ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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106話

「クララ、喉の方は大丈夫と?」

「あ〜……あ〜……うん、もう平気かもォ。ありがとォマリィセンパイィ〜大好きィ〜!!」

「ちょ、ちょっとクララ、くっつかないでってば!」

 

「無事治ったみたいで良かったね」

「まぁ、一時期のフリアと比べて、単純に痛めただけだもんな。それでも心配ではあったけど……」

「じ、地味にボクに攻撃するのやめてくれないかな?」

 

 スパイクタウンのポケモンセンターにて、クララさんとマリィは、クララさんの喉について調子を確かめており、無事完治したことによって大喜びしたクララさんが、ここまで看病してくれたマリィに飛びついていた。

 

 一方でその様子を見ていたボクたちは、ボクが病気でダウンした時の話を思い出しながら少し微笑んでいた。いや、ボクがしていたのは苦笑いだけど……

 

(あの頃は色々迷惑をかけちゃったなぁ……)

 

 後でホップたちに追いついたとはいえ、3日くらい足踏みをしたような記憶がある。とても大事な病気というわけでもなかったので、大騒ぎする必要はなかったけど、それでもみんなに心配はかけてしまったので、同じようなことになっている今回の状況に少なくない親近感を覚えている。

 

 喉が治ったのに使われた日数も概ね一緒だしね。

 

「とりあえず、これで喉が治った事だし、ようやく安心して色々回れそうだね」

「みんなごめんねェ。本当ならもっと早く挑めたのにィ……」

「いえいえ、誰も気にしてないから大丈夫だよ」

 

 申し訳なさそうにするクララさんと、そんなクララさんに対して大丈夫と微笑むユウリ。他の人も言葉にこそしていないものの、誰もクララさんを責めることなどせずに、みんな一様にしてクララさんを許すような態度見せている。

 

 今回の騒動の1番の立役者であるクララさんを責める人なんてここには居ないだろうし、たとえ立役者でなくとも、ここにいるメンツだと責めることはしなかっただろう。クララさんを責める未来には絶対にならないと言える。

 

 ボクとしては、先程も話したバウタウンでの病気のこともあったので、全然他人事に聞こえないというのも要因の一つだ。

 

 自分のせいでパーティの進行が止まるのって、本当に申し訳なさが凄いからね。よーくその気持ちはわかる。

 

「でも、これでめでたくクララ復活ゥ!!すぐにでもネズ様に挑めっぞォ!!」

 

 けど、そこは切り替えの早いクララさん。すぐさまテンションを上げて、拳を突き上げながらこの先のネズさんを見据えていた。

 

「この切り替えの速さは見習わないとなぁ」

「確かに、ネズさんを超えるにはしっかりと気持ちを切り替えておかないとね」

「間違いなく、大きな関門のひとつだもんな……」

 

 ボクの言葉に続くユウリとホップ。特にホップの言葉に深く頷いたみんなは、そのまま表情を引きしめて、クララさんが休養していたこの日々を思い出していく。

 

 クララさんが喉を癒していたこの日々の間も、当然だけどネズさんに挑んだジムチャレンジャーは沢山いた。特に、スパイクタウンに唯一存在するこのポケモンセンターは、宿として使われている部屋の窓からスパイクタウンの入口を見ることができ、そこを通過する人はいやでも目に入ることになる。

 

 クララさんが動けない間も、インテレオンたちの特訓は当然欠かしてはいないけど、ちょっとした休憩時間に、この窓からスパイクタウンを出入りする人たちを観察してみたんだけど……

 

 結果はこの宿部屋に入った時に見た光景と全く変わらなかった。

 

 明らかに落ち込んだ表情を浮かべたままこのスパイクタウンを立ち去っていく人たち。そして、日が経つにつれてどんどん減っていく、このポケモンセンターに宿泊していたはずのジムチャレンジャーたち。

 

 この2つの事柄から、ボクたちが足を止めていたこの3日間で、誰一人としてネズさんを倒すことが出来なかったことが表されていた。

 

 落ち込んだ顔をしたままここを去った人たちも、みんながみんな諦めた訳では無いだろう。まだまだジムチャレンジの締切まで期間もある事だし、1度ワイルドエリアに向かって鍛え直す人も沢山いるはずだ。しかし、少なくともここ数日でこのジムを突破した人は誰一人として知らない。ここから笑顔でポケモンセンター、ひいてはスパイクタウンを離れた人なんて、少なくともボクが外を見ていた間には1人もいなかったのだから。

 

