【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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お待たせしました。

今月に関しては、ワクチン接種のためにもう一回か二回ほど、お休みをいただく可能性があります。
そのあたり、ご理解のほどよろしくお願いします。


104話

 アイドルというものに、うちは強い憧れを抱いていた。

 

 ステージの上でキラキラ輝く彼女たちは、何よりも美しくて、何よりも綺麗で、そして何よりも光っていた。

 

 見ている人全てに笑顔を届けるその光り輝く星たちは、幼いうちの心を離さず捉えた。

 

『うちもこんな風に輝きたい』

 

 男の子がスポーツ選手や、チャンピオントレーナーに憧れるように、うちはアイドルに憧れた。

 

 ステージの上で皆に笑顔を振りまくその姿と、そんなアイドルと一緒に会場を盛り上げるファンとのやり取りも物凄く憧れた。応援するファンと、感謝を伝えるアイドル。その関係性もまた、うちの思いを押し上げるに足る大きな要因で、両者のやり取りを見ているだけで、心の奥からなにか熱いものが込み上げて来るようで。

 

『いいなぁ。凄いなぁ。素敵だなぁ……!』

 

 小さなころから抱いていた大きな夢は、うちが大きくなってもしぼむことはなかった。

 

 幼少のころから憧れ、ずっとずっと胸に抱えていたその思いは、成長するにつれて少しずつ形を作り上げ初め、ついにインディーズとはいえ、夢のアイドル活動をすることが出来た。

 

 だけど、うちを待っていたのはつらい現実で。

 

 発売してたった8枚しか売られることの無かったCD。しかも、そのうちの一枚が道端に転がっているのを見た時のあの感情は、当時のうちの心を折るのには十分な状況だった。

 

 周りの人と比べて違うところなんて何一つわからなくて、むしろうちの方が頑張っているとさえ感じていたのにどんどんと周りの人に置いて行かれるあの感覚。

 

 観客席から聞こえる落胆の声と、インディーズアイドルから聞こえてくる、ファンや同業者を貶すような言葉と態度。アイドルは蹴落とし合いだなんていうけど、それは蹴落とし合いというレベルを超えていたとても醜いものだった。

 

『うちの憧れたものはこんなものじゃない』

 

 もっとキラキラしたものを夢見て足を踏み出してみれば、目に入ってきたのは地獄のような場所だった。

 

 

 

 

 うちの夢は、一瞬にして消え去ってしまった。

 

 

 

 

 アイドルをずっと追い続けていたうちは、夢をあきらめた瞬間燃え尽きたように何も身が入らなくなった。それでも、アイドルのように輝きたかったという思いだけはどうやら心の隅に引っかかっていたみたいで、結果うちがとった行動は、いかにして楽に注目を集めるか。その考えの下うちがとった行動は、アイドルの他にちやほやされるであろう職業のポケモントレーナーを、それもライバルが少なそうだからすぐにジムリーダーになれるという甘い考えの下、どくタイプのジムリーダーを目指すというものだった。しかしそれも、予想以上の過酷さにさっさと音を上げてたったの2日でやめて、ヨロイ島にいると言われた師匠の下に逃げ込むように入門して、それでもくすぶり続けて。

 

 時間を無駄にしているだけだって、言われるまでもなく気付いていた。それでも、うちを捨てることなんてせずに、置き続けてくれた師匠に少なからず感謝はしていて。

 

 そんなだらだら腐ったかのように放心していたうちにある一つの転機が訪れた。

 

 それは年に一度、このガラル地方にて開催されるジムチャレンジ。

 

 正直参加する気にもならなかったし、参加したところで結果は目に見えている。うちはそう思って疑わなかったけど、師匠が勝手に推薦状を出してしまったので、断るに断れず渋々参加することに。

 

 どくタイプをそれなりにたしなんでいたということもあり、最初の方こそ特に危なげなくクリアしていたけど、やっぱりうちの心はどこか空虚で。

 

