義龍の亡き後の美濃ではその娘の竜興が実権を握ることになったが、政はせずに自由気ままな暮らしをし、その側近共が政治を牛耳っていた。
そのためその側近たちは自分たちの領土、つまり美濃の民に重い税をかけたり無理やり徴兵したりとやりたい放題していた。
そのことに民の不満が雪のように積もっていた
中でも弘樹たち那智党に対する斎藤家の対応がひどかったからである。斎藤義龍の葬儀の時に那智党らが含まれておらなかったり、戦の労いの時に斎藤家前家臣が呼ばれたのに対し浅井戦で美濃の侵攻を防ぎ功績を上げた那智党らが呼ばれなかったからだ
那智党らの領地は先代義龍により与えられたものであり、世間では那智党は斎藤家の同盟国と思われがちだが、斎藤家自身は西美濃三人衆の安藤の陪臣*1もしくは総統弘樹の妻竹中半兵衛ら竹中家の陪臣と見ていたからである。
何より斎藤竜興の側近である斎藤飛騨らは那智党のことを疎ましく思っていた
その状況に民らは斎藤家への不信感を募らせていた
美濃城下
「浅井の戦に六角の戦と相次いでの戦で美濃を守ったというのに竜興様は何で稲葉山城にお呼びして労いの言葉をかけないんじゃ?」
「そうだとも美濃を救ったのは那智党じゃというのに」
「そうだとも儂らの暮らしがよくなっていったのも那智様が少なからず糧食を分け与え、さらに便利な農具まで貸してくれたというのに・・・・」
「奥方様である竹中様も驚くほどの知恵で我らが暮らしやすいようにしてくださろうというのに竜興様やその側近らはそれを無視しているという・・・・それどころか竹中様に対し酷い嫌がらせをしているとか・・・・」
「また税も上がったしな・・・・それに比べて那智様の領地は不自由なく幸せに暮らすことができるというぞ?」
「斎藤家の連中はその那智様に対してもひどい扱いをしているとか・・・」
「酷い話だぜ。もし、那智様たちが斎藤家を見限ったらどうするんじゃ?まったく・・・・」
「もう斎藤家などどうでもいい。いっそ那智様たちがこの美濃を収めてほしい物じゃな」
「まったくだ・・・・・」
と次々に斎藤家に愛想を尽かせ那智党を支持する声が高まっているのであった
そして那智領ではこの情報を活かし、弘樹の演説が領内に響いていた
「美濃国主である斎藤家の政権は一体どうなっているんだ!なぜ国を支えるべく民に重い税を上げているにもかかわらず、彼らの生活を豊かにしようと思わなんだ!彼らのやることに一体・・・いったい何の意味があるのか!なぜ今の状況を少しでも改善させようと思わず黙っているのだ!我々国民に死ねというのか!」
「そうだ!!そうだ!!」
「斎藤家は何をしているんだ!」
弘樹の演説に皆が、彼の言葉に賛同する
「国を動かすのは斎藤家じゃない!我々国民であり、君たち共に歩む我々だ!俺たちを信じろ!自分を信じろ!!国民を信じろ!!俺たち那智党が君たちを明るい未来へと導く!!傲慢な敵を倒すのだ!民を疎かにする連中を倒すのだ!すべては平和な未来のために!!!」
弘樹がそう言い右手を上げそう大声で言うと民から歓声の声が上がったのだった。
「ふぅ~~~」
「お疲れ様です弘樹様」
「ああ・・・ありがと詩乃」
演説が終わり、屋敷で一息つくと、詩乃が彼をねぎらう
「それにしても相変わらず過激にことを言いますね弘樹様は・・・・」
と若干呆れた声でそう言う詩乃。髪で目が隠れているが、その目も呆れているように見えた
「下手に竜興様や飛騨を挑発して逆に攻め込まれてしまったらどうするんですか?」
「詩乃は斎藤家がここに攻め込む可能性があると?」
「少なからず・・・・ただ正面での戦では那智党の方が武力は遥かに上です。それこそ武田や長尾なんかの強国と手を結んで攻め来ない限り」
