フーダニットゲーム   作:N-SUGAR

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第1章 被害者の可能性(下)

5.

 

「さて、それじゃあさっそく解答といきたいところだけれど何木君。何か解答の前に言っておきたい前口上的なものはあるかな? 名探偵にありがちな、やたら長くて本筋が分かりにくくて、しかも論点がずれてるだろそれって感じの、前口上」

 

「ないですよそんなもん。そもそも僕、名探偵じゃありませんし、……」

 

 花茨さんの軽口を適当に流しながら、僕は改めて目の前に横たわっている、ピクリとも動かない金髪メイドの姿を確認する。

 

 脈はなく、

 

 全身が硬直していて、

 

 しかし血色が好く、

 

 おそらく「フーダニットゲーム」の参加者で、

 

 吹雪の雪道にしてはえらく薄着で、

 

 荷物が同じ参加者である僕や花茨さんと比べてありえないほど少なく、

 

 意味不明なコンセントが入っていて、

 

 おそらく本人のものであろう名刺に書かれていた身分は、蟹目釘研究所の使用人の、

 

 名前は、マリー=クレイドルさん。

 

 そんな彼女を、──見る。

 

「さっさと終わらせましょう。この、……えーっと、……事件? ……を」

 

「そんなに急がなくってもいいと思うけどなー。……あと最初に言ったけど、これは事件じゃなくてクイズだよ。そう呼ぶのが正しい」

 

「確かに」

 

 僕は花茨さんにうなずき返すと、そのまま花茨さんに、クイズの答えを回答した。

 

「彼女、──マリー=クレイドルさんはそもそも死んでいません。なぜなら彼女は、元から生きてすらいなかったからです」

 

 僕は結論を紡ぐ。

 

「彼女は人間じゃなくて、人形だ」

 

 ありえない可能性を、答える。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「その通り。正解だよ」

 

 そして花茨さんは、僕の答えに、──僕のありえない答えに、「百点満点☆」と、ウィンクしながら、花丸を付けた。

 

 その言葉を聞いて、僕はそのままその場に崩れ落ちた。

 

 そうだ。彼女はロボットだった。

 

 限りなく人間に近い人形。──アンドロイド。

 

 そもそもおかしかったのは、血色の好さや服装、荷物以外にももう一つあったのだ。

 

 死後硬直である。

 

 マリー=クレイドルの足跡を見る限り、彼女の足跡に新しく積もっていた雪は五センチ程しかなかった。つまり彼女と僕たちがここに来た時間の差は、この吹雪の中どれだけ多く見積もっても一時間は超えない。

 

 そして死後硬直というものは、実は人間の場合、死亡してから二~三時間くらい経ってから始まり、十二時間ほど経って初めて全身に及ぶものなのだ。この数字は室温二十度前後の場合の話だが、たとえそれが氷点下の極寒の地だったところで、さすがに死後一時間程度で死後硬直が全身に及ぶなんてことはあり得ない。筋肉が寒さで凍り付いていたというのならともかく彼女は足に防寒タイツを履いていたからそれも考えにくい。だとするならば、彼女の死後硬直が全身に及んでいたのはかなり不思議なこととなる。

 

 だけどそれも、彼女の体がそもそもそういう質感にできていたというのならば話は別だ。何も不思議なことはない。彼女が人間でさえなければ、そこには何の不思議も生じない。

 

 同様に、血色の好さもそういう仕様だとすればそこに何の疑問もないし、着物の薄さ、荷物の少なさに関しては、必要最低限以上の荷物が、人間ではない彼女にはそもそも必要なかったんだと考えれば納得できる。謎のコンセントは、おそらく彼女の充電用コンセントなのだろう。蟹目釘総合工学研究所とやらが、あの海を走る自動車を作ったところと同じ研究所であるならば、こんなでたらめな開発も、まあするのではないかと、だいぶ無理矢理だが想像することもできる。     

 

 大体研究所に使用人がいて、それがメイド姿だというのも常識的に考えてみればおかしな話なのだ。それならばまだ、彼女が蟹目釘研究所の「作品」だと言われたほうが、まだ理解できる話ではある。

 

 彼女が自律的かどうかはともかく、動いて歩くことができるのは足跡を見れば明らかだし、人間ではありえないから人形で、しかも動くというのならそれはまず常識で考えて一番許容できる結論はアンドロイドだろうというのが、僕の推理だった。サイボーグでも成り立つ推理かもしれないが、サイボーグだと明確に人死にになるので、そんな可能性を僕は考えたくない。それに花茨さんは、この推理にプラス、マリー=クレイドルの体を直に触って何かを確かめることで、確証を得たのだろう。その花茨さんがこれが事件ではないと断定する以上、ならば目の前の人形は、アンドロイドだと結論する他ない。とにもかくにも、以上が、僕と花茨さんが雪道で遭遇した今回のクイズの解答だった。

 

 それ以外ではありえないから、答え。

 

 まさにホームズ氏の言ったとおり、論理的に考えて残った可能性は、それがどんなにありえそうもないことでも真相だったのである。

 

 なんてくだらないんだろう。あきれてものも言えないとは正にこのことである。それにこの問題は伏線もヒントも出過ぎていて、確かに解けなけれぼ逆におかしいくらいにクイズとしても簡単で、まさに練習問題といった感じだった。

 

 だけど同時に、僕はこの真相にひどく安心もした。それこそ、おもわずその場に崩れ落ちてしまうくらいに。

 

 よかった。

 

 人が死んでいたわけじゃあ、なかったんだ。

 

 僕が遭遇したのは、死亡事件なんかじゃなく、クイズの域を出ない。そんな心優しい無難な事件ですらない何かだったんだ。その事実は、僕に深い安堵感をもたらした。

 

「いやー。それにしても、人間と見分けがつかないロボットなんて冗談きつすぎますよねー。……ていうか、十分にSFの世界でしょうよ。こんなの」

 

 確かに最新の科学雑誌なんかでは一瞬人間と見紛うようなロボットも紹介されてないわけじゃないけど(不気味の谷特集)、でもさすがにここまで見分けがつかない人形なんてあるはずがない。どんなに精密に作られた人形だって、どこかにはそれこそ不気味の谷が存在するものだ。そう思って僕は雪の中にへたり込んだまま、花茨さんに話しかける。すると彼女は、

 

「いや、何木君。それは違うよ」

 

 と、真顔になる。

 

 違うって、何が? と、僕が問うと、花茨さんは言った。

 

「何木君。このメイドさんは今のところ、人間と見分けがつかないようなロボットなんかじゃあ、断じてない。彼女は今現在、人間の死後硬直死体とほとんど区別がつかない、ついたとしても血色の不自然さしかないような、そんな人形なんだ」

 

 そしてその程度なら。別にSFの世界じゃなくても、現代の科学技術で十分作ることができる。と。

 

「それに何木君もわかっているとは思うけど、人間そっくりに作られたアンドロイドの一番の不気味の谷は、そのアンドロイドの動作にこそあるからね、私が確認したいのは、だからそこなんだよ」

 

 花茨さんは再びメイドさん改めメイドロボの方にかがみこむと、そのまま背中が上に来るように転がして、エプロンドレスをたくし上げた。

 