『ああ、うちはこんなときでも変わることはないんだろうな』

 

 ある程度進んだらさっさと諦めてしまおう。どうせこのジムミッションをクリアしたところで、ジムリーダーたち、そしてチャンピオンたちが立ちはだかるんだ。間違いなく楽に勝つことは不可能だ。なら、もっと簡単な道に逃げればいい。きっと探せばたくさんあるはずだから。

 

 そんな気持ちでジムチャレンジに挑んていたうちの目に、ふと入ってしまった一人の選手。

 

 剃り込み入りの黒髪ツインテールに緑色の目が特徴のその子は、数多のファンを抱えながらジムチャレンジを華麗に駆けていた。笑顔という観点だけはまだまだ甘い所があるとしか言いようがないものの、観戦している人の心をつかみ、ファンに、いや、ファン以外の子にも笑顔を届けるその活躍は、いつの日か夢見たあのアイドルの姿に重なって。

 

『ああ、うちはいつからこの気持ちを捨てちゃったんだろうなぁ……』

 

 それを理解した瞬間に、途端に今までの自分の行動が恥ずかしくなってきてしまった。なんであんなことをしてしまったのか。なんでこんな道を選んでしまったのか。考えれば考えるほどのしかかってくる自分の愚かさに、どんどん嫌な気持ちが募っていく。

 

 彼女とエール団の姿にあこがれを抱いてしまったうちは、それから彼女のことをたくさん調べた。その結果出てくるのは、彼女があのスパイクタウンにあるあくタイプのジムリーダーの妹であり、このジムチャレンジに挑んでいる理由も、寂れていく自分の生まれ育ったスパイクタウンを、町おこしするためだというではないか。その事を聞いてますます心を打たれてしまい、同時に自分より年下のこの子と比べて自分のなんと不甲斐ない事かというのをますます感じてしまい、さらに落ち込んでしまった。

 

『今から、まだやり直せたりするのかなぁ』

 

 あの光輝く姿をポケモントレーナーとして取り戻すには、たくさんの時間を無駄にしてしまった。彼女と肩を並べるには、きっと今までの何と比べても楽じゃないことをする必要があるだろう。けど、それでも、この先ジムチャレンジを進めていくにおいて、彼女の横に立つ機会というのは必ずやって来る。その時にせめて恥ずかしくない姿でそばにいたい。

 

 ……初めての出会いで、イワパレスとイシズマイの軍団に襲われた時は、アイドル時代からしみついてしまった性格の悪さが出てしまったけど……こればかりはもうしみついてしまったものだから仕方がない。きっとあのアイドル生活でしみついてしまったこれは治ることはないだろう。けど、これも一種のキャラ付けだと割り切ってしまえば、こういう路線もありなのかもしれない。と思うことにしたい。じゃないとやってられない。

 

 そしていつか……

 

『マリィセンパイと、ユニットみたいなもの、組めたらいいなぁ!!』

 

 どくタイプとあくタイプ。

 

 うち的には、この2つのタイプはちょっと似てる雰囲気もあると思っているから、きっとうまくいくはずだ。

 

 それまでに、少しでも成長していこう。

 

 そんでもって、うちがそれくらいの力を手に入れられるその時までは……

 

『うちの夢を思い出させてくれたマリィセンパイを、全力で推し活するんだ!!』

 

 うちの目標を、応援し続けていきたいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤドラン!!『シェルアームズ』ゥ!!」

「エースバーン!!『かえんボール』!!」

「ゴリランダー!!『ドラムアタック』!!」

「インテレオン!!『ねらいうち』!!」

 

