ナチスが納めるこの地に二人の少女が再びこの地にやってきた。
彼女たちは武田の諜報員にして武将の武藤一二三と軍師であり彼女の相棒でもある山本湖依であった。二人は数か月前の弘樹の演説を聞いた後、しばらくこの地にいたが、すぐに浅井、六角、そして京の都の情報を探るため一時的に離脱していた。だが、それが終わり、また那智党を調べるためか帰ってきてみれば・・・・
「少し離れている間にここまで変わるなんて・・・・」
「まったくだね・・・これじゃ浦島太夫になった気分だよ」
つい数か月前までは田舎の町だったのが今や、京の都以上の活気に満ちた街になっていた。しかもこの時代ではない馬車や石造りの道。まるで別世界のようであった
「これもあの那智党の首領のせいかな一二三ちゃん」
「恐らくね」
と、二人が町を見渡していると・・・・
「そこのお二人さん。もしかして旅人かい?」
と、二人のすぐ近くの店の店主が話しかけた。それを一二三が答える
「まあね。以前来た時よりも変わってて驚いたよ」
「そうだろ?これも那智の総統のおかげさ」
「総統?・・・・もしかして那智党の首領のことかい?」
「ああそうさ。あの方がここを収めてくれたおかげで俺たちも商売しやすくなったもんよ。以前の領主様は重い税をかけたりその家臣たちが商品を強奪したりと酷いもんでしたよ。でも那智党が現れてからはこの村はおろか、那智党の勢力のある所は皆、暮らしに不自由なく裕福になっているよ。それに那智様が考えた絡繰りや政策のおかげで私も暮らしに困っていないんですよ。例えばあれさ」
そう言い店主が指さすとそこには木箱が置かれていた
「あれは・・・・」
「なんでも目安箱っと言って、民の意見を投書してそれを領主・・・総統様が見てくれるんだそうだよ」
「ふ~んそれで意見は聞いてもらえたのかい?」
「ああ、さすがに全部といはいかないが、以前。町医者が診療所を増やしてほしいって出したら。複数の診療所が立てられたり、孤児が多かった頃なんかは城下にあった屋敷を孤児院として使用してくれたりと民は大助かりさ」
「それはそれは・・・・」
店主の言葉に一二三はふむふむと頷いていた。すると店主が
「それでお姉さん達は今夜の祭りに行くのかい?」
「祭り・・・・ですか?」
「おや?知らないのかい?今夜盛大なお祭りがあるらしい。しかもその祭りには総統自ら参加するみたいだな。もしかしたら総統のサインとかいう奴をもらえるかもな」
「「さいん?」」
訊きなれない言葉に二人は首をかしげると店主は二人に教えた
「ああ、サインて言うのは名前を書くっていうことですよ。なんでも南蛮じゃあ有名な人物の名前を書いてもらうと良いことがあるらしいぜ」
「ほ~それは興味深い話だね~私たちもその祭りに行けば総統のサインとやらが貰えるのかな?」
「ひ、一二三ちゃん!?」
一二三の言葉に湖依は若干驚く中、店主は
「どうだろうね~?もらえる人もいればもらえない人もいるよ。総統様の周りには護衛の『エスエス』とかいう親衛隊連中がいますからね・・・・なかなかもらえることはできませんよ。まあ、私は挑戦してみるつもりですけど」
「そうかい?もらえるといいね?」
「ああ。あんたたちももらえるといいな」
そう言い二人はその場を離れた
「祭りね・・・・・これは興味深いことを聞いたね?」
「もしかしていくの一二三ちゃん」
「もちろん。それにもしかしたらナチス首領とも会える可能性だってある。あ、そうだ湖依はどうだい?もしかしたらサインという奴がもらえるかもしれないよ?」
「い、いらないわよ!?」
一二三が彼女をからかって言うと湖依は顔を赤くしてそう言う
「まあ、ともあれ、その祭りとやら見て見ようかね?」
そう言うと一二三は町全体に掲げられている那智党の旗、ハーケンクロイツを見るのであった
そしてその夜・・・・・屋台やお店がにぎわう中中広場では多くの人が集まり
『ジーク・ハイル!!ジーク・ハイル!!ジーク・ハイル!!』