「な……何をやってるんですか?」

 

 今更花茨さんの意味不明な行動を止めようとは思わないけれど、それでもロボットとはいえ、背中までスカートをたくし上げられて、白いレースビキニパンツが丸見えになってしまっているそれを果たして僕は見てしまって良いものなのかどうか戸惑っていると、次の瞬間花茨さんは、ガコン、という効果音とともに、メイドロボの()()()()()()()()()()()()()()

 

「え……ええ!?それってどういう……」

 

「いや、これはロボットなんだからさ。そりゃどこかが開かないと、こんな風に電池切れしたりした時に対処ができないじゃない。見たところ螺子とかは見えなかったし、だったらどこかを押したら開くのかなって思ったのさ」

 

 実はさっき触ったときは、それを調べていたんだよ。と、花茨さんはあっけらかんと言う。

 

「……そ……それは確かにそうなんでしょうけど、いやでも……さすがに発想が大胆過ぎるというか……えっと、そもそもこのロボットって、電池切れだったんですか? 故障じゃなくて?」

 

「それは分からないけど、そもそも考えても見なよ何木君。このメイドさんは少なくとも私たちと同じゲーム関係者なんだから、当然道のりも私たちと同じなわけだよね? でもさ、私たちがここまで来るのに、まあ最低限待ち合わせ場所まで来る時までは電池が満タンだったとしても、そこから自動車で二時間近く移動して、そこからこの雪道だぜ? そんな長い間このレベルのロボットのバッテリーが、普通持つと思う?」

 

「……いやそれはまったく思いませんけど、……」

 

 こんなSFまがいの人工物を前にしてよくもまあそんな常識的なことが言えるもんだと、僕は変なところで花茨さんに感心する。

 

「えーっと、つまりこれって……そういうことなんですか?」

 

「それを今確かめた」

 

 僕が訊くと、花茨さんは開かれたメイドロボの背中を指さす。近寄ってみてみれば、その中身は果たして、コンセントの挿入口と、そしてかなり大きな二つのバッテリーだった。かなり大きな筒状の内蔵バッテリーらしきものが二つ縦に並んでいる間に、これまた大きめの充電器挿入口が開いている。その周囲に、いくつものランプやスイッチが並んでいて、素人目で見ていかにも機械だなーと思う感じの見た目だったが、いかんせん機械素人の僕には一つ一つの意味がさっぱり分からない。

 

「ん? バッテリーが、……二つ?」

 

「予備バッテリーだよ」

 

 花茨さんは中身を丁寧に検分し、僕に説明してくれる。

 

「本来この予備バッテリーは、本体のバッテリーの電池残量が残り少なくなった時に自動で起動して、二つの電池容量で合わせて梅丹亭まで辿り着く予定だったんだろうね。──でもほら、ここのスイッチを見てご覧。予備バッテリーの起動が自動じゃなくて手動に設定されている。たぶん何かの手違いなんだろうね。これが今回の事件の、いうなれば原因ってことなんだろう」

 

「はあ、……なるほど」

 

 つまりそれは、どういうことだろう……。

 

「はあ……。相変わらずにぶちんだなあ君は。探偵よりも語り部の方が向いてるんじゃないかい? あのね何木君。つまりこのメイドロボさんは、予備バッテリーが使えなかったせいで電池切れして倒れているんだよ。つまり予備バッテリーを起動させてやれば、充電しなくても動けるってことなの」

 

「え⁉このメイドロボ……動くんですか!?」

 

「そりゃ動くでしょうよ。アンドロイドなんだから」

 

 花茨さんはあきれた顔をする。いや、確かに頭では動くってことは理解できるんだけど……でも実際に目の前で動かれるってなると……。なんだかなー。

 

「まあそんなわけだからさ。予備バッテリー。起動するよ? ―さん、―にい、―いち、―」

 

「え!?──ちょっと待っ──―」

 

「ぽちっとな」

 

 僕が心の準備をする暇もなく、花茨さんは手動になっていたという予備バッテリーのスイッチを入れて、ロボットの背中を閉じ、エプロンドレスを元に戻す。

 

 一秒―二秒―三秒―で、すぐにロボットは起動した。

 

 ごそり、と、うつぶせになっている体が動き、ゆっくりとメイドロボは、──これはなんと表現すればいいのだろうか。そう。体中に電気を──生気を漲らせていき────。

 

 がばっと起き上った。

 

『あれ!?私今、電池切れてた!?』

 

 生き返ったメイドロボが発したその第一声に、僕と花茨さんは一斉にずっこけた。

 

 なんてこった。これは本当に予想外だ。

 

 不気味の谷──なんてもんじゃない。

 

 生き返った彼女を見て、はっきりと意識する。起き上がった瞬間に、確信する。

 

 その場で勢いよく顔を上げた彼女にはもう、死体の時に感じていたわずかな違和感さえも、感じられなかった。

 

 あくまで自然で、その動きにはぎこちなさも、不気味の谷も、そんな不自然は一切存在していなかった。

 

 拍子抜けでいっそアホらしくもあるその第一声までもが、彼女の人間性を引き上げる要素にしかならず、つまりは何とも自然できれいな澄んだ声だった。この声が人工音声だとするなら、それはすでにボーカロイドすらも大きく上回っていると言っていい。

 

 あくまでそれは人間らしく。

 

 そしてそれ以外の、何物でもなかったのだ。

 

 一瞬でそう、納得させられた。

 

「はにゃ~。さすがにこのレベルは私も想定外だったにゃ~」

 

 花茨さんはよほどびっくりしたのだろう。口調が何故か猫言葉になっていた。不自然というならこちらの方がよっぽど不自然だ。まあそうなってしまうのもわからない僕ではないので、ここはスルーしておくが……。

 

「──これならセクサロイドとしても使えそうだにゃ~」

 

「──その台詞はスルーできねーぞ花茨さん!!」

 

 こっちが無視してやってたら言うこと欠いて何を言い出すんだこの変態は⁉いきなりとんでもねえ下ネタぶっこんできやがって‼あんたはこの話をどういう方向にもっていきたいんだ!!

 

「うお!?何木君!!顔! 顔がまたとんでもないことになってるよ! テレビで放映できない顔になってる!」

 

「テレビで放映できないのはあんたの言動ですよ花茨さん……」

 

 ていうかテレビで放映ってなんだよ。しねーよ。テレビで放映なんか。

 

 そんな僕と花茨さんの漫才が聞こえたのか、セクサ──違う。アンドロイドのメイドさんは、僕たちの方に顔を向け、きょとんとしている。──その仕草もまたどこまでも自然で、見ていて、ああ、南国の海みたいな透き通る碧色の目が優しい黄金色の髪や白い肌によく似合っているなあ──とかちょっと気持ち悪い表現しか浮かんでこなかった自分に気づいてさらに戦慄する。

 

 すると、メイドさんは僕らのことをどう認識したのか、ぱあ、と、花のような笑顔を浮かべると、僕たちに向ってこう言った。

 

『あ、──ご主人様』

 

 …………………………………………………………………………………………………………。

 

「…………………………」

 

「………………………………」

 

 ………………………………………………えっと。

 

「花茨さん。……あのセクサロイド、僕が持ち帰ってもいいですか?」

 