 立ちはだかるフォクスライやマッスグマと言った、あくタイプのポケモンたちの壁をボクたちの自慢のポケモンの技でかき分けながら猛進していく。ヤドランが左腕に携えた貝から発射された毒の球がフォクスライを射抜き、そのフォクスライを受け止めたゴロンダごと、エースバーンのかえんボールが襲い掛かる。技を打った後隙を刈ろうとしたヤミラミ、およびレパルダスは、動こうとしたところをゴリランダーのドラムアタックによって生まれた根の鞭により拘束。動けなくなったところにインテレオンのねらいうちが、正確に急所を捉えて、その2匹を沈めていく。

 

 打ち合せなんて何一つしていないのに、目線を少し合わせるだけでお互いの意思疎通が取れ、面白いように連携が重なっていく。クララさんは頭に血が上っているため、ただ真っすぐ突き進んでいるだけに見える……というか、実際に突っ込んでいるだけなんだけど、そこをボクたちがカバーすることによって、そんなクララさんの暴走さえも戦略の一つに見えてしまう程、今のボクたちのコンビはとにかく冴えていた。

 

「次!!フォクスライ2体とヤミラミ1体!!全員『あくのはどう』を構えてる!!」

「そんなもの、先に潰してやっぞォ!!ヤドラン!!『シェルアームズ』ゥ!!」

 

 相手の動きを見て次の技を予測したボクがその行動を口に出すと、クララさんの指示によってヤドランが、特性『クイックドロウ』を発動させながら、左腕から放たれた毒の球で綺麗にヘッドショットを決めていく。倒すことこそ出来なかったものの、いきなり先制で技を貰ったせいで怯んでしまった相手のポケモンは、技を発動こそしたものの、あらぬ方向へ飛んでしまいこちらに被害は一切入らない。

 

「エースバーン!!『ブレイズキック』!!」

「ゴリランダー!!『10まんばりき』!!」

 

 怯んだところに追撃を行うためにゴリランダー、エースバーンによる追撃が行われ、ヤミラミとフォクスライが倒れる。

 

 かなりの数を倒したとはいえ、ここがエール団の本拠地ということもあってか、まだまだ戦闘可能なポケモンが沢山いる。連戦によって疲れが見え始めたエースバーンとゴリランダーに向かって、元気が余っている他のフォクスライたちが攻撃を仕掛けてくる。

 

「インテレオン!!『アクアブレイク』!!」

 

 相手が仕掛けてきたでんこうせっかや、ふいうち。次々と襲いかかってくるあくタイプのポケモンによる連続攻撃を、しかしインテレオンがこちらに被害が来る前に敵の攻撃をアクアブレイクでいなしていく。側面を叩いて横に飛ばし、左右のアーケード商店のシャッターにぶつけられたフォクスライたち。頭をぶつけたことで、若干フラフラしながらも、それでもまだ戦う意思を見せつけてきた。しかし、そんな大きな隙をこちらが逃すはずもなく……

 

「ヤドラン!!『シェルアームズ』ゥ!!」

 

 クララさんがしっかりととどめを刺すことによって地に沈む。

 これで今いる場所のエール団は全員倒せた。

 

「さァ!!あと少しよォ!!」

 

 付近のエール団がみんな倒れたことを確認するや否や、すぐに駆けだすクララさんとそれについて行くボクたち。流れていく景色に目もくれず、ただひたすらにマリィが走った方向とは逆方向へと駆けていくボクたちの視界は、やがてスパイクタウンを閉じているシャッターをとらえ始める。

 

 当然見えるのはシャッターだけではなく、ボクたちがスパイクタウンで暴れていることが伝わっているのか、なんとしてでもこのシャッターを守るために集められたエール団の集団が、まるでバリゲートを作り上げるかのように壁を作っていた。中には実際にバリヤードの力を借りて、壁を張っているトレーナーも見受けられる。

 

 あくタイプのポケモンしか使わないのかななんて思っていたけど、マリィも、マリィの話を聞く限りネズさんもあくタイプ以外のポケモンを持っている。そのことから、この町に住む人はもしかしたら一匹くらいは自分のエキスパートとするタイプ以外のポケモンも手持ちにいれる癖があるのかもしれない。

 

