【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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117話

「んん〜……こんなものかな」

 

 軽く伸びをしながら明日の準備を終えた私は、荷物を直ぐに取れる場所に移動して、その荷物の上に明日着る分の服を乗せて、いつでも出発できるようにしておく。これで今日やるべきことは全部終了だ。

 

「いよいよ明日かぁ」

 

 作業用につけていたスマホロトムの電気を消して真っ暗になった部屋を見渡してみれば、私よりも先にベッドについて安らかな寝息を立てているみんなの姿がうっすらと目に入る。

 

 今日はみんな揃ってナックルスタジアムのジムミッションに挑み、それぞれが決して楽ではない戦いを強いられて、そのうえで揃って無事にジムミッションを突破していた。ホップとフリアは、そんなに苦戦しているようには見えなかったけどね。

 

 単純に天候にあまり影響を受けないポケモンが多かったホップと、ダブルバトルというルールにかなり精通しているフリアは、私たちの中でも比較的簡単そうに突破したように見えた。

 

(ホップはともかくとしても、フリアはさすがだなぁ)

 

 私なんてなれないダブルバトルにすごく緊張しちゃってた。予めフリアにダブルバトルの基本を教わっていなかったら、私の負けは全然あったと思う。それほどまでに慣れないルールというのは私の思考や行動をかなり縛っていたみたいで。

 

「今度はキバナさんとのバトルって考えると……不安、大きいな」

 

 想像以上に疲れている体を直ぐに休めるため、みんなに習って体をベッドに滑り込ませながら、明日のことを考える。

 

 明日はいよいよキバナさんとのバトルだ。

 

 ガラル地方で最強のジムリーダー。そしてジムチャレンジ最後の砦。そのうえで行われるダブルバトルという慣れないルール。

 

 間違いなく、今までで1番厳しい戦いになるだろう明日のバトルを想像する。その過程でふとこんなことを考えてしまう。

 

(もし、私だけ負けて、みんなに取り残されたらどうしよう……)

 

 元々前を走っているフリアは勿論、今まで隣にいたと思っていたはずの、ホップやマリィ、クララさんに、先を越されて置いていかれる想像。

 

 正直、今までのジム戦も前日に同じようなことを考えることは何回もあった。けど、今回は相手があのキバナさんということもあるせいか、余計そういった想像をしてしまう。

 

 そんな不安と緊張は、ベッドについて目を閉じても一向に収まる気配がなく、むしろどんどんと膨らみ、私の気持ちを騒ぎててていく。

 

「……眠れない」

 

 それは私の目の覚醒という形で表面に現れてきて、一向に眠気が来る気配がない。明日にジム戦を控えている以上、今日このまま眠れないというのは絶対にまずいと思いながらも、いくら目をつむったって、一度私から離れていった眠気はなかなか戻らない。

 速く寝ないとと焦るたびに離れていくそれに、今度は喉の渇きとして姿を現してくる。

 

「うぅ……落ち着くためにも一回お水……」

 

 このままではよくないと感じた私は、いったん落ち着くために上体を起こし、ぐっすり眠っている他の人たちを起こさないようにゆっくりと布団から這い出て、私たちが泊っている部屋からお財布とスマホロトムだけを持って外へ出る。

 

 ポケモンセンターと違って消灯時間というものがないせいか、はたまた、これからまだチェックインする予定の人がいるからか、電気を消している部屋の中とは違い、まだまだ明るい廊下を進み、ちょっとしたスペースにおいてある自動販売機に向かった私はおいしいみずを購入。そのまま近くのソファに腰かけ、ゆっくりとペットボトルの蓋を開ける。

 

 乾いたのどを潤すために傾けたペットボトルからは、焦りと緊張のせいで若干温まっていた体を奥から冷やす冷たい水が流れてくる。その感覚に少し心地よさを感じながら、さらに水を流し込んでいく。つめたい飲み物を一気飲みするのはあまり体にいいとは言われていないけど、それでも刹那的な心地よさを求めてしまい、ついつい多めに水を飲み込んでしまう。

 

 一通り満足して、ペットボトルから口を離したときには、中身は半分くらいまで減っており、それは私の体と心がどれだけ焦っていたのかを目で見えるようにあらわされているようで、改めて自分の焦り具合がよく分かる。

