それから三日後、俺は迎えに来た安藤さんに会った
「お待ちしておりました那智殿・・・・・そちらの方は?」
そう言い彼女は俺の隣にいる黒服の女性・・・・桔梗さんを見る
「彼女は私の副官であり親衛隊長であり参謀である。加藤段蔵と言います」
「加藤段蔵と申します。以後お見知りおきを」
「加藤・・・・・もしや越後や甲斐で噂になっていた草・・・飛び加藤殿でございますか」
「かつてはそう言われていました。ですが今はただの那智党員であり我が総統、弘樹様の腹心です」
「素破の物が那智殿の副官とは那智殿は変わっておられるのですね?」
と、挑発的にそう言う。この時代の忍者はかなり身分が低く、犬猫のような扱いに等しかった。そんな草の身分だった桔梗さんが俺の副官であり参謀であることに安藤は半ば信じられなかったみたいだ
「彼女がどういう身分であれ、私は彼女を信じておりますし、何より我がナチ党は優れた人材に出仕、身分は問わないと決めております。あるのは実力と志。ただそれだけです。それに彼女は先ほども申したように私の右腕です。そう言った発言は撤回していただきたいのですが?」
俺は少し威圧を込めた目でいると安藤は
「これ大変失礼しました。那智殿が国の内外を問わず人材を集め、そしてその副官が草と聞いて半ば半信半疑だったもので。加藤殿。大変失礼しました」
っと、そう言い頭を下げる安藤
「それでは。安藤殿。行きましょう。これ以上国主であられる義龍様をまたせてゃ行けません」
「そうですね。では馬を・・・・」
「いや。その必要はありません」
「え?」
美濃街道・・・・
「まさか…噂で聞いてはいましたがまさかこんなものがあるとは」
現在俺と桔梗さん。そして安藤さんは俺が運転するキューベルワーゲンに乗っていた助手席に安藤さん後ろの席に桔梗さんがいた。
そして安藤さんは初めて乗る車に驚きそう呟く
「那智殿のところにはいろんな絡繰りや新兵器があると耳にしましたがまさかこれほどとは・・・・・」
「まあ、驚くのも無理はありませんね。それで安藤殿。いささか聞いてほしい話があります」
「何でしょう・・・・」
「私は義龍様に会いに行くときに義龍様に言いたいことがありまして」
「それは何でしょう?」
「簡単な話です。現在の美濃周辺では浅井、六角、そして織田などの勢力があります。そして浅井は調べによりますと織田と同盟関係にあります。下手をすれば織田と浅井の挟み撃ちになる可能性がある」
「つまり何をおっしゃりたいと?」
少し警戒した目でそう言うと俺は本音を言った
「簡単な話です。我がナチ党の独立を認めてくださるのであれば浅井、六角相手の盾になりましょう」
俺が言いたいのは織田の戦いの最中に浅井がちょっかいを出さないための盾となる代わりに斎藤家の軍事同盟と那智党が納めるところを正式な国人領主としての独立を認めるという内容だ。
安藤も那智党の領地を見て武力で占領するのは不可能と考えていた。もしすれば先に攻め込んだ浅井軍の二の前になる。なら協力関係となり浅井や朝倉をけん制しててくれればいいと考えていた
「なるほど…確かに那智殿の軍事力、経済力からしてわが斎藤家との同盟の話はいい案だと思います。ですが今の義龍様は病に伏せられ、現在ご息女の竜興様に実権が移るかもしれません」
「では、私に会うことは可能なのですか?」
「他の者が七日前にお会いしたときは途中で意識を失われました。それでも義龍様は意識がある限り訪問者の進言に耳を傾けてくれています」
すごいな…そんな状態でも国人領主や豪族と会い話を聞いてくれるなんて立派というか、凄いな。さすが戦国大名と言ったところか
「ですが、我々美濃三人衆は今現在、竜興様やその側近と折り合いが悪いのです」
疲れ顔でため息をつく安藤さん
「そうですか・・・・心中お察しします」
「ありがとうございます」
そう言い、俺は車を運転し、そして目的の場所である稲葉山城に到着した。
「ここが岐阜城・・・・いいや稲葉山城か」
岐阜城は前に旅行とかで見に行ったことがあったが今目の前に見る岐阜城・・・・いいや、稲葉山城は観光地だったあの時代の城とは比べ物にならないほどの威圧感があった
「代表の方々のみでお願いします」