 バリヤードがいるということは、ここで待ち構えている壁はいままで突破してきたエール団の壁に比べて厚いという事。突破するには一苦労だろう。けど……

 

「そんなこと関係ねえぞォ!!ドラピオン!!」

「うん!ここまで来たら最後まで押し切る!!アブリボン!!」

「俺たちの本気を見せてやるぞ!!カビゴン!!」

「絶対にシャッターまでたどり着いて見せる!!エルレイド!!」

 

 バリヤードが建てる大きな壁に向かって、バリヤードの主力タイプであるエスパーに対して強く出られる技を覚えたポケモンを出すクララさんたち。バリヤードのタイプ自体はエスパー、フェアリータイプなので、あくタイプやむしタイプの技自体は等倍で受けられてしまうものの、バリヤードが作る壁はエスパータイプの力が中心なため、あく、むしタイプの技はこの場面においては壁を崩すのにうってつけと言っても差し支えない。

 

「ドラピオン、『つじぎり』ィ!!」

「アブリボン、『かふんだんご』!!」

「カビゴン、『かみくだく』!!」

 

 バリヤードの堅い守りに対して、エスパーに対して強く出られる技で攻め立てるクララさんたち。3匹のポケモンによる猛攻に、守りに定評があるバリヤードもさすがに押され気味となる。しかし、それでも何とか耐えているのはバリヤードのすごい所だろう。しかし、こちらにはこういった壁を壊すが得意なポケモンが控えている。

 

「エルレイド!『かわらわり』!!」

 

 リフレクターや、ひかりのかべ、オーロラベールと言った、威力を減衰させる壁に対して特攻を持つかわらわり。それを憶えたエルレイドが、3匹がかりで罅を入れたバリヤードの壁に対して、とどめの一撃を叩き込む。

 

 ガラスが割れるような快音を奏でながら、パラパラと透明な破片をまき散らす壁は、もうボクたちの進撃を防ぐことはできない。

 

 まさかこんなにも早くバリヤードの壁が壊れるとは思っていなかったらしく、エール団のほとんどが動くまでに一瞬のラグを生じてしまう。

 

「ドラピオン!!『クロスポイズン』!!ヤドラン!!『シェルアームズ』ゥ!!」

 

 その隙に放たれるクララさんのどくタイプ技の猛攻により、バリヤードが沈み……

 

「アブリボン!!『かふんだんご』!!エースバーン!!『かえんボール』!!」

「カビゴン!!『ヘビーボンバー』!!ゴリランダー!!『ドラムアタック』!!」

「エルレイド!!『かわらわり』!!インテレオン!!『ねらいうち』!!」

 

 もう守られることがないと確信した瞬間、ボクたち3人による怒涛の攻めで、ほとんどすべてのポケモンをなぎ倒していく。いくら鍛えられたポケモンと言えども、隙や不意を突かれた不慮の一撃を耐えるのはかなり難しい。相手の攻撃が洗練されている物ならなおさらだ。それを証明するかの如く、次々と倒れていくエール団のポケモンを目の前に、相手方の士気がどんどん下がっていく。

 

 スパイクタウンを封鎖しているシャッターのスイッチまでもう少し。

 もう目視できるくらいまで近づけた。

 

 だけど、ここまでくれば守りにつく人も幹部と言ってもいいくらいの人物たちらしく、これだけの不利状況に追い込まれながらも尚立ち向かう心を忘れていない人物が、ポケモンを繰り出しながら立ち塞がって来る。

 

「オーロンゲ!!タチフサグマ!!相手を退ケール!!」

 

 幹部らしき人から繰り出されるのはオーロンゲとタチフサグマ。どちらもこれまで戦ってきたエール団の手持ちとは比べ物にならないくらい強そうな圧力を放っている。パッと見ただけで強敵とわかるその相手に少しだけ押され、動きが慎重になりかけるボクたち。しかし、クララさんにはその圧力さえ通じない。

 