 

「はぁ……ちょっと落ち着こう」

 

 お水を飲んだおかげで大分心に余裕は生まれた。けど、どこか行った眠気は未だに帰って来ることを知らないので、仕方なくちょっと時間をつぶすことに。財布と一緒に持ってきたスマホロトムを起動。動画配信サイトへすぐさまつなげられた画面には、そういえばまだ確認していなかったと思い出したことから、今日のジムミッションの切り抜き動画が映し出される。

 

 映し出した内容はフリアの挑戦シーン。

 

 私の戦っているところを見返すのもありかなと思ったけど、今の精神状態だと反省点ばかりに目が向けられ、ネガティブなことばかりを考えそうな気がするので却下。かわりに、きっと今回も凄いバトルをしているであろうフリアのバトルを見て、今度はどんな戦いをしているのかをこの目で確認する。

 

 各挑戦者ごとに切り抜きされているこの動画は、アーカイブの時のようなリアルタイムのコメントの流れを見ることが出来ないため臨場感というものに欠けてしまうものの、代わりに長い生放送の、どこからどこまでが目的の試合かというのを探す手間が省ける。私個人としては、あまりコメントを見るタイプではないからこっちの方が嬉しかったりする。

 

「え!?」

 

 そんな私がフリアの挑戦動画を見て最初に口から零れたのは驚愕の声。切り抜かれた動画というのは、当然だけどその人が戦っているところだけを切り抜かれている。それが何を意味するかと言うと、動画の残り時間を見てしまうと、そのバトルがおおよそどれ位で決着が着くのかがわかってしまい、軽いネタバレになると言う事。勿論、宝物庫から出てきてすぐに合流した私たちは、フリアがバトルにかかったおおよその時間を予想することは出来る。確かにフリアが私たちに合流するのは早かった。けど……

 

「動画時間……5分もない……」

 

 動画の近くに表示されている時間は5分を切っていた、それはつまり、フリアのジムミッションがこの動画時間よりも短い時間で終わったと言う事になる。

 

 いくらフリアが強いと言ってもここはナックルスタジアム。最後のジムミッションをうたっている場所だから、当然難易度もひとしおで、私は勿論、他のみんなも、どれだけ早くクリアできたとしても10分を下回ることはなかった。

 

「いったいどんな戦い方をしたんだろう?」

 

 相変わらず私たちの中で、シンオウ地方も旅をしていることもあり、当たり前なんだけど頭一つ抜けて強いフリア。そんな彼がどんな大立ち回りを見せてくれたのか。いつの間にか緊張や焦りという感情が消え去り、私の頭の中には、速くこの試合を見たいという楽しみな気持ちしか残っていない。そんな私の気持ちを代弁するかのように、気づけば私の人差し指は自分でも驚くほど滑らかに動画の再生ボタンをタップしており、スマホロトムの画面にフリアの戦っている姿が映しだされた。

 

「へぇ。フリアは晴れを使ってくる人と当たったんだ……って、インテレオンとモスノウだったんだ。天候は物凄く不利なところひいちゃったんだね……え、でもそれなのに5分切ったの!?」

 

 再生してまだ数秒しか経っていないのに、私の口から零れるたくさんの感想。主に驚きで占められた私の言葉を無視して再生が続く動画は、そのままバクガメスとキュウコンとのバトルへと移っていく。最初の打ち合いは天候のせいで威力負けしたけど、その次の一手でモスノウの風とインテレオンの水を綺麗に組み合わせることによって、バクガメスに致命的なダメージを与えていた。

 

「これ!スパイクタウンの特訓でちょくちょく見かけたもの!!完成したらこんなにすごいんだ!!」

 

 私たちがネズさんに勝つために特訓をしていた時にちらっと横目に確認していた、インテレオンとモスノウの連携技。それはあの時見たものよりもさらに洗練されており、息の合ったコンビネーションは見ている私が無意識のうちにため息をこぼしてしまう程綺麗なものだった。

 

 敵の攻撃は当たりもせず、フリアの攻撃はまるで追尾しているのではないかと錯覚してしまう程計算されつくした軌道を描いて、相手に吸い込まれていく。面白いように当たっていく攻撃は、ほどなくしてバクガメスを戦闘不能にし、2対1と数的有利を取ったフリアがそのまま攻め切った形で勝利を収める。