「武田に長尾か・・・・たしかにに手を組まれて攻められたら一たまりもないな・・・・」
俺はそう言う。確かに那智党にはライフルや機関銃や戦車はもっているがそれで日本二強と言われる武田と上杉・・・ここではまだ長尾が斎藤家と手を組んで攻め込まれたら一たまりもない。
今ある近代兵器も数が限られているし、浅井に勝ったのは皆の実力があるのもそうだが、運もよかったと思っている
「詩乃は竜興さんが武田と長尾をと手を組む可能性があると?」
「いいえ。無いと思います」
と、きっぱり言う、え?なんでって言う表情をすると詩乃は俺の表情を読んだのか
「美濃斎藤家…特に飛騨の守一派は誇り高いというか意地っ張りなところがあります。他家に頭を下げるとは到底思えません。何よりそんな行動に出れば相手に隙を与えて、織田より先に攻められると思います」
「ああ・・・なるほどなそこまで愚かじゃないんだ」
確かに今の斎藤家が他国に借りを作ると、いろいろと面倒なことになる、特に弱り切っている今の斎藤家ならなおさらだ借りを理由に属国にされるか、もしくは土地を奪われる危険性がある。
「それよりも詩乃・・・・今、気づいたんだけど。なんで膝枕?」
今気づいたんだがいつのまにか俺は詩乃の膝の上に頭を乗せていた、つまり膝枕だ。なぜ自分がそうしたのか不思議だ。無意識でやってしまったのかな・・・・それほど俺は疲れているのだろうか?
「気づいていなかったんですか?」
ため息交じりに言う詩乃。ああ・・・これは呆れられているな当然と言えば当然だけど・・・・
「うん・・・・嫌だったら起きるけど」
俺がそう言い起き上がろうとすると詩乃は首を横に振り
「いえ・・・そのままで結構です」
「え?いいのか詩乃?」
「弘樹様はこの頃、政務や今回の演説続きでお疲れでしょう?」
「まあ、でも美緒や桔梗や詩乃が手伝ってくれるおかげで何とかね。むしろ俺が足を引っ張っているんじゃないかと思っちゃうくらいだよ」
「そんなことはありませんよ。町の改革や農業改革は弘樹様の提案ですよ」
「だがそれを実行でき実現できたのは桔梗さんや町のみんなの努力があってのことだ俺はただ提案しただけさ」
俺がそう言うと詩乃はため息をつき
「まったくあなたという人は相変わらず謙遜ですね?」
「俺は事実を言っているだけだよ詩乃。みんながいなければ俺は今頃野原で死んでいた。こうして詩乃にも出会うことはなかっただろうな・・・・」
「そうですか・・・・大変だったんですね」
俺の言うことに詩乃はそう返事をする。そして詩乃は俺の頭を撫でた
「詩乃?」
「弘樹様。せめてこの時ぐらいゆっくり休んでください・・・・何なら子守唄でも歌いましょうか?」
優しい笑みでそう言う詩乃に俺も思わず微笑んだ。しばらくの間この時間が続いた。それはとても安らかな気持ちだった
「今は戦乱だけど平和になったらまたこうしてゆっくりしたいな・・・・」
「その時はまたこの膝をお貸ししますよ弘樹様」
詩乃はにっこりと笑うのであった
一方、稲葉山城では
「クッソっ!あのならず者めっ!!!」
場内で斎藤竜興の側近である斎藤飛騨が苛立ちながら物に八つ当たりをしていた。理由は当然那智党のことである
「あいつらは本当に邪魔だっ!美濃三人衆も民も奴らの方に味方しようとしている!竜興様も蹴鞠やら遊びうやラでその脅威に気づかない!!」
と苛立ってばかりであった。織田の件もあるのにましてや無銘のならず者たちであるナチスに美濃を乗っ取られる可能性があると感じた飛騨は焦っていた
「こうなったらナチスの那智弘樹には消えてもらうしかない・・・・」
憎悪の目をした飛騨はそう言うのであった・・・