 ここまで生き残ってきたジムチャレンジャーは、当然だけどここに来るまでに6つのジムを乗り越えてきた猛者ばかりだ。全員が全員、何かしらに秀でたものを持っており、その長所を活かしてここまで勝ち残ってきた。もちろん、まだまだ未熟と言って差支えのないボクたちチャレンジャーは、本気のジムリーダーたちにはまだまだ及ばないだろう。けど、ジムチャレンジ用に調整されたポケモン相手なら、一矢むくいる人がいてもおかしくは無いはずだ。

 

 それなのに突破者0。

 

 たとえジムチャレンジ用に手加減されたポケモンであっても、ネズさんの戦い方がそれを感じさせないくらい巧みだということだろうか、はたまた、このスパイクジム特有の、ダイマックスをすることが出来ない戦いというのが、長くダイマックスと触れ合っていたガラル地方のポケモントレーナーにとっては、実はあまり慣れていない戦いだったりするのだろうか。

 

(それにしたって、普通に野良で戦う時はダイマックスをしたくても出来ないことがほとんどだから、関係なさそうだけどなぁ)

 

 やっぱりネズさんが単純に強いということなのだろう。

 

「で、フリアっち。結局どうするのォ?」

「いよいよ挑むのか?」

「そうだね〜……」

 

 クララさんとホップの言葉を聞いて、改めて窓の外を覗いてみると、まだまだお昼だと言うのに人の通りが全く確認できない。あれほどシャッターの前に集まっていたジムチャレンジャーの姿も全然見ない。

 

 ボクたち以外の全員が、もうこのスパイクタウンを離れたということだろう。今なら、スムーズに戦うことが出来そうだ。

 

「確かに、もう挑んでみてもいいかもね」

「待ってました!!」

「ようやくとね」

 

 ボクの言葉にいよいよネズさんと戦えるとわかり、その目に闘志を宿すホップと、自身の兄との勝負に手をにぎりしめるマリィ。

 

「別にボクに許可取らなくても良かった気はするけど……っていうか、さっきクララさんがすぐ挑むって言ってたのに……」

「そこはほら……何となく?」

「このグループのリーダーってフリアっちみたいなところあるしィ?ああは言ったけどォ、最終決定件はフリアっちにある的な?」

「いつの間にそうなったの……?」

「「「「何となく?」」」」

「あ、はい……」

 

 口をそろえてこう言われるとどうしようもない。4人同時に言われたことによってきた大きな圧の前に、苦笑いを浮かべながらそっと答える。

 

 とりあえず、ボク以外のみんなも全員今日ネズさんに挑むことは賛成らしいので、さっそく身だしなみや、荷物、モンスターボールを確認して、このポケモンセンターを発つ準備をする。

 

 着替えやクララさんたち女性陣のメイクなどはすでに終えていたため、準備するものとしてはあまり数は多くなく、スパイクジムへ行くための準備はほんの数分で終えてしまう。

 

「じゃあ行こっか!」

「「「「おお~!!」」」」

 

 全員の準備が終わったことを確認して、ボクたちは泊まっている宿部屋から出発して一階への階段を下っていく。

 

 階段を下っていく間も、ボクたち以外の話声と足音が全く聞こえないあたり、やっぱりこのスパイクタウンに残っているジムチャレンジャーはほとんどいないみたいだ。

 

 寂れている町と言われいてるスパイクタウンだけど、賑やかだったここ数日の方がボクとしては馴染み深かったため、むしろこの状態がこの町にとっては日常なんだと思うと、なるほどマリィがどうにかしてこの町を復興させたいという気持ちもわからなくはない。

 

 ジョーイさんのお見送りの言葉を背に受けながらポケモンセンターから出たボクたちは、スパイクタウンのアーケードへと目を移す。

 

 人通りがぱたりと無くなったスパイクタウンからは、風が吹いたときにシャッターがカタカタと揺れる音のみが響き渡る。

 

「あれだけ賑やかだったのに、たった数日でこうなっちゃうんだ……」

「むしろ、あたしにとってはこれが日常と」

「なのかもだけど、最近のにぎやかさとのギャップが凄すぎるぞ……」

「ポケモンセンターにいた時から静かだとは思っていたけどォ……」

「こうやって表に出てみると改めて寂れているの意味を実感するね……」

 

 5人そろってスパイクジムがあるスパイクタウン奥へ視線を向けながら感想をこぼしていく。よくよく耳を澄ませると、足音と誰かの話声が聞こえるあたり、おそらく物陰にエール団がいるんだろうけど、少なくともボクたちの視界の中に人影は誰もいない。むしろ、人が誰もいなくて静かだからこそ、物陰の声が聞こえているともいえる、そんな状況だった。

 