 

 動画時間からわかっていたことだけど、本当にあっという間の出来事で。けど、何時間もあった映画を見た後のような謎の満足感があった。

 

「やっぱり、フリアはすごいなぁ……」

 

 私の憧れた一番身近な目標。いつか隣に立って、対等の存在として一緒に歩きたいという夢をくれたあこがれの存在。

 

 ちょっと大げさに聞こえるかもしれないけど、こんなことを思ってしまう程感動を受けた大好きなポケモンバトル。

 

 そして……

 

(私の……好きな人の……)

 

「フリア……」

 

 今度は別の意味でとくんと高鳴る心臓の音。けど、緊張と不安に襲われていた時と違って、どこか心地よさを感じるその鼓動に思わず頬が緩み……

 

「ボクがどうしたの?」

「わひゃあぁっ!?」

「うわぁっ!?」

 

 急に駆けられた声に、少しだけ早く打たれていた鼓動が、まるでドラムのシンバルを思いっきり叩いたかのような爆音に変わって、同じくらいの大声を上げてしまう。それにならって体も大きく跳ねてしまったみたいで、急に動かしてしまった体と、急に大きな鼓動を打たされた心臓が同時に痛み出してしまい、思わずむせてしまう。

 

「けほっ…けほっ……」

「ご、ごめん急に声かけちゃって!!だ、大丈夫!?え、えと……新しいお水買いなおすね!!」

 

 むせてしまった喉を落ち着かせるために水を飲もうと口に持っていこうとして、さっき体を跳ねさせた反動で持っていたお水をこぼしていたことにようやく気付いた。フリアは私よりもその事実に先に気づいていたみたいで、私が何か行動を起こすよりも先に自販機へと足を運んでおり、もうすでにお金を入れ終えている状態だった。

 

「あ……けほっ……」

 

 ありがとうという言葉を残そうとしたのにむせて言葉が続かず、目でフリアを見るだけにとどまってしまう。けど、そんな私を見てフリアもすぐに察してくれたみたいで、ペットボトルの蓋を開けたのちに、背中をさすってくれながら、ペットボトルを私の口にゆっくり近づけてくる。

 

「無理にしゃべらなくてもいいよ。落ち着いてゆっくり……ね?お水も飲めるようになってからでいいから」

 

 優しく、諭すように、あやすように、どこまでも暖かなその声は、私の鼓膜を叩くと同時に安心感を与えてくれた。自然と早まっていた鼓動は落ち着き、むせていた喉も少しずつ治まっていく。

 

 深呼吸を一つ残してようやく大丈夫となったところでお水を一口。

 

 先ほども感じた、体の奥から冷えていくような心地よさに少し体を震わせながら、また深呼吸を一つ。

 

「はぁ……ありがとうフリア。えっと、お金返すね?」

「いいよいいよ、気にしないで。ボクが急に声をかけちゃったのがきっかけだったわけだし……」

 

 財布からお水の代金を取り出そうとしたのを直接手を抑え込まれる形で止められてしまう。手に伝わってくる暖かな感覚にほんの少し体温を上げながらも、『ここまでされてはお返しもできないか』と諦めてお金を戻す。

 

 一方でフリアは私の水を買うついでに自分の物も買っていたみたいで、自分用のペットボトルの蓋をあけながら私の隣に座り、水を一口飲み始める。

 

「ふぅ……どう?落ち着いた?」

「うん、もう大丈夫。改めてありがとうね?」

「どういたしまして。でも、どうしてこんな時間に?」

「え~っと……明日のことを考えるとちょっと緊張しちゃって眠れなくて……それでちょっと落ち着こうかなって。そういうフリアはどうしたの?」

「ボクは何か物音が聞こえたような気がして、体を起こして見渡してみたらユウリがいなくなってたから、何かあったのかなって」

「ううぅ、私が外に行くときの音で睡眠も邪魔しちゃってた……」

「別にユウリのせいじゃ……とは言い切れないかな……」

 

 否定しようとして、それでも私が起こしてしまったことは事実なため、今回ばかりは苦笑いをこぼすにとどまるフリア。否定してくれようとする時点でフリアからのやさしさが身に染みてちょっと辛い。自分一人で落ち込むならまだしも、周りの人まで巻き込んでしまったことに対する罪悪感が湧き出てしまう。

