演説が終わり、弘樹たち那智党は拠点としている城の城下の大きな屋敷に集まっていた。そして机の上には今日の演説を聞いて感銘を受けた商人や豪商や町人たちが寄付金が積まれていた
「す、すごい。寄付金が4貫(※48万円)も集まってる」
たった一日の演説で大金を手に入れた弘樹たちは驚いていた
「これだけあれば、党の運営もしばらくは安心できますね総統」
「ああ」
美緒の言葉に俺は頷く。資金は以前倉庫で見つけた砂金があるのだが、それは街の復興や施設建設、軍事面の資金や党員の給与や村の人たちの支援金として使っているため、党の演説活動やらは今回の寄付金で賄っている
すると・・・・
「失礼します!ハイル・フュラーー!!」
親衛隊長官であり参謀の桔梗さんが入ってきて右手を上げそう言う
「桔梗さん。どうしました?」
「実は総統に会いたいという方が参られました」
「俺に?すぐに行こう」
そう言い、俺は桔梗、美緒、ヨウコの幹部を連れ屋敷の外を出ると、刀を差した武士たち・・・恐らく50人ぐらいだろうか、俺の前に立っていた
「君たちは?見ればどこぞの武士団と見えるが、頭は何処だ?」
俺がそう聞くと、兵達は真っ直ぐある女を指差した。その女性は少し小柄で短い髪型の女性だった
「君がこの集団の大将か。私は国民社会主義労働者党党首であり那智党総統の那智弘樹だ。名は何と言う?」
「はっ!藤堂高虎。通称は鶫と申します」
藤堂高虎と名乗った女性は真っ直ぐな目で見てきた。
藤堂高虎、いくつもの主君を変え優れた仕官先を探し求めた武将だ
「それで藤堂さん。私にいったい何用ですかな?」
と、そう言うと高虎は目を爛々と輝かせ、そして、俺の前で泣きながら土下座した。
「お、おい・・・どうしたんだよ?」
「お願いします!! 私を那智党に入党・・・・貴方の家臣にしてください!!」
「な、何で急に・・・」
「勝手な事とは分かっております。しかし、先ほどの演説で深く感銘を受け、やっと、私が命を預けられる主に巡り合えたのです。どうか家臣の末席に加えてくださいませ!!」
泣きじゃくった顔を上げて俺を見上げる高虎。どうやら先ほどの演説で感激し、ぜひともこの党に入りたいというのだ
「良いではありませんか総統。見たところなかなかの切れ者そうにお見受けしますが?」
「うむ・・・・美緒さんがそう言うのであれば、それじゃあ、高虎…いや鶫さん。よろしく頼む」
そう言い俺は右手を差し伸べる
「あ…あのそれは?」
「え?…ああ、まだこの時代にはない風習か。これは握手と言ってな、これからもよろしく頼むというか親交の証を示す一種の儀式だ。手を握ってくれ鶫さん」
「は・・・はい! この藤堂高虎。総統のために命も捧げる所存でございまする」
「あぁ、よろしくな」
そう言い俺は鶫さんの手を握ると鶫さんの顔が真っ赤に染まった
「どうかされました?」
「・・・・いえ、何でもありません////」
と少しそっぽを向いてそう言う。そして俺たちは鶫さんを連れ早速、会議を開いた
「さて…新しい同志も入ったところで、さっそくだけど次の集会演説に向けての会議を行おうと思う」
「え?もうですか?」
村長の言葉に俺は頷き
「我が党が世論に影響を及ぼす最初の機会だ。これを逃す手はないと思う」
「確かにそうですね?それでどうするつもりですか総統?」
「ああ、今度はもっと広い会場で演説をしようと思う」
「収容人数はどのくらい集めるつもりですか?」
皆が弘樹にそう問いかけると弘樹は指を二本立て
「約、二千人だ」
「「に、二千人!?」」
「それはいくら何でも無理ではないですか?」
党員が驚き慌てふためくだ弘樹は
「大丈夫だ。それで桔梗さん、美緒さんに頼みたいことがある」
「何でしょう総統?」
「整理係として親衛隊、国防軍の精鋭を集めてもらいたい。そしてヨウコさんは陰で怪しげな動きをする連中の狙撃する部隊を集めてくれ」
「「「了解しました」」」
隠して次の演説に向けて準備が行われた。そして数日後・・・・
「す、すごい・・・本当に二千人も集まるなんて・・・・」
鶫は会場にやってきた民衆を見て固唾をのみこむ。たった数日で二千人以上の民衆がやってきたのだ。それは以前の演説もそうだが党員たちが徹底的にビラや宣伝をしたのが大きかった。
そして民衆たちは弘樹の演説をまだかまだかと待ちわびていた。
そして弘樹が現れるとガヤガヤ騒いでいた会場が静まる。そして弘樹の演説が始まった
「今、この戦乱の中、他の大名は戦をし、そして自分の利益だけを設けようとしている。特に美濃の次期当主である斎藤竜興公は政務に関心がなく、遊びやら酒やらと遊び放題で国をほったらかしにしている!では誰がこの美濃…いや日ノ本を正しい方向へと導くのか?それは一体だれか?」
弘樹がそう言うと観客席から
「我々国民だ!!」
「「そうだ!そうだ!!!」」
と、無数の声が上がる
