「何とか勝てた〜……っとと」
「ノワ」
「……ふぅ、ありがと、ヨノワール」
ネズさんとの激闘を終えて、何とかあの嫌なこともやり過ごすことが出来たボクは、安心感からまたふらついてしまい倒れかけてしまう。そこをいつの間にか目の前まで来てくれていたヨノワールが優しく受け止めてくれる。
ゴーストタイプ特有の少しひんやりとした体温が、戦いによって上がった体と頭の熱をゆっくりと下げてくれてどこか心地いい。
少しずつ下がっていくこの体温に、自分の中で何かが納まっていく感覚を覚えながら、ようやくスッキリし始めた頭で目の前の人物を見据える。視線の先にはタチフサグマをボールに戻し、マイクスタンドもどこかにしまったのか手ぶらの状態でこちらに歩いてくるネズさんの姿。
バトル中はピンと伸びていた背筋も再び猫背に戻ってしまっているので、バトル中にたまに出ていたような、束の間のローテンションではなく、本当にオフモードのテンションのネズさんへと戻っていた。
「お疲れ様でした。いやはや、その子があなたの切り札ですか……どんな子が飛び出すのかと楽しみにしていたのですが、想像以上のものが出てきましたね」
「そう言ってもらえてよかったです。なんだかみんな必要以上に期待していたので……勿論、そんなやわな冒険をしてきたつもりはないのでヨノワールの実力自体に自信はあるんですけど、それはそれとして物凄く緊張しちゃったので……」
「過度な注目が面倒なのはわかりますけどね」
「め、面倒とまでは言ってませんけどね」
「ノワ」
「あ、ヨノワール。ここまで支えてくれてありがとう。もう大丈夫だよ。戻って」
ネズさんと話しているうちに視界のぶれによる眩暈がなくなって、普通に立てるようになったため、それに気づいたヨノワールがボクの体を軽く叩いてボクの現状を教えてくれた。足元を確認してふらついていないのがわかったボクは、そのままヨノワールにお礼を言って、今日のバトルについての労いをしながらボールの中に戻してあげる。
どちらかというとクールよりな性格であるヨノワールは、あんまりがやがやともてはやされるのは嫌いという程ではないにしろ、自ら進んでいく場所ではないため、こういう時は素直にボールの中に戻してあげる。だからと言ってみんなに見せてほしいと頼まれたら、素直に外に出て皆の相手をしてくれるくらいには寛容な子ではあるので、単純に理由がなかったらとりあえず中で待機しておくというタイプの子だ。マホイップやブラッキーと言った、何かあったら外に出てくっついてくる甘えん坊の子たちとは、性格だけ見れば正反対の子である。っと、脱線はこの辺にして。
「改めて、ありがとうございました!ネズさんの駆け引きのうまさと判断の速さはとても勉強になりました」
「いえ、こちらこそ。栄えある最初の切り札解禁がおれで誇らしいですよ」
「あぁ、そういえば……そんな話も……」
「本人には、どうでもいい話でしたかね」
「なんで毎回ちょっととげのある言い方するんですか!?」
さっきの言葉と言い、若干癖のある言い方に思わず突っ込んでしまうけど、ネズさんの言葉のせいでキバナさんとの会話を思い出してしまう。
(あれだけ一番最初に引き出してやるって気合入れていたのに、これでビートとのバトルだけじゃなくて、ネズさんとのバトルにまで登板してもらっちゃったってキバナさんが知ったら、なんかいろいろ言われそうだなぁ……)
「大丈夫ですよ」
「え?」
キバナさんと会話したことを思い出しながら、自分で言うのもなんだけど、若干哀愁漂う空気を醸し出していたところにネズさんから掛けられる言葉。その唐突なボクを擁護する言葉に思わずハテナが浮かぶものの、すぐにその理由に思い至った。
「ここでのバトルは生放送されていませんし、あなたの切り札を見たのはここにいる人だけです。おれは勿論誰にも喋る気はないし、エール団のみんなはおれが言えば黙っててくれますよ」