「とりあえず前に進もう。スパイクジムはここを真っすぐでいいんだよね?」

「よかと。……そもそもジムと言っていいのか、ちょっと怪しいけどね」

「……どういう事?」

「見ればわかると」

「?」

 

 マリィの言葉に首をかしげながらも、ネズさんに挑むために足を動かしていく。マリィの言葉がどうしても引っかかってしまい、気になって仕方ないけど、彼女がいけば分かるというんだから今はその言葉を信じて前に進もう。これから5人が連続してネズさんへと挑むということを考えれば、かなりの時間を要するだろうから少しでも早く行ってあげる方がネズさんも楽になるだろうしね。

 

 ネズさん視点、ボクたち5人との連戦に使う体力を考えたらあまり意味がないかもしれないけどね……

 

 とりあえず、マリィの言う通り真っすぐ進めばネズさんが待っている場所に行くことはできるみたいなので、マリィの指示に従ってみんなで前へと歩いて行く。

 

 アーケードになっているため少し薄暗い道を歩きながら、ネズさんとどう戦うだとか、スパイクタウンはどんな感じだとか、各々自由に意見を交換しながら道を進んでいくと、エール団がボクたちの姿を見つけたみたいで、こちらに向かって声をかけてきた。

 

「あ、お嬢!!クララ姐さん!!他のみなさんもおはようございます!!」

「「「「おはようございます!!」」」」

「うん、おはょ」

「みんなァ~やっはろォ~!!」

「その挨拶大丈夫?」

「フリア、それは何の心配なんだ?」

 

 まるで舎弟か、もしくは運動部の後輩系のようなノリで挨拶してくるエール団と、こちらはこちらでアイドルかのような言葉で返事をするクララさんに、いつもの挨拶をするマリィ。エンジンシティでいざこざを起こしていた時と比べたらかなり軟化したボクたちへのその態度に、なんだかものすごく違和感を感じてしまう。

 

 昨日の敵は今日の友どころではない間敵対していたのに、こうもあっさりと手のひらをくるっと返されてしまうと、無性に変な感覚が残ってしまう。

 

「見てくださいクララ姐さん。このハンドタオルを使って応援とかいいなと思ったんですがどうでしょうか!!」

「ナニコレ激ヤバ!!超かわいいんですけどォ!?」

「姐さん用にも一つあるんで貰ってください!!」

「いいのォ!?ありがとうゥ!!」

「ちょ、ちょっと!?あたしの目の前で変なやり取りしないで!?恥ずかしか!!」

 

「なんか、凄いね……こんな関係になるなんて想像もしてなかった……」

「あはは、ボクも……」

「でも、なんだかみんな楽しそうだよな!!」

 

 エール団との関係性にもやもやしていると、ボクたちを置いて行ってどんどんと盛り上がっていくクララさんたち。その盛り上がりを、苦笑いを浮かべながらちょっと離れた位置で観察するボクとユウリ。けど、ホップの言う通り、いろいろしがらみがあったとはいえ、今の彼らはものすごく楽しそうで、この先ももうあんなことをして他の人を邪魔することもしないだろうと心から思える。

 

 現に、最初は5人で歩いていたスパイクジムへの道のりも、先ほどクララさんに声をかけたエール団の人たちをきっかけに、またさらに10人、15人と追加されて行き、いつの間にかスパイクタウンの人口全員いるのではないかというくらいの大所帯にまで膨らんでしまっていた。

 

 マリィさんとクララさんを中心に広がっていくその喧騒は、先ほどまで感じていたこの町の寂しさを吹き飛ばすかのような賑やかさになっており、それはジムチャレンジャーが沢山いて盛り上がっていた、3日前の町の雰囲気を思い出させるかのようなものになっていた。本当に楽しそうで、みているこちらまでなんだか笑ってしまいたくなるようなこの空気を見て、マリィが好きなスパイクタウンはこういうところなんだろうなと、ユウリとホップと顔を見合わせながら改めて実感する。

 

 この大きな盛り上がりはさらに広がっていき、最終的にはちょっと距離を離れて歩いていたはずのボクたちまで巻き込んでしまっていた。

 

 最初こそ、エンジンシティやガラル第二鉱山で戦ったことのある人たちの姿もあったため、ちょっとぎくしゃくしそうになってしまったものの、そこはクララさんが間を取り持つことによって、ボクたちとエール団の架け橋になり、その時のことをエール団側から改めて謝ってもらうことによって和解。それからは、クララさんとマリィ程ではないにしろ、ボクたちに対してもかなり柔らかい対応で接してくるようになっていた。

 