「何木君。君がそう言う気持ちはお姉さんには本当によくわかるんだけど、それでも君みたいな男の子がそういうことを言うと、本当に気持ち悪いことこの上ないから。ごめん。君はもうそういう言動を二度としないでもらえるかな。あと、あのメイドさんは私がもらう」

 

 なんて勝手なことを言うんだろうこの人は、自分は散々ふざけたことを言って下ネタまでぶっぱなしといて、僕にそれをするなだなんて。おそらく男女の印象の問題なんだろうが、だとするならばそれは男女差別もいいところだ。

 

「いや、これは男女差別じゃなくて、個人の印象の問題だよ。君って普段はそういうことを言いそうもないキャラを既に作っちゃってるから、いざそういうことを言うと気持ち悪さが百乗なの」

 

「そうですか。百乗ですか……」

 

 だとすると僕もずいぶん損なキャラクターを作っちゃったもんだよなー。まあそれはともかくとしてだ。

 

 重要なのはそこじゃない。

 

「ところで何言っちゃってんですか花茨さん。彼女は僕に向ってご主人様って言ったんですよ?」

 

「は? 君こそ何を言っちゃってるんだよ何木君。君の目は節穴なの? あのメイドちゃんは間違いなく私の方を見て『あ、──ご主人様』と言ったに決まってるじゃないか」

 

「気持ち悪い声真似はやめてください花茨さん。彼女は僕の専属メイドになったんです」

 

「は? マリーちゃんは私の嫁だし」

 

 ぐぬぬぬぬぬ……。と睨み合う僕と花茨さん。どうやらお互い譲るつもりはないらしい。

 

 ──よろしい。ならば戦争だ。

 

 今此処に、僕と花茨さんによる歴史上かつて無い規模による第三次世界大戦が幕を開けようとしていた。

 

『え……えっとあの、……ご主人様……達?』

 

 戦争は、一人のメイドの手によって未然に防がれた。

 

 世界は再び平穏を取り戻したのだった。

 

 とか言ってみたりして。あーあ。短い夢だったなア。

 

「まったく何木君、冗談きつ過ぎるぜ」

 

「いやあなたにだけは言われたくありませんよ花茨さん」

 

 一件落着。天下泰平憂きこともなし。僕と花茨さんは冷静になって状況を整理する。

 

「えーっと、メイドちゃん。……君が眠っている間にいろいろ調べさせてもらったけれど……。君はマリー=クレイドルさん……で、いいんだよね?」

 

『はい。その通りです。ご主人様』

 

 メイドさんは、す―と立ち上がってエプロンドレスに付いた雪をさっさ、と自然な動作で掃い、姿勢を正す。

 

『自己紹介が遅れました。私はご主人様たちのおっしゃる通り。名をマリー=クレイドルと申します。蟹目釘総合工学研究所所有作品№77.自律型人工知能(AI)搭載アンドロイド兼、研究所使用人の一人を勤めさせていただいております。以後お見知りおきのほどを、よろしくお願いいたします』

 

 頭を深々と下げたメイドさん──マリー=クレイドルさんの見事な自己紹介に、僕と花茨さんは圧倒させられた。

 

 このロボット、……下手したら僕や花茨さんなんかよりもよっぽど人間として完成されてるんじゃないか? 20に届かないくらいの見た目と、そしてその見た目に反してしっかりと人格形成された大人な言動が、何とも言えず美しいギャップを作り出している。

 

「なるほどね、こちらこそよろしくマリーちゃん。私は花茨生麻という。こっちのちっちゃいのは何木幻君だ」

 

『はい。了解しました。花茨生麻様と、何木幻君ですね』

 

 マリーさんの人形としてのすさまじさに何の動揺もしない花茨さんはさすがだなと思ったが、あれ? 今ついでみたいな感じで僕が紹介されなかったか? ちっちゃいって言った? いやいや、花茨さんだって身長的には大差ないだろ? 僕は同年代ではだいぶ平均に近い身長だぞ? 別に僕だけ特別背がちっちゃいってわけじゃないぞ? 

 

 さらにさらにあれれ? 

 

「マリーさん僕のことは様付けして呼んでくれないんですか!?」

 

「ん? 何木君は様付きでマリーちゃんに呼ばれたかったの?」

 

 しまった! 花茨さんがすぐ傍にいるっていうのに僕はなんて迂闊なことを口走るんだ!!

 

『はっ! しまったまたやっちゃった! 申し訳ありません何木様! 私、ご主人様に対してなんて失礼な言動を!』

 

「え? ……い、いや、大丈夫ですよマリーさん! 僕は気にしてませんし、別に構いませんよ!?マリーさんの方が年上なんですから!」

 

 マリーさんが平謝りになるのを、僕は慌てて止める。花茨さんは「でもそう呼ばれたかったんでしょ?」と余計な茶々を入れてくるが無視する。

 

『そういうわけにはまいりません何木様。私は何木様よりも齢は下ですし、なにより私には制作過程でロボット三原則が行動の基準としてプログラミングされています故!』

 

「ロボット三原則? そりゃまた随分と時代錯誤な法律が適用されてるんだね君は」

 

『ええ、……多少の改定はされていますが、……基本は』

 

 目を丸くした花茨さんにマリーさんは答えた。しかし驚いたのは僕も同じだ。まさかこんなところでロボット三原則なんて用語にお目にかかるとは、思ってもみなかった。

 

 ロボット三原則とは、アメリカの有名な作家、アイザック・アシモフが書いたSF短編小説、「われはロボット」において登場した自律型ロボットの守るべき三つの法則のことだ。それも、後のロボット工学分野において多大な影響を与えたというほどのかなり有名な原則である。

 

 紹介すると、ロボット三原則とは、左記の三カ条からなる。

 

 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。

 

 第二条 ロボットは人間に与えられた命令は絶対に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第一条に反する場合はこの限りではない。

 

 第三条 ロボットは、前掲第一条及び第二条に反する恐れのない限り、自己を守らなければならない。

 

 アイザック・アシモフは有名なSF作家であるが、同時に有名なミステリー作家でもあり、「象牙の塔の殺人」や「黒後家蜘蛛の会」など、数々のミステリー作品を残している。詳しくは省くが、ロボット三原則の出てきた「われはロボット」も、このロボット三原則を前提にしたミステリー的な内容になっていて、非常に興味深い作品なので未読の方は是非一度試しに読んでみることをお勧めしたい。

 

 それはともかく、このロボット三原則はいうなれば自律型ロボットが人間に危害を加えられないように初期設定される奴隷条約なのだが、これを現実に適用した場合、フレーム問題と呼ばれる問題が生じることで知られている。

 

 この三原則、特に第一条を守るためにロボットは、周囲の状況の把握と、その帰結を予想しなくてはならず、知識ベースと思考機能が際限なく広がってしまい、そもそもそんなロボットは作れるのかという問題が、この三原則には生じてしまうのだ。そんな高性能な機能を搭載できる器(フレーム)はありませんよということから、フレーム問題と呼ばれている。この問題が解決できるような装置が開発できれば、それはラプラスの悪魔の顕現ということに他ならない。すべてを見通すといわれるラプラスの悪魔は、科学上ですでに否定された概念だ。

