64の頃凄く遊んだしwiiuのバーチャルコンソールも買って遊びました。
今から待ち遠しくてたまりません。みなさんもそうだったりしません?
「う〜ん、やっぱりピンとくる子がいないなぁ……」
「まぁまぁ、まだ3番道路の途中だしゆっくり探していこう?」
「うん……」
3番道路。
エンジンシティから西側に伸びる道で、ワイルドエリアや1番、2番道路が草むらや木が見える場所であった反面砂地が少し多くむき出しの岩も少し多いのが特徴の道路だ。最も、今は色んな人で賑わっているので岩が見せる無骨な感じがだいぶ薄まっているみたいだけど……
そんな3番道路には図鑑によるとココガラやワンリキー、ヤクデ、ヤブクロン等、見たことある子から初めて見る子、次のくさタイプに有利なほのおやどくタイプのポケモンの影がちらほらと見える。勿論色んなポケモンとちゃんと触れ合ってるし、ユウリ自身も楽しそうに撫でたり遊んだりしてるけど……
「なんだろうなぁ……なんかこう、ほんとに感覚的なんだけどこの子と冒険に行きたいって思う子がなかなか……うぅ〜、ホップもフリアもなんでそんなにポンポン新しい仲間捕まえたり出会えたりするの〜……」
「こればっかりは運としか言えないからなぁ」
特にラルトスとの出会いなんて普通はまず無いような出会い方だったし、捕まえ方も凄く珍しい方だ。いわゆる絆ゲットと言われる方法で捕まえることに拘る人もいるにはいるみたいだけど……バトルじゃないと産まれない絆とかもあるし一長一短ではあると思うんだけど。
「ちょっと休憩でもする?」
「うん……そうだね。喉も乾いちゃったしお腹も空いて来たかも」
「時間もいい感じだしね」
見上げてみるとこちらを見下ろす太陽がギラギラと輝いて正午をすぎたことを伝えてくれる。ユウリから微かに聞こえる音は頑張って隠そうと本人が頑張っているので気付かないふりをしておく。
「えっと、どこか広く昼食の準備できそうな場所……」
「あっちの方とか広そうだけど……」
少し横に逸れたところに開けた場所があり、そこには戦っているトレーナーが特には見当たらない場所だった。人が少ない穴場なのかもしれない。
「よし、じゃああの辺で……」
『まって〜アマリン〜!!』
「わぁ!?」
「アマ〜!!」
キャンプの準備に取り掛かろうとしたところでユウリに向かって赤く丸い物体がぶつかってくる。思わず抱きしめてしまうユウリはアワアワとしてるけどその赤く丸い物体……ポケモンから香る甘い匂いに少しずつ落ち着いていく。
「すごく甘い匂い〜……」
「アマカジ……?」
「すいませ〜ん!」
その赤いポケモンの正体を確認しつつ軽く撫でたりしていると遠くから聞こえる女性の声。アマリンって言っていたけどこの子のニックネームか何かだろうか。
「ごめんなさい、うちのアマリンがご迷惑を……」
「いえいえ、可愛くていい匂いのする子ですね」
「アマカジのアマリンって言うの。今ちょうどポケモンキャンプ中で遊んでいたんだけど、ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたいで」
「元気があって可愛らしいじゃないですか」
「そう言って貰えると嬉しいわ。ありがと」
抱きしめていたアマカジのアマリンを渡しながら会話する2人。女性の発言通り少し遠くには彼女が建てたと思しきキャンプがあり、そこにはウールー、ヌイコグマ、ナゾノクサ、ワンパチ、ロコンの姿が見えた。この人の手持ちの子だろうポケモンたちはボールを追いかけて遊んでいた。