 そしてこの時に知ることになったんだけど、どうやらこのエール団は、スパイクタウンのジムトレーナーで構成されているらしい。何人かやたら練度が高い人がいたり、全員の手持ちがあくタイプに統一されていたりしていたんだと、ここにきてようやくその理由に納得することが出来た。

 

 元がジムトレーナーということもあってか、ボクに飛んでくる質問もポケモンバトルに関することが中心になっており、どうしてそんなに強いのか。どうしたらこんなにも斬新な戦法を思いつくのか。シンオウ地方ではどんなバトルスタイルが主流なのか。等々、ボクと和解できたと知るや否や、物凄い質問の嵐にさらされ始めていく。

 

 寂れているなんてとんでもない。ここには確かに、他の町にも負けない強いつながりと絆がある。そのことを強く感じた楽しいひと時となる。

 

 エール団のおかげで、スパイクジムに向かう間も楽しく進むことが出来たボクたちは、奥に進むにつれてだんだんと大きくなるとある音が耳に入ってくるようになる。

 

「いよいよね」

 

 この音の正体について質問しようとする前に、マリィから放たれたこの言葉。この一言だけで、ボクたちの目的地が目前にまで迫っていることを察する。

 

 エール団たちと盛り上がっていた会話がだんだんと小さくなっていき、徐々にボクたちを包み込んでくるプレッシャーに、いよいよもって確信するマリィ以外の4人。

 

 この先に、ネズさんがいる。

 

 手に滲んでくる汗をぎゅっと握りながら、さらに前へと足を進めていくと、細長い通路だった今までの道からは一転して、少し開けた場所に出た。

 

「これは……」

 

 その場所は、開けたと言ってもそんなに大きく広い場所というわけではなく、ポケモンバトルのコートが一つと、その先にある路上ライブ用のちょっとしたステージがひとつ。そしてこの2つを囲むように建てられたフェンスがあるだけの簡易的な広場。

 

 雰囲気としては、ストリートにたまに1つだけぽつんと置いてあるバスケットコートくらいの大きさだろうか。少し小さくて、シンプルなそのバトルコートは、ダイマックススポットのないこの町を表しているかのようだった。そして、何よりも目を引くのが先程もバトルコートの横に存在すると言った路上ライブ用のちょっとしたステージ。その上に立ち、現在進行形でゴリランダーと2匹のストリンダーに演奏を任せながら、その中心にて、スタンドマイクを鮮やかに操りながら熱唱をするネズさんの姿と、そんなネズさんの背後で、ネオン街灯によってキラキラとその存在を主張するあくタイプのマーク。

 

 大きく自己主張するそのマークは、バトルコートを見下ろしているかのようにも見え、その輝きにてバトルコートを照らし出していた。

 

 ネズさんの周りにて、ネズさんのライブで盛り上がっているエール団の姿を見ながら、ボクはこの場所の意味に気づく。

 

「マリィ。もしかしてこの場所が……」

「そう。その通り」

 

 ボクの次の言葉を理解し、答えを言いきってしまう前に口を開くマリィ。

 

「この小型のステージの前にあるバトルコート……ここがスパイクジムのバトルコート」

「ここが!?ジム戦用の建物があるとか、ちょっとしたスタジアムになっているとか……パワースポットがないのはわかるけど、ないならないなりにちょっと工夫されたものがあったりするのかと思ったぞ……」

 

 まさかのバトルコートがそのままドンと置いてあるだけのここが目的地だということを未だに信じられないでいるホップが、思わずといった感情で口を開く。

 

 確かにホップの言うとおり、もうちょっとなにかしらの特別感があっても良かったと思わなくはない。しかし、このスパイクタウンにそういった建物がないのは、おそらくこのスパイクタウンという場所が、全ての建物が繋がっているアーケード街だからだと予想する。全ての建物が繋がっているうえ、町全てが屋根におおわれているこの町は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、捉えることができる。

 

 あまり広さがなく、かつ既に屋内であるこの場所に改めて何かを建てる必要なんて特にない。逆に言ってしまえば、このスパイクタウンの入口であるあのシャッターをくぐった時点で、ボクたちはスパイクスタジアムに足を踏み入れている。と言っても過言ではないというわけだ。

 

 結論を言ってしまえば、今自分たちの目の前にあるこのバトルコートで、7つ目のジムバッジをかけた戦いをすることになる。そのことを意識して、自然と唾を飲み込むボクたち5人組(チャレンジャー)

 

 いつの間にか曲も終わりに差し掛かり、ラスサビに向けてさらに盛り上がりを見せた後、1曲歌い終わったあとの疲れを首からかけていたタオルで拭き取りながら、こちらに視線を向けてくるネズさん。

