【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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まずは謝罪を。
本来なら昨日が投稿予定日だったのですが、急用のため更新できませんでした。

Twitterや活動報告では前もって書いたのですが……小域あまり目につきやすいとは言えないので改めて、事後にはなりますが報告を。

繁忙期。というわけではないのですが、ほどほどに毎日が忙しいので、また突発で休む可能性がございます。

それでもできる限り維持はしようと試みるので、どうぞよしなにお願いします。


113話

『やっぱり一番の対策ってのが特にないのがつらいよな』

『ネズさんの強さが、『あらゆる判断に対して瞬時に適切に判断できる冷静さ』っていうのが、隙の無さにつながっているもんね』

『それに加えてアニキは攻める時もその判断を間違えない。幸い、フリアの時みたいに、あたしたちの時はレベルも少し低いポケモンを使ってくれるから、ジムリーダーのアニキに勝つには、自分のポケモンの練度を上げるか、アニキにジムバッジをあげるに足ると判断されるほどの判断力を見せつけるかで十分だとは思うけど……』

『でもでもォ、いくらジムチャレンジ用に難易度を下げてくれているとはいってもォ、ネズ様の基準にってとっても高いっぽいしィ……』

『だなぁ……となるとやっぱりこのままレベル上げが1番の近道なのか……?』

 

 遠くから聞こえるネズさんに対する対策会議をBGMにしながら、ボクはみんなから少し離れたところに座っていた。

 

 ボクがネズさんに勝利してから1週間。あれからまだ再戦はしていないものの、ボクやエール団の皆と戦うことによって経験値を積み、来たるべき時に備えてとにかく特訓に励んでいるみんなは、ここ最近の日課となっているミーティングを熱心に行っていた。手持ちのポケモンたちのレベル上げは勿論のこと、ネズさんの多彩な手札に対して、いかに答えを出すかの討論はいつも白熱している。

 

 ネズさんの戦闘スタイルは、相手の動きを見てどの行動が正しのかをすぐに見極め、素早くその行動を執行するというものだけど、ネズさんの1番すごい所は、その正しい行動というのを複数個もっているという事。数学で言うならば、答えは一つだけど、解き方を複数用意している物とでも言えばいいのかな?そのため、Aの行動を起こし、Bの対処をネズさんがするというのがわかったから、Cのプランで逆に返そう、という考えで行くと、Aに対してBではなく、Dのプランで、と、プランのすり替えをされてしまう。

 

 ボクが一つの本命を決めるために何個も何個もブラフを用意する一点集中型だとしたら、ネズさんは相手に読ませない複数のルートを準備する型。

 

 ボクとの戦いで見せたスカタンクの戦い方と言い、タチフサグマのなみのりといい、ボクが言えた義理じゃないけど、奇想天外な戦い方がうりではあるものの、そのスタイルは地味にボクと違う。ボクのように、万が一対策されたら負けが決まってしまうのではなく、対策をされたら違うルートを選ぶというじゃんけん方式だから、例え手の内がばれても機転でどうにかなってしまう。それがネズさんのやばい所。

 

 ホップの言う通り、これと言って対策があるかと言われたらなく、しいて言えば、ネズさん以上の判断の速さを見せつけるか、じゃんけんに勝つ運や読みの強さ、もしくは策すらもねじ伏せる圧倒的なパワーが必要と言う、対策と言ってもいいのか怪しいものが必要となる。

 

 現にボクのヨノワ―ルが突破出来たのも、長く旅を続けたという経験からきた圧倒的なパワーからだからね。あのかげうちといわなだれによる追撃技とか、みたことあると言われたらちょっとお手上げだったと思う。

 

 まぁ、その場合はその場合で何かしらの対策を全力で考えていたと思うけど……

 

 とにかく、結論で言うならば、ガラルで2番目に強いというその高い壁を突破するのに、やっぱり一筋縄ではいかないという事だ。

 

(ホップたち以外の再挑戦者……いまだに姿を現さないしね)

 

