同盟上院議事録中間星域外伝~双頭の鷲は宇宙に舞う~   作:SPQR/ロロナ

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「『ローマ』とはなんなのだ?【交戦星域】にはよくわからぬ政党があると聞くし、【中間星域】には彼らの総本山たる国家がある。
そして彼らは多様性を護らんとしている。
更にこれらの起源は宇宙歴以前に存在した帝国にあると言うのだ!
銀河帝国と異なる正義の帝国がかつての世界にあった、というべきなのだろうか!」(とある同盟下院議員の発言)


ガラティエ共和国とは

ガラティエ共和国。

 

そう呼称される同盟構成国はマル・アデッタ星域に程近い場所にあった。

この国は古い構成国の一つにあたり、途中で長征に『耐えきれなくなった』面々により建国され、後に自由惑星同盟に合流した、という経緯がある。

 

故にハイネセンへの忠誠をある種問われ続ける立場にあった。

そんな彼らも民主主義国家である自由惑星同盟の構成国であるため、民主的な国家運営をしていた。

が、それは我々の想像しうる民主主義国家の構造とは少し異なるものであった――

 

 

この共和国は、マル・アデッタ星域に近い場所にあるのは先程書いたが、では何故そこにあるのか、というのはとても鮮明に記録に残っている。

 

 

 

ハイネセンが中心となって行われた長征一万光年、一部の者の言う『再発見』の際に共に立ち上がった『異教徒』である。

この『異教徒』は帝国の国教であるオーディンを主神とする北欧神話系と異なる神話――ローマ神話の系譜を崇拝する者であった。

彼らは地球時代より世界各地で細々と信仰し続け、銀河連邦の時代に至って尚もその信仰を古い形のまま保ち続けた集団であった。

が、帝国により弾圧され次々と収容所送りにされるも、その一団がたまたまハイネセンと出会った――というものであった。

 

そんな彼らは一つの船に集まって長征についていった。

神話にちなんで『ユピテル』と名付けられたその船の艦長を務めた男は『ガラティエのカエサル』という呼び名だけが残されている。

 

そんな『ユピテル』の中には少数のキリスト教徒とイスラム教徒がいたが、過酷ともいえる旅で彼らとのいざこざを起こす余裕もなく、彼らは他の船と共にマル・アデッタ星域と近いエリアまでやってきた。

その時ガラティエのカエサルはこう船内に告げたとされる。

 

「声が聞こえた。このあたりの惑星に着陸する」と。

 

その言葉に対し何故か反発はなく、彼らは事故を装って惑星に降り立ち、その惑星を『ガラティエ』と名付けた。

そしてガラティエ暫定政府が建てられ、そのトップにガラティエのカエサルが就くことになった。

ガラティエのカエサルは独裁官を名乗り強権的に振る舞うも、ガス抜きか、或いは神の意思か、それに対抗しうる護民官と民会を設けた。

こうした独裁官と護民官による体制はガラティエに安定と秩序とある種の原始的な共和制をもたらした。

そしてガラティエのカエサルは後継者を指名せずに没し、ガラティエは護民官を首班とした『完全な』共和国になったころ、ハイネセンより船団が訪れ、交渉の末にガラティエ共和国は自由惑星同盟の加盟国となった――というのがガラティエ共和国の建国物語である。

 

この『ガラティエのカエサル』はガラティエ共和国の国父として、アーレ・ハイネセンやイオン・ファセガスと同列の存在として語られているが、バーラトでは『独裁者』として片付けられている。

 

が、この建国物語は実のところ、意図的に記されていないことがあるのは有名である。

それは、『船団』は実際のところ艦隊であり、自由惑星同盟の交渉団は艦隊司令官とその参謀、そして交渉も脅しによるものだった――というものである。

 

が、ガラティエ共和国側もバーラト側も「仕方なかった」としてこの事実を受け入れているのがこの問題で揉めない理由であるが、今尚これに対し「謝罪と賠償」を求める極右勢力や、「脅迫による加盟は無効ではないか」とし、独立を求める勢力も放置されている。

 

 

さて、そんなガラティエ共和国の経済は、様々な産業を内包している。

まず有名なのは【中間星域の美術館】と呼ばれる芸術文化だろう。

絵画や彫刻、更には(なぜか)アニメーションまで内包するこのガラティエ文化は、自由惑星同盟が銀河帝国に対し圧倒的に優越している証拠、とも称される。

こうなった背景は、ガラティエ共和国がローマ神話を崇拝する関係上、神像の再建が必要になったからとも、或いは『ガラティエのカエサル』が芸術好きだったからともされている。

が、結局のところ国内の富裕層が芸術好きであり、共和国政府から芸術家や漫画家等に交付金が配られ、ガラティエ人が表現の自由という物に理解を示しているから、とされている。

 

しかしながら、こういった第三次産業のみで国家は成り立たない。

当然ながら、この国には他にも産業がある。

その一つは第一次産業のうちの農水業である。

ガラティエ共和国の主要な生産物としては麦、ブドウ、オリーブ、トマトやバジル、非常に少数ながらも米といった作物、牛や豚といった家畜、内海を持つ大陸の構造を活かした海産物の養殖、これらの加工が盛んである。

 

特に酒類の生産は有名で、ビール、ウォッカ、ウィスキー、コルン、ジン、ワインにブランデーと作られており、『ジョージ・パームの愛した星』、『Planetes Bacchi(酒神の惑星)』と呼ばれる程に多種多様な酒を造っている。

 