「ドラピオン!!『シザークロス』ゥ!!ヤドラン!!『ねっとう』ゥ!!」

 

 これまでと変わらずとにかく前に出て、相手を押し切ろうとするクララさん。その気迫は手持ちのポケモンにも伝わっているらしく、ドラピオンとヤドランの攻撃もさらに鋭さを増していく。

 

「オーロンゲ!!『ひかりのかべ』!!タチフサグマ!!『ブロッキング』!!」

 

 しかし、そんな鋭い攻撃も幹部クラスとなると的確な技選択で防いでくる。オーロンゲの壁でねっとうを防ぎ、タチフサグマがドラピオンの前に立ちはだかって受け止める。クララさんの決して軽くない攻撃を、こうも見事に受け止めるその姿からは、軽くない覚悟を感じた。

 

「お前たちがどんなに強くても!!決してこのシャッターだけはふセーグ!!」

 

 幹部が叫ぶと同時に、オーロンゲとタチフサグマも吠えながらクララさんの攻撃を跳ね返そうと奮起する。エール団の思いである、マリィの夢の成就のためのその行動と思いは、先程まで拮抗していたクララさんとの押し比べに徐々に勝ち始めていた。

 

「ぐッ……!?」

 

(ここまでの覚悟が……ッ!?)

 

 まあかの反撃に唇を噛み締めるクララさん。このままでは跳ね返されてしまい、むしろ手痛い反撃と貰った挙句、相手の士気が戻ってしまう。

 

「インテレオン!!『ねらいう──』」

「フリアっち!!」

「ッ!?」

 

 ここまで順調にやってきたその流れを断ち切らないために、なんとしてでもここで勝つためにインテレオンで援護しようと指示を出仕掛けた瞬間に、クララさんから待ったの声がかかる。その言葉は、ボクと同じく援護しようと構えていたホップとユウリにも突き刺さり、ボクたち3人揃ってその動きを止めてしまう。

 

「ここはウチが!!最後までやりきっちゃうゥ!!」

 

 エール団の幹部から感じる圧力と同じくらいのものを発しながら口を開くクララさん。その迫力に、ボクたちは言葉を返すことが出来なかった。

 

「仲間の力を借りればいいものを!!我々のように、ひとつの夢に向かって協力している、素晴らしいチームワークの前に、ひれ伏すのでアール!!」

 

 しかし、圧力だけで場が好転するほどポケモンバトルは甘くない。ボクらの援護を受けなかったクララさんのポケモンは、さらに押し込まれていく形となる。このままではエール団の言う通り、彼らの連携に前に押しつぶされてしまう。けど、こんな状況になっても、クララさんの目の光はより強くなる一方で。

 

「……ひとつの夢を叶えるゥ?」

「そうでアール!」

「マリィセンパイの、大きな夢をォ?」

「うむ!!お嬢のファンであるお前なら、理解してくレールと信じていたのだが……」

 

 エール団の言葉が、チクチクとボクの胸をつついていくる。町の復興という是非とも応援してあげたいマリィの夢。それを支えるために身を粉にして頑張るエール団。決して褒められたことでは無いかもしれないけど、確かに存在する覚悟と想い。もしかしたら、マリィのことが大好きなクララさんは、このまま絆されるのでは無いかと言う不安さえ感じてしまう。

 

 しかし……

 

 

「そんなもの、理解できるわけねぇだろォ!!」

 

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 クララさんの口から放たれたのは、エール団の言葉を一蹴するどころか、言い返し、その勢いのままタチフサグマとオーロンゲを吹き飛ばしてしまう。同時に膨らむクララさんの気迫。その勢いに当てられてしまい、エール団の幹部はもちろん、クララさん以外の全ての人が圧される。

 

 誰も彼女を止められない。そして、そんな状況であることなんて心底どうでもいいと思っているクララさんから、さらに言葉が紡がれる。

 

