クーデター開始まであともう一日、実行の日まで我々は相手に悟られないように気を付けた。
そしていよいよ明日、稲葉山城乗っ取りの日。
それは史実では竹中半兵衛・・・・・俺のお嫁さんである詩乃が
永禄7年に斎藤竜興を戒めるため、弟の見舞いと称し、たった16人の手勢で稲葉山城に侵入し斎藤飛騨等を討伐。城は乗っ取った後、竜興に城を変換し、戦からは身を引いたことから。のちに竹中半兵衛は『無欲で清廉高潔な武将』として名を残すことになる
史実より速いが、今が決行の時。
理由は織田の存在だ。結局、長田二郎と名乗る人物がやってくることはなかった。なぜなら、その人物が来る前日に今川軍が織田領に攻め、織田はそれを撃退するためそれどころではなくなったからだ
副総統である桔梗さんの話によれば、長田・・・・いや織田信長公は噂の戦車をこの目で見れず、とても悔しい思いをしているそうだ
信長は好奇心旺盛だというところはこの世界でも同じみたいだ
そして織田が動けないならこれはチャンスと思った。浅井は不可侵条約を締結させているし、朝倉は中立の立場。六角も以前、ヨウコさんの国防擲弾軍団にこっぴどく撃退されているため、襲撃される心配はない
つまり、今美濃を乗っ取るチャンスは今しかないということだ
そして何より斎藤家の動きだ。義龍亡き後政権は竜興へと変わっている。
そうなれば連中は那智党を逆賊としてこちらに侵攻する可能性がある。向こうもこちらのことは邪魔者としか見ていないようだし、何より領内で潤っている我が土地が欲しくてうずうずしているみたいだしな
そして今現在、総統会議室では作戦結構前の最期の作戦会議が行われていた。
出席者はナチス大幹部の島左近こと美緒、杉谷善住坊ことヨウコ。藤堂高虎こと鶫、加藤段蔵こと桔梗。そして竹中半兵衛こと詩乃
そして那智党総統である弘樹が話し合っていた
「いや、正面攻撃はまずいですよ美緒さん?」
「それはわかっている鶫。だがあの稲葉山城は難攻不落の要塞。だがそれは今までの装備でのこと、我々の持つ兵器と、兵の練度なら陥落も簡単だ。他国に我々の力を見せ、難攻不落の稲葉山城を短時間で陥落したという実績と、我々には強力な武器があるという抑止力を作るとしても好都合だ」
「ですが、そこで万が一に長期戦になったら織田に挟まれる危険性もあります。何より、やり方が、昔、斎藤家がもともと美濃の領主であった土岐氏を奪ったのと同じになります。それでは民の信頼を得ません」
と、議論をしていた。美緒の主張は野砲により稲葉山城を砲撃し、歩兵部隊が突っ込むという合戦論を出したが、鶫、ヨウコや桔梗はそれでは美濃を占領しても、それではかつての斎藤家が土岐氏から美濃を奪ったのと同じでありそれでは民からの支持を得ないと反論する。
両者とも間違った意見ではないため並行していた。
「・・・・・総統の考えをお聞かせ願いたい」
鶫が弘樹に訊くと
「ナチスの大幹部諸君。まあ、そう結論を急ぐものじゃない。今回の美濃乗っ取り計画「狼作戦」を決行するに至っての作戦内容を説明する前に、なぜ我々が美濃を乗っ取るかわかるか?」
「それはもちろん!」
「美濃斎藤家に苦しめられ搾取され続けている民を救うため」
「ならば、正面から戦っては、その城下の住民を巻き添えにしてしまう危険性がある。彼らは私たちを支持者であり、共に平和の時代を歩む同志たちだ」
「確かに・・・・ではどうしますか?」
美緒が訊くと弘樹は
「外ではなく内側から崩壊させる」
「外ではなく内側・・・・・いったいどういう意味ですか?」
美緒が訊くと
「詩乃・・・・」
「はい」
と、参謀総長の役につく詩乃が出て
「今回。稲葉山城を陥落させるに至っての計画はこうです・・・・・」
と、詩乃は自身が考えた策を皆に伝える。内容はこうだ。以前斎藤家から那智党に人時事をよこせと言われていたため詩乃が人質として稲葉山城に潜入、そしてある時期を見計らって、重い病気だと仮病をする。そして見舞いと称し、弘樹とその兵団が稲葉山城に潜入し内部から陥落させるという作戦だった。これなら城下に被害はない。
「確かにこれなら・・・・・ですがそれでは詩乃殿が」
「私も同意です。もしその間、斎藤家に酷い目にあわされたら・・・・・」
「・・・・在り得る話」
作戦内容に大幹部三人は曇った表情をする。しかし詩乃は
「構いません。それにそれしか方法がありませんので、それにそうすれば向こうにも隙が生まれやすいですし・・・・」
と、ニコッと笑う。その表情に弘樹は複雑そうな顔をし、鶫、美緒、ヨウコは悲しい表情をしていた。それはそうだ弘樹自身もその作戦はあまり乗る気ではない。だが他に手もない
「・・・・・」
そんな中、桔梗だけは無表情だった。そのことに弘樹は不思議に思っていると、弘樹の表情を読み取ったのか