 

「まぁでも、普通は不安になるよね。ボクも昔はそんな感じだったし、一番の壁だもんね」

「フリアも、こういうことあったの?」

「勿論」

 

 ソファに並んで座るフリアから聞かされるのは、今まで聞いたことのあるフリアの過去に、フリア自身がその時どう思っていたかの感情が添えられたものだった。今まで聞いたのはどんな旅をしたのかや、どんな人と出会ってどんなバトルをしたかばかりで、フリア自身の感情や、その瞬間にどんなことを考えながら動いていたかという、フリアの内側を全く知らなかった。

 

 そして聞かされるのは、今の私と同じか、下手をしたらそれ以上の不安の声。

 

「当然だけど、ボクだって初めてのジム巡りは負けることも多かったよ。そして再戦を挑む度にまた負けるかもしれないって不安がいつもあった」

 

 最初に私の頭に浮かんだのは『意外』の一言。けど、よくよく考えたら当たり前のことで。いまでこそ、フリアはいつの間にか私たちの前を走ってくれる頼れる、そして憧れる人になっている。でも、そんなフリアにだって私と一緒で、ポケモントレーナーになりたての新米だった時期があるわけで。その事に気づいた瞬間、フリアの言葉は今まで以上にすっと胸に入ってきた。

 

「でも、そんなときはいつも仲間たちがそばにいて、支え合ってきたんだよね。特にデンジさん……えっと、ガラル地方で言うキバナさんの位置にいる人っていえばいいかな?あの人と戦う前日はすごく緊張して震えちゃってた。でも、そんな時も寄り添ってくれた仲間がいたから頑張れたんだ。だから、今度はボクがユウリの緊張をほぐす番」

 

 昔のことを嬉しそうに、そして楽しそうにしゃべるフリアの横顔についつい視線が吸い込まれる。そして、その時支えられた思い出を私にもつないでいこうとするフリアの心持ちに、嬉しいと言いう気持ちがどんどん溢れていく。

 

「って、偉そうなことを言っても、ボクにできることって言ったらたかが知れているんだけどね。今だと、話を聞いてあげることくらいしか……」

「ううん、それだけでも私としては十分」

 

 フリアとこうやって話しているだけで、私の中の不安や緊張は飛んでいくのだから。たかが知れてるなんてとんでもない。私にとって、フリアとの会話は何よりも効果的なリラクゼーションだから。

 

「ねぇ、もう少しお話に付き合ってもらってもいい?もっとフリアの話を聞きたい」

「勿論。ボクでよければ喜んで」

「やった!」

 

 私のわがままに付き合ってくれたフリアの言葉は、どんどん私の心を落ち着けてくれる。

 

(やっぱり、フリアとのお話はとっても楽しいな)

 

 そこから続いて行くフリアとのお話はとても楽しくて、ついつい時間を忘れて話し込んでしまう。

 

 その時間は、私の心をゆっくりと満たしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでその時ジュンがね?」

「うん……ぅん……」

 

 時間は流れて時期に日付けが変わろうとしている頃。ユウリのお願いから始まったボクの昔話は、時に驚かれ、時に興味を惹かれ、時に羨ましそうにされた。その様子を表すかのようにコロコロ表情を変えるユウリがとても面白く、ついついボクも喋る口がいつも以上に回ってしまったと思う。気づけば夜もかなり更けていたみたいで、隣から聞こえるユウリの声も、心做しか頼りないものへと変わっていった。

 

「ユウリ、大丈夫?眠━━」

 

 こちらに相槌をうちながらも船を漕いでいたユウリが少し心配になったので声をかけようとして……

 

「ん……すぅ……」

 

 すとん。と、ついに支えきることが出来なくなった頭が、そのままボクの方へ倒れてくる。

 

「っとと」

 

 その倒れ方があまりにも急だったので、思わず少しビックリしてしまいながらも、頭をぶつける訳にはいかないと何とか受け止める。眠ってしまったため力が抜けているその頭部は、いつもよりも━━いや、いつもの重さがわかる訳では無いんだけど━━脱力している分どこか重そうな印象を受ける。しかし、決して持つ事の出来ないほどでは無い重さかつ、暖かさを感じる頭部をしっかりと受け止めたボクは、そのまま自分の膝の上に誘導して、ゆっくりと下ろしていく。