特にガラティエワインは自由惑星同盟でもかなりの高級ワインとして扱われ、様々な人物がガラティエワインをこよなく愛してきた。

特に、年代物のガラティエワインは数百万の値段がつくことも少なくない。

 

かといってガラティエ共和国が農業惑星である、という訳ではない。

それは、今でこそ戦略的価値こそ低けれど、決してなくて困るものではない鉄やボーキサイト、クロムといった様々な金属が採掘されているのだ。

そして、それらを加工する工業地帯も惑星内に備わっており、多角的な産業を持つ。

 

そんなガラティエ共和国は軍需産業に関して言えば他国に遅れを取っている。が、これについては軍備と共に説明する。

 

ガラティエ共和国軍は、地上軍と近衛軍の二つに分けられる。

まず、地上軍についてはおおよそ常備軍として28万人規模の戦闘可能な兵員がおり、更に輜重兵等が存在する。

地上軍は伝統的に火力主義であり、多連装ミサイル車やレーザー自走砲といった火力投射に優れた車両を多数配備しており、特にレーザー自走砲については艦艇用のレーザー砲を車両に乗せただけであるが、それでも地上戦においては有効であると考えられている。

 

携行火力についても、通常のビームライフルより出力を上げた物が使われている。

が、その分エネルギー消費量が一般的な物より多いデメリットがあるのは周知されている。

 

そしてガラティエ共和国のもう一つの軍が近衛軍である。

近衛軍は、ガラティエ共和国の元首である主席護民官直属という肩書きが与えられており、儀仗用兼白兵戦用の炭素クリスタル製の槍が装備として与えられている他、携行可能な装甲としての盾が配備されている。

 

また、近衛軍は三個師団全てが地上軍と比較して精鋭部隊であるが、特に近衛第一師団に関しては最精鋭として尊敬と畏怖を集める存在である。

そして、近衛軍内部の小隊の隊長等からガラティエ共和国の議員となり、そのまま国防相になるケースも過去にあるなど、近衛軍とはガラティエ共和国のあり方と密接に関係しているのだ。

 

さて、ガラティエ共和国の軍需産業はその軍の規模に対して小さいと言わざるをえない。

まず、国内に戦艦を建造可能な設備はなく、自由惑星同盟全体レベルの軍事産業を取り扱う企業もない。

具体的には、近衛軍の主装備の一つである炭素クリスタル製の槍や盾、自由惑星同盟軍の儀仗用短剣等を製造している、国営エディルネ工廠が国内で一番大きい軍需工場だと言えばわかるだろうか。

 

だが、「特段の問題はなく、下手に傾注するのは国家経済にとって危険である」とガラティエ政府は認識しているため、軍需産業への積極的投資は行われていない。

 

 

 

ここでガラティエ共和国の政治体制について説明する。

 

ガラティエ共和国は、他構成国で言うところの上院にあたる終身制の元老院と下院にあたる六年制の民会の二院制議会と、民会の指名によって任命される行政府の長である護民官、司法権を有する国家法務院と法務官(プラエトル)によって運営される。

ここで重要なのは護民官である。

 

護民官は首席護民官と共同護民官の二つが存在し、その両方が巨大な権限を有するが、基本的に共同護民官はガラティエ共和国外にいて、ガラティエ共和国本土が帝国軍他、自由惑星同盟に敵対する組織に占拠されていない場合はその職権を振るうことが禁止されている。

これは、後程説明する共同護民官のもう一つの職務との兼ね合いもある。

 

護民官は二名指名され、このうち首席護民官が組閣を行い、行政を運営する権限がある。

そして共同護民官が同盟首席弁務官を兼任しバーラトへと向かうことになっている。

いわば、国家のNo.2が同盟弁務官を兼任するのだ。

また、弁務官の定数三名のうち二名は公選で選ばれ、首席弁務官を補佐、或いは亡命政府の中核を成す役割もある。

 

この独自のシステムの形成経緯は建国物語に記されている通りであり、ガラティエ共和国の政界の理解を混乱させる一因であるともされる。

 

そんなガラティエ共和国の上院である元老院は伝統的に終身制であるが、その中身は特段民会と変わらない。

利益団体より推薦された議員や各省庁の元幹部、大学教授にガラティエ版の長征名家であるパトリキが中心となって構成されており、そのうちの少なくない数が何かしらの政党に所属している。

中には、元同盟下院議員の元老院議員もいる。

 

そのようなガラティエ共和国元老院はそれ自体が『ガラティエの上流層の意見代行』とされている。

 

ガラティエ共和国民会については、他加盟国の議会と差は軽微である。

予算審議権、条約締結の承認その他、立法府としての権限が認められている。

これについてはガラティエ共和国が自由惑星同盟に『加盟』した時の条約においての必須事項であり、ガラティエ共和国を完全な民主共和制国家として同盟憲章に則った形にするものであった。

勿論、(当時としては)こんな価値のない国だけに特権を与えれば、それこそ【サジタリウス準州】時代からある諸国の不満が出るのは当然というのもあるが……

 

ともあれ、ガラティエ共和国はその成立過程で同盟政府程ではないにしろ、巨大な権限を持つ護民官を中心とした事実上の大統領制を取っている。

が、その大統領が他構成国で言うところの下院の任命で選ばれる、というのがやや特殊なシステムである。

 

が、ガラティエ共和国が非民主的と言うわけでは決してない。

 

最後に、ガラティエ共和国の主張する、この国の、ガラティエ共和国政府以外では用いられない正式な国名を記して終わる。

 

『ローマ共和国の最も偉大で清らかなる属州、ガラティエ属州』

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