ナチスが動き始めてからは早かった。この時代にはないトラックやハーフトラックによる兵員や物資の輸送による機械力に物を言わせた電撃戦により、相手に対策の間も与えず敵の小さな砦を落とし。そして現在俺は、近江の地図を見ていた
「敵の状況はどうなっている?」
俺が陣幕で地図を見ながらそばにいる鶫にそう言う。ちなみに参謀役の桔梗は今はこの場にいなく敵視察の指揮に入っている。彼女の専門は隠密…忍者を中心とした諜報活動だ。それは彼女は副総統兼参謀になっても桔梗は自ら指揮を執って活動している
「はい。桔梗殿の情報部隊からの無線連絡から敵の総勢は10万。総大将は浅井久政で、敵はここから数里ほど離れたところに陣を取り、そしていくつかの部隊に分けて占領した砦を奪還するため攻撃をしている模様です」
「・・・・その部隊の人数は?」
「はい。報告によれば一個中隊規模で4つだそうです」
「そうか・・・・となるとこの地形からして・・・・」
俺は地図を見て敵の進路を予測する。恐らく敵の侵攻先は美濃との近道であり、先に陥落させた砦だった
「日和見城を攻撃する可能性があります総統。」
「うん…確かこの地域はヨウコさんがいたな?」
「はい。城の守備隊の他、ヨウコ指揮する国防狙撃部隊が森や丘に潜伏して敵を待ち構えています・・・・・そして美緒さんの部隊も戦車部隊とともに敵本陣に向かっているとのことです」
「そうか」
俺がそう答えると鶫は無線機を見て
「それにしても弘樹様の世界のこの無線機という絡繰りはすごいですね。あんなに遠くからでも話ができるなんて、伝令がいらない上に今までの戦のやり方が一変します。それにあの鉄砲や鉄の車も」
「まあ、そのおかげで迅速に素早く動けるんだけどね・・・・さて。久政軍はこれからどう動くかな?」
弘樹がそう呟くと、無線機から
《こちらヨウコ・・・・・弘樹・・・・総統応答してください》
「こちら、弘樹だ。ヨウコさん。なにかあったのか?もしかして敵の部隊が来たか?」
《いえ・・・・
「・・・・・」
俺は彼女の言葉に少し違和感を覚えたが、すぐにその意味が分かった
「そうか…では引き続き監視を続けてくれ、
《了解》
ヨウコがそう返事をし、無線が切れる
日和見城
「杉谷様。次はどうしますか?」
ヨウコの部下が無線連絡を終えたヨウコに今後どうするかを訊くと
「待機・・・・・でも。いつでも迎撃できる準備はして」
「畏まりました」
部下がそう言うとヨウコはモーゼル98kライフルを肩に
「それにしても、杉谷様はおっかないお方だな」
「ああ、あれだけの敵兵を倒しても無表情なんだからな・・・・」
そう言い部下は塀の向こうを見るとそこには無数の浅井の兵たちの死体が転がっていた
そしてその遺体を他の部下たちが処理していた
「あの機関銃っていう鉄砲も使って見てすごかったけど・・・・・一番後ろにいる敵兵の武将を一撃で倒した、杉谷様もすごいな」
「ああ、みんな眉間に一発命中している。しかもその表情は撃たれたことも気づかない顔だったな」
「本当に無口で恐ろしい人だよ。いつも白い羽織を着ているからみんなから『白い死神』なんて言ってるみたいだよ」
と、部下たちが話し合う中。ヨウコは城の高いところで、マウザー98kライフルを敵陣に向けいつでも敵を狙撃する姿勢を取ってていた
そして彼女は
「・・・・弘樹のバームクーヘン・・・食べたい」
と、そう小さくつぶやくのであった
「なぜこうなった・・・・・」
那智領へと進軍した浅井久政はそう呟き頭を抱える。数は圧倒的にこちらが上だ。最近、騒がしくなっているあの連中…いずれ浅井の障害となる奴らを討伐するために奴らの領地に兵を送った。だが・・・・
「報告します!敵が我が領地の日和城他数々の城を落としました!!」
「報告!奪還部隊が進撃していますが敵の鉄砲隊によって壊滅!敵は恐るべき連発銃を持っている模様です」
次々に来る報告は兵たちが敵にやられ、城が落とされているという報告
…つまり自分の軍が敗北しているという報告であった。
「敵は高々数千・・・・十倍の兵力でかかっているのに、なぜ倒せないのだ」
久政は苛立っていた。すると
「大殿・・・・ここは撤退されて、那智らと講和をしてはどうですか?」
「遠藤!何を言い出す!!」
久政に声をかけたのは浅井きっての勇将で知略家としても知られている遠藤直経だ。この遠藤という人物は久政とは違い那智党についてはそれほど批判的でもないがかといって友好的な考えもない。だが、久政の娘長政と同様、敵対するのは得策ではないと考えていた
むしろ那智党は斎藤家と敵対しているという情報があったためこちらに引き込めるのではないかと考えていた