「その通り!そうだとも!!応仁の乱以降幕府は権威だけ残して完全に機能していない!そして一部の大名を除き、他の大名らは戦に明け暮れ、我々農民や商人の財産を巻き上げ!日本人としての誇りや精神を破壊し踏みにじっている!よく聞け同志たちよ!我々国民は戦は野蛮な行為だと信じるがかかる挑戦や侵略者に対しても無抵抗だと思うのは大間違いだ!だが、今は戦乱。誰かが解決してくれるのを待つのではない!我々自身が立ち上がらなくてはならない!これは侍だけの戦だけじゃない!我々農民や商人などの国民が平和を勝ち取らなければならない!これは我々の独立のための戦いになる!」
「「「「おおおっーーーーー!!!!」」
「今こそ一致団結する時なのだ!祖国のため!未来に生きる子孫のため!立ち上がらなくてはならない!!この闘争により犠牲も出るだろう。だが!立ち向かわなければ独立と平和はつかみ取ることができない。ただ念仏のように唱えても動かなければ変わらないのだ!同志たちよこれは平和へ向けての戦いだ!まもなく形勢は逆転するだろ!侵略者や自己主義の思想を持ち平和を望む侍や国民を鎮圧する悪徳侍どもは我々の足元にひれ伏すのだ!!我々に勝利を、ジーク!!ハイルっ!!!!!!!」
『おおおおおおーーーーー!!!!!』
弘樹の演説により、民衆たちは立ち上がり拍手と大歓声を上げる
『ジーク!!ハイルっ!!!!ジーク!!ハイルっ!!!!ジーク!!ハイルっ!!!!』
会場一体に那智党の合言葉であるジークハイルという言葉が響き渡るのだった
そんな中、演説を聞いていた民衆の中に目を輝かせる一人の幼い少女の姿があった
演説が終わり数日後のこと、弘樹たちの城は改装工事に入っていた。弘樹はそのままでいいんじゃないか?と思っていたが美緒や桔梗らが
『那智党総統の住むところがボロ城だと民に示しがつかない』
ということで少しだけリフォームをしていた。
現在、弘樹は鶫と桔梗を連れ自分の家となる城の建築現場に視察に見に来ていた。
弘樹は渡された城の設計図を見て驚いた。
「これリフォーム・・・・、改装工事にしては豪華すぎじゃね?」
「それはここが我がナチスの重要拠点になるからだと思いますよ弘樹さん」
と、桔梗が俺にそう言う。 城の設計図は新卒の俺が入るにはあまりにも、堅牢でしっかりとした城になっていた。形としては北海道の五稜郭のような形でありその中心に城が立つ形だ。この提案は以前、弘樹がたわむれに城を作ったらどういう形か書いたのを桔梗たちが見てその設計にしたのだ。すると鶫が興味深そうに俺が持っていた設計図を見ていた。
「どうしたんですか鶫さん?もしかして興味があるんですか?」
「あ、はい。実は私、城作りって大好きなんです」
「へぇ、知らなかったな。ではこの城造りの責任者及び普請は君に任せよた適材適所という奴だ」
「えぇ!? 良いのですか? 私がやっても・・・?私はナチスに入党したばかりですよ?」
「構わない。それに城造りが好きなんだろ?」
「は、はい」
「なら大丈夫だ。ま、やるだけやって見ろ」
俺はニカッと笑いながら設計図を鶫さんに渡して、桔梗さんを連れて去るとは口をあんぐりと開けて遠い目で見ていた。
「いいんですか弘樹さん?彼女に任せて?」
「大丈夫だ。藤堂高虎は築城の名人と聞いた事がある。まぁ、任せて大丈夫だろ」
「それは弘樹さんの時代の歴史でのことですか?」
桔梗はそう訊く。彼女は俺が未来人であることを唯一知っている人物である
「まあな」
「ではこれから起こることも手に取るようにわかるんですか?」
「断言はできない。歴史とは無数にある可能性の一つだ。俺が知っている歴史もその一部。今現在ここにいる時間は俺が知っている歴史通りになる保証もないし、同じことが繰り返されるなんてことはない。歴史とはその人によって動き変わるものだ。時に歴史という鎖に我々は縛られる必要はないと思う。とある将軍が言っていた『自分の人生は自分で演出するものだ』と、ならば俺は那智党・・・ナチス総統の那智弘樹という男の人生を最後まで演じるつもりだよ。それはいい方向か悪い方向かはわからんがね」
そう言い軍帽をかぶりると桔梗は
「私は最後まであなたを信じ、最期までお仕えさせていたただ来ますよ弘樹さん。私も元草であり那智党参謀の加藤段蔵を演じてみますよ」
「ありがとう桔梗さん」
弘樹がそう言うと桔梗はにっこりと笑ってそう言う
「さて、領地視察でも行きますか。あ、今日は隅々まで行くし車を使おうか?」
「はい」
そう言い彼女も那智親衛隊の軍帽をかぶり、車を出す。車はあの倉庫の奥にあったキューベルワーゲンだ。そして運転しているのは弘樹、隣には桔梗だった
「それにしても弘樹さん。この車という乗り物はいいですね。」
「まあ、今は道路が不整地だから結構振動が激しいけどな。近々道路の交通整理をする予定だ。他国の旅人や商人らが行きやすくできるように・・・・あと車や装甲車も走りやすくすることもな」
と、運転をしながらそう言う弘樹。そして隅々まで領地を見回り終わると自分の城へ帰還するのだった