「もしかして2人ともジムチャレンジャーだったりするのかしら?」
「はい。今1つ目のターフタウンに向かってる途中で……」
「あとは私の新しい仲間探しも兼ねて━━━」
ぐぅぅぅぅ……
「あ、えとえと……」
突如響く空腹を知らせる大きな音。さっきは気付かないふりをしたけど今回ばかりはさすがに聞き過ごせないくらい大きくて。頬を少し赤く染めながらユウリが俯く。
「す、すいません……」
「あはは、いいのいいの。そうだ!ちょうどこれからお昼ご飯を作るところだったの。良ければ一緒にどうかしら?」
「え、いいんですか?」
「でも材料とかは……」
「私この辺でよくキャンプ開いててそのまま何日もいることがあるから材料はいつも多めに持ってきてるの。そこは大丈夫よ」
笑顔で提案してくる女性に1回顔を見合わせるボクたちは……
「「ではお言葉に甘えて!」」
「ええ!私はミク。よろしくね」
ありがたくその提案に乗ることにした。
☆
「出ておいで、ラルトス、メッソン!!」
「ヒバニー!!出て!!」
ミクさんにご飯を誘われて一緒に作ることになったので2人で手持ちの子を解放してミクさんのポケモンたちと遊ばせる。どの子もとても友好的な子たちで初めて出会うメッソンたちとすぐに仲良くなった。メッソンなんか少し臆病なところがあるのに打ち解けてしまっているあたり本当にいい子たちなのだろう。
ちなみにミクさんは手持ち全員にニックネームをつけているらしく、それぞれアマカジのアマリン、ウールーのモフくん、ナゾノクサのナゾっち、ヌイコグマのもちょん、ロコンのコンコン、ワンパチのパチすけだ。
「さて、じゃあ私たちは私たちでお昼ご飯作りましょうか!」
「はい!!……ところでいったい何作るんです?」
「ガラルのキャンプといえば……カレー一択よ!!」
「そうなんですか?」
「そういえばソニアさんも最近カレーキャンプが流行っているって言ってたような……」
「そうなの!!」
思い出しながら喋るユウリに向かって軽く興奮した様子で喋り出すミクさん。肩を掴まんとする勢いで喋ってきたためユウリも少したじたじ気味で、ボクもいきなりのテンションの上がり方に少し戸惑いを隠せない。
「そ、そんなに人気なんですか?」
「あなたたち知らないの!?」
「ごめんなさい……」
あまりの圧の凄さに思わず謝ってしまう。
「今ガラルで大流行中の料理なのよ?知らない人なんていないんだから。……もしかして違う地方の人?」
「はい……シンオウ地方から……なにぶん来たばかりでその手のお話には疎くて」
「そうだったのね。じゃあガラル流のカレーの作り方を伝授してあげるわ!!」
ビシッと言う効果音が聞こえそうなくらい勢いよく指を立てるミクさん。こんなに熱狂的な人がいるほど流行っているということなのかな?の割にはユウリの反応があまり良くないのが少し気になるところだけど……
「よいしょっと」
周りの人たちの反応の温度差にさらに困惑しているうちにミクさんが大きな鍋をどんと取り出し組んである薪の上に乗せていく。鍋の大きさは人がひとり入れそうなくらいのとんでもない大きさのものでキャンプの入口前で圧倒的な存在感を放っている。
「すごいでかい鍋……」
「そういえば私もお母さんから貰ってたかも……」
「え、ガラルの人みんなこんな大きな鍋持ってるの!?」
「キャンパーなら常識ね」
この大きさの鍋をみんな持っててしかもサラッとやってるけど薪の上に置くのに持ち上げる必要があるから必然的に力もそれ相応にあるということに……いやほんとガラル人逞しいな?