 ホップたちもまだ再戦を申し込んでいないとはいえ、ずっとスパイクタウンにこもっているんだけど、あれからキルクスタウンを突破した人たちがここに来たのは見かけたものの、あの事件の時にここにいた人たちは未だに帰って来る兆しがない。今のホップたちのように、ワイルドエリアでレベリングをしているだけの可能性も当然あるにはあるけど、それにしては帰って来る人が0なのは些か不安を覚えるというもの。

 

(ネズさん、ちょっと難易度あげるって言ってたけど……本当にブーイングが無いか心配になるなぁ)

 

 これがきっかけでスパイクタウンの評判がさらに下がることがないように祈っておこう。けどするのは祈ることだけ。部外者であるボクにはどうもできないし、申し訳ないけどボクだって他人を気遣う余裕はそんなにない。

 

「ヨノワール」

「ノワ」

 

 座っているボクの目の前にいるのは、大切な相棒の大きな背中。何回も頼ってきたその背中はいつも通りの頼もしさを感じさせ、これから行う先の見えない特訓に対しても不安感を抱かせない。

 

「絶対に乗り越えようね」

「ノワッ」

「みんなも!これはヨノワールのためだけじゃないから、全力でぶつかってきて!!」

 

 そんなボクとヨノワールの目の前に並ぶのは、ヨノワール以外のボクの仲間たち。

 

 インテレオン、エルレイド、マホイップ、ブラッキー、モスノウ。

 

 ここまでのガラル地方を旅してきた頼もしい仲間たちは、実は前々から顔あわせそのものは済ませてはいたものの、こうやってじっくりと面と向かって並んだのは初めてだ。

 

 みんなボールの中からでも伝わってきていた圧倒的な気配にあてられ、それに合わせてのしかかってくる目を合わせた時のプレッシャーと、あらゆるものをおみとおしされているような視線に、思わず一瞬後ろに下がったりしてしまった子もいた。

 

 決してヨノワールがみんなに対してあまりいい感情を抱いていないというわけではない。

 

 これは、ヨノワールなりの一種の歓迎だ。

 

 これから行われるのは、ヨノワールの特訓だけじゃなく、インテレオンたちのためのぶつかり稽古でもある。さっきボクが『これはヨノワールのためだけじゃないから、全力でぶつかってきて』といったのはこれが理由だ。

 

 ヨノワールと戦っているときに起きる視界のぶれの対策は勿論最重要と言ってもいい課題だ。けど、それを理由に他のみんなをおざなりにしていいわけではない。むしろこれから先に進むのであれば、インテレオンたちの強化及び特訓もまた、ヨノワールの特訓と同じくらい需要な課題と言っても差し支えないだろう。

 

 理由なんて考えるまでもなく、この先ジムチャレンジと、その先のトーナメントを勝ち上がるということを考えた場合、当たり前だけどヨノワール一人だけで勝ち進めるほどこの大会は甘くなんていない。これまでのジムリーダーとの戦いで、このガラル地方のレベルの高さは嫌という程実感することが出来た。となれば、ジムチャレンジで勝ち残った人たちによって行われるトーナメントと、その先に待ち受けている、チャンピオンの座をかけた、ダンデさんとメジャーリーグのジムリーダーたちとの連戦を乗り越えるのに、6対6のフルバトルを乗り越えられるように、パーティ全体のレベルアップをするしかない。

 

 勿論今のインテレオンたちが全然育っていないだとか、練度が足りないだとか、そういう厳しいことを言っているわけではない。むしろ、このジムチャレンジの参加者の中ではかなり高い方なのでは?という自負が少なからずある。っていうか、自負を持てとユウリたちに怒られた。しかし、だからと言って現状に満足していいのかと言われたらノーだ。それは、ネズさんとのバトルではっきりとわかっただろう。

 

 相手の作戦に見事に振り回され、ここまでのジム戦で初めてリードを許してしまった。

 

 いや、今までの強敵相手にリードをずっととれていた時点で十分凄くはあるんだけど、それにしたってネズさんとのバトルはかなりしてやられた感があり、勝ったとはいえ、とてもじゃないけどこちらが有利な展開だったとはお世辞にも言えない。