 

「……ゆっくりおやすみなさい」

 

 ボクの膝に頭をのせ、規則的なリズムで呼吸を続けるユウリの頭を軽く撫でてあげながら、ぽつりと言葉をこぼす。髪は女性の命って言葉があるし、ヒカリからその辺のこともよく聞いていたから(何故か「だからフリアも自分の髪大切にしなきゃダメよ?」とも言われたけど……)一瞬触れるかどうかためらってしまったものの、みただけで綺麗とわかるほど、丁寧に整えられている髪から放たれる誘惑にどうしても勝てずに思わず撫でてしまった。

 

「んぅ……すぅ……」

「ほんと、無警戒というかなんというか……気持ちよさそうに寝ちゃって……」

 

 頭に手が触れるたびに、くすぐったそうに体をよじりながら、それでも落ち着いた寝息をこぼすユウリ。ボクの膝の上でぐっすりと眠っているその姿は、とてもじゃないけど先ほどまで不安と緊張で眠れないと言っていた彼女からは想像できない姿だ。

 

 ボクとの会話と、ボクの膝枕によってぐっすり眠れるだけの安心感を覚えてくれたという点においては確かにうれしくはあるんだけど、なんというか恥ずかしさがあるというか、ムズムズするというか……少なくとも、今この状態を誰かに見られたらボクは恥ずかしさで逃げてしまいそうになる。そして問題が一つ。

 

「……どうやって部屋に戻ろっか」

 

 膝にきれいに頭を乗せてしまっているため、当然だけどボクは一歩も動くことが出来ない。

 

 さっきはユウリに向かって『気持ちよさそうに寝ちゃって……』なんて言ったけど、正直ボクも無茶苦茶眠い。たった数分しか戦っていないとはいえ、結構真面目にいろいろ考えて強敵と戦ったのでそれ相応に疲れはある。得意分野とはいえ、久しぶりのダブルバトルだったしね。だからできる限りボクも早めにベッドに入りたいんだけど、かといってようやっく熟睡できたユウリを今から起こすのはもっと無しだ。寝れなくて苦労していた人をどうして今からまたたたき起こすことが出来ようか。できる人はきっと人間じゃない。

 

「でもユウリを起こさずに移動は……ん?」

 

 しかしいい案を思いつかないのも事実で、どうしようかと悩んでいるときに、肩にトントンとくる感覚。首を向けてそちらの方向を見ると、そこにはボクの相棒がいた。

 

「ヨノワール?」

「ノワ」

「心配してくれたの?ありがと」

 

 視覚共有の特訓をしてからか、お互いが今どこにいるのかというのがなんとなくわかってきたのを生かして、ボクを迎えに来てくれたヨノワールは、ボクの膝で寝ているユウリを見て自分の体を低い位置に下げていく。

 

「もしかして、運んでくれるの?」

「……」

 

 ボクの言葉にコクリと頷いたヨノワールが、自慢の大きな手でユウリをそっと持ち上げる。膝の上にあった温かさが消えたことに寂しさをちょっと感じながらも、ボクも明日に向けて寝るために、ヨノワールと並んで歩いて行く。

 

「ありがとうね、ヨノワール」

「……ノワ」

「うん、わかってる。……ユウリも、明日、お互い頑張ろうね」

 

 ヨノワ―ルに、『あまり大きな声だと起こすことになるぞ』という言葉をいただいたから、さらに声を小さくして明日に向けての言葉を落とす。

 

「う……ん……ありがと……フリア……」

「……っふふ、なんの夢見てるのやら」

 

 零れたユウリの寝言を聞きながら和やかな気分になったボクは、ヨノワールと並んでゆっくりと部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




緊張

当然フリアさんも新米だったころはあるわけで、その時はしっかり緊張していますよというお話。
よくよく考えたらポケモンの主人公って本当にすごいですよね。
なったばかりでよくあれだけの壁を越えられるものです。




前回フリアさんの見た目云々のお話をしましたが、正直男の娘でも物語上で影響はあまりないのでどちらでもいいんですよね。
それはそれで面白そうですから。
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