「えっと……嬉しい提案ではありますけど、ヨノワールを隠すことに関しては特にこだわりがあるわけではないので、そこまでしてもらわなくても……」
「あなたのことです。どうせキバナあたりにいろいろ言われているんでしょう。あの人、なかなかしつこい人だから苦労しますよ?マリィの件でお世話にもなっていますし、ちょっとしたお礼とでも思って、素直に任せてください」
「……何となく想像できます」
別に悪い意味で言っているのではなく、何となくキバナさんはその辺のこだわりがちょっと強そうだなというボクの偏見だ。別に他意がある訳では無い。
「まあ、とにかく。スパイクジム突破おめでとう。おれも、おれのポケモンたちも、君と戦えてよかったと心から思っているよ。あまりこう言われるのは好きではないかもしれませんが、やはりシンオウリーグ準優勝者と聞いて、戦うのを楽しみにしないトレーナーは少ないですからね」
「ネズさんにそう言って貰えるのは凄く嬉しいです。久しぶりにダイマックスのないジムバトルが出来たおかげで色々懐かしい気分にもなりましたし、ネズさんとのぶつかり合い、とても楽しかったです!!」
「君も楽しんでいただけたのなら、ジムリーダー冥利に尽きますね」
ボクの言葉に一見素っ気なく返事をしているネズさんだけど、ほんの少しだけ頬が緩んだような気がした。その事がちょっと嬉しくて、こちらも同じように頬を緩める。
お互いが相手のことを褒めながら微かに笑いあったところで、懐に手を入れたネズさんが何かを握りしめながらこちらに右手を差し伸べる。
「こちらを」
手の中身の物を理解したボクは、ネズさんの言葉を聞きながら同じく右手を差し出す。手のひらを上にして広げられたボクの手の中心に、ネズさんの手に握られていたものが落とされた。それは小さく、硬く、ほんの少し温かさを感じるもので、ここ、スパイクジムを突破したものだけが握ることのできるとても重要なモノ。
「あくタイプのジムバッジ……あくバッジです。このガラル地方のジムチャレンジを7つ目まで制覇した証……今のあなたにふさわしいものでしょう。受け取ってください」
「ありがとうございます!」
中心に黒色のマークが書かれたジムバッジを受け取り、すぐさまリングケースにはめ込む。
(これで7つ……あと1個!!)
ほぼ埋まってしまい、向こう側が見えなくなってきたリングケースを眺めながら、その手に感じる重さをしっかりと受け止める。
「さて、長話もほどほどに……さすがにおれもあなたたち5人との連戦は楽しかったですがとても疲れましたので、一足先に休ませてもらいますよ。みんなの手当てもしなければいけませんし、久々に派手にやらかしてしまったのでバトルコートの整備をしませんとね」
ネズさんの言葉を聞きながら周りを見てみると、そこには先ほどの戦いによって濡れてドロドロになった地面と、散乱した岩の破片がゴロゴロと転がっていた。戦闘時は集中してて何も思わなかったけど、ネズさんの言う通り派手にやらかしてしまったみたいだ。
この惨状をボクとネズさんで作り上げてしまったんだなと思うと、この戦いがいかに激しかったのかを物語ってくれており、今思い出しても少し熱くなってくると同時に、この後片付けを全部ネズさんにやらせてしまうことに申し訳なさを感じてしまう。
「それならコート整備はボクも手伝いますよ。経験ありますし……」
「いえ、それには及びませんよ。あなたはあなたで積もる話があるでしょうから」
「え?」
罪悪感からネズさんの手伝いをしようと申し出たところをあっさりと断られてしまうボク。そのことに少しだけむっとしそうになるけど、続けられたネズさんの言葉に首をかしげる。
積もる話と言っても、今のボクには話したいことは特には思いつかなかったので、いくら考えても答えに辿り着かず少し考えこんでいると、そんなボクを見かねてネズさんが1点を指差し……
「フリア~!!お疲れ様~!!」
「え、ちょ!?ユウリ!?」