「よし、じゃあ私はお米とハンバーグの準備するからフリア君とユウリちゃんには野菜を頼んでいいかしら?」
「「了解です」」
飯盒とレトルトハンバーグのパックを取り出し準備にかかるミクさんを横目にボクたちは包丁とピーラーを準備してまな板の前に立つ。
「まずは皮を向いてっと……」
じゃがいも片手にピーラーを忙しなく動かしていく。シャッシャッっと言うスライス音がどこか心地よく、家でお母さんの手伝いをしながら料理していた頃を少し思い出す。
(なんだかんだ、料理ってやっぱり楽しいなぁ)
今度はホップとマリィも誘って4人でやるのもいいかもなんて思いながら次々剥いては投げて剥いては投げてを繰り返していく。ある程度剥いていきユウリの方はどうかななんて横目で見てみる。
「よし……野菜を……キル……」
「ユウリ、その逆手持ちしてる包丁を先ず置こうか?」
若干発音もおかしかったし包丁を持った手をそっと握って置かせようと試みる。
「あ、ご、ごめんなさい……実は料理そんなに得意じゃなくて」
「うん、包丁の持ち方の時点で十分伝わったよ」
けど常々思うけどそういう持ち方をする人は得意苦手以前の話だと思うんだ。とにかくまずは持ち方を直してあげてだね……
「とりあえず今回野菜は大きめに切るみたいだからボクが皮を剥いたものをぶつ切りにしてくれる?」
「ぶつ切り……」
包丁をぎゅっと握るユウリ。そのまま包丁で野菜を
「ユウリ?」
「え?これでいいんじゃないの?」
「ごめんユウリ、このピーラーでほかのお野菜の皮を向いてくれる?」
「え?え?」
申し訳ないけど今はミクさんという初めましての方がいる以上問題を起こす訳には行かないので今回は料理を教えずにボクができる限り進めておこう。教えるのはホップたち身内間でのキャンプのときでも遅くないしね。いま怪我されると色々と大変なことになりそうだから……
「ピーラーで皮を剥く……」
「だからものを逆手で持つ癖止めれ!?」
調理漫才はミクさんの準備が終わるまで続いた……。ユウリがなぜ流行っているはずのカレーを知らないのかがよくわかった。
☆
「う〜ん、美味しい!!」
「お手軽だし沢山作りやすいしポケモンも一緒に食べられるっていうのが流行っている理由ね。どう?楽しいでしょ?」
「そうですね!!」
波乱万丈な料理時間を終えて何とか完成。カレーのルーに対して少し辛めの味がするクラボの実を混ぜてご飯の上にかけて、その上にハンバーグを乗せたハンバーグカレーとなっている。具材とルーを入れ終えたカレーは最後に強火でコトコト煮込みながらお玉でぐるぐるとかき混ぜていき最後にまごころを加えることで完成する。混ぜるくらいならなんて思ったけどユウリに任せた途端高速でかき混ぜようとしたのでやっぱり待ったをかけてボクが混ぜることにした。
普段の性格は全然違うのにこういうところはなんかジュンに似てるな〜と。ちなみにジュンの料理のスキルについてなにか言うことがあるとすればもう二度とジュンとはポフィンを作ることは無いと思うとだけ言っておこう。
(……この鍋使えばポフィン作れるのでは?)
ターフタウンによった時の買い物が増えた瞬間であった。
「メッソンとラルトスも美味しい?」
「メソ!!」
「ラル!!」
元気に返事をしながら食べていく2匹。
クラボの実を入れて少しとはいえ辛くしているから好みに合うか少し心配だったけど、食べた感じほんとにピリカラって感じだから多分辛いのが苦手でも食べられるようになっているのだと思われる。恐らく初めてのガラル式のカレー作りと思われてるボクたちのために特に奇をてらったり癖の強いものを作ったりなどせずオーソドックスに作ってくれたミクさんに感謝だ。
「いいものでしょ?ガラルのカレー作り」
「みんなで料理っていうのがやっぱり楽しいですね。シンオウ地方にもポフィンっていうのがあってそれを作った時のことを思い出します」
「ポフィン!聞いたことあるわ!シンオウ地方のお菓子よね?」
「気になるのでしたら作り方教えますよ」