 

 この悪い流れを作ってしまったのはボクの采配のせいなので、インテレオンたちに非はないんだけど、インテレオンたちはそれで納得しなかった。

 

 インテレオンたちからしてみれば、ボクが指示を間違えたりしても、自分たちがサポートできるほど強くなればいいんだという思いでいてくれているらしく、それなのにネズさんのポケモンに終始押されていたことが悔しかったみたいで……特に、だいばくはつによってすぐさま戦闘不能にされ、ろく戦うことが出来なかったモスノウと、本来なら自分が輝けるはずだったジム戦で活躍できなかったエルレイドの2体はより強く悔しいという気持ちにさいなまれていたようで、今この瞬間にもすぐに特訓したいという気持ちであふれかえっている。

 

 自分の課題を何とかしたいヨノワールと、とにかく戦闘の経験値を積んで強くなりたいインテレオンたち。

 

 お互いの利害が一致している今、ホップたちがここのジムを突破するまで待つという時間が出来上がったのなら、この時間を利用しない手はない。

 

「みんな!来い!!」

 

 ボクの言葉を合図に、前に飛び出してくるのはエルレイド。

 

 誰よりも先に走ってきた切り込み隊長は、両腕にリーフブレードを構えながら突撃してくる。

 

「ヨノワール!!『かわらわり』!!」

 

 緑色に光らせた刃を携えながら走って来るエルレイドに対して、ヨノワールは白く光る手刀を構える。

 

 両腕の刃を交互にぶつけながら快音を響かせるヨノワールとエルレイドは、意地でもひかないという強い意志を両者から感じる。最初の動きはほぼ互角。しかし、そうなってくると経験の差が少しずつ生まれ始める。

 

 徐々に押し始めるのはヨノワール。やはり細かい体さばき一つ一つで上を行く技術にエルレイドの経験不足が現れ、だんだん守りよりのリーフブレードの回数が多くなる。そのまま戦況はヨノワール有利へと傾く。しかし、妙な違和感が。

 

 ヨノワールの実力なら、エルレイドに対してすぐさま優位を取れたはずなのに、あえてこうやって少しずつ押し込んでいく。それはまるでエルレイドに師事しているみたいで。

 

(ヨノワール……エルレイドに体さばきを教えるためにわざと……)

 

 エルレイドもそのことに気づいたみたいで、すぐさまヨノワールの体さばきを真似ていき、少しずつその動きを洗練させていく。

 

 そこから2人の打ち合いはさらに激化していき、インテレオンたちが割り込めないほど、どんどんその速度を上げていく。決して長い時間ではないのに、この数回の打ち合いでスポンジのように技術を身に着けていくエルレイドの姿に思わず見とれてしまう。

 

「エルッ」

「ノワッ」

 

 その間に交わされる短い言葉のやり取り。何かを受け取ったエルレイドは小さく答え、その返事にヨノワールも満足したのか、一言呟き……

 

「ノワッ!!」

「ッ!?」

 

 

 エルレイドを本気で吹き飛ばす。

 

 

「ノワ―ッ!!」

 

 

 エルレイドが後ろに飛ばされた瞬間に放たれるヨノワールの雄たけび。それはまるで、エルレイドへの手加減はここまでだと言っているようで……

 

「ノワ……」

「「「「「っ!!」」」」」

 

 そのまま大きな手を突き出しながら、インテレオンたちに向けて煽るように動かすヨノワール。

 

 

 その言葉と行動の意味は、『全員まとめてかかってこい』。

 

 

 動きだけでその言葉を悟ったみんなが、一斉に気合を入れる。

 

 この特訓で、ヨノワールは本気を出す。それを理解した瞬間、一気に緊張感が高まったバトルフィールドにて、先手必勝とばかりにインテレオンがねらいうちを放つ。

 

「ノワッ!!」

「……わかった、『いわなだれ』!!」

 

 こちら見て叫ぶヨノワール。その言葉を聞いて、ボクも意識を切りかえる。

 