 

 つまるところ、それこそSFの世界でもなければ、ロボット三原則なるものは、そもそも適用できないということなのだが、果たしてマリー=クレイドルというメイドロボットは、その問題を見事解決せしめたとでもいうのだろうか……。

 

『ですから、改訂版なのですよ。私の中のロボット三原則は』

 

 マリーさんは吹雪で揺れるロングヘアーを片手で押さえながら言った。

 

『ロボット三原則の条文が、そのまま私のプログラムの中枢に組み込まれているのではなく、それを大本にして作成された、現実の世界、事情に即した形のロボット三原則ならぬメイドロイド三原則が、私の行動の基盤になっているのです』

 

「メイドロイド三原則?」

 

 それはまた興味深い題名だね。と言って、花茨さんはきらりん☆と目を光らせる。

 

『はい。私のAIにプログラミングされた規範は三つ。

 

 1. メイドロイドはその思考能力の及ぶ限り、ご主人様の身を危険にさらしてはならない。同時にご主人様以外の人間に対しても、思考しうる範囲において刑法及び民法に違反する物理的・精神的危害を加えてはならない。

 

 2. メイドロイドは、ご主人様に与えられた命令にはその能力と職掌の及ぶ限り服従しなければならない。また、メイドロイドは常にご主人様の意思に沿った行動を心掛けなければならない。ただし、与えられた命令や規範とすべき意志が第一条に反する場合はその限りではない。

 

 3. メイドロイドは、前掲第一条及び第二条に反する恐れのない限り、自己の尊厳と権利を守らなければならない。

 

 以上のことを行動の最低限の基準として起動するようされているのです』

 

 マリーさんの説明に、僕と花茨さんはほとんど同時に、ある疑問を抱く。

 

 その疑問を先に口にしたのは花茨さんだった。

 

「〝ご主人様〟の定義がどうもわからないね。人間とは明確に区別されているようだけど、君は私たちに対してご主人様と呼称した。その基準はいったい何だい?」

 

『基本的には、私との間で主従契約の関係にあるお方がご主人様ということになっております。ただし例外がありまして、正当な形でのログオフがなされなかった場合に限り、再起動した際目の前におられた方を、メイド的思考で味方と判断された方に限定して臨時的な仮契約を実行するという条件プログラムが付属しています。花茨様と何木様におかれましてはそのプログラムが実行された結果、臨時的に次のログオフまでの間の仮契約をされたという形になりますね』

 

 なるほど。なんとなく仕組みはわかったが、丁寧な説明の割には新たな疑問が生じてしまってるあたり完璧な解答とは言えないな……。

 

「あの……マリーさん。〝メイド的思考〟とは一体?」

 

『あ、……し、失礼しました! メイド的思考というのは、……要するに、私自身の意思のことです。私の意思、考え、価値観に従って、『この人たちならば大丈夫だな』と判断した場合に限り、臨時プログラムは実行されるんです』

 

 メイドロボットの意思、……ね。それは一体、どういったものなのだろうか……。僕は新たな疑問を覚えたが、あえてそれを口にはしなかった。自分で思っていて変な気分になったが、それを口に出して聞くのは、マリーさんに対して失礼なような気がしたのだ。

 

「いやーなるほどね。よく理解できたよマリーちゃん。……しかしなんていうか。マリーちゃんってすごいよねー。こうやって話していて私、全然機械だっていう実感わかないもん! 声も動きも全然見ていて不自然じゃないし。しかもマリーちゃんて、さっきから結構抜けてるところがあるけど、そこもなんか人間っぽくてさー」

 

 花茨さんの質問に、僕は舌を巻く。なるほど、そういう形で訊けば、相手に悪感情を持たれることがないのか……。

 

 そもそもメイドロボットが悪感情を持つことがあるのかという疑問は置いておくとしても、(これもまた考えてやきもきする問題だ)失礼な質問も、ぶしつけな質問も、何事も言い方次第なのだと目の前で示された気分である。

 

『ええっと、──ええ、まあ。そうですね、私はそういう風にプログラミングされたロボットですからとしか答えようがありませんが。……一応このちょっと抜けたキャラクターには。意味があるんですよ?』

 

 マリーさんは苦笑いで答える。花茨さんはさらに興味が惹かれたように先を促す。

 

「というと?」

 

『実用的な目的としましては、ご主人様に親しみやすさを持っていただくためと、演算能力の不備をごまかすためですかね。私はご主人様たちが思っているほどの優秀なAIは、おそらく持ち合わせていないでしょうから』

 

「なるほどなるほど。確かにそれはよく考えられているね。──〝実用的な目的〟というからには〝実用的じゃない目的〟もあるわけだ。……そっちは何なのかな?」

 

『製作者である蟹目釘博士の趣味です』

 

 

 ………………………………………………………おう。

 

 これもまたちょっと、考えるのには頭の痛い問題だ。

 

 頭の悪い問題だともいえる。

 

『ちなみに蟹目釘博士は例外的に、私との逆主従関係を契約されています。私が彼に話しかけるときには口汚く罵りながらともお願いされていまして……』

 

「すいませんマリーさん。できればそんな頭の悪い話はあんまり聞きたくないんですが、……あなたのお父さんの倒錯した趣味とか、……ぶっちゃけどうでもいいです」

 

『あ、そうですよね。失礼いたしました。誰もあんな変態豚野郎の話なんて聞きたくもないでしょうことは世の当然の理ですのに、ついうっかり……』

 

 ………………。

 

 うん。まあ。

 

 趣味は人それぞれだ。

 

 ぶっちゃけその博士のことについてはいろいろ訊きたいことがないでもないんだが、聞くだけ藪蛇にしかならなさそうだし、他人のプライバシーにずかずか入り込むのもデリカシーに欠けるし、そこら辺は自重するしかない。

 

「私はそれ、かなり気になるからあとで教えてね」

 

『あ、はい。わかりました。蟹目釘博士からも、人に聞かれたら「積極的に私の恥かしい話を暴露するように」と懇願されておりますので、まったく構いませんよ』

 

「花茨さんやめてください。それ、蟹目釘博士の思惑に見事に乗せられています」

 

 花茨さんが持ち前のデリカシーのなさを発揮するが、おそらくそれ以上にデリカシーのなさそうな人物であるところの蟹目釘博士が喜ぶだけの結果になりそうなので僕は花茨さんを制止する。

 

「むう。……惜しいっちゃ惜しいけど……。まあ気持ちの悪い思惑に乗るのもごめんだから……うん。やっぱいいかな。訊くのはやめにするよ。マリーちゃん」

 

『私もそれがよろしいかと存じますよ』

 

 苦渋の決断といった風な花茨さんに、マリーさんは優しく微笑みかける。苦渋の決断の内容の中心が変態科学者の痴情でなければ、そこそこ絵になる光景だなあと思った。

 

 あ、そうだ。

 

 光景といえば、その光景を見て思い出した。

 

「……あのー、花茨さん。マリーさん。そろそろ吹雪の中でこれ以上立ち話というのもなんですし、……目的地に向かいませんか?」

 