「お前はあのならず者共を野放しにしろというのか!あの集団の棟梁は危険だ!あの織田の娘と同じ感じがする。今ここで脅威を潰さねば、織田同様面倒なことになるぞ!」
「しかし、織田とは軍事同盟のはずですが?」
「あんなもの形だけだ!長政は信長と親しいようだが私は反対だった!それに私は織田と親しいわけじゃない!。それに信長も信用できん女だ。いずれ我々浅井を裏切るに違いない!」
「織田と那智党の両方を相手にする気なのですか?」
「こっちには朝倉がいる。なんなら六角と手を組んで・・・・」
と、久政はそう言うが遠藤は目を細め
「(まずいですね・・・・・このままでは浅井が滅びますね・・・・私もあの那智党の首領のことは調べたが奴の納める土地に悪い噂はなく。むしろ堺の町並みに発展していると聞いた・・・・私個人的には敵対するより何らかの交流をつなぎ、その技術を導入したいものだが…今の久政様には無理そうだな)」
軽くため息をつく遠藤。すると陣の外が騒がしくなった。
「何じゃ一体・・・?」
「もしや・・・・!?」
「殿、敵襲です!那智勢が後方より奇襲をかけて参りました!!」
「な、何じゃと・・・?あまりにも早すぎるぞ!?」
「敵は鉄の車でこっちに向かって物凄い速さできます!」
「なっ!?なに!?」
「大殿、ここは撤退を殿は我らが引き受けます。これ以上ここにいては危険です!小谷城までお引きください!!」
「う、うむ。任せたぞ」
久政が僅かな供回りを連れ逃げ去るのを確認すると、直経は手で自分の頬を叩いて気合を入れなおした。そして、槍を抱えて戦場へと向かった。
戦場に着くと予想以上に悪い展開だった、味方の兵はほぼ壊乱状態であった。そして前方にはこの時代に存在しない兵器である戦車軍団が土煙を上げながら前進し、機銃やら砲弾で足軽たちを吹き飛ばし、ある者は戦車に踏みつぶされていた。
仲には火縄銃を撃つ者がいたが、戦車や装甲車の装甲を貫けず弾かれ、機銃射撃の餌食になっていた。そして装甲車から歩兵が降りて来て、モーゼル銃を撃ち浅井の兵を次々と倒す。それを見た直経は
「皆の者、撤退だ!早急に撤退せよ!」
直経が号令すると、他の兵もそれに続いて撤退と叫び撤退し始めた。
しかし、それを那智国防軍の兵は逃さんと追いかけた。
そして、味方の兵がやられそうなのを確認すると直経は槍を敵兵の胴へと突き出し敵兵を倒した。
「何をしている!早く撤退しろ!!」
「は、はい!」
助けた兵が逃げるとの確認すると、目の前に栗色の馬に乗った敵将らしき人物が居た。
「貴様がこの部隊の指揮官か!」
「そうだ・・・・お前が総統と呼ばれている者か?」
「あいにく私は総統閣下ではない。那智国防軍司令長官。島清興だ」
「私は遠藤喜衛門尉直経。さぁ、いざ尋常に勝負!」
そう言うと直経は美緒に向けて鋭い突きを放ってきた。美緒はそれを槍で受け流すと、反撃の突きをお見舞いする。しかし、直経も槍で上手く防いだ。
何十合かすると、互いに疲弊の色が見えた。
「ぬえい!!」
「おらぁ!!」
直経が槍を繰り出すと、美緒も同時に槍を勢い良く突き出した。そして、直経の胴から血があふれ出した。
「ぐぶ・・・わたしの負けか」
「そのようだな」
「ふっ、あの鉄の車と言い鉄砲と言い、それにまさか貴殿のような将があの集団いるとは・・・・知っておれば、出陣しなかったものを」
「あぁ、そうですね・・・後悔していますか?」
「いいや・・・・最後に貴殿のような将と戦えたこと我が一生の誇りに思う」
「そうですか・・・・・何か遺言はありますか?私にできることなら何でもしますよ?」
美緒がそう言うと良き絶え絶えの直経は
「なら・・・・浅井家を攻め滅ぼすのは…止めてくれ。仮に攻めるとしても長政様や家臣たちの命は助けてくれ・・・・それが遺言だ」
そう言うと美緒は
「我が総統も我が国防軍も浅井を攻め滅ぼすことは考えていません。今回はあなた方が先に攻めてきたので、報復をしたま・・・・ですのであなたが心配することはない。我が総統の目的は浅井と講和することなのですから。この島清興。この槍と那智党の鍵十字のもとに約束しましょう」
「そうか・・・・なら安心だな」
そう言うと直経は少し笑いそして目をつぶり静かになった。そのことに美緒は少しだけ悲しそうな表情をするがすぐに腰の刀を抜き振り落とすのだった
那智党と浅井の本格的な戦いは浅井が、那智党の電撃的な速度によりたった数時間で終結。多くの戦死者を出し浅井の大惨敗に終わり、久政は小谷城へ逃げかえった。
これは後に新聞で『電撃戦』というタイトルで表紙を飾り、美濃はおろか中部、近畿あたりの大名たちに知れ渡るのだった
そして那智党こと弘樹は浅井への講話の準備を始めるのであった、