古く錆びたバーで、長身初老の男は自らのスタンドを発現させながら呟く。
「自己紹介はまだお預けだ。まだ二話だぜ?もう少しだけミステリアスな存在の方が俺も楽しいしな…」
そう言って微笑むと、酒を一杯煽る。
「さて、今回は少しだけ『幸運』な話だ。『孤独』と『不運』はとても近しい。なら逆を言って『幸運』と『連帯』は近しいと言えないか?何を言ってるかわからねえなら……まあ、読み進めるといいさ」
某州、地下水路。
「フーーッ、フーーッ、フーーーッ………あ、危ねえ……爆風で吹っ飛んで結果的に逃げ切れたからいいものをよ……次、来たらかなりやべえぜ………」
血の流れ出る腕を抑えながら、ブラウンは呼吸を整える。
「にしてもよぉ…なんで俺がこんな…くそッ、ああダメだ、段々腹が立って来たぜ…………」
(俺は昔からキレやすい性格だ…しょっちゅうケンカして、高校ではムカつく教師を殴って停学になった…)
眉間をひくつかせながら、地下水路を歩き出す。そしてY字に分かれる水路に差し掛かった時だった。
「見つけたぜェーー!!あの女の仇ッ!今取ってやるッ!!」
飛び出してきた東洋人は、すぐさま手に持ったサボテンを、自分の脇腹に突き刺した。
「『カクタス・アンド・バントライン』ッ!!!!」
ブラウンも必死にガードしようとするが、間に合わない!!
「ヤバいッッッ!!!!」
_______二度目の爆発。
東洋人は口笛を吹き呟いた。
「GOOD!今度こそ処分『完了』だ。これであの方からの評価も上がるってモンd「まだだぜ…………」!?!?」
東洋人が声のした方向に振り返ると、全身から流血し呼吸も荒くボロボロのブラウンが立っていた。
「テメエ……まだ生きてやがったのかッ!ならもう一発打ってやるぜ!!!」
再びサボテンを自らの身体に突き刺そうとする。その瞬間。
「ゴルァ!!!!!」
ブラウンの剣闘士のスタンドが再び出現し、サボテンを殴り飛ばした!
「ぐッ!!!…だが、そんなボロボロの身体でスタンドを使えば、テメエの身が危ないんだぜッ!テメエだけは許さねえ…この人殺し野郎がよォーーッ!!!!」
その罵声を浴びた瞬間。ブラウンの中で何かが切れた。人間の四大感情の一つであり、七つの大罪の一つでもある「憤怒」の世界。嵐のように暴れ、全てを投げ打ち踏み潰す怒涛の力。ブラウンは踏み入ってはいけない領域に入門してしまった。
「だから殺ってねぇッつッてんだろこのダボがッッ!!!!耳付いてんのかテメエェェよォォ!!!!!!!!!」
ブラウンは激怒した。スタンドの力は精神の力。ブラウンの精神を象徴する「激怒」がスイッチとなり、ブラウンのスタンドは真の能力を発現させる。
ズンッッッッッッ!!!!!!
「ガっっアッッッ!!!!」
東洋人には何が起こったのか理解出来なかった。気がつけば、自分の身体が周りごと物凄いパワーで地面に押し付けられている。
「なッッんだよクソッッッ!!!!!なんだよこれェッ!!!!」
もがく東洋人に、ブラウンがゆっくり、ゆっくりと近づく。
「お望み通りよ……ブッ殺してやるぜェッ!!!!!!」
「ちっ…………畜生がァーーーーーーーッッッ!!!!!!」
そして、重力を操る激怒の剣闘士はその情感を爆発させるが如く、ラッシュを叩き込む。
「ゴルァゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴルァ!!!!!!!!!!」
「ゲブゴバァッ!!!!」
東洋人は数十メートル先まで吹き飛んだが、運良く__ブラウンが重症だったのもあるが__とどめとまではいかなかった。
「まだ殴られたりねぇかッ!?アアッ!?」
すぐさま追い打ちをかけようとするブラウンに、その死にかけの東洋人は真っ直ぐな瞳で言った。
「お前…………本当に殺ってないのか…………?」
「………あァ?」
「…お互い、もうスタンドを使ったらマジで命がやべえラインまで来てるはずだぜ……本当の事を言え…殺ってないんだな…?」
「………殺ってねえ。誓うぜ」
「……そうかよ………クソッタレが……!!」
東洋人は勢いよく床を殴りつける。
ブラウンも倒れるように座り込んだ。
「俺にも質問をさせろ……お前は、誰だ?」
