今回は新キャラを出したいと思います
ナチスはその後、勢力を拡大し、日ノ本でも名の知れた軍組織となっていた
特に国防軍に次ぐ組織「親衛隊」通称「SS」は国防軍同等の軍事力と各国の諜報組織をもしのぐ情報網を持っていた。
「ジークハイル!!ハイルフューラー!」
親衛隊本部にて一人の少女が親衛隊長官である桔梗のもとにやってきた
「桔梗様。鶫様より、今日の報告書をまとめて持ってきました!」
「いつもご苦労様です茶々さん」
桔梗はその少女に労いの言葉をかける。
彼女の名は石田佐吉。通称「茶々」。
那智党親衛隊、国家保安部所属の少女である
腕っぷしは弱く、槍働きが不得意な彼女であるが、後方勤務などの事務仕事こうした役目においては抜群の才能を発揮する人物であった
そう、この石田佐吉。のちの石田三成となる人物であるのだが、そんな彼女がなぜ那智党に入党したか?総統である弘樹にどうやって会ったか?
少し時を遡り見てみることにしよう
時を遡ること、那智党が斎藤家を打倒し、新たな美濃の国主となって数日後のことであった
「今日は日差しがいいな詩乃」
「はい。それに風も心地いいですね」
那智領の中、弘樹と詩乃は歩いていた。仕事もひと段落し、領内を散歩…つまりデートしているのだ
「今日は車で行かなくてよかったのですか?」
「たまには歩かないと。それにずっと部屋で書類仕事だったから運動不足気味で・・・」
「それは大変ですね」
弘樹の言葉に詩乃は苦笑する
「そう言えば詩乃は顔色がよくなったな?」
「はい。弘樹さんの料理や朝のラジオ体操?でしたっけ?それで少し血行が良くなったと思います」
詩乃はニッコリと笑う。実のところ弘樹と結婚するまで詩乃は栄養失調気味であり貧血状態だった。だがこれは詩乃に限らずこの時代の人々がみんなそうであった。実際日本では1970年代までは栄養失調者が多くいて改善されたのはそれ以降だった。詩乃は弘樹のところに来てからはバランスの良い食事や、綿でできた布団での睡眠と、朝に行うラジオ体操でみるみる健康がよくなり今では血色がよくなっていた
それからしばらく二人は歩くと
「詩乃。大丈夫か?」
「ええ…ちょっと歩き疲れてきました」
と、詩乃はそう言う。どうやら健康はよくなっても体力の方は以前と同じようだ
「そうだな。だいぶ歩いたし、今日はその辺にして帰ろうか?」
疲れている詩乃を見て弘樹はもと来た道を帰ろうとするが……。
「あら?」
詩乃が何かに気づいた
「どうしたの詩乃?」
「弘樹様。あそこにお寺が」
「寺?・・・・あ、本当だ」
詩乃が見る方向を見ると、確かに寺らしき建物が鎮座している。
「少しあのお寺で休憩しようか?休むくらいなら住職さんも許してくれるだろうし」
「そうですね」
そう言い二人は寺へと向かうのであった
「ごめんください」
寺につくと、詩乃は寺の小姓を呼んだ
「はいっ!」
程なくして、詩乃と同じ年頃か、もしくは少し年下に見える少女が現れた
「何かご所望でしょうか?」
「すみません。少し歩き疲れたので少し休ませてもらってもいいでしょうか?」
「はい。構いませんよ。お茶も用意しますか?」
「はい・・・・二人分お願いします」
「二人分?」
「はい。夫の分も・・・・弘樹様」
詩乃に呼ばれ、弘樹は「おう」と小姓の下へ歩いていく
「あ、貴方さまは……っ!」
弘樹を見た途端、小姓の表情が一変した。何か、神々しい物を見るような顔つきになったのだ。
「も、もしやっ!那智党総統の那智弘樹様ではありませんか!」
「俺のことを知っているのですか?」
「はい!演説をいつも聞いていました!」
と、彼女は弘樹を見て不動の姿勢を取り
「総統閣下とあれば、すぐに茶を御用意いたします! どうぞ、おあがりください!」
ローマ式敬礼をするや否や小姓は足早に奥へと下がっていった。
「俺も有名になったな詩乃?」
「当たり前です。弘樹様はここの領主ですから。むしろ知られてない方が大問題です」
弘樹の言葉に呆れる詩乃。そして詩乃と弘樹は小姓が来るまで談笑していた
「なるほど・・・・『るふとばっふぇ』・・・ですか。実用されれば戦の常識が変わりますね」
「まあ、まだ訓練中だし、それ自体多くないから、まだまだ先の話なんだけどな」
と談笑していると
「お待たせいたしました」
小姓がやってきて、茶が用意された
「では、どうぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