夜の大きな広間で、ドイツ語で勝利万歳を意味する言葉と、その中央に山住になり以前那智党が接収したインチキ経本が他の若者や那智党員に炎の中に放り込まれ、高々に燃やされていた。そして周囲から歓声とそしてドイツの『ケーニヒグレッツ行進曲』が流れ、そしてその周辺をナチスの兵が松明と那智党の旗を掲げて行進していた
そしてそれを見ていたのは先ほど祭りの話を聞いた一二三と湖依であった
「やれやれ・・・・出店は面白かったけど。ここもここで面白いところに巡礼に来たものだね」
と、少しため息交じりに言う中、湖依は人々が燃やしている経本を見ていた
「寺の教本を焼いて罰が当たらないのかな?」
「何でもあの経本は以前不正をした寺が持っていた内容がでたらめの教本らしいね。それで接収したその本を処分するため、そして那智と民の…主に民が那智に忠誠を示すためにこのようなことをしている。那智の総統もなかなかの策士だよ」
「その分だけ侮れないね。集めた情報でも美濃の半分を事実上支配しているし、何より見たこともない新兵器を持っているらしいしね」
「そうだね。火を吐く鉄の車に一撃ちで何百人を倒す鉄砲・・・・戦場伝説ともいえるような眉唾な話だけどね。だが今見てもそれが事実に思えるよ」
そう言いながらそう話す二人
「さて…そろそろ宿に戻ろうか?あ、湖依。このことはちゃんと記録しているかい?」
「そうだね。長居は無用だし。それと記録はちゃんととっているよ一二三ちゃん」
そう言い湖依は記録を書いた大福帳を見せると
「よし。じゃあ戻ろうか」
と、そう言い二人はその場を後にしようとすると
「総統だ!」
「サイン貰えるかもしれないぞ!!」
「え?あわわ!?ちょっと!?」
総統・・・弘樹のサインを目当てにやってきた人だかりに押される。一二三と湖依。そしてその先には・・・・
「押さないで!押さないでください!!」
「総統が通ります道を開けてください!」
親衛隊に守られつつ、総統である弘樹がやってくる民衆にサインをしながら歩いていた。
「あわわわっ!?」
サインを求めて弘樹のもとに向かう民衆に押されあたふたする湖依。そして誰かとぶつかる
「ああ・・・ごめんなさ・・・っ!?」
謝ろうとした瞬間。彼女は固まった。なぜならぶつかった相手は那智党総統である弘樹だった
「っ!?」
「・・・・・・」
那智党の最高権力者が目の前にいて驚く湖依に、彼女を見る弘樹。すると弘樹は彼女の持っていた大福帳をちらっと見てそれを取る。そしてもう一度ちらっと湖依を見ると彼女はつばを飲み込み不動の姿勢で彼を見る。
すると弘樹は何を思ったのか大福帳を広げ、軽く右手を上げると背後にいた家臣が弘樹に筆を渡す。弘樹は大福帳に『那智弘樹卍』とサインを書く
それを見た湖依は少しだけ安心したのかため息をつく。そしてサインを書き終えた弘樹は大福帳を閉じ静かに湖依に返すと。親衛隊は湖衣をどけて道を作り、そして弘樹はそのまま部下を連れて去っていった
「はぁ…びっくりした・・・」
「でもよかったじゃないか。例のサインとやらはもらえて」
「揶揄わないでよ一二三ちゃん」
泊っている宿に向かう二人。一二三がサインをもらえたことをからかうのに対し湖依は呆れたように言う
「まあ、でもこれで那智のことは大体わかったし、あとは御屋形様に報告するだけだね。明日にでも出発しますか」
そう一二三がそう言った瞬間
「明日でなくてももう少しここに滞在なさってはいかがかな?武藤昌幸殿、山本勘助殿?」
「「っ!?」」
急に声がし湖依は驚き一二三は
「これはこれはずいぶんと懐かしい人に会うもんだね?久しぶりかな飛び加藤?」
と、冷静な顔でそう言い振り返るとそこには親衛隊服を着て右手にルガーP08を構えた桔梗がいた
「少々話があります。すみませんが付き合ってもらいますよ」
サインのシーンは『インディージョンズ最後の聖戦』のインディーとヒトラーのパロです