そちらに視線を向けると、フェンスの扉からバトルコートに入って、既にボクの眼前まで迫ってきていたユウリの姿。そのまま押し倒さんばかりの勢いのままこちらに突っ込んできていたため、すぐさま腰を少し落として受け止める態勢。まるでとっしんを喰らったかのような衝撃受けるものの、何とか受け止める準備の方が間に合ったため、ちょっと後ろにのけぞるくらいで済ませることに成功する。
「本当にすごかったよ!!私物凄く興奮しちゃった!!」
「わ、分かったから、落ち着いて、落ち着いて……ね?」
余程ヨノワールを見たことが嬉しかったのか、抱き着きながらぴょんぴょん跳ねるユウリを何とかなだめながらゆっくり引きはがしていく。興奮していてもその辺の制御はしっかりできているのか、おとなしくボクから離れたユウリはそれでも興奮が隠しきれずに、こちらをキラキラとした目で見ていた。
そしてそれはユウリだけではなく……
「俺もユウリと同じく無茶苦茶興奮したぞ!!フリアの切り札、凄いだろうとは思っていたけど、想像の遥か斜め上を行っていたぞ!!」
「あたしも凄くびっくりした。あんな強力なヨノワール初めて見たと。アニキにも勝っちゃうし、シンオウリーグ準優勝って肩書を改めて体感したと」
「フリアっち最ッ高にすごかったァ!!ネズ様とのバトルも超アゲアゲだったし、おかげで負けてサゲサゲだったテンションもどこかに吹っ飛んでいっちゃったァ!!」
いつの間にか周りに大集合していたみんなからも、ユウリと同じように賞賛されもみくちゃにされていく。いつになくハイテンションでボクに絡んでくるみんなの対応に四苦八苦しながらなんとかいなしているときにふと視線を逸らしてみると、そこにはもうネズさんはおらず、バトル見学をしていたエール団のみんなも、ボクたちの邪魔にならないように陰でいろいろな後片付けなどを行っていた。
(ネズさん、こうなることがわかってボクが片づけを手伝うことを咎めたんだ……)
ここまで来てようやくそのことを理解したボクは、根っこの優しさと、空気を読む能力はマリィに似ているんだなぁと思いながらみんなに視線を戻す。その間にもボクとヨノワールを褒める声が止むことはなく、ひたすら言葉を投げかけられるので、ひとまずみんなが落ち着くまではこのまま流されるしかないかななんて思いながら待っていた。
いつものジム戦だとバトルが終わってすぐ話しかけたくても、更衣室で着替えたり、インタビューの人が来たりと、やることが意外と多くすぐに感想戦を始めることが出来ない。なんて不便さもあったため、それがない今回は余計にこの手のタガが外れて暴走してしまっているのだろう。そのあたりを考慮すれば、なるほどユウリたちがいつも以上に興奮しているのも納得がいくというものだ。
それに、ここまでもてはやされるのは恥ずかしいしこそばゆいけど、決して嫌ではない。むしろ自分の自慢の相棒がここまで褒められて誇らしさすらある。
(よかったね、ヨノワール)
心の中だけでつぶやいたその思いに、カタカタと揺れることで返してくるヨノワール。どうやら彼もまんざらでもないようだ。
「そこまで褒めてくれるなんて思わなかったから……うん、ありがとう。それと今までもったいぶっちゃってごめんね?」
「そうだぞ!!そんなに凄いポケモンだったのならもっと早く見たかったぞ……」
「でもでも、ここまで隠し通されたらそれはそれでフリアの言う通り切り札って感じがして……私は凄くワクワクしちゃったかも」
「あたしもユウリと同じ意見かな。それにしても本当にすごかパワーね……どうやったらそんなに強くなると……?」
「強さも気になるけどォ、見た目フワフワで性格もポワポワなフリアっちからァ、クールでガチツヨなヨノワールってチョイスが凄くギャップあって面白い的なァ?」
どこまで言っても終わらないヨノワールを主題とした会話は、そのままエール団がバトルコートの片づけを全部終わらせて、陽が沈み始め、ネオンの街灯がつき始めても終わることなく続いていった。
(これは……ポケモンセンターに戻ってもこの話題のままかな……)
