【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

110 / 374
110話

「ねぇ、ネズさんの戦い方……私たちの時と比べて……」

「ああ。今までのジムリーダーたちも、フリアに対しては色々動きを変えたりしていたけど……」

「見た見た。うちもよく知ってるけどォ……」

「……」

 

 みんなが、フリアとアニキの戦いに釘付けになっている。今までだってフリアはジムリーダーのみんなに対して目を離せない凄い戦いをしていたのはよくわかっている。けど、今日の戦いはどちらかと言うとアニキの方が気合が入っているように見えた。

 

 3番目にアニキが出したあのストリンダー。アニキがフェアリータイプの対策をするために、あくタイプ以外のポケモンを手持ちにしているのは知っていた。けど、少なくともジムリーダーとして立ち塞がっている時にストリンダーを使っているところなんて見たことがなかった。

 

「それだけ、本気ってこと……?あのアニキが……」

「ストリンダーを使っていることについて、だよね?」

 

 あたしの呟きに応えるユウリに頷く。アニキがストリンダーを出していることがこの場においてはおかしいことだと言うのはユウリたちも気づいている。そして今この場面において、マホイップと言うフリアにとって1番頼りたかったはずのあくタイプ対策ポケモンを、完全に封じるための選出だということも。

 

「アニキのジム戦を近くで見たことは何回もあるけど、こんなにもアニキがジム戦で手加減を消しているところ、初めて見たと」

「スカタンクが『だいばくはつ』していたり、ズルズキンが『こわいかお』で機動力を奪うことに全力をかけたり……俺たちと戦う時とはまるで戦い方が違ってびっくりしたぞ」

「これがジムリーダーの底力……ってコトォッ!?」

「いや、いってもまだジム戦でしかないから、いくらネズさんでも流石に本気のメンバーってことはないと思うけど……」

「そこはユウリの言う通りと」

 

 ユウリが言っている通り、まだアニキは完全な本気じゃない。本当にアニキが全力で戦うのなら、あと手持ちが2体増えるのは勿論だけど、他にも、スカタンク、ズルズキン、そしてこのストリンダーも、ジム戦や趣味用に調整された個体じゃなくて、アニキが小さい頃から育てた誰よりも信頼の厚いみんなに変わる。

 ここにジム戦ではおろか、公式戦でもたまに姿を見せないあの子も加わるのだから、今の状態はアニキの本気にはまだ届くことはない。けど、だからと言って、今のアニキが手を抜いているわけじゃない。

 例えるなら、相棒を封印しているフリアのような……

 

「……ってあれ?」

 

 フリアのことを考えていた時に、ふと視線をフリアの方に向けると、インテレオンをボールに戻しているフリアが、どこか、何かを決心したかのような様子を見せていた。

 

「おい、フリアの様子……なんか変じゃないか?」

「うん……」

「キルクススタジアムでもあんな表情してなかったけどォ?」

 

 今までに見たことの無いフリアの表情に、ここまで一緒に旅をしてきたみんなはすぐに何かを察する。

 

 じっとストリンダーとアニキのことを見つめて、真剣なまなざしをしているフリア。そこからは、今までフリアから感じたことの無い、ダンデさんやキバナさん、アニキから感じた、あの圧倒的なまでの重圧を感じた。

 

「フリア……」

 

 ジムチャレンジが始まって、フリアが先に最後の1体に追い詰められたところは初めて見た。それほどまでにフリアは追い詰められていて、周りにいるエール団もアニキの勝ちを信じてやまない。けど、そんな圧倒的に不利な状況であるからこそ、フリアの気持ちがどんどん深いところまで沈んでいて……

 

「「「「……」」」」

 

 そんなフリアの姿に、あたしたちは目が離せなかった。

 

 フリアがアニキのことをじっと見つめていた時間は決して長くはない。けど、あたしたちにはその時間がものすごく長く感じた。呼吸さえも忘れてしまいそうな、息の詰まるようなその時間。その終わりは、フリアの動きによって打ち破られ……

 

「だすしか……ないよね!!」

 

「「「「……ッ!?」」」」

 

 フリアの手が、腰のホルダーについているひとつのボールに触れた。

 

「いくよ……!!」

 

 それは今までフリアがジム戦で触れたことの無かったボール。

 

 シンオウ地方からここまでずっと一緒に旅をしてきたと言われている、フリアの最強の手持ち。

 

 ずっと気になっていて、けどタイミングがずっと悪くて、ここまで一度も見ることが出来なかったその姿。

 

 あたしたちだけじゃない。今や、ガラル地方に住むあらゆる人が気になっているそのボールの中身。

 

「……来いッ!!」

 

 そのボールがついに投げられ、空中で開け放たれる。

 

(ついに来たと!!)