 ボクの指示を聞いて手をかざすヨノワール。その動きに合わせて上空から落ちてくる岩の雨が、真正面から飛んできた水の弾丸をせき止める。

 

 派手な音とともに出来上がった岩の壁。ヨノワールの正面を防ぐその大きな防壁を、今度は左右からエルレイドとブラッキーが回り込むように飛び出して、それぞれリーフブレードとイカサマを構えながら突っ込んで来る。

 

「『かわらわり』!!」

 

 それに対して真正面から受け止めるヨノワール。激しい音を奏でながらぶつかり合う3つの攻撃は、さきほどはエルレイドと1対1で均衡していたはずなのに、ヨノワールの両手の一振りでブラッキーとエルレイドの両者が吹き飛ぶ。

 

「ブラっ!?」

「エルっ!?」

「ブラッキー!エルレイド!気を抜いたらだめだよ!!ヨノワール!!『じしん』!!」

 

 ヨノワールの本気に驚いてしまい、動きが固まった2人に対して圧倒的な破壊力を伴ったじしんが襲い掛かる。

 

「マホッ!!」

 

 その攻撃に対してマホイップが自らを盾にするかのように飛び出し、同時にとけるを発動。防御力を一気に上げたマホイップが、ヨノワールから伝ってきたじしんを一身に受け止める。

 

「マホ……ッ!」

 

 とけるで防御を上げたはずなのに、それでも致命傷クラスのダメージを受けていたマホイップが、あまりの破壊力に驚きの顔を浮かべるものの、すぐさま反撃をするためにマジカルシャインを放ってくる。

 

「影に!!」

 

 対して、ボクの一言で影に潜るヨノワールが、そのままマジカルシャインを潜り抜けてマホイップの眼前へと迫っていく。一瞬で懐にもぐったヨノワールが、影から体を出しながらかわらわりを構え、まずはマホイップを落とそうと攻撃態勢に移行する

 

「レオッ!!」

「フィィッ!!」

 

 そこにヨノワールの動きを阻害するように放たれるふぶきとねらいうち。それもただの攻撃ではなく、ふぶきによって凍らされたねらいうちが氷の弾丸となってヨノワールに降り注ぐというコンビネーション技。

 

「やるねインテレオン!モスノウ!でも……『かげうち』!!」

 

 アドリブにしてはなかなか面白い技だけど、ヨノワールを攻撃するにはまだ甘い。

 

 その氷の弾丸を見たヨノワールが地面に手を突き、無数の影の手を召喚して、自身の周りで振り回すことによって弾き飛ばしていく。自身を守る影の触手は、しっかりと攻撃を防ぎきり、その中心に立つヨノワールは無傷のまま、インテレオンに抱えられて後ろに下がっていったマホイップを含めた全員をゆっくりと一瞥していく。

 

(……ヨノワール、容赦ないなぁ)

 

 ヨノワール対全員という明らかに大きなハンデを背負っているというのに、ボクの指示もありきとはいえ、むしろ圧倒している相棒の姿に、誇らしさと呆れがないまぜになった感情が渦巻いて行く。対するインテレオンたちは、ようやく肌で感じる実力の差に、一瞬だけ悔しそうな表情を見せるものの、すぐさま顔を引き締めて挑戦者の顔となる。

 

(いい表情だ)

 

 その真剣なまなざしに、思わず見とれそうになるのをぐっとこらえて、ボクはヨノワールに指示を出す。

 

 ここをきっかけにさらに激しくなる1体5のバトル。

 

 降りそそぐ岩と、荒れ狂う影の触手。それに対して飛んでいく水の弾と、氷の風、そしてようせいの光。ぶつかり合う全ての攻撃によって、小さな爆発が起きたと思ったら、その煙の中を駆け抜ける白と黒の影が煙から飛び出して、黒い大きな壁にとびかかる。とびかかられた黒い壁は、すぐさま地面に手を当てて触手を呼び出し、迎撃準備をする。緑の刃と黒の爪が、影の腕とぶつかり合い、また鳴り響きだす激しい戦闘音。