心の中で呆れと仕方がないなぁという気持ちがこもったため息をこぼしながら、ポケモンセンターへの道を歩き始めるボクたち。
結論から言ってしまえば、ボクの予想通りこの会話はポケモンセンターへ戻って、泊っている部屋に戻っても終わることはなく、日付が変わりそうになるまで続くこととなる。
そんなに話し込んでしまう程ボクのヨノワールを待っていたんだと思うと、もっと早く紹介してあげればよかったなぁという気持ちと、ボクの相棒をここまで評価してくれて嬉しいという気持ちが広がっていく。
ヨノワールの話題を中心に広がっていく賑やかな空間は、本来であればネズさんに負けたことによって足踏みを余儀なくされることに対するマイナスの思いをいつの間にか吹き飛ばしており、むしろあんなバトルを見せられたのなら自分たちも続かなきゃと燃え上らせるきっかけを与えてしまったほど。きっと明日からみんなは打倒ネズさんに向けて全力をつくし、そう遠くないうちに勢いに乗って突破するだろう。
不思議と湧き上がっていく安心感と信頼感。
(きっとみんななら大丈夫だよね)
今日の主人公である相棒の入っているボールを撫でながら、そっと胸の中で思う。
(ボクも頑張らなくちゃ)
みんなには指摘されてはいないものの、いまだにボクの中に残る問題である視界のぶれ。昔のボクはこの壁を乗り越えられずに落ちていった。けど、ヨノワールに元気をもらって、ネズさんという大きな壁に立ち向かおうとしているみんなの姿を見ていると、ボクも勇気を分けてもらっているような気がして。
(きっと、今度は乗り越えられるはず……!!)
不思議とボクの気持ちも、前を向いていた。
☆
「んぅ……すぅ……んぅ……んん……ぁ、ぁれ?」
みんなとの話しもようやく終わりを告げ、各々が眠りについてさらに時間が経った夜。時間にして午前2時くらいだろうか。決して長い時間が経ったというわけじゃないけど、なぜか自然と目が覚めてしまったボクは、眠気のせいでぼやけた視界ながらもなんとか時計の針と外の景色を見て、まだまだ深夜であることを確認する。
「まだ寝れるじゃん……」
まだまだ休めるのに、変な時間に目が覚めてしまったことに対する軽い愚痴をこぼしながら、二度寝を決め込むために寝返りを打とうと体を少し起こす。布団の擦れる音を無視しながら体を傾け、今度は変な時間に起きないように布団に潜り込むようにしようと行動していると、ふととあるものが無性に気になってしまい、体は眠りを欲しているけど、その確認だけさせてくれと体に命令してちょっとだけ視線をそちらに向ける。
ボクが気になったのは、ボクのモンスターボールだ。
ボールの中で眠っているであろうインテレオンたちの様子がなぜか気になって少しだけ視線を動かすと、ホルダーについたまま置かれたモンスターボールが6つ並んでいる。それだけなら、なにも変化がないということですぐさま眠りにつくことが出来たのだけど、なぜか並んでいるボールのうち1つだけ開いた状態で置かれているボールがあった。
「……ヨノワール?」
開かれたボールはヨノワールが入っていたボールだ。きっと深夜になったのでちょっとお散歩にでも行っているのだろう。今までだって何回かあったことだし、今更特に気にすることでもない。しかし、そんな気にする必要のないはずのものが、なぜか今は無性に気になってしまった。
そんなことを考えている間に、いつの間にか眠気も収まっていく。
「……探してみよっか」
誰に話しかけるでもなく、ぼそっと言葉をこぼしながら起き上がり、パジャマのままみんなを起こさないように外へ出る。
パジャマという薄着ではあるけど、すっかり夏に片足を突っ込み始めた今の季節は、だいぶ涼しさの中にも暑さを感じ始める。それでもこの時間はちょっと肌寒いけどね。
「過ごしやすい気温だね」
消灯時間のため、すっかり暗くなっているポケモンセンターから外へ出たボクは、夜特有の静かでちょっと澄んだ空気を吸いながら、勘の赴くままに足を動かす。