 

 ボールの中から出てきたポケモンを絶対に見逃さないように、ただひたすらに視線を向け続ける。

 

 ここにいる全員から視線を向けられる中、その中心に呼び出されたポケモンは、ゆっくりと、しかし、圧倒的存在感を持ってして、優雅に佇む。

 

「「「「ッ!!」」」」

「これは……」

 

 そのポケモンは、相対していないのにこちらの体を物理的に潰してきているようなほどのプレッシャーを放っていた。そして同時に、あたしたちの頭の中を、おみとおししているかのような真っ赤なモノアイでじっと見渡し観察していた。

 

 決して珍しいポケモンではない。なんならワイルドエリアでも見かけることの出来るポケモンだ。けど、ここまでのプレッシャーを放つこのポケモンに出会ったことは1度もなかった。

 

「これが……フリアの……切り札……ッ!!」

 

 息を飲むユウリ。目を輝かせ、ぼそっとつぶやくホップ。呆気に取られるあたし。震えるクララ。

 

 みんな行動は違えど、思っていることは同じだった。

 

「……ヨノワールッ!!」

 

 疑っていたわけじゃない。けど……

 

「ガラルのジムのデビュー戦だ。完璧な逆転を見せるよ。相棒!!」

「ノワアアァァァァッ!!」

 

『ボクの1番の相棒』。その言葉に偽りなしと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨノワール……勿論見た事はあります。が、ここまで育てられているとは……オニオンさんの本気のヨノワールよりも強いのでは……?」

「ボクの……何よりも信頼している最高の相棒なので!!」

「……」

「スト……」

 

 ただ佇み、相手をじっと見つめるヨノワールと、その視線だけで萎縮しているストリンダー。ネズさんも思わずマイクスタンドから手を離してしまいそうになるほど意識をヨノワールに持っていかれていた。しかしそこはジムリーダー。すぐさま意識を切りかえて、先程までと同じように、マイクスタンドを振り回しながら戦闘態勢へ。

 

「あくタイプ使いのおれの前にゴーストなんざ、タイプ相性も知らない青二才さんかぁ!?おれたちスパイク魂で潰してやるぜ!!」

 

 相も変わらずこちらを煽ってくるネズさん。だけど、内心はタイプで勝ってるから有利だなんてひとつも思っていないだろう。上がっている口角を見ても、ボクのヨノワールを見て物凄く燃えているのがよく分かる。

 

(こんなに感情を見せてくれる人なんだ……ネズさん……)

 

 普段の猫背で、少しやる気のないというか、ダウナーな雰囲気を感じさせるような発言や言動のせいで、いまいち感情がどうなっているのかわかりづらかったネズさんが、ここまで表情を変えて構えていることが意外で驚きで……そして同時に物凄く嬉しくて。

 

(こんなにも感情を吐き出してくれているネズさんに、ボクもお返ししないとね!!)

 

「ストリンダー!!『オーバードライブ』をかき鳴らせェ!!」

「ヨノワール!!『いわなだれ』を目の前に!!」

「リッダアアァァァ!!」

「ノワッ!」

 

 ストリンダ―から放たれる電撃の音を、ヨノワールはいわなだれを目の前に積むことによって、まるでバリゲートのように設置を始める。が……

 

「『オーバードライブ』は音技だぜ!!そんなちんけな身代わりなんて貫通してやるぜ!!」

 

 ネズさんの言う通り、ストリンダ―だけが使うことのできるこのオーバードライブは、電気が走っているのが目に見えるから、普通の電気技だと勘違いしてしまいやすいけど、ばくおんぱやハイパーボイスと同じで、みがわりを貫通する、いわゆる音技と言われる攻撃だ。ヨノワールがしているのは見ての通りみがわりではないけど、いわなだれの壁に攻撃を受けてもらうという、実質みがわりのような使い方をしている。ネズさんが言っているのは、こういった方法で攻撃を防ぐことはできないぞという事だ。けど、そんなこと百も承知している。

 

「最初から、防ぐ気はないんでね……『かげうち』!!」

「!?」

 

 オーバードライブを掻き鳴らすことに夢中になっているストリンダ―の足元から、右手を黒く染めたヨノワールが現れて、素早く手刀をストリンダ―に叩き込む。

 

「リッ!?……ッダァァ!!」

 

 攻撃を受けて少したたらを踏むストリンダ―だけど、すぐさま反撃をするためにあたり一帯に電撃をまき散らすストリンダ―。しかし、そのころにはすでに影に潜って回避していたヨノワールは、ボクのすぐそばに控えるように下がっていた。