「ほんとに!?ありがとう!!」
やはり女性はお菓子に弱いのか作り方のレシピを渡す約束をすると飛んで喜ぶミクさん。カレー作りを誘ってくれたお礼と考えればこちらとしても軽いものだから全然OKだ。
「うぅ……あまり役に立てなかった……」
そんな中落ち込む人が1人。まあ、言わずもがな今回料理音痴を披露したユウリだ。
「料理はお兄ちゃんやお母さんに任せっきりだったから……」
「これを機に学んでいけば大丈夫だと思うけどね……。今度ホップやマリィとキャンプする時にしっかり教えてあげるからさ」
「うん、ありがとう……頑張る」
落ち込みながらも克服しようとグッと拳を握るユウリ。
人間誰しも初めては上手くいかないものだ。ゆっくり覚えていこう。なんてやり取りをしていると少し微笑ましそうな顔をしながらこちらを見るミクさん。
「なにかありました?」
「ううん。ただ……あなたたち、実は付き合ってる?」
「「友人です!!」」
なんかとんでもない誤解をしてらっしゃってた。
☆
「じゃあジムチャレンジ頑張ってね!!」
「はい!ありがとうございました!!」
「ジムチャレンジ頑張ります!!」
お昼ご飯も無事に終わり、ミクさんにも別れを告げて3番道路の続きを歩いていくボクたち。程なくして目に入るのは大きな洞窟の入口。場所をガラル鉱山というらしい。
ガラル鉱山。
エンジンシティとターフタウンの間にある内陸部の鉱山でローズ委員長が経営する会社、マクロコスモスが運営している鉱山。パンフレットによるとどうやらここでもねがいぼしが採掘されているとかなんとか。
(流れ星から取れるだけじゃないのね、ねがいぼしって……)
というのが最初の感想だけど確かに流れ星からしか取れないのだったらダイマックスバンドの数なんてかなり少なそうだしチャレンジャー全員に配布なんてそんなこと出来るはずないと考えたら納得は行きそうだ。しかしそうなるとなんでここにねがいぼしがあるのかが謎なんだけど……まさかこの鉱山、というよりこのガラル地方に大昔流星群クラスのものでも落ちてきたことでもあったとでも言うのか……
(流石にないか)
なんて今は妄想の一言で切って捨てる。もちろんここで取れるのはねがいぼしだけではなく、ボクたちトレーナーにとって大事な各種進化の石もちらほら見かけるようでお店に並ぶ石の何割かはここで採掘されているようだ。もっとも、会社が運営している鉱山と言うだけあって色々深く掘られているところもあり、地面はでこぼしてたりトロッコ用の線路がしかれていたり、若干の崖みたいな形をしていたりと足場がかなり悪く、長旅初心者の人にとっては最初の関門に意外となるのでは?と思わなくもない。ボクも初めての頃はクロガネゲートを歩くだけでもかなり苦労した経験がある。しかもここ、どう見てもクロガネゲートよりも絶対に厳しい。もっとも、夢を叶えんとする少年少女を前にそんな障害物はあってないようなものだ。ここを歩かないという選択はありえない。
「よし、じゃあ行こうか」
「うん」
ユウリと二人で横並びに洞窟へと足を踏み入れる。中は掘ってあいた洞窟を補強する木の枠組みと掘った石を運搬するためのトロッコの線路とその他採掘道具がゴロゴロと……
「これ作業中表示とかいらない?大丈夫?一般の人に触られて悪用とかされない?」
「大丈夫だと思う……、多分……」
まあ、放置されているということは大丈夫ってことなんだろう。問題が起きたらマクロコスモス社が何とかするはずだ。けどそれ以上に……
「鉱山って聞いていたからもっと泥臭いというか無骨というか、無機質なイメージがあったんだけど……凄くキラキラしてるね」
「ガラル鉱山は宝石の採掘量が他の地方よりも多いの。お兄ちゃんが言うには全部の地方を見てもかなり多い方なんだって」
「シンオウ地方もその点では強い方だけどここもここですごいね……。しかもシンオウ地方と違って宝石のキラキラした光が凄く映えて鉱山なのに綺麗って言葉が自然と出てきちゃうや」