ヨノワールがどこに行ったのかはわからない。けど、なぜかこっちに絶対にいる。そんな不思議な感覚に襲われていたボクは、迷うことなく一直線に足を向けていた。
歩くこと数分。ほどなくして、ボクの耳に物音が入って来る。
「この音……」
深夜で他の音がしない今、ボクの進む先から聞こえる音はいつも以上に強く聞こえてくる。ここまで来れば音の正体を突き止めることも可能だろう。
路地を曲がり、1歩ずつ音の鳴る方へと足を進めていくと、ちょっとした公園のような広場が目に入る。あまり広くはなく、タイヤや土管といった、使わないものを積み重ねたり、加工することによって作られた遊具がたくさん置いてあるその場所は、子供がぶつかっても大丈夫なように、タイヤのゴムで養生されているものが多く、スパイクタウンの危ない雰囲気に相反して、とても子供思いな場所となっていた。
あまり広いとは言えないこのスパイクタウンにとって、数少ない子供の遊び場であろうこの場所は、しかし深夜ということもあってか、楽しそうというよりも不気味さが勝ってしまいそうなほど、静かな空間となっている。
そんな怪しく不気味な公園にたどり着いたボクは、さっきまで聞こえていた音がさらに大きくなって、静かな公園に響いていることに気づく。ここに音の主がいるような気がして、少し視線を左右に動かしているとほどなくしてその正体を見つけた。
その正体は、積まれたタイヤに向かって技を繰り出して特訓をしているヨノワールだった。
「ヨノワ━━」
「しーっ、ですよ」
「っ!?」
思いもよらないところで相棒の陰の努力を見つけてしまったため、思わず近づこうと動いたところを、横から声をかけられ、体を跳ねさせる。
「って、ネズさんでしたか……よかったぁ……」
「そんなに驚きますか……」
「むしろ驚かない人の方が珍しいですよ」
こんな真っ暗な公園でいきなり声をかけられるのは素直にホラーだと思う。むしろ、いきなり大声をあげなかったボクを褒めてほしいくらいである。
と、そんなびっくり体験はとりあえず今はよくて、陰で見守っているボクたちのことなんて気にせず特訓を続けるヨノワールを見つめながら、ネズさんと公園の端っこへ移動し、ベンチに座る。
「もうほぼ夏ですが、さすがにこの時間は冷えるでしょう。どうぞ」
「ありがとうございます」
ベンチに座ったところでネズさんからもらったのは暖かいお茶。蓋を開けて一口含むと、体の奥からじんわりと温かいものが広がっていく感じがする。その感覚が気持ちよく、思わずほっと一息ついたところで、ネズさんもお茶を飲みながらぽつりぽつりと言葉をこぼす。
「あの子、かれこれ1時間はあの調子ですよ」
「1時間……」
真面目なあの子の性格と、タイヤについている痕の様子を見れば、ヨノワールがどれだけ技を打ち込んでいたかはよく分かる。1時間というのも納得だ。ヨノワールの周りに転がっているボロボロのタイヤが、それだけ彼が撃ち込んだ何よりの証だ。
「って、すいません!タイヤ壊しちゃったら遊び場が……」
「いえ、大丈夫ですよ。遊具を壊されたのならちょっと問題かもしれませんが、幸い彼も理解しているのか、攻撃の的にしているものは全部廃棄する予定の物ばかりですので」
「ほっ……よかった……」
これで弁償しろだなんて言われたら目も当てられない。ヨノワールがそのあたりの常識をしっかり持っていて本当に良かった。
とりあえずまずいことにはなっていないことにひと安心したボクは、いまだに引っかかっていることに思考を回す。
「それにしても、なんで1人で特訓を……」
「あなたのためですよ」
「ボクの……ため……」
悩んでいるボクにネズさんから掛けられたのはボクを思う言葉。それでもしっくり来ていないボクに、ネズさんは言葉を続ける。
「あなた、バトルの時少しだけ不調になりましたよね?」
「……」
「肯定と取りますよ」