 

「はっ、ちょっと小突いてすぐ逃げるなんざ、見た目に反してチキンだな!!」

「『想像以上に速くて厄介だな』ってことですね。誉め言葉として受け取っておきますね」

「都合よすぎだぜ!!」

 

 何となくだけどネズさんの言いたいことが通訳できるようになってきた。

 

 恐らく、ヨノワールは本来こんなに素早く動くことのできるポケモンではないのに、影を利用して速く動くこの姿に驚いているといったところだろう。影に潜んで素早く動くのは、ボクのヨノワールの得意行動だ。そう簡単に攻略されるとは思わないし、されたところで応用は効くので問題ない。

 

 それよりも、いかに相手にダメージを与えるかが大事だろう。

 

「ヨノワール!!さらに『いわなだれ』で壁を作れ!!」

「何度も同じことをさせるかよ!!ストリンダー、『ばくおんぱ』!!」

 

 新しく岩を落として壁を作ろうとするところに、先ほどよりもさらに強い音波をあたりにまき散らすストリンダー。特性『パンクロック』により、威力が底上げされたその攻撃は、ノーマルタイプの技故ヨノワールに当たることはないけど、代わりにヨノワールが積み上げてきた岩をすべて吹き飛ばす。

 

「お前の好きにはもう━━」

「『かわらわり』!!」

「!?」

 

 確かにヨノワールが積み上げたものは破壊されたけど、そもそもネズさんに同じ攻撃方法が通じるとは思っていない。だからこの岩は壊される前提だ。

 

 ばくおんぱによって吹き飛ばされた岩をかわらわりで打ち返すことによって、逆にストリンダーへの攻撃にする。

 

「くっ、『オーバードライブ』だっ!!」

 

 飛ばされてきた岩を壊すために再び電撃の波を飛ばすストリンダー。かわらわりで打ち飛ばされた岩を的確に壊していき、自分へのダメージを減らしていく。ネズさんの反応が的確だっため、対して大きなダメージを負うことなく岩を全部落としていくストリンダーは、しかしそのことに集中しているため足を止めている。

 

 最大のチャンス。

 

「ヨノワール。『じしん』」

 

 その隙を逃さないように、静かに、ヨノワールに告げた。

 

「ノワッ!!!」

 

 ボクの指示を聞いたヨノワールが、右の拳を強く握りしめ、思い切り地面にたたきつける。

 

 瞬間走る爆音と、ヨノワールの拳を中心に広がっていくじめんタイプのエネルギー。

 

 ストリンダーの持つ、どくにもでんきにもばつぐんを取ることのできる天敵の技が、オーバードライブ中によって動くことのできないストリンダーに襲い掛かる。

 

「ぐっ!?タイプ一致ではないのにこの火力かっ!?」

「最初からこれを当てるために動いていましたからね!!」

「ダッ!?」

 

 地面を駆け抜ける大地のエネルギーがストリンダーをうち、激しくもんどりうちながら吹き飛ばされる。はたから見ても致命傷を負ったように見えるその姿は、明らかな追撃チャンスとなっている。

 

「ヨノワール!」

「ッ!!」

 

 体力を思い切り減らしたストリンダーにとどめを刺すべく、前に走るヨノワール。

 

「ストリンダー、こらえどころだ!!『ヘドロウェーブ』!!」

「ッダァァァ!!」

 

 猛進するヨノワールを止めるべく、最後の力を振り絞って毒の波を放つストリンダー。どの方向から襲い掛かられてもいいようになのか、あたり一帯にまき散らすかのように吐き出されるその毒は、近づくものを皆吹き飛ばす無差別攻撃と化す。

 

「落ち着いて!!君なら全部避けられるよ!!『いわなだれ』!!」

 

 迫りくる毒の波に対して、地面に手を置き、いくつかの岩を召喚するヨノワール。その岩を両手に持ち、ストリンダーへの直進を再開するヨノワールは、自分に向かってくる毒液を、時に影に潜ってよけ、時に岩ではたき落とし、時に岩でそらしていく。

 

「『オーバードライブ』!!」

「岩を投げて!!」

 

 ヘドロウェーブで止められないと悟ったネズさんが、すぐさまオーバードライブへと技をチェンジ。すぐさま電撃の波が飛んでくる。対するヨノワールは、その電撃に対して右手の岩を投げる。しかし、これだけでは先ほど岩の壁を貫かれたように、またこちらがダメージを負ってしまう。

 

「もう一回!!」

 