と、詩乃が先に飲む
「美味しいお茶ですね」
と同時に彼女の入れたお茶が美味しいというと、小姓はふふと嬉しそうに笑い
「ありがとうございます。総統様もぜひ。お代わりはいくらでもありますゆえ」
「それじゃ、遠慮なく」
詩乃と同じく喉の渇いていた弘樹は、出された茶を一口で飲み干した。
「うん!中々の味だな」
「おお、これは見事な飲みっぷりにございますね!」
「はしたないですよ弘樹様?」
「ああ、えっと、ごめん! すまない俺、作法とか知らなくてさ……」
「いえいえ! 茶は飲む物にございますれば、総統閣下のように爽快にお飲みになられるのが筋かと!」
「ほう、そう言われるとそんな気がしてくるな」
「まったくあなた様は・・・」
詩乃は呆れつつも、無邪気な姿の弘樹を微笑ましく見る。
「すみません。もう一杯貰えるかな?」
「はっ!」
笑顔でそう答えると、小姓はすぐに二杯目の茶を持ってきた。
心なしか、一杯目より小さな茶碗だ。
「んっ……ごく……ごく……」
再び弘樹は一気に茶を飲み干す。その横顔に、小姓はうっとりと見惚れていた。
(ん? この茶、一杯目よりも熱いな。でも飲みやすい・・・)
二杯目も飲み干した弘樹は、ふぅ、と一息つく。いつもより茶が美味く感じた。
「総統様、お代わりはよろしいですか?」
「普段なら二杯で満足なんだが、今日は三杯目が飲みたい気分だな。これは美味いし飲みやすい」
「では、すぐにご用意いたします!」
一分と経たないうちに、三杯目の茶が用意された。
今度は二杯目よりも更に小さい茶碗である。
「いい香りだな?」
いつもならば茶を飲み干すだけの弘樹だが、三杯目ともなると茶を味わう余裕が出てくる。
(あれ、二杯目よりも熱くなってる……美味い……)
存分に茶の味わいを楽しみながら、三杯目をゆっくり飲み干した。そして隣で見た詩乃は
「なるほど・・・・・」
小姓の意図が分かったのか、感心した目で見ていた
「はー、美味かった。ありがとな」
「味わっていただけたのなら嬉しゅうございます」
「茶が段々と熱くなってたけどさ、あれは何で?」
「はっ!」
よくぞ聞いてくださりました、と小姓が答えた。
「一杯目は大きめの茶碗にぬるい茶をいれ、総統様の喉の渇きを潤し」
「ほう」
「二杯目はやや小さめの茶碗に一杯目より熱い茶をいれ、飲みやすさを追求し・・・・」
と小姓が続けようロした時。
「そして三杯目は小振りの茶碗に二杯目よりも熱い茶をいれ、茶そのものを味わっていただく・・・・そうですね?」
と、詩乃がそう言うと小姓が目を輝かせ
「さすが総統閣下の奥方であり、今孔明と名高い竹中様!はい!その通りです!」
「その仇名はちょっと・・・・・」
目を輝かせそう言う小姓に詩乃は困った表情をするのだった
その後、彼女の心遣いさにすっかり感心してしまった二人は小姓と雑談をしていた
「なるほど。総統閣下は、はるか先の時代の人だと・・・・」
「まあ、普通は信じられない話なんだけどな」
「私も初めて聞いた時は信じられませんでしたが、納得のいくことがありまた。」
「確かに初めて聞けば信じられない話だとは思いますが、私は信じます!突如現れ皆に希望を持たせる演説にその技術力!そして見たこともないような超兵器の数々!!これは未来から来たとしか言い様がございませぬゆえ!」
小姓の言葉には、まるで憧れのスターと会話しているかのような熱がこもっていた。
「それに、総統様の評判は良いものばかりでございます!失業者であふれた民には仕事を!そして優れた道具や政策で人々の暮らしが豊かになっています!そんな総統様を支持する人も多いいです。噂では今日の公家の中でも那智党を支持する人がいるという話です」
「公家の支持という話はともかく。国を豊かにすることに必要なのは人の力が必要不可欠だ。俺はただ皆が豊かに暮らせるようにみんなで頑張っただけだよ」
「確かに、
詩乃の言葉に小姓はさらに目を輝かせ
「何という聡明な御仁……この佐吉、感じ入りました!」
佐吉、と名乗った少女は、弘樹に深々と頭を下げる。
「君、佐吉ちゃんって言うのかい?」
「佐吉で構いませぬ! いえ、佐吉と呼んでくだされ!」
弘樹はその名前には、聞き覚えがあった
「(佐吉・・・どこかで聞いた名だな…確か戦国後期で活躍した武将の幼名だったはずだが)」
「弘樹様?どうかされたのですか?」
「ああ…いや、なんでもないよ詩乃。ちょっと気になることがあっただけ」
「そうですか・・・・・」