「あんたの行動でセンパイに迷惑がかかってるってことがなんでわっかんないかなァ!?本当にファンなら!!節度を守って!ちゃんとした手助けをしなさいよォ!!今のあんたたちは、マリィセンパイの応援なんて何一つできてないって話ィ!!」

「わ、我々がお嬢を支えられていないとでも言うつもりか!!」

「当たり前だっつぅのォ!!!!!」

 

 クララさんからかけられる非難の言葉。迫力を維持したまま放たれるその言葉にさらに潰されそうになるものの、邪魔をしていると言われてさすがに黙ってられないと思ったのか、何とか言い返すエール団幹部。しかし、それすらもクララさんが押しつぶす。

 

「お嬢の夢はどうでもいいと言うのでアールか!!少しでもその夢を叶えるために、ライバルを減らしてあげるという気持ちが──」

「なんであんたたちはァ!!最初からマリィセンパイが負ける可能性を考慮して応援してんのよォ!!」

「……は?」

 

 クララさんの言葉に、エール団の幹部だけでなく、ここにいる全員が固まった。

 

「ここに来るまでに聞いた、フリアっちやユウリン、ホップきゅんがいたら夢を叶えられないかもしれないって話……その時点で、あんたたちがマリィセンパイのことを心から信じていないことが、伝わったのよォ!!」

「ッ!?」

 

 ボクたちが隠れていた時に聞いた、ボクの存在のせいでマリィが優勝できない可能性の話。それを聞いたボクは、彼女の夢を潰しているんじゃないかと不安に駆られた。しかし、クララさんは別の事として受け取っていた。

 

「確かにフリアっちは無茶苦茶強い。けど、そんなこと皆知ってる。それを承知して少しでも食らいつくために努力してんのよォ!!その努力を、他でもない応援団のあんたたちが否定するなァ!!ドラピオン!!『シザークロス』ゥ!!ヤドラン!!『シェルアームズ』ゥ!!」

 

 ボクがいるとマリィが優勝できない。それはクララさんの言う通り、ボクとマリィが戦った場合、マリィが負けることしか考えていない人の発想だ。それはエール団がマリィのことを信じていない証明であり、同時に……

 

(……ボクの、驕りの証明だ)

 

 ボクの考えていた、ボクがいたらマリィの夢の邪魔になるというのもまた、自分が勝つことしか考えていないものである。

 

(いつからそんなに偉そうになった。しっかりしなきゃダメだ……!!)

 

 もしかしたら、このことを教えてくれるためにクララさんはボクに視線を送ったのかもしれない。

 

 同時にこれはクララさんからの、『私たちもお前ののど元に食らいつくつもりだ』という一種の宣戦布告なのかもしれない。

 

 実際に今日のエール団との戦いを振り返ってみれば、クララさんもユウリもホップも、戦うとなれば皆強敵になることが目に見えた。

 

(気合……入れ直さなきゃ、だね)

 

 今まさに、エール団の幹部のポケモンを吹き飛ばし、シャッターのボタンを押そうとするクララさんを見ながら、自分の心に深く喝を入れる。

 

「本当のファンならァ!!黙ってマリィセンパイが大きな壁に挑んでいる姿をォ!!その目に刻んで応援してあげろォ!!」

 

 ボタンを殴るように押し、シャッターを開け放つクララさん。

 

 エール団に指を差しながら叫ぶその姿は、シャッターが開いたことによって差し込まれた逆光も相まって、荘厳さすら感じさせる。

 

「マリィセンパイは絶対にその大舞台までたどり着く!!だから……覚悟しろよォ!!」

 

 そして同時に、ボクの心に何かがのしかかった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クララ

クララさんまじイケメンな回。
実際問題、彼らの行動はマリィさんを信じていないと言われても仕方ないよなぁと思ってしまったので……
正直、こんなクララさんを書きたい気持ちがものすごく大きかったです。





5月はいろいろ投稿できない期間が生まれそうですね。
申し訳ありません。
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