 

 ボクたちの周りと、ネズさんの周りにいたエール団たちも空気を読み、素早くフェンスの外へと移動をしていく。

 

 バトルコートを挟んで向かい合うボクたちとネズさん。

 

「よく来ましたね。正直ジムチャレンジャーが全員いなくなったこのタイミングを選んでくれて、少し感謝をしています。あなたたちの活躍は小耳に挟んでいるので、是非とも忙しい中サラッと終わらせるのではなく、しっかりとバトルしたいと思ったので……」

 

 相変らすの猫背姿で、しかしそこからは怠さや暗さを感じさせない芯の通った声でこちらに語り掛けてくる。

 

「ここスパイクタウンにはダイマックスエネルギーのスポットがありません。なので、ダイマックスを使わない一風変わった……いえ、ダイマックスのない、ポケモンバトル()()()シンプルなバトルを楽しんで頂けたらと思います。また、ジム戦をするにあたって本当はユニフォームに着替えて貰うのが約束なのですが……まぁ、中継する訳でもないし、ジムミッションもないので服装はご自由にしてください。私服でもユニフォームでも、動きやすい格好でどうぞ」

 

 話の内容はここでのバトルについての軽い説明。ダイマックスがないことは知っていたので特に驚くことはない。強いて言えば、珍しく私服でネズさんと戦うことになると言ったことくらいか。

 

 ユニフォームに着替えてもいいんだけど、更衣室遠そうだし、その間に他の人のバトルが見れなかったら勿体ないしね。今回はいつもの観客席からの観戦ではなく、フェンスの外からといういつもより近い場所からの観戦だ。それに、控え室なんてものもないし、テレビが来ないから少し大雑把でもいいということもあって、戦う前に試合を見る方法もしっかりと確保されている。

 

 試合前に拍手や歓声しか聞こえないというモヤモヤする体験もしなくて良さそうだ。

 

 観客もよそから来ないから人の目も少ないし、ダイマックスもないからみんなにとっては特別でも、シンオウ育ちのボクにとってはむしろやり慣れたルール。

 

 やりやすさという点においてはボクが1番アドバンテージがある。

 

「以上がスパイクジムでのルールです。何か質問があれば」

「「「「「……」」」」」

 

 一言も発さず、しかし全員で首を縦に降り、質問がないことを表す。素直にありませんと言えばよかったんだけど、みんな気合いを既に入れ始めているのか、集中モードのためだんまりになってしまっていた。

 

(考えることは一緒みたいだね)

 

「ふぅ……では、長話はこの辺で……」

 

 長かった説明を終えたネズさんが、ゆっくりとステージから降りてバトルコートの反対側に立つ。そして……

 

 

「おれはスパイクタウンジムリーダー!!あくタイプの天才、人呼んで哀愁のネズ!!負けるとわかっていても挑んでくる愚かなお前たちのために、ウキウキな仲間たちと共に、行くぜ、スパイクタウン!!誰からでもかかってきなァ!!」

 

 

 スタンドマイクを取り出しながら、先程とは別人なのではと思うほどの迫力と威圧を放ち、バトルの構えを取る。

 

「……じゃあ、オレからいくぞ!!」

 

 その威圧に押され、少し動きが固まった中、唯一動いて前に出たホップ。1番手を担うつもりだ。

 

「オレはホップ!!アニキを超えて、チャンピオンになる男だ!!」

「来な!!最初の犠牲者!!その幻想をぶち壊してやるぜ!!」

「絶対に勝つ!!バイウールー!!」

「カラマネロ!!」

 

 両者同時に繰り出す最初のポケモン。

 

 盛り上がるエール団たち。

 

 フェンス外まで下がり、じっとバトルを見つめるボクたち。

 

 睨み合う、ホップとネズさん。

 

 寂れた町の、それでいて今、どこよりも輝いている町の、激闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チャレンジャー

実機でも突破者は2桁超えていないという難関。
時系列で考えれば、現時点で突破しているのはマクワさん含めて片手の数もいなさそうですね。

エール団

クララさんによる説教で一気に気前のいいお兄さん、お姉さんのグループになりました()
後半のエール団はただただいい人たちなので、おそらく根っこからいい人たち……のはずです。というか、私がそう思いたいだけです。




更新のお知らせなのですが、次の月曜日が私のワクチン3回目の日になっています。
二回目のワクチンの時もそうだったのですが、副反応で更新できない日が少し出てくると思います。
こればかりはいつ再開できるかはよめないので、気長に待っていただけたらと思います。
ご理解のほど、よろしくお願いします。

5月は休みが多いですね。申し訳ありません。

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