 

 お互い決して譲らないその戦闘を眺めながら、ボクもボク自身のやるべきことに集中していく。

 

(……まだ……まだ届いていない……)

 

 ヨノワールに指示を出しながらも、ボクの意識は自然と自分の両の目へと向かっていく。

 

 まだ、ネズさんの時に見られたあの現象には届かない。

 

 ヨノワールがインテレオンのねらいうちをかわらわりで弾き、エルレイドに向けて飛ばす。これをモスノウがふぶきで止めることによって防ぎ、返しにマホイップがドレインキッスを放って攻撃と回復を同時に行おうとし、さらにこの攻撃を簡単には止められないように、ブラッキーもあくのはどうを合わせて打つ。黒と七色の波動は、ヨノワールを正確に射貫かんと飛んでいき、しかしその攻撃も、ヨノワールが地面を殴った瞬間の衝撃で霧散していく。

 

 ほんの少し、体が揺れる。

 

(……もうちょっと)

 

 あくのはどう、およびマジカルシャインを消したのを確認したヨノワールは、技を打ったあとに硬直しているマホイップとブラッキーの間に滑り込み、同時に地面に手を当てて、影の触手を召喚。ブラッキーとマホイップが慌てて逃げようとするものの間に合わず、影の手が襲いかかろうとして、すんでのところでアクアブレイクを構えたインテレオンと、サイコカッターを構えたエルレイドが割り込み、影を切り裂いていく。その間にモスノウがぼうふうを発動。ヨノワール、エルレイド、インテレオンの3者を竜巻の中に閉じ込めて、マホイップとブラッキーが安全に下がれるように場を整える。

 

 気がつけばインテレオンとエルレイドによって影は全て切り裂かれており、竜巻の中にはインテレオンとエルレイドに挟まれるヨノワールの姿。

 

 かわらわり、サイコカッター、アクアブレイクを構えた3者が嵐のど真ん中でぶつかり合う。

 

 襲いかかる水と虹の刃を白い手刀でいなし、逸らし、受け止めていく。

 

 ブラッキーの時よりも火力は低い代わりに、手数が圧倒的に増えたことと、ヨノワールの動きを吸収したエルレイドとインテレオンによる高速コンビネーションに、さすがのヨノワールもなかなか攻めきることが出来ない。

 

 そんなぼうふうの檻の中で行われる激しい攻防。それを見つめるボクに、ようやく異変が訪れた。

 

(来たっ!!)

 

 傾く世界。揺らぐ視界。いつものボクなら、ここでこの視界のおかしいところを治すために頭を振ったり、目を閉じたり、とにかくこの現象を無くすことだけを考えていた。

 

 だけど、ネズさんに言われた『逃げるな』の一言が、いつもの動きを阻害する。

 

(逃げちゃダメだ。向き合うんだ。この視界のぶれと……っ!!)

 

 見つめる。

 

 ただひたすらに、揺れてぐらつく世界を見つめ続ける。もはや何を見ているのか理解出来ず、揺れる世界に思わず酔ってしまいそうになるのを、それでもグッと堪えて見つめ続ける。

 

 多分そんな長い時間見つめてはいなかったと思う。けど、集中しすぎてヨノワールたちの攻防も耳に入らなくなって、ただひたすらこのぶれを見つめ続けていたせいで時間の感覚はなかったから、正確な時間はわからない。

 

 5分か、はたまた10分か。

 

 壊れた体内時計では確認する術を持たず、果てしなく遠く感じる。それでもこの視界にだけ集中する。

 

 音も聞こえない。視界もぶれて見えない。けど、戦闘がどんどん激化していくのだけは感じ、その度に揺れが激しくなるこの視界に、先にこちらが酔って倒れそうになる。

 

(い、何時まで耐えれば……)

 

 腰を落として踏ん張り、込み上げてくる気持ち悪さをこらえる。けど、今まで以上にしっかりと向き合っているためか、もう少しで何かが見えてきそうな気がして。

 

『もう少し……!』

 

『ノワッ!!』

 

(え?)