弘樹の言葉に詩乃は首をかしげると、佐吉は
「あ・・・あの!」
突然、佐吉が声を上げる
「ん?どうしたの佐吉ちゃん?」
「あの!総統はこの日ノ本をどうするおつもりですか!」
佐吉の言葉に弘樹は
「俺のいた時代と同じ平和な時代にする。戦や飢餓に怯えず、そして国の民とともに生きる『国民国家』を目指す」
「国民国家・・・ですか?」
「ああ・・・・国民。つまり民が自分で道を選び進む。これまでのように一部の人たちがすべてを決めてはいけない。この国・・・日本を一つの国家にまとめ上げ、そして南蛮勢力に後れを取らない近代国家となり。そして一部の指導者が国を動かすのではなく。国民が国のかじ取りをする。つまり国民国家となってこそ、俺の闘争は終わり完成する。それが俺の理想であり野望だ」
「国民・・・・国家」
佐吉はその言葉を胸の中で復唱する・・・・・
「……きっと、総統様は平和な時代でお暮らしになっていたのでございましょう」
「まあ。少なくともこの国は戦とかなかったし。でもさ、やっぱり色んな問題はあった・・・だからこそこの時代を見て俺は思った。この世界を少しでも良い未来へ繋げるために・・・・・平和な時代を作るためにとね」
そう言って、弘樹は日輪のごとく微笑んだ。佐吉はその笑顔に、心を奪われていた。
それを見た詩乃は
「はぁ・・・・まあ、私もそうでしたから・・・」
と、何やらため息交じりの小声で何か言っていた
「それで佐吉ちゃんは何か夢でもあるのかい?」
「……佐吉には、夢などございませぬ」
消え入りそうな声で、佐吉は呟く。すると弘樹は佐吉の頭を撫でながら、弘樹は彼女の心を生涯支え続けることになる言葉を告げた。
「なら・・・・俺と同じ理想を追ってみないか?」
彼女の瞳にはその手が、身体が、笑顔が、何もかもが大きく映った。
「え……それは、どういう……」
「まあ、つまりだ。俺たちの仲間にならないか?」
「私が那智党に・・・・ですか?」
「三杯の茶の心遣いに惚れた。それに加えて俺の話もすぐ理解してくれる賢さ。文句ねえよ」
「そ、そんな……佐吉は……ただの寺の小姓です」
「それを言ってしまえば、俺は武士でもなんでもない、本来この時代に存在しない人間だぞ?那智党・・・我がナチスは身分なんて関係ない。志のあるものはいつでも歓迎だ」
「総統閣下・・・・・」
と悪戯っぽく笑う弘樹に、佐吉は涙を流すしかなかった。
「御両親の許可が出れば、だけどな」
「……父も母も、既にこの世にはおりませぬ。佐吉は、この寺に面倒を見てもらっております」
「すまない、知らなくて」
「いえ! 寂しいと思ったことは一度もございませぬ! では、和尚さまに許しをもらって参ります! 総統様に仕えると知れば、喜んで送り出してくれるかと!」
活き活きとした佐吉は、すぐに和尚の下へ駆けていった。
「弘樹様。あの子を家臣にするのですか?」
「ああ・・・・詩乃は反対?」
「いえ、頭も切れそうですし、忠誠心も申し分なし・・・・何よりあの三杯の茶のもてなしも私自身気に入っています」
「そうか・・・・」
「でもそれだけではないのでしょ?弘樹様?」
「あれ?わかってたか?」
「ええ・・・・」
「彼女は・・・・俺が必要じゃないかって思ってな」
「必要・・・ですか…」
「ああ・・・・自意識過剰も良いとこだけどさ。佐吉と俺が出会ったのは、偶然じゃない気がする」
「運命という奴ですか?」
「きっとな・・・・」
自分でなければいけない根拠はない。それでも、「寂しいと思ったことは一度もない」と笑う三成の表情が、弘樹にはあまりに切なく見えた。
だからこそ、放っておくことができなかった
「では・・・彼女の部署は
「ああ・・・・桔梗さんや鶫さんにお願いしてみるよ」
「私も推薦書を出しておきます」
「ありがとう詩乃」
こうして、佐吉は親衛隊隊員として弘樹に仕えることになった。
余談ではあるが彼女が何者か知った時
「ああ・・・・三杯の茶で思い出したがそう言うことか・・・・」
と、感慨深く言ったとか、ないとか・・・・
時は戻り、親衛隊本部では
「報告は見ました・・・・・茶々さん。これからも頑張ってくださいね。総統もあなたの働きに期待しております」
上司である桔梗がニッコリと笑ってそう言うと
「はっ。ありがたき幸せ!」
そうして彼女は、強く答えた。
「この佐吉こと石田茶々三成、天下万民のため、そして総統の夢のため、どこまでもお仕えいたします!ジークハイル!!」