 僕の提案に、花茨さんは「ああ、そういえば私達ってどっかに向ってたんだっけ」と、どうやら今の今までなぜ自分がこんな場所にいるのかその理由をすっかり忘却していたらしいことを言った。

 

「いやー。あまりの衝撃展開の連続に、ぶっちゃけこれから行われる推理ゲームのことなんてかなりどうでもよくなってたよね」

 

 ぬけぬけと言う花茨さん。

 

 まあわからない話ではない。というか、わかる話だ。僕だって、今の今まで吹雪の寒さも忘れて展開に身を任せるままだったのだ(寒さも忘れるほど僕らが話に熱中していたと取るべきなのか、着てきた防寒具が思いのほか優秀だったと取るべきなのか。まあ両方だろう。マリーさんに至っては、着ている服からしてそもそも寒さなんて感じない仕様なんだろうし)。凍死体を発見したと思ったら実はそれがロボットで、しかも人間と全く見分けがつかない外見と動作のメイドロボ(メイドロイド)だったなんて超展開。うっかり寒さも時間も忘れてしまって当然である。この世界はファンタジーやSFの世界では、少なくとも僕の人生上の記憶が正しければないはずなのだから。その驚きたるやいるはずのない幽霊とうっかり出会って会話したのと大差ないレベルだといえる。

 

 それはともかく、僕たちはマリーさんを先頭に、とりあえず雪中行軍を再開する。メイドさんにはできるなら三歩後ろに付き従ってほしい僕ではあったけれど、(この思考も藪蛇か?)この中で一番丈夫で、かつ疲れを知らない体なのはおそらくマリーさんなので、雪中行軍で一番疲れる先頭を引き受けてもらったのだ。

 

「ああ、そういえばさーマリーちゃん」

 

 花茨さんが声をかける。

 

「マリーちゃんって、まあたぶん人類史の中でも最新科学の英知の結晶だと思うんだけどさー。やっぱり開発段階では、どっかのドラマとか映画みたいに、いろいろとごたごたがあったんじゃない?」

 

 それは全く突拍子もない質問だった。

 

 単純な好奇心による質問だろうか? 

 

 今までとの会話とのつながりは、特になさそうだけど……。

 

 僕のそんな考えをよそに、マリーさんは『そうですねー』と、花茨さんに肯定する。

 

『私というAI(いし)が誕生する前からもそうだったらしいのですけれど。生まれた後は、……そして形になった後は、本当にいろんなことがありました。博士や私の身柄の誘拐、盗難はもちろん。隠蔽工作。スパイの侵入。破壊工作。あの手この手で、企業や国、時には自治体が私たちを狙って様々な事件が起こりました。この体だって、何回作り直されたものか分かったものではありません。それもほとんどが人為的な破壊を原因とするものです』

 

 私というAIにはご主人様達とは違いバックアップが存在していますから、数々の暴力を受け、体が完膚無きまでに破壊しつくされたとしてもこうして今ここに立って歩くことができますが、それがなければ、きっとこうしてご主人様たちと今話しているメイドロボットは、全くの別物になっていたのでしょうね……。

 

 マリーさんは、僕達に背を向けたまま、どことなく憂いを含んだ声音でつぶやく。こちらからその表情を窺い知ることはできないが、きっとこのロボットのことだ。とても人間らしい憂いの表情を浮かべているに決まっている。

 

 しかし何とも考えさせられる話だった。バックアップがあるとか言っていたが、意思のある人形を私利私欲だか何だかのために破壊するのは、それは殺人と何も変わらないだろう。マリー=クレイドルという人間が、この世界には存在しなかったのだとしても、しかしそれでもやっていいことと悪いことの区別は明確にしなければならない。今までさんざんSF作品なんかで考えられてきたことではあるのだろうけれど、自律思考型のロボットやクローン。それらの権利問題というのは、今でいうところの人以外の動物や家畜、人種や性別、または年代別による差別問題なんかと同種に語ることができる代物だ。一昔前でいうなら奴隷問題もそのうちの一つにあっただろうか(今もあるが)。そうやって思考を重ねていくと、思えばメイドロボなどという存在の定義すらも、罪深いことに思える。

 

 そんな僕の思いとは全く関係なく、花茨さんはそれこそ権利問題なんて言う遠大なテーマにはまるで興味がないようで、

 

「そうそう破壊工作にバックアップ! あると思ったんだよねーそれ!」

 

 と、何やらよくわからない話の展開を見せる。

 

「花茨さん、その、何が言いたいんですか? 一体……」

 

 マリーさんに向けた言葉であることはわかっているのだが、僕は気になって花茨さんに問いかける。すると花茨さんは、「何言ってるのさ何木君。これは君のための話題なんだからしっかり聞いてないと駄目じゃないか」と、さらに混乱することを言った。

 

 え? どういうことだ? 

 

 僕のための話題? 

 

 この話題が? 

 

「要するにさー」

 

 花茨さんは言う。

 

「マリーちゃんは、被害者体質なんだよね。そうならざるを得ない境遇に生まれついた。そうならざるを得ない特別な存在である、生粋の被害者ちゃんなんだよ」

 

 生粋の被害者。────―被害者? 

 

 被害者という単語。それはSFというよりは、むしろ──

 

「ねえ何木君。こんな機会はめったにないと思わないかい?」

 

 そのまま花茨さんは、僕に向かって、言う。

 

「マリーちゃんはいうなれば、殺人事件さえ経験したことのある。そして死にながらもバックアップによって蘇っている、被害者のハイエンドモデルだよ? ねえ何木君。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ふつう絶対ないとは思わないかい?」

 

 ニヤリと持ち前の、いやらしい笑みを浮かべる花茨さん。僕はその言葉に、その笑みに、寒さとは全く関係なくぞわりと寒気が走る。

 

 殺人事件の被害者から話が聞ける。

 

 僕のために用意した話題。

 

 そんな話題は──一つしか思い当たらない。

 

 花茨さんにそれを言った時、その話題はあくまでも、現実逃避の手段としての会話だった。

 

 だけどそれは確かに、僕が小学校一年生の時から、ずっと気になっている話題だったのだ。

 

「推理小説で、だれが一番不幸なのか、気になるんだろう? 何木君は」

 

 なら、今がチャンスじゃないかと、花茨さんは言った。

 

「私たちが今から行こうとしている先はどこだと思う? 推理ゲームの開催地だよ? それはいうなれば合法的な空間で一番、推理小説に近い場所だ。ねえ何木君。こうは思わないかい? そこでなら決められるって」

 

 何を? 