ボクとヨノワールの不調を一瞬で看破したネズさんに、思わず言葉を飲み込んでしまう。その姿を肯定と取ったネズさんは、さらに言葉を続ける。
「おれには正直、あなたたちがどんな壁にぶつかっているのかは見当もつきません。きっと大きな壁にぶつかっているのでしょう。しかし、これだけは言えることがあります」
「……何ですか?」
「
「にげ……るな……?」
ネズさんから急に放たれる厳しい言葉。しかし、やっぱりボクには心当たりがなくて、その意味に辿り着けない。
「君は、おそらくおれの知らない不調によって技を避けることが出来なかった。でなければ、タチフサグマの苦し紛れの『じごくづき』に掠ることはなかったはずだ。それと、最後の攻撃の打ち合いの時も、あのヨノワールの反応力なら避けられるはずです」
「凄いですね。全部バレちゃってる……」
「こういったことに気づくのは得意なので」
さすがの観察力に舌を巻くしかない。ボクの体に降りかかっている現象を知っているわけでもないのに、ここまで正確なことを当てられると、何かやっているのではないかと疑いたくなるほどだ。
もしかしたら、ネズさんなら何か、この現象のヒントをくれるかもしれない。
「おれとのバトルの時に不調が治せず、仕方なく別の作戦に切り替えたのは、その場しのぎとしては正解ですが、この先もこの戦法を貫くというのなら、赤点と言わざるを得ません」
「よく、理解しています」
「でしょうね……聡い君のことだ。そのことを理解しているはず。ですので多くは語りません。ただ……」
「ただ……?」
一度呼吸を置き、ヨノワールを見つめるネズさんにつられ、ボクもヨノワールを見つめる。
「一度、その原因を見つめてはどうでしょうか」
「見つめる……」
ネズさんに言われて初めて気づく自分の行動。確かにボクは、昔も今も、この視界のぶれを消すことばかり考えて、これがどうして起きるのか、どういったものなのかを調べるために向き合った記憶がない。
ネズさんとのバトルでも、視界のぶれのせいで避けられないなら、視界に頼らなくてもいいようにと戦っていた。
だからこその
「少なくとも、ヨノワールはその原因と向き合うつもりみたいですからね。あとは、主であるあなたが、その姿勢を見せなさい。そうすれば、答えは見えてくる……かもしれない」
「……向き合う」
昔の荒れて無気力だったボクなら、『知ったようなことを言わないで!』とかいって突っぱねていただろうその言葉を、落ち着いた今なら驚くほどあっさりと受け入れることが出来た。
視界のぶれと向き合う。その時、ボクはどんな答えに辿り着くのか。
(……ヨノワールと、もっと強くなれる。そんな答えに辿り着けたらいいな)
今まで邪魔にしか思えなかったその現象を、もしかしたら違う見方で受け取れるかもしれない。未だに一人で頑張るヨノワールを見つめながら、ボクの心は、少しだけ前を見つめ始める。
ドクンと、心の奥に、何か熱いものが灯るのを感じながら……。
仲間たち
初めて見たヨノワールにテンションマックスですね。
彼ら、彼女らにとってフリアさんの切り札は、出会った時からずっと内緒にされ、お預けにされていた一番のシークレットですからね。
これくらいはテンション上がるかと。
向き合う
ヨノワールの静かな特訓。
実はフリアさんが気づいていないだけで、ガラル地方に来てもちょくちょく一人で抜け出していたりします。
クールで無口で、けど影での努力を決しておざなりにしない、いい子です。
どこかで出会いの話も入れたいですね。
ネズ
物凄く観察力のすごい人になってしまった……。けど、これくらい凄い人でもいいのではと思ってしまう今日この頃。
そろそろモンハンの追加が来ますね。
来月はゼノブレ3がありますし、スプラもポケモンも、ベヨネッタも今年にある……
ゼルダが延期になって本当に良かった……
任天堂さん知ってますか?オープンワールドはそう何個も手を出せるジャンルじゃないんですよ……?
じ、時間が……足りません……
それでも……小説は書いていたい……