稲葉山城につき待たされること小一時間。代表の方々のみお願いします、との言葉に従って安藤さんと俺と護衛の桔梗さんが別室へと案内された俺たちが通された部屋は評定等を行う広間ではなく、義龍様の居室だ。二十畳ほどの広さの板張りの部屋で義龍様がいるであろう上座と、俺たちが座る下座との間は衝立で隔てられていた。
衝立の向こう側からは喘息のようなぜいぜいとした息遣いが聞こえてくる。
「義龍様・・・・安藤、例の少年を連れてきました」
「そうか・・・・そのものと話がしたい」
と、辛そうな息遣いと共に短い言葉が発せられた。俺は安藤さんに促されると一歩前に出て
「西美濃国境の地の領主を務めさせています。国民社会主義労働者党党首の那智弘樹と申します」
「貴殿がナチスの棟梁か・・・・・お前の話はここにまで届いている。むろん安藤の報告でもな」
「恐れ入ります」
「那智弘樹とやら・・・・・貴殿はいったい何をするつもりだ?いや、何を成そうとするつもりだ」
弱弱しく聞こえる声に俺はこう答えた
「・・・・それは平和への世であります」
「平和だと?」
「はい。今の日ノ本は各国で争いの絶えないよです。そのため国民は生活に苦しんでいます。それだけではありません現在、海の向こうの南蛮諸国は他国を攻め込み領土と化する植民地政策をとる帝国主義となっています。今の日ノ本争いは小さなお椀の中での争い。もし南蛮が標的をこの日ノ本にし攻めこまれればあっという間に占領されるでしょう。そうさせないため一刻でも早く国を一つにまとめ上げ、一つの国家とし、外国との対等な軍事力や経済力を作り上げた国家にし、そして民も戦に怯えず平和な世を作り、そして最終的には国民自ら道を選び国とともに歩むのが私の目的でございます」
俺はそう言う義龍は
「それは天下統一を目指す・・・・すなわちそれは我が斎藤家も滅ぼすというのか?」
「もしそれで平和な世になるのであれば滅ぼすしかないでしょう」
「なっ!?那智殿それどういうことか!」
その言葉に安藤は驚きそう言おうとするが
「待て安藤よ」
「し、しかし義龍様!?」
「構わぬ。裏で姑息に考えるやつよりは小気味いい・・・・那智弘樹。続けなさい・・・・貴殿はただ黙って安藤についてきたわけではないな?何を私に求める?」
流石は戦国大名。病に伏せてもその間は鋭いな・・・・俺は義龍に先ほど安藤さんに話した浅井家の対策と那智党の独立について話す
そして俺の話が終わるのを待っていたように衝立の向こう側から弱弱しい声が聞こえてきた。すると布団から出てくる音がし衝立から少しやつれた女性が現れる
「よ、義龍様!行けません立っては!?」
「安藤よ。構わぬ・・・・・それで那智弘樹よ」
そう言い、彼女義龍は俺の前に立ち
「お前の野望・・・・よくわかった。普段であれば竜興やほかの家臣と話し合って決めるのだが・・・お前のその望み。許そう・・・・だが、今は斎藤家に弓を引くな?」
「ええ、もちろん今は・・・・まだ」
「素直な奴だ。だがそこが気に入った・・・・」
そう言うと義龍はふふと笑い。懐から一枚の書状を出し俺に前に落とす
「・・・・これは?」
「正直言って娘の竜興が今後美濃を引っ張っていくのは無理と思っている。かといって母、道三から譲り状をもらった織田の小娘に渡すわけにもいかない・・・・・那智弘樹よ。もし私がなくなった後竜興がこの国を治める器でないと判断したのならお前がこの美濃を収めよ。この書状は私からの美濃譲り状だ。安藤お前が証人だ」
「なっ!?義龍様!?」
義龍の言葉に安藤が驚く。まあそれはそうだろう
「安藤よ。我が母、道三もかつてここの領主であった土岐氏から奪い美濃を取った。今の斎藤家も那智党に変わる世代交代という奴だ。それに安藤よ。お前は竜興が美濃を収められると思うか?」
「そ・・・それは」
「そう言うことだ。だが私は織田にはどうしても渡したくはない。渡すくらいならこの那智殿に渡し、そしてこの少年に賭けてみたい」
そう言い義龍は俺を見る
「私亡き後の美濃・・・・・任せてもいいか?」
「・・・・・勿論でございます」
俺は義龍から美濃譲り状をいただき、部屋を出たのだった。こうして今現在。美濃譲り状を持った勢力は二つになった。それは道三から譲り状を受け取った織田家、そして今現在義龍から譲り状を受け取った那智弘樹率いるナチスであった。
そして那智たちが退室した後再び床に伏せた義龍は
「あの少年なら・・・・すべてを任せられるな。後は・・・・」
荒い息を立て苦しそうに言う彼女であった