シンオウ地方で鉱石類で有名な街と言えばクロガネシティだが、クロガネシティは炭坑で栄えている場所だ。炭坑の見学もしたことはあるけどどちらかと言うと石炭の黒色が強く目立っていて全体的にも暗いイメージがある場所だった。しかしこのガラル鉱山は暖色系の蛍光灯を乱反射する宝石や進化の石の主張が激しくとてもカラフルな色合いとなっていてオシャレにさえ見える。歩いているだけでなんだか楽しくなってきそうだ。
「うわぁ、トロッコを走ってるポケモンもいる……」
「あれはトロッゴンってポケモンだね。いわ、ほのおタイプのポケモンでこういうところによくいるんだ」
「いわ、ほのおタイプって初めて聞いた!いやぁまだまだ知らないポケモンがたくさんだ」
こういう見た事ないポケモンやタイプってやっぱりいつ聞いてもワクワクするね。しかしいわはともかくほのおタイプのポケモンだ。
(1つ目のジムってくさタイプのジムだよね……ここでこの子捕まえるのもいいかも……いやでもなぁ、ほのおはともかくとしていわタイプって育てたことないしなぁ。でも1つ目のジムだしもしかしたらまずは基礎のタイプ相性の考えを試してきたりするのかな?新人トレーナーも少なくないはずだから初めて育成するポケモンでも大丈夫だったり?う〜ん、ガラル地方のジムのレベルが少し高いって情報しかないのが変に警戒しちゃってるなぁ……)
シンオウ地方に限らず基本的にジムというのは
しかしガラル地方は違う。
そもそもの話、ガラル地方以外はジムは普通に
(けど流石に警戒しすぎな気も……、これってボクが細すぎるだけなのかなぁ……)
「さっきからどうしたの?心ここに在らずって感じだけど……」
「ううん、なんでもないよ」
「フリアってよくそういう考え込むような顔するよね?」
「そ、そうかな……?」
「一緒にいる人がいるのに、あまりそう言う顔しない方がいいと思うよ?」
ちょっとムスッとしながらそう言ってくるユウリ。確かに友達と一緒にいるのに友達無視してほかの事考えるってよくよく考えたら失礼かも……。
「ご、ごめん……気をつけるよ」
「ならよろしい」
満足気に頷くユウリ。けどごめん、これ一種の癖みたいになってるからまたやらかしちゃうかも……
そのまま初めて見るポケモンや珍しい洞窟の様子に一つ一つ反応しながら歩いていくこと数時間。2人で談笑しながら時につまづいたり、坂から転がってしまいそうになるユウリを手助けしたり、そんな冒険の一幕をゆっくりと楽しんでいた時。ボクの耳に気になる音が聞こえた。
『ふん、元チャンピオンからの推薦状と聞いてもしかしたらなんて思いましたが、あなた、大したことないですね』
『……っ!!』
「ユウリ、なにか聞こえない?」
「え?」
洞窟の奥から聞こえる話し声。もちろんほかのジムチャレンジャーがいる兼ね合いで決して静かという訳では無いけどその割には先程聞こえた言葉はさっきまで聞こえてた和気あいあいのしたものから少し離れすぎている気がする。
『同じエスパータイプの使い手にしておいてこの差。あなた、才能が全くありませんね……今から棄権することをオススメしますよ』
『ワタクシは……』
少し歩いてみると話している人の影が視界に入る。片方は蛍光ピンクのジャンパーを来た人。もう1人はシルクハットの周りにゆらゆらとモンスターボールを浮かせている人。どちらも受付の時に見かけたことがあるような人だ。
『これがエスパージムの家系の選手……はぁ、期待外れもいい所ですね』
『っ!!』
蛍光ピンクの方のその言葉を最後に走り去ってしまうシルクハットの人。俯きながら走って消えていくその人の顔は苦しさと悔しさを混ぜた顔をしていた。話の内容からしてどうもここでポケモンバトルをしていて蛍光ピンクの方が勝ったらしい。
どこまで行っても実力が全ての世界。そんなことはとっくに知っている。しかしそれにしても流石に言い過ぎなような気も……
「何もそこまで言う必要ないんじゃないかな」
「ってユウリ!?」
気づけばユウリが前に出て蛍光ピンクの人と顔を合わせていた。
