年貢を取り立てるという愚行もおかししたため盗賊らがはびこりどんどん生活に苦しむものが増えてきている!!」
大げさともいうべきな身振り手振りをし、弘樹は何度も何度も同じ言葉を繰り返してはそう言う。それは民衆というのは難しい言葉を言っても理解することはできない。なら簡単にまとめ同じことを繰り返して理解してもらうのがいいと考え重要なことを簡潔にまとめ同じ言葉を繰り返したのだ
「今こうしている間も飢饉や仕事を無くすものが増え続けている。百、二百、三百、四百万以上ものが増えた!そして今の美濃でも失業者や重い税で苦しむものがいる!それなのに国主はおろか幕府も朝廷も一体何をしているのだ!そして権力者たちは権力という力を持ちながらも動く気配すらない!実権を握り国を動かす者たちは私利私欲のため動き、一部の正義のために動く者たちを批判し弾圧して自分の望む国を作り上げようとしているのだ!」
弘樹の演説の言葉に民衆たちは身震いし、そして彼の言葉に耳を傾け感銘する。そして二時間以上の演説の最後に弘樹は日本人として人としての誇りに訴えた
「私はこの国やそこに住む民たちが自然に平和に生き、暮らすことができるとは約束はできない。なぜなら国を向上させ復興させるのは領主でも帝でもましてや仏や神なんかではない!国民たち自ら全力を尽くすべきなのだ!自由と幸福は突然、天から降ってはこない!すべてはあなたたち民衆たちの強い意志と働きにかかっている!独立無くして自由なし!独立と自由が欲しければ自らの手でつかみ取るしかないんだ!」
弘樹の言葉に演説を聞きに来た民衆たちは声を上げ称賛するそして弘樹の話は続く
「自分たちの祖国!故郷!家族の未来を守るのは我々自身の手で守るしかないのだ!国を向上させ国民の生活を平和にするには我々国民自身が向上させるんだ!勤勉と決断と誇りと屈強さによって自らの平和な時代をつかみ取る!そうでなければ日ノ本はずっと奈落の生き地獄を味わうことになる!民衆よ!誇りを思い出せ!誇りこそが我々の武器だ!!今こそ立ち上がり平和な世を作り侵略者を受け付けず自分の祖国や家族を守り切ることで、数千年間。この日ノ本を作り上げた偉大な祖先たちと同じ位置の上ることができるのだ!!!!」
そう言い弘樹はローマ式敬礼の右手を上げそう大声で言うと感銘を受けた聴衆者たちは大歓声を上げ、彼と同じく右手を上げるものがいれば大きな拍手をするものがいた
そして演説が終わり皆が解散する中、安藤守就は
「(すさまじい少年だ・・・・下手をすれば斎藤家を潰すかもしれない・・・・だが、もう少しだけ様子を見るとしよう・・・)」
そう言い、いったん自分の領地の西美濃に帰り、そして演説を聞き終わった一二三たちは
「これはこれは、厄介な勢力が生まれたもんだ・・・・今は小さいかもしれないが、この組織。大きくなるに違いないね?」
「ええ。もしかしたら武田家の最大の敵になるかもしれません」
「それはあり得る話だ。それにしてもあの那智弘樹という少年。あの演説と言い民衆の心をつかむ手腕と言い、私以上に食えなくて厄介な人だよ。下手に敵にしたくない人物だ…けど個人的には興味のある人物でもあるね」
「珍しい…一二三ちゃんがそう言うなんて」
「冷静に分析しての結果さ・・・・・・さて我々もうしばらくここに滞在して彼らについて調べ終わったら甲斐に帰って御屋形様にこのことを伝えよう。」
「そうね・・・・」
そう言い二人が帰り、そして演説場にいた弘樹の護衛の美緒や桔梗は
「ねえ、桔梗」
「なんでしょう?美緒さん?」
「今まで弘樹殿の演説を見てきたが、なんで民たちは総統・・・弘樹殿に魅力を感じているのでしょうね?」
「私にもわかりません。わかりませんが、どことなくわかるような気がします。彼の人柄…と言いますか光のようなものに魅了されているんですきっと・・・・」
そう言うと美緒は
「私たちの道はいい方に向かうのか?私たちは正しい道を歩んでいるのですよね?」
「それはわかりません。我々は彼の思想に触れ共感し、共に歩む道を選びました。それが正しいかどうかは正直私にもわかりません。ただ・・・」
そう言い桔梗は弘樹を見て
「正しいかどうかは歴史が判断してくれるはずです。そうでなければ我々は彼と共にいません」
と、そう言うと美緒はふっと笑い
「ふっ・・・・そうだな」
とそう言うのであった。
そして、演説を聞いた前髪の隠れた少女・・・・・竹中半兵衛重治。詩乃は
「あれがナチス・・・・あれが那智弘樹。まさか、あれほどの人物とは・・・・なぜでしょう?彼の言葉に心が強く熱くなります・・・・この胸のときめきはどういうことでしょう?トクントクンと心が痛くなっているのに、なぜか心が温かくなります・・・・」
そして彼女は先ほどの彼の姿を思い浮かべ
「・・・・・・・弘樹・・・・様」
そう、ぽつりとつぶやくのであった