「詩乃様は助かるのでしょ総統?総統は意味のない作戦を立てません。何か策がおありでしょう。ですので心配する必要は今はありません」
そう静かに言う。彼女は人一倍優しい心の持ち主だ。つまり冷徹ではなく今の状況冷静ということだ
「ああ…その通りだちゃんと策は考えている」
弘樹がそう言うと皆の視線が弘樹に向く
「まず、人質になってくれる詩乃の生活費として飛騨が要求した金額を倍に用意する。最初ではなく、継続して毎月払う旨の書状も用意する。いい金蔓とわかれば飛騨も無茶なこともしないし、詩乃に手を上げることはしない。手を出せばどうなるか向こうも馬鹿ではないからな」
そう言う。弘樹自身も妻、詩乃の安全が保障されればいくら金を取られようが安い物だと思っていた
「さらには・・・・・桔梗さん」
「はい。稲葉山城内にはショッカーの者を潜入させいます。今現在稲葉山城の下男下女として万が一に備えて詩乃殿をお助けし脱出することになっています」
「うん。ありがとう桔梗さん」
「ありがたきお言葉です」
桔梗は頭を下げそして弘樹は
「では、「狼作戦」開始!!!」
「「「ハイルッ!!!」」」
弘樹がそう大声で言うと幹部はローマ式敬礼をして叫ぶのであった
那智城。弘樹の寝室
「・・・・・・」
弘樹は夜空を眺めていた
「(明日は・・・・いよいよか・。。。。。)」
星空を眺めていると
「弘樹様?」
声をかけられ後ろを見ると寝間着姿の詩乃がいた
「眠れないのですか?」
「ああ・・・・詩乃もか?」
弘樹がそう訊くと詩乃は頷き、詩乃は弘樹の隣に立つ
「いよいよ明日なのですね・・・・・」
そう言う詩乃だがその手は若干震えていた
「怖いの・・・・詩乃?」
「はい・・・・・ですがどのみち斎藤家は滅びの道を歩んでいたかもしれません・・・・・義龍様が病に倒れてから‥・・竜興が政権を取ってから・・・もはや私が稲葉山城を取って諫めても竜興は何も変わらない・・・・それどころか私は竜興一派の不興を買い、討たれることも・・・・・・弘樹様はご存じなのでしょ?この国の行く末を・・・・」
詩乃は弘樹を見る。詩乃は弘樹が400年先から来た未来人だということを知っている。だが弘樹は
「俺が知っているのは可能性の一つに過ぎないよ。無数にある可能性を一つに絞るなんてできないし、何より那智党が誕生したことでここは新たな歴史が生まれるんじゃないかな?上手くは言えないけどね・・・・」
「無数にある可能性・・・ですか?」
「ああ・・・歴史とは常に人が作り出している。この時代の歴史がどんな世界を作るかはその人たち次第なんだよ。未来人だからって言って万能じゃない。ただ生きた時代が違うだけの人に過ぎないんだから」
「・・・・・」
「・・・・・だからこそ俺はこの世界の住人としてこの世界を見て‥・変えたいと思った。この荒れ果てた世界を一人でも多く救いたい。誰もが戦に怯えず互いに支え合うような平和な世にしたい・・・・と」
「それが・・・・・ナチスを作った理由・・・ですか?」
「ああ・・・・もう一つはあの旗の意味を変えたかったことかな?」
「あの鍵十字の旗ですか?」
「ああ・・・・最初に鍵十字を掲げた組織は、俺の祖父が所属していた組織の旗印だった。その組織は確かに戦争や不景気で荒廃した国を立ち直し復興することに成功した・・・・・だが、その組織は新たな戦争を生み出し、多くの人を迫害し虐殺してきた・・・・それ以来その旗は悪の象徴となった。だが俺の掲げるあの鍵十字は悪の象徴じゃない・・・・鍵十字…卍は本来、幸福や幸運を示す印。だからこそ苦しむ民を助け平和の象徴にしようという意味もあるかな」
「そうなんですか・・・・・」
詩乃はそう言うと何も言わなかった。きっと弘樹の世界もいろいろとあったのだろうと深くは聞こうとしなかったのだ
すると詩乃は弘樹に寄りかかる
「詩乃?」
「弘樹様・・・・・私のしていることは正しいのでしょうか?」
「え?」
「利政様にも義龍様にもたくさんの御恩があったはずですのに・・・・私はその斎藤家を終わらせようとしています・・・・今回の策も私が考えたものです・・・・・私は…私は怖いんです」
そう震える詩乃に弘樹は彼女を優しく抱きしめた
「・・・・弘樹様?」
「詩乃・・・・一人で抱え込まなくていい。悩まなくていい・・・・俺もいるし、桔梗さんや美緒たちみんながいる。きっと詩乃を助けてくれる・・・・それに俺も詩乃が危なくなったら必ず助けるから・・・・絶対に詩乃に傷一つも追わせたりしない」
「弘樹・・・・さま」
そう言うと詩乃は俺の胸に顔をうずめる。そして顔を上げ
「弘樹様・・・・・どうか私に勇気をください・・・」
彼女の言葉に弘樹は頷くと、二人は口付けをし・・・・・
そして、愛し合う二人の影は一つになるのだった
そして二人は夫婦として一緒に熱い夜を過ごすのでだった