 なので、次に左手に持っている岩を投擲。先に投げられていた岩にぶつかるように本気で投げられた岩は、ボクの予想通りぶつかり合って砕け散る。

 

「ダッ!?」

 

 その時に生まれた石の礫が次々とストリンダーへと襲っていき、ストリンダーの動きを阻害していく。

 

 同時に生まれるオーバードライブの波の歪み。

 

「そこ!!『かわらわり』!!」

「ッ!!」

 

 怯んだことによって生まれた波の歪みに、白く光る右手を思い切り叩きつける。勢い余って地面にまで到達したその技は、電撃のはじける軽快な音と、地面を叩く鈍い音を同時に響かせながらオーバードライブを吹き飛ばし、そのままストリンダーの懐に潜り込んで、左手のかわらわりにて空中に打ち上げる。

 

「とどめの『かげうち』!!」

「ノワッ!」

 

 空中に打ち上げられ、無防備となったストリンダーを視界にいれながら地面に手をつくヨノワール。その手のひらを中心に、ヨノワールの影がどんどん広がっていき、影の沼を作り上げる。おどろおどろしい気配を放つその沼からは、ヨノワールの視線をなぞるように動き出す、鋭い爪をはやした影の手が顕現する。

 

「やれ!」

「ッ!!」

 

 周りに影の手が現れたことを確認したヨノワールが、今度は左手をストリンダーに向け、ぎゅっと手を握る。その行動を合図に、ストリンダーめがけて飛んでいく無数のかげうちの手が、無抵抗のストリンダーを次々と打ち付けて最後に地面に叩き落とした。

 

 先ほどの自分から殴るかげうちではなく、自分の影に攻撃させる2種類目のかげうちの使い方。

 

「低い威力を手数で……成程」

 

 威力は自分で殴るよりも控えめながらも、手数は圧倒的に多いこの攻撃は、時として普通に攻撃するよりも火力が高くなる時もある。その証明は、その攻撃によって地面に落ちたストリンダ―の姿にて証明される。

 

 

『ストリンダー戦闘不能!!勝者、ヨノワール!!』

 

 

 目を回して倒れるストリンダーを一瞥しながら、影から伸びた手を自身の手を振り払うことで消していくヨノワール。散っていく影の中心にてたたずむヨノワールは、オーバードライブやヘドロウェーブがちょくちょく掠っていたような痕は見えるものの、ほぼ無傷でネズさんを見つめていた。

 

「……成程、さすが相棒と信頼するだけはあると」

「あたりまえです。ボクが全幅の信頼を寄せる最高の仲間ですから」

「……ノワ」

 

 余裕そうに振る舞うヨノワール。けど、思ったより早くストリンダーを落とすことが出来たのは、間違いなくインテレオンのねらいうちによって少なくないダメージを与えることができたからだ。おかげで、まるまる1体分あったボクとネズさんの差はかなり縮まった。

 

 とはいえ、安心なんて当然できる訳もなく、むしろここからが本番と言っても差し支えないだろう。

 

 先程戦ったのはどくとでんきタイプのストリンダーだ。ゴーストタイプを持つヨノワールには、メインウェポンのひとつであるどく技はこうかはいまひとつだし、何よりもストリンダーが大の苦手とするじしんをヨノワールが覚えていた。だからこそここまで有利に戦うことが出来たし、終始攻めきることが出来た。

 

 しかし、次のポケモンは絶対にそう上手くはいかない。なぜなら、ここがあくタイプのジムであり、ゴーストタイプにあくは弱点をつくことができるから。いくらあくタイプ以外も手持ちに入れているとはいえ、ジム戦の殿を違うタイプに任せる。なんてことはしないだろう。ほのおタイプ以外もたくさん使う、あのオーバさんでさえも、最後はほのおタイプでしめている。タイプのエキスパートとはそういうものだ。となれば、ネズさんの最後の1体も当然……

 

「こっちも最後のメンバー紹介だぜ!!甲高い唸り声が自慢のタチフサグマ!!奴の喉元に自慢の『じごくづき』を突き刺してやれ!!」

「グアアアァァァッ!!」

 

 自身の1番信頼するあくタイプを出してくる。

 

 唸り声を上げながら場に現れたのはタチフサグマ。あく、ノーマルタイプのポケモンなため、かくとうタイプにめっぽう弱いから、こちらのかわらわりはいい方に機能してくれるだろうけど、逆に1番の得意技であるかげうちが一切当たらない。使えても相手の動きを振り切るくらいにしか使えないだろう。

 

 そして当たり前の事だけど、相手の得意技であるあくタイプの技はゴーストタイプによく効いてしまう。

 

(ここからが本番だ……っ!!)