「あなた方は……なるほど、あなた方が巷で有名な現チャンピオンとシンオウチャンピオンに推薦された方でしたが……」
髪をかきあげながらそういう少年はどこか光の無い瞳で見下したような表情をしながら喋っていた。
「くだらない」
「……何が?」
「ぼくは今回委員長に推薦されてこのジムチャレンジに参加しているんです。チャンピオンと委員長。どちらが偉いかと言われれば委員長の方が偉い。そんなものは誰だって知ってる常識。つまりぼくの方が期待値は高いんですよ。なのに初めてだからという理由でチャンピオンの推薦者の方に浮かれるばかりかあまつさえ他地方の田舎民にまで期待をするだなんて……本当にくだらないと思いませんか?」
「っ!!」
「ユウリ」
彼の言葉に怒り、つかみかからんばかりの勢いを見せるユウリの肩をつかみ落ち着かせる。今のユウリは冷静じゃない。ここはボクが前に出るべきだ。
「で、結局蛍光ピンクさんは何がいいたいの?」
「誰が蛍光ピンクですか!!」
「ああごめん、君の名前知らなかったから心の中で呼んでる名前がそのまま……」
ほんとごめん、これは素でボクが悪い。
「このファッションの良さがわからないなんて、これだから田舎民は……」
しかもめちゃくちゃその服気に入ってるじゃん……ほんとごめんて……。
「いいでしょう。このチャレンジを軽く超えてチャンピオンになるぼくの名前を特別に教えてあげますよ。ぼくの名前はビート。委員長に推薦された凄いトレーナーです」
「紹介どうも。ボクはフリア。そしてこちらがユウリ」
「ええ、知ってますよ」
くちびるの片側を釣り上げた少し小馬鹿にしたような顔で言うビート。……どうでもいいんだけどあれ、表情筋辛そう。って、そんなことはどうでも良くて。とりあえずさっきから震えているユウリを抑えるためにも何とかここは穏便に済ませないと……
「そしてぼくなんかよりもずっと弱いことも知ってます。なんなら今ここでそれを証明してあげましょうか?」
「凄く魅力的な提案だけど断らせてもらうね」
「……は?いえ、ある意味賢明な判断ですね。負けて自信を無くすのがそんなに怖いですか?」
「逆だよ逆。正直な話君に負ける気はあんまりしてなかったりするよ?けど今勝っても、絶対さっきまでシルクハットの人と戦って消耗してたからって言い訳するでしょ?それなら、戦うのはお互いが万全な状態の時に戦った方が良くない?って話」
「……」
「それでもいいって言うなら相手になるよ?」
数秒間の沈黙の空間。それを先に破るのはビートの高笑い。
「っははは、面白いことを言いますね。いいでしょうぼくを笑わせたことに免じて今回は見逃してあげますよ。その代わり、次は思い知らせてあげますよ」
「こっちのセリフ。首を洗って待っておくといいよ」
そのままビートは洞窟の奥へ奥へと先に行ってしまう。とりあえず面倒事のひとつは去ってくれたみたいだ。
「よし、じゃあ行こっかユウリ」
「なんで……」
「ん?」
先を促そうとしたところでかけられる声。振り向くと俯いていたユウリがこちらをじっと見つめて少し悔しそうな顔をしながら声をかけてくる。
「なんで、戦わなかったの?あんな人フリアなら絶対に……」
「勝てた自信は正直あったよ」
今のボクの手持ちはあのエンジンシティでの5日間の待機期間でさらに強くなっている。負ける気はしないしそもそもボクの手持ちはメッソンとラルトス以外にもう1匹、ボクがシンオウ地方を旅した時から絶対の信頼を置いている相棒がいる。少し卑怯な気がするからまだ使いはしないんだけどそれでも全力で戦い、この子も登板させれば絶対に勝てるとも思っている。ビートの手持ちも隠していない限りは多分腰のホルダーにつけてる3匹しかいなさそうだしね。……いや、ワンチャン彼がボクと一緒で既にどこかを旅した後の人という可能性はゼロじゃないけど。ただそれ以上に……
「あの人の雰囲気、ユウリちょっと苦手でしょ?」
「うっ……」