「俺は……刺客。『あの方』の刺客だ。今回はあの娘の護衛を任されてた……」
「さっきも言ってたけどよ…『あの方』っつーのはどこのどいつだ…多分、俺はそいつに嵌められたしよォ…」
「俺も、裏切られた、って事か………フッ、こうなったらもう何でもかんでも喋ってやるぜ。俺のマスターは…ウィリアム・バリアン。知ってるだろ?お前もよ」
「ッ!?」
知らないはずが無かった。アメリカ中が、下手したら世界中が知っている_____現アメリカ合衆国大統領、ウィリアム・Vである。
「なんっ…でだよ…何で俺が…大統領に…」
「…おそらく、無作為だろうな。俺に護衛の任務を出しておきながらあの娘を殺し、適当に人間を選んで殺人犯に仕立てあげる。そうすりゃ俺がお前を殺して証拠は無くなる。なんの目的があるかは知らねーが、仕組んだのは大統領だと見て間違いないだろうな…ナメたマネしやがって………」
二人が沸々と怒りを湧かせていたその時だった。上から__つまり何もない場所から突然___『何か』が降ってきた。
「!?こ、こ……れは……どういう事だッッ!!」
突然の事態によりパニックになるブラウンと、
「知らねーッ!俺に聞くなッ!!」
やはりパニックになっている東洋人。
二人がパニックになるのも無理はない。降ってきたのは今話していたばかりの________娘の死体だったのだから。
「ッ何が、起こった…?『スタンド』かッ!?瞬間移動のスタンド!!?おいテメエ、テメエの知ってる奴に瞬間移動を使う奴は!?」
「い、いるが………いや……それは絶対無え………だってよ………『そいつ』だからだ。」
「……は?」
「だから!!…そこで死んでんだよ。そいつだ。名前はブルーメ・エヴァンス。僅かに瞬間移動の能力を持つスタンドを持ち、俺が目を離した数分間のうちに殺された。だから、あり得ねーんだよ。こいつがまだ死んでないっつー選択肢以外はな………」
「そんな事ありえるかッ!!どこが生きてるっつーんだ!どう見ても枯葉みてーにガサガサだしよォー!」
「一人だけ、その状態_つまり仮死状態にしつつ永遠に目覚める事のないようにすることができるスタンド使いがいる。…刺客は全員独立してるから俺は仲間はこいつしか知らない。セーラー・バウスフィールド。大統領の____執事だ。」
ブラウンは息を飲む。大統領などとスケールの大きい話にまだ順応できていないのだ。東洋人は続ける。
「奴は人から『時期』を奪う事が出来る。つまり誕生の『時期』を奪えば、死んではいないが生まれていない、スタンドは消えていないが仮死状態、つまり____この状態にすることも可能だ。」
「………確率は」
「35%ってとこだな。スタンドを使ってるって要素抜いたらどう考えても死んでるし。俺の知らねえスタンド使いがいるって可能性もあるからな」
「…そうか」
ブラウンは立ち上がりブルーメの仮死体を背負うと出口へと歩き出す。
「おい、どこ行く気だよ」
「そのセーラーとか言う野郎をぶちのめす。こいつを蘇生させて、情報を洗いざらい引き出す。そして……俺を怒らせた事を後悔させてやる」
「……怒ってるのはお前だけじゃねえぜ」
そう言って東洋人はブラウンを支える。
「俺も行く。」
少し驚いた顔をしながらもニヤつき、ブラウンは確かに一歩を踏み出した。
「自己紹介がまだだったな。俺は東方徐助。ダチからはジョジョって呼ばれてる…頼むぜ、相棒」
「ブライアン・ブラウンだ。なあ、一つ聞いていいか?…このブルーメって奴、お前とは護衛するされるの関係以上の関係があるんじゃないか?」
「……何故そう思う?」
「お前が俺に向けた殺意、ハンパじゃなかった。マジな話、少しびびったぜ。」
「ノーコメント、だ」
「ふん、そうか」
ブライアン・ブラウンは最大の『不幸』、孤独から脱出した。そして立ち向かうにはあまりにも大きい敵を知り、それでも尚戦おうとする。正義感では無い。懲悪の精神もない。ただ激怒の行く先、暴虐を極めるためだけに。
To be continued………
『ナイン・ポイント・エイト』
破壊力:A スピード:B 精密性:C 射程距離:D 成長性:C 持続力:B
重く強く速い、典型的な近距離パワー型スタンド。本体であるブライアン・ブラウンが激怒した時のみ、一定範囲に爆発的な重力をかける。