 

「ネズにアンコールはないのだ!歌も!技も!ポケモンも!!タチフサグマ!!『じごくづき』!!」

「ヨノワール!!『かわらわり』!!」

 

 白く手を光らせるヨノワールと、黒く手を光らせるタチフサグマ。

 

 お互いの攻撃が、バトルコートの中心にてぶつかり合う。

 

「ぐっ!?」

「イエァ!!」

 

 まるで雷が落ちたかのような激しい破裂音を奏でながらお互いの攻撃をぶつけ合うヨノワールとタチフサグマ。そのあまりにも強烈な衝撃波に、ボクは思わず腕で顔を覆ってしまい、ネズさんはこんな状況にさらにテンションが上がっているのか、もっとマイクスタンドを振り回す。

 

 一方で当の本人たちは強烈な衝撃が起きるほどの攻撃をぶつけ合いながらも、攻撃の手を一切やめずに打ち合っていく。

 

 ヨノワールが上から打ち下ろしたものを、タチフサグマはじごくづきで右から刺して左に逸らし、余った左でストレートを放ってくる。これに対してヨノワールは、左で下から救い上げる様な軌道を描いて、タチフサグマの攻撃をかちあげ、その勢いを残したままその場で左に1回転。遠心力を乗せた左の水平チョップを繰り出す。

 

「『ブロッキング』!!」

 

 片手は弾くのに使ってしまい、もう片手は逆に弾かれてしまったタチフサグマを見てすぐさま防御技であるブロッキングの指示を出すネズさん。

 

 このブロッキングに攻撃を当ててしまうと、こちらの防御を著しく下げられてしまう。ただでさえこうかばつぐんで攻撃を受けてしまうのに、そこから防御を下げられてしまうと、いくら耐久力の高いヨノワールと言えども厳しくなる。

 

「ヨノワール!『かげうち』に変更!!そのままタチフサグマに突っ込んで!!」

 

 じごくづきの動作をやめて、腕を目の前でクロスして攻撃を受ける準備をするタチフサグマに対して、水平軌道を描いていたかわらわりをかげうちに変更。体にゴーストタイプ特有のおどろおどろしい黒いオーラを纏いながら、体ごとタチフサグマに突っ込んでいく。

 

 こうすれば、ノーマルタイプを含むタチフサグマにヨノワールが触れることはなくなるめ、ブロッキングをすり抜けて後ろに回り込むことが出来る。

 

 オニオンさんとの戦いでイーブイで行った戦法の逆バージョンみたいなものだ。

 

「『かわらわり』!!」

「『じごくづき』!!」

 

 後ろに回り込んだことによって背中合わせになったヨノワールとタチフサグマが、ボクとネズさんの言葉を聞いてすぐさま振り返り、その際に産まれる遠心力を右手に乗せて叩きつけ合う。

 

 再び響き渡る衝撃音。

 

 近くの建物の窓ガラスまでもがカタカタと揺れる中、しばらく鍔迫り合いをしたのちに、次は余った左手同士をぶつけ合い、今度はぶつかった時の衝撃を利用して後ろに下がる。

 

 ヨノワールとタチフサグマの立ち位置が入れ替わったため、お互いのポケモンを交換したかのような立ち位置になっていること以外は振出しに戻った状態となる。

 

(強い)

 

 純粋な感想を一言。

 

 ただパワー比べに強いだけじゃなく、ヨノワールのかげうちによるすり抜けにも対応してくる対応の速さ。本当に気が抜けない。

 

(でも……やっぱり楽しい!!)

 

 それでもこの状況がとても楽しくて、ヨノワールも久しぶりに全力で戦えるのが心地いいみたいで、二人そろってどんどんテンションが上がっていく。

 

(もっともっと……楽しく、激しく、全力で行くよ!!)

(……ノワッ!!)

 

 ようやく訪れた相棒の全力を出せる場面。ボクとヨノワールの、心がどんどん重なっていく。

 

 その時、少しだけ、ボクの視界がぶれたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネズさんのあの子。

実機ではネズさんも5体しか出していないので、6体目の示唆。
さて、誰でしょう。

かげうち

ビート戦でも言いましたけど、かげうちはこの小説では2種類あるということになっています。
実機では、自分の影が攻撃しているような描写ですが、スマブラではゲッコウガは後ろに回って直接攻撃していることから、両方あると判断してのことです。
実際はどうなんでしょうかね?




アニポケでシンジが出るのが楽しみで仕方がない……
速く見たいです……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。