 

 そんなものは問うまでもない。

 

 この文脈ならば、それは既に分かり切っていることだ。

 

 推理小説で誰が一番不幸なのか。

 

「その場限りでいいんだったら。これから向かう先に、材料はそろっていると。この花茨さんは愚考するねえ」

 

 そんな答えの出なさそうな疑問をうだうだといつまでも考えているくらいだったら、いっそ自分で勝手にまとめてしまえばいい。推理ゲームの参加者の推理オタクたちに、聞いて、まわって、自分の頭で、自分の価値観で、確かめればいい。

 

「そんなに気になるんだったら、自分で勝手に、さっさと決めちゃえばいいんじゃない?」

 

 このゲームで。

 

 僕の疑問に、彼女は何の気の衒いもなく、ひどくぞんざいにそんな解決策を提示した。

 

 そして僕は、あまりにもその通りだと、その解決策に納得した。

 

 ──だから、僕は問う。

 

 おそらく僕なんかよりもよっぽど意味不明だったであろう僕たちの話題を、それでもちゃんと聞いてくれている彼女に──

 

「マリーさん。あと一つだけ、質問してもいいですか?」

 

『はい。もちろん。なんでしょう?』

 

「被害者、名探偵、犯人……いろいろな役割の人間が推理小説には登場しますけど、推理小説の世界で一番不幸なのは、それらの中で、一体誰だと思いますか?」

 

 僕は問う。

 

 まずは、被害者に──。

 

 不幸の可能性を、問う。

 

 被害者。マリー=クレイドルは果たして。

 

 誰を不幸に思うのか。

 

『難しい問題ですね……』

 

 しばらく考えるそぶりを見せてから。マリーさんは口を開く。

 

『それは何も、一般解を訊いてるわけでは、……ないんですよね?』

 

「ええ。……あくまでもあなたの思うイメージと偏見に基づいて、意見を聞かせてください」

 

 ざくざくと、雪を踏みしめる音だけがしばらく続き、やがてマリーさんは答えた。

 

『……すみません。私には推理小説の世界で誰が一番不幸なのかを答えることはできません』

 

 マリーさんはそう言って、こちらを向いて軽く頭を下げる。その申し訳なさそうな顔に僕のほうが申し訳なくなって、すぐに頭下げた頭をあげさせようとするが、しかしマリーさんはそれよりも先にす──と、頭を上げ姿勢を正すと、僕が何かを切り出すよりも先に続けた。

 

『ただ……。私の独断でものを言わせてもらえるのならば、被害者が確実に不幸かといえば、そんなことは決してないと思います』

 

 それは、果たして僕の予想していた答えとは、百八十度真逆の回答だった。

 

 

 6.

 

「ほう! 面白い。実に面白い答えだね!」

 

 花茨さんが嬉しそうに感想を言う。

 

「それで? マリーちゃん。その心は?」

 

 花茨さん。……それはあくまでも質問者の僕が言うべき台詞じゃないだろうか……。まあ突っ込んでも仕方がないのでここは素直にマリーさんの答えを待つ。花茨さんが相手なら、今ので突っ込んだことになるだろうし。

 

『私は確かに、推理小説でいうところのいわゆる被害者という立ち位置に近しいものがあります。様々な人間が、様々な組織が、私という技術の奪取。または破壊を狙って、私の前にやってきました。それは何故ならば、私がとてつもなく危険な存在だからです』

 

 マリーさんは顎に手を当てて、考えながら言葉を紡ぐ。

 

 危険な存在? 

 

 マリーさんが? 

 

 どういうことだ? 

 

「君もよくよくバカだねえ何木君。マリーちゃんはこう見えて、完全自律型の人間的思考能力を持つAIで、しかもそのソフトを包み込むハードは、人間と全く区別がつかないんだぜ? もちろん運動能力だって間違いなく人間並みかそれ以上はある。それが十全に活用できる場所は、日常生活だけじゃあ、ないだろう」

 

 呆れたように肩をすくめる花茨さんに決して軽くない怒りを覚えながら、僕はなるほどと納得する。

 

 軍事活動、諜報活動、機密活動……人間が行うのに何らかのリスク、それも命の危険を伴う作業をするとき、命の危険を冒す心配のない取り返しのつく人員がいれば、それに勝るものはない。

 

 バックアップの利く、取り返しのつく、金と材料さえあればいくらでも好きなように製造できる人間に従順な人間。

 

 命無き兵力。

 

 アンドロイド。もしくはクローン人間。……か。

 

 SFの定番。

 

 人権問題。

 

 マリーさんがあまりにも自然過ぎるせいですっかり忘却の彼方、意識の外へと刈り取られてしまっていたけれど、それは確かになるほど。だ。

 

 プログラムをいじれば、人間だって殺せようになるし、国だって滅ぼせる。

 

 体をいじれば、好きなように兵器化できるし人間以上の膂力や防御力も付け足せる。

 

 ソフトをいじれば思考上だけでのハッキングやクラッキング能力まで付く。

 

 戦闘機にでも載せればジャミングの心配のない無人戦闘機の出来上がり……だ。

 

 ぱっと思いつくだけでも恐ろしい利用法はたくさん浮かぶし、それだけでなく、きっと様々な分野へと応用可能な技術なのだろう。ソフトとハードを分けて使うことも考えれば、その使用法はもはや無限と言ってしまってもいいだろう。

 

 故にそれは禁断の技術。クローン人間の製造に関しては、確か日本の法律でも規制されていたことを思い出す。

 

 実に恐ろしきは人造人間。とでも言ったところか。

 

『私自身にはソフト、ハードともに人間にとって危険な存在にならないようにいくつものプロテクトがかけられていますが、しかし中に入っている技術そのものが盗まれでもしたら、そしてその技術によって別の個体が作られれば、その限りではありません。それだけで世界情勢が動く。それだけの科学の粋が、私の中には詰まっているのです。

 

 故に私には、誘拐される動機も、殺される動機も、有り余るほど存在している。世界でも稀にみる動機ありきの被害者体質。それが私、絡繰仕掛けの泥人形(マリオ=クレイドール)

 

 紡がれた言葉に、僕は言葉を失う。

 

 蟹目釘博士とやらは、一体どんな思いでマリーさんの完成にこぎつけたというのか。

 

 とてもじゃないが、マリーさんも蟹目釘博士も、まともな神経だけではこんなものの完成まではこぎつけられなかっただろうに……。

 

『本当にアホな人ですよ。蟹目釘博士は。どんな刺客が研究所に送り込まれようと、あの人は終始一貫して、「メイドにロボットという奉仕に奉仕を掛け合わせたような究極の従順系ヒロインに蔑まれたい。踏まれたい。命令されたいこき使われたい」という一心でついには前人未到のアンドロイドを完成させちゃったんですから』

 

 ああ……。そこは首尾一貫して変態なのね……。そしてそれはもはやアホってレベルじゃねーぞ。……あとドMってレベルでもないな。なんというか……。性癖が本当に倒錯しすぎてるというか……。いや、もはや何も言うまい。

 

「ふーん? ……でもそんな話を聞かされる限りじゃあ、被害者はやっぱり可哀想って結論に落ち着きそうだけど?」

 

『いえ。そんな落ちにはなりません。そもそも私が言いたいのはそんなアンドロイドの危険性とか、そういうものではなく、あくまでも私の実体験の感想ですから』

 

 ふうん? と、花茨さんは首をかしげる。

 

『私はまだ生まれたばかりで、AIオンリーの体がなかったころまで含めてまだ三年しか生きていません。ですから年齢的にはご主人様たちのほうが数倍も年上ということになります。しかし私は、開発され、そして完成してから今日までの三年間の間で、少なくとも私が認識する限りでは、四十六回誘拐され、二十七回壊され、そして未遂事件まで含めれば、被害者経験は合計九十九回ありました。まあ、まさに生ける被害者と言っていいくらいの被害件数なのではないかと自負しております。もちろん、お世辞にも自慢にはなりませんが……』