「今日は既に長時間歩いているしこういうところを歩くのも初めてで疲れてると思う。そこにあんな癖の強いひとの相手とか、今のユウリにはちょっと刺激強いかなって。それに……」
「それに……?」
「ビートの顔、若干冷や汗かいてたんだよね。本人は上手く隠しているつもりなんだろうけど」
「え?」
多分物凄くプライドが高いのであろう彼は正直に言えなかっただけなのだろう。けどボクの目にはしっかりと見えた。
「あのシルクハットの人も結構強いんだろうね。これは手強いライバルがたくさんだ。大変だよ?ユウリ」
「……」
「ユウリの疲れもあるし、彼のポケモンも疲れてる。確かに、あの挑発はやりすぎだとは思うしユウリたちを貶してるのは単純に許せないけど……、今優先すべきことはユウリの体調。なら今は先送りこそが最善手じゃない?」
「フリアがそう言うならいいけど……」
まだ少し納得が行かないような顔をしている。
(う〜ん、よし、ここは少し申し訳ないけど……)
「ユウリ」
「何?」
「えい」
「えっ!?あ、あれ!?」
軽くユウリの肩をとんと押す。すると自分の予想以上にたたらを踏んで後ろに転けそうに……
「あ、ごめんごめん!!」
というか本当に転けそうになっていたので慌てて手を掴んで支える。
「ほんとにごめんね?まさかここまで疲れてるなんて思わなくて……」
「わ、私も……、こんなに足に力入ってなかったんだって……、ありがと……。でも、急に押さないでよ!びっくりしたでしょ!!」
「はい。本当にごめんなさい……」
真面目に少ししょんぼりしてしまう。見誤ってしまうとはボクもまだまだだなぁと思うばかりだ。
「……でも、ちゃんと私の事も見ててくれてたんだね。ありがと」
「ううん。冒険の先輩として、こういうところでちゃんとサポートしてあげないとね?」
たかが1年、されど1年。ボクたちにとって1年はとてつもなく長い。ちゃんとその経験は生かさないとね。
「さ、マップを見るところあと少しで出口みたいだし、時間的にもこの洞窟を抜けたら今日はそこで野宿だろうからそこまでは頑張ろっか」
「うん!よ〜し、自覚した瞬間少し足に怠さを感じちゃうけど……あと少し頑張るぞ〜!!」
洞窟内なので太陽の位置は分からないけど時計を見ると既に18時を回ろうというところ。やはり大会社が運営している鉱山と言うだけあってかなり広大だ。あと少しといったけどそれでもなれない足場ということもあって1時間弱はかかるかもしれない。きっとこの洞窟を抜ける頃には満点の星空がボクたちを迎えてくれるだろう。その景色を少し楽しみにしながらボクはユウリと先へと進んだ。
☆
『ほぅ……あの少年、ビートというのですか……なかなか見どころがありますね〜』
『あんな出来損ないよりも優秀かもしれないな……』
『ひとまず、この事をダンナ様に伝えますか〜』
『だな……』
洞窟の蛍光灯すら届かない深いところ。ふたつの影がそっとその場を離れていった。
ミクさん
実記でもちゃんとこの場にいますけどこの人の手持ちが想定と違ったため急遽メンバーを手に入れる場所が変わりました()
ちゃんと下調べしなきゃダメですね……
料理音痴
どうしてこうなった。
しかし漫画でよく見るあの包丁逆手持ち。
そうはならんやろ(なっとるやろがい)
ポフィン
あれ作るの大好き。
ガラル鉱山
ここに限らずここのお話では広さは何十倍にもなってます。
というか多分実際はこれよりもっと長いのでは?と思わなくも……仕方ないとはいえ剣盾のマップはワイルドエリア以外は小さい気がします。
ビート
作者が剣盾で1番好きなキャラです。
好きすぎてビートパを厳選したレベルです()
それにこの人のBGMかっこよすぎません?イントロのベースとか最高にクールなんですけど???
シルクハットの人
イッタイダレナンダー
実は当初の予定ではガラル鉱山もっと広くする予定だったり()
流石に長くなりすぎそうなのでやめました。
あとはサブタイトル、つけた方がいいんですかね?
読んでいる方が読み返したい時とか、なんか読みづらいとか思ったりしたら考えようとは思うんですけど……