 

 突如体の内側から小さく響くヨノワールの声。

 

 集中力が切れて他の声が聞こえ始めたわけじゃない。相変わらずこの視界のぶれに集中しているし、現在進行形で他の音は聞こえてこない。なのに、体の奥から響くヨノワールの声がずっと離れない。

 

(これは……?)

 

 おぼろに聞こえてくるヨノワールの声。それも時間が経てば経つほどはっきりと聞こえ始め、最後にはまるで自分の口から放たれているのではないかと言う程鮮明になり。

 

「「ッ!?」」

 

 バチンと、何かがつながったような音が響き、ボクの視界が一気にクリアになる。さっきまでぶれていて何がなんだかよくわからなかった視界が一気に開けたことにより、まるで暗い森の中から切り抜けたかのような眩しさに襲われ、思わず目を細めそうになる。

 

 それでも我慢し続け、光広がる視界が明けた瞬間、ボクの目の前に映ったのは……

 

「レオッ!」

「うわぁっ!?」

 

 アクアブレイクを構えたまま目の前に突っ込んできたインテレオンの姿だった。

 

 さっきまでぼうふうの檻の中にいたはずなのに、いきなり目の前に、それも自分に対して攻撃をしかけてそうな仲間の姿に思わずびっくりしてしまい、慌てて後ろに下がろうとして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……あ、あれ?」

 

 それはまるで自分が無意識のうちにガードの姿勢を取ったように感じて、改めて前を見る。しかし、その時にはもう眼の前にはインテレオンはおらず、さっきまで見ていた嵐の中にとらわれているヨノワールたちの姿。

 

「今のは……って、ッ痛ぅ!?」

 

 刹那の瞬間だけ目の前にいたインテレオン。嵐の中にいたはずの彼が、なんであの瞬間だけ目の前にいたのかわからず、頭がこんがらがってきたときにまた起きる不思議現象。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「こ、これは……本当にどうなってるの……?」

 

「レオッ!!」

「ノワ……」

 

 集中力が切れ、いつもの視界に戻ったところで、ボクが痛がっている姿を見かけて心配になったらしいみんながボクの下へかけてくる。

 

 特に回復技の使えるブラッキーが急いでボクの下へ駆けつけて、謎の痛みによって赤くはれた腕に、つきのひかりを行って治療をしてくれる。

 

「ありがと、ブラッキー。もう大丈夫だよ」

「ブラッ!!」

「マホ!!」

「フィィッ!!」

 

 つきのひかりによって大分痛みが引いたことを伝えると、ボクが無事と分かった瞬間に飛び付いてくる甘えん坊トリオ。インテレオン、エルレイド、ヨノワールも、飛び付いては来ないものの、ボクの姿を見て安心してくれたようだ。

 

 そこからは、ボクたちの様子がおかしいのに気づいたホップたちも合流してきて、練習どころではなくなってしまい、今日の特訓は自然とお開きとなった。

 

 今日の訓練を終え、ひとまず自由時間になったみんなは、また賑やかに話し出す。

 

(……本当に、ボクの体に何が起こっているんだろう?)

 

 ただ1人、自分の課題と向き合うことによって、新たな問題にぶつかってしまったボクを除いて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特訓回

改めて、ようやくフルメンバーを心置きなく絡ませることが出来るようになったので、前話の視界のぶれも絡めた特訓回です。

視界のぶれ(?)

視界のぶれがさらにおかしなことになっていますね。
はてさてこれは一体ナンナノデショウカ?




正直、このお話は書き終わってすぐに出すか考えたのですが、ここまで2300更新をしてきたので、ここに合わせて法外のでは?という気持ちもあり、今回は次の日の2300に投稿させてもらいました。

急用で遅刻した時は、時間を統一するため次の日にするか、はたまたすぐに出すべきか……ちょっとした悩みものでした。

多分今後もこのスタイルになると思いますので、2300で更新されなかったら、急用でないんだなと察していただけたらと思います。
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