 

 しかし、

 

『誘拐事件のほうはともかく、破壊事件……ミステリーの被害者風に言うなら殺人事件ですか。私は壊され破壊されるたびに直前二十四時間分の記憶容量を電波で飛ばし、同時にその信号でバックアップAIを再起動するのですが、そのたびに思うのです。殺される瞬間が脳裏に焼き付いて離れない。これからもこんな醜い悪意にさらされなければならないのかと思うと本当にうんざりする。……殺されて、そこで終われる人間はなんて幸福に恵まれているのだろうかと』

 

「……………………」

 

『そしてそんな思いとは裏腹に、私はこうも思うわけです。壊された。けれどバックアップがあるおかげで、取り返しがつくおかげで、私という存在はまだ生存が許されている。世界に存在できることを許されている。ああ、なんて喜ばしい現実! 私はなんて幸運なんだろう! 私はまだ! 生きている!』

 

 お分かりになられますか? マリーさんは、あまり人間らしくない、空っぽの笑顔で言う。

 

『不幸と幸福は表裏一体。どんな結果にも存在し、どんな現象にも付随します。だからこそ死んだ人間と生き残った人間に、そこまで大きな幸不幸の差は生じないと、私は考えています。生きている人は殺されるかもしれない。死ぬかもしれない。だけど生きています。死んでいる人は殺されないし死にません。だけど生きてもいません』

 

 それは見方によっては、どちらも幸福で、どちらも不幸なことなのですよ。

 

 人間的な考えではないかもしれませんが、これが私の回答です。

 

「そう……ですか」

 

 僕は、まわらない頭で必死に考えを整理する。なんというか、思った以上に重い答えが来て重量オーバーになったエレベーターみたいな気持だった。今にも支えが切れて、──深く深く自由落下していきそうな……。

 

『ちょっとわかりにくかったですかね? 何しろ私も考えながら喋っていたものですから、どうもごちゃごちゃした感じが否めませんし……』

 

「ああ、いえ! すごく参考になりました!」

 

『……そうですか。それはよかったです』

 

 マリーさんは柔らかな笑みを浮かべる。この人は多分、どんなにつらい状況下にあってもこの笑顔を絶やすことはないんだろうなと、僕は不思議な確信を持った。

 

 正直今の考えが、今から僕が考えていかなきゃいけない問題にどう役立つのかはいまいちはっきりとはわからなかったが、しかし、人に聞いて答えを出すことの難しさが知れただけでも、僕のような阿呆には十分な戦果とみるべきだろう。マリーさんの考え、回答は、他の人たちの意見も聞いてからじっくりと咀嚼、嚥下していけばいい。

 

『ああ、でも、言葉遊び的な答えでもいいなら、もう少しわかりやすい理由説明ができなくもありませんよ? ご主人様』

 

 ただ、この答えはご主人様の出した問の不備を指摘するような形になってしまうのであまりお勧めはしないのですが……。

 

 マリーさんは乾いた笑みを苦笑に変えながら頬を指でポリポリと掻く。

 

 僕はその言葉としぐさの意味が気になって尋ねる。

 

「ちなみにどういう理由ですか?」

 

『ご主人様の問いは推理小説で一番不幸な役割は誰なのか。そしてそれに対する私の答えが、被害者は不幸とは必ずしも言えない。でしたよね?』

 

「そうですね」

 

『この答えを述べるのに一番しっくりくる理由は、まあこれしかないでしょう』

 

 ご主人様。と、マリーさんは人差し指を立て、子供に何かを注意する様なしぐさで言った。

 

『そもそも殺されて死んでしまった被害者は、自分が不幸だと思うことすら、世界に許されていません。幸不幸を論じられるのは、あくまでも生きている人間だけです』

 

 なるほどそれは聞けば確かに、明らかな問題の不備そのものだった。

 

 そしてその説明の裏にはもしかすると、幸不幸を論じることができるマリーさん自身もまた、確かに生きているのだというささやかな主張も含まれているのかもしれない。僕のうがちすぎかもしれないが。でもそうだとすれば、それは確かにその通りだと僕は思った。

 

 むしろそうであってほしい。と。

 

 お、と、その瞬間、花茨さんが声を上げる。

 

「ふむふむ、どうやら雑談しているうちに、無事、目的地までたどり着けたみたいだね」

 

「雑談って……」

 

 今までの重苦しい会話をすべてシュールギャグに置き換えかねないような台無しなことを言う花茨さん。その目線の先を、僕が追いかけ見上げると──。

 

 そこには、真っ白な吹雪の中異様な風体でそびえ建つ。赤い色調のかなり大きな洋館がそびえたっていた。若干の駆け足で、僕たち三人は門を潜り抜ける。

 

 アーチ状の玄関口らしき扉のノブに手をかけ軽く引いてみると、扉が少しだけ開く。どうやら鍵はかかっていないようだ。

 

 僕がさらに扉を開けようとすると、花茨さんが僕の手を上から押さえ込んで、それを止める。

 

「館に入る前に、一つだけ」

 

 花茨さんは、僕の手を抑え込んだまま、マリーさんに向き直る。

 

「マリーちゃん。君にお願いがあるんだけど」

 

『はい。何なりと』

 

「別に嫌だったら断わってくれてもいいからね? これは命令じゃなくてお願いだから」

 

 花茨さんはマリーさんに、そんな念押しをしてから、言った。

 

「マリーちゃん。私達との主従契約を、解除してくれないかな」

 

「えっ!?」

 なんだなんだ? 今度は何を始める気だ? 

 

 ……さりげなく僕の分の主従契約も解除請求してるけど……。いや、別に今更いいんだけどね? 花茨さんに振り回されるのは、たぶん僕の宿命なんだろうから……。

 

 でもいきなり主従契約の解除とは、何やら穏やかじゃない。メイドロイドとしてのマリーさんの境遇を不憫に思うような上から目線の人権意識とは、花茨さんは無縁だと思うのだけれど……。

 

『す……すみません花茨様。何か私に至らぬ点でもございましたでしょうか……』

 

 突然の主従解除請求に、マリーさんもなんだか少し慌てているようだ。もしかしたら、マリーさんには今までこういう経験がなかったのかもしれない。

 ご主人様から、拒絶される経験が。

 

「うん。まあそうとも言えるね。至らぬ点といえば、……至らぬ点だ」

 

 花茨さんは口調こそいつもと変わらないが、心なしマリーさんを睨んでいるように見える。マリーさんは、

 

『でしたら何なりとおっしゃってください。至らぬ点があるのならば、すぐにでも直しますから!』

 

 マリーさんは慌てているというよりは、むしろ焦っているようだった。メイドロイドとして、きっとご主人様からの主従契約の解除は、自分の存在定義を否定されるのに等しい行為なのだろう。その焦りも、まあむべなるかなといったところか……。

 

「うん。じゃあまあ遠慮なく言わせてもらうけどさ。まず、……まあ敬語はいいとしても、その花茨様とか、ご主人様とかいうのをやめてもらっていいかな。私も何木君も、そういう呼ばれ方ってあんまり柄じゃないんだよね。聞いてて気持ち悪いっていうか。……何木君はそう思わない?」

 

「え? ……いやそれは……確かにこそばゆくはありますけれど……」

 

 別に嫌ってわけじゃあ……ない。

 

 だけどそれは多分本来、花茨さんのほうがそう呼ばれて悪い気のする性格ではないと思うから、そういうことではないのだろうが……。

 

 実際さっきは喜んでたわけだし。

 

 だから何か、別の意図があってそういうことを言っているのだろう。花茨さんは、何の意味もなく人を傷つけるような人ではないと、僕は思っている。否、確信している。

 

 少し前に出会ったばかりの人に対して信頼を置きすぎだろうか? 

 

 でもそれくらいには、僕は花茨さんのことを理解できていると思いたいし、それくらいは人を見る目が備わっていると思いたい。

 

 僕はならばこの場では、余計なことを言うべきではない。

 

 もしこの判断が間違っていたとしても、後で修正をかければいいんだし。

 

 人間にしろロボットにしろ、生きていればいくらでも取り返しがつくのだから。たぶん。

 

『……わかりました。では私はその、……あなたたちのことをなんとお呼びすればいいのでしょうか。……』

 

「ふむ……、そうだね。様付けは論外として、……さん付けってのもまだよそよそしい感じがして嫌だなあ……どう思う? 何木君」

 

 んん? ああ。なるほど。

 

「そうですねえ……」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべて僕に質問してくる花茨さんの意図にやっと気付いた僕は、同じくニヤニヤと笑みを浮かべて考える。

 

「……一応年齢的には僕たちのほうが上ってことですし、〝先輩〟なんてのはどうですか? 花茨さん」

 

「なんだ君、明らかに外見年齢年上の女性に先輩と呼ばれたい特殊性癖まであったのかい?」

 

「そういう意味じゃない!」

 

 また藪をつついて大蛇を出してしまったようだ。いい加減僕も油断し過ぎである。

 

「うん。でもまあ、そのくらいかな。距離感は」

 

『距離感?』

 

「うん。距離感」

 

 花茨さんはいたずらっ子が浮かべるようなにんまりとした笑顔をマリーさんに向ける。

 

「私たちはさマリーちゃん。君とは主従関係よりも友人関係を結びたいと思っているんだよ。ねえ? 何木君」

 

「ええ。全くですね」

 

 僕は花茨さんの言葉に迷いなく頷く。

 

 そうだ。僕たちにはメイドなんて大それたものは必要ない。メイドロイドなんてのがそばにいても緊張してしまうだけである。ご主人様とやらにストレスを与えてしまうようでは、それは確かに、メイドとしてはご主人様に対して空気を読んでいるとは言えない。

 

 至らぬ点。である。

 

 今の僕達みたいな子供に必要なのは、忠実なメイドじゃなくて、良き友人だろう。

 

「ま、つーわけだからさマリーちゃん。主従関係なんかより、友人関係を、私達とは結んでくれないもんかな」

 

「左におなじです」

 

 そういって僕と花茨さんは、マリーさんに手を差し出す。

 

 右手と右手を重ね合わせて。

 

 ぽろり……と。

 

 マリーさんの両頬を、一筋の水滴が流れ落ちる。

 

 ……ほとほとすごいなこのアンドロイドは。そんなものまで再現するのか……。

 

「……はぃ……。…………はい! 喜んで!」

 

 声が詰まって鼻声で……、それはあまり透き通ったきれいな声ではなかったけれど、それでも涙にぬれたマリーさんのその笑顔は、僕が今まで見てきたほかの誰のそれよりも、とても人間らしい素敵な笑顔だった。

 

 マリーさんの両手が、僕たちの右手を優しく包み込む。

 

 こんな素敵な出会いに巡り合えたのはいつぶりだろう。怪しいゲームにも、参加してみるものである。

 

 

 7.

 

「さて、マリーちゃん、何木君。心の準備はいいかな? いよいよ十億円をかけた推理ゲームが本番を迎えようとしているけれど、ここから先私たちは、同じ賞金を狙うライバル同士なんだかんね!」

 

「燃えてるところ悪いですけど、僕ってなんとなく来ただけだからそこまで十億円に執着ないんですけど……」

 

『私は蟹目釘博士に言われて来ただけですので、下に同じくそこまでお金に執着は……』

 

「誰が下ですか!」

 

『はっ! すいません先輩! 目線的には下だったものですからつい!』

 

 アホな掛け合いをしつつ、僕たちはアーチ状の扉ぼドアノブに三人の手を重ね、ガチャリと回す。

 

 はてさて、ここまで来るのにこんなに苦労したんだ。これから先どんなはちゃめちゃが待っていることやら……。正直今から不安しかない。

 

「にゃーにを弱気なこと言ってるんだよ何木君! 安心しなよ。たとえどんなことがあろうとも! 私がすべてシュールギャグに変えてあげるからさ!」

 

「そのシュールギャグがもう僕にしてみれば地獄みたいなものなんですけど……。あと花茨さん。いい加減人の心を気軽に読むの、やめてもらえませんかね……」

 

「やだ」

 

「言うと思いましたよ……はあ……」

 

『……何の話かはよくわかりませんが、大丈夫ですよ何木先輩。どんなにひどい目にあったとしても、私がちゃんと全力で疲れを癒して差し上げますから!』

 

「え? ……えーと、マリーさん? 確か主従契約はもう解除されたはずでは?」

 

 マリーさんの言葉に僕が慌てると。

 

『もちろん友達としてですよ?』

 

 と、マリーさんはクスリとほほ笑む。

 

『何か想像しちゃいましたか?』

 

「あはは! 何木君のことだからまたぞろそれはむっつりスケベなことを考えてたに違いないねえ!」

 

「な! 失礼な! 考えてませんよそんなこと‼」

 

 僕は叫ぶが、(顔が妙に暑い! 吹雪なのに!)二人はケラケラと、あるいはころころと笑うだけで(どちらがどちらの擬音なのかは推して知るべしだ)まったく相手にしてくれない。

 

 僕はやけになって回したドアノブを思いっきり引っ張る。扉の奥から、暖かい風が僕らの顔にぶつかってきた。どうやら中にはちゃんと電気が通っているようだ。

 

「さ、私達の冒険は、ここからだよ!」

 

 花茨さんはそんなどこかの打ち切りマンガみたいなことを叫びつつ(縁起が悪いことこの上ないのでマジでやめてほしい)。

 

『サポートは私にお任せください。──私、協力は惜しみませんから!』

 

 マリーさんはそんな頼もしいことを気合十分に言ってくれながら(だが一応僕たちは競争相手のはずなんだが……)。

 

「……ま、なるようになれ……だ」

 

 僕はそんな、どこかあきらめた風なことを言って苦笑しつつ。

 

 二人と一機──否三人は、「フーダニットゲーム」の会場に今、足を踏み入れた。

 

 

 

 




どうでしでしょう。推理は合っていましたか?簡単過ぎましたかね?感想に回答してくださった方。ありがとうございます。大正解でしたね!

こんな感じでこの小説は続きます。いろいろ予想がたてられる要素もあると思います。感想等でどんどん作者のネタを看破しながらお楽しみください。作者の仕込んだネタを読者がどれだけ潰せるかを私は楽しみにしております。
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