「竜よ、吠えろ!!」
「絶対に、負けない!!」
「ジュラァッ!!」
「ノワァッ!!」
バトルフィールドの中心でぶつかり合う赤黒い竜のオーラと、漆黒の幽霊のオーラ。激しい轟音をたてながら鍔迫り合う2つの力は、立っているだけでも辛いほどの爆風を巻き起こす。その衝撃は今この場を包んでいるすなあらしをも吹き飛ばしそうな勢いで、すながくれにて姿を隠していたサダイジャの姿が、ほんの少しだけはっきり見えるようになる。
「ブラッキー!!『でんこうせっか』で近づいて『イカサマ』!!」
今攻撃をすれば砂に隠れられることもない。すなはきの効果によって再びすなあらしが帰ってきてしまうけど、この問題はサダイジャが場に残り続ける限り永遠と付きまとう問題だ。しかもこの特性は、物理で殴ろうが特殊で殴ろうが勝手に発動してしまうものだから、これと言った対処が現状存在しない。どのみちすなあらしが続くのなら、いっそ割り切って殴りまくった方が絶対に良い。そのままサダイジャの体力が尽きて倒れてくれればなお良しだ。
痺れる体に鞭打って何とか走り出したブラッキーが、サダイジャの懐まで潜り込んでイカサマを構える。ダイマックス技とキョダイマックス技のぶつかり合いに目を奪われていたことと、砂がなくなって自分の姿があらわになっていることに少なくない動揺を覚えたサダイジャは、一瞬だけ反応が遅れてしまう。しかし、遅れているうちに一撃叩き込もうとしたところで再びブラッキーの体にしびれが走り、こちらも一瞬体が止まる。
「サダイジャ!『ドリルライナー』だ!!」
その一瞬で心を切り替えたサダイジャが攻撃態勢へ。お互い一瞬動きが止まったことにより、結果攻撃がぶつかるタイミングは一緒になる。
お互いの技がぶつかることはなく、ブラッキーの手が、サダイジャの尻尾が、それぞれの体を打ち付けて同時に後ろに吹き飛ぶ。
「ジュラルドン!!ブラッキーに『キョダイゲンスイ』!!」
「ッ!?ヨノワール!!こっちもサダイジャに『ダイホロウ』!!」
すなはきにより再びすなあらしが発動する中、ブラッキーとサダイジャが吹き飛んだのを確認したキバナさんがすかさずブラッキーを追撃する指示を出す。お互いがダイマックスを切っているから、ダイマックス技やキョダイマックス技はお互いに打ち合ってぶつけ合うものだという先入観が無自覚のうちに刷り込まれていたみたいで、今度はボクがキバナさんに先をとられる。ダイマックスが可能で、かつダブルのルールに慣れているキバナさんならではの作戦だ。
(本当ならキョダイゲンスイに技をぶつけて相殺したいけど、多分『すじがねいり』のせいでブラッキー自身がどうにかしないと全部避けられちゃう。だったらこっちもサダイジャを攻撃する!!)
幸いダイマックス技は、その攻撃範囲の広さから避けられることはまずない。たとえそれがすながくれなどによって自身の回避能力を底上げした状態だとしてもだ。そして勿論ブラッキーもただやられるだけじゃない。
「ブラッキー!!『まもる』!!」
ボクの指示を聞いて、痺れながらもなんとかバリアを張るブラッキー。ダイマックス技は、その強力すぎる威力故ダイウォール以外の防御技では完全にその技を防ぎきることが出来ずに、貫通ダメージを受けてしまう。けど、貫通してしまうダメージ量は、普通に受けるのと違っていくらかダメージは減る。ゼロにできないだけで減らすことが出来るのなら、守らない手はない。
一方でサダイジャの方は自身を守る技がないのか、ブラッキーと違って攻撃をもろに喰らって、また砂を吐き出しながら吹き飛ばされる。と、同時にダイホロウの効果によって、ジュラルドンたちの防御力が低下する。
ダメージレースではこちらが勝っている。が、問題はここからだ。
「ブ……ラッ!?」
「ノワ……ッ!」
「……キョダイゲンスイの効果」
ダメージと麻痺を抱えたブラッキーはともかく、ヨノワールまでもが体を少しぐらつかせる。これはジュラルドンが行ったキョダイゲンスイの効果で、その追加効果は相手のスタミナを文字通り減衰させるもの。恐らく今2人は急激な脱力感に襲われているはずだ。力そのものを奪われるこの能力もまた、キバナさんのジュラルドンが強いと言われる所以。
「どんどん奪われていく体力。お前はいつまで立ってられるか?」
直接なにかのステータスが下がる訳では無い。けど、ヨノワールはともかく、痺れも持っているブラッキーは、ここからスタミナまで奪われてしまえば間違いなく動けなくなる。そうなってしまえば、ねがいごとやまもるといった、使うのにそれ相応の体力と集中力が必要な技が使えなくなってしまう。ジュラルドンもサダイジャも減っているとはいえまだ体力に余裕はある。そのため、ジュラルドンにまた攻撃される前にどちらかを落とし切るのは難しいだろう。
(なら力比べ!!ブラッキーに向かって技を打たせないようにこっちから釘付けにする!!)
「ヨノワール!!ジュラルドンに向かって『ダイナックル』!!」
弱点を突き、更にこちらの火力を底上げできるこの技ならジュラルドンも無視できないはずだ。ジュラルドンに技を打たせてしまうと、すじがねいりのせいでそらすことが難しくなる。なら、ブラッキーに向かって技を打たせる暇がないようにすればいいはずだ。
「さすがにこれは貰えねぇな、もう一回『キョダイゲンスイ』!!」
こうかばつぐんの技を喰らうことは防ぎたいキバナさんも、ボクの考え通りの動きをしてくれている。となればここから始まるのは純粋な力比べ。拳をオレンジ色に光らせたヨノワールの拳と、ジュラルドンから吐き出された赤黒い波動がぶつかり合う。巻き起こる暴風は先ほどよりも激しく、この間にブラッキーとサダイジャがまた戦おうとしていた動きすらも阻害する。そのあまりにも激しい衝撃から、バチバチと稲光のような音すら聞こえてきた。
「絶対に押し負けないで!!」
「踏ん張りどころだぞ!!ジュラルドン!!」
お互い引くことの無い鍔迫り合い。それは激しい爆発音を奏で、お互いが元の姿に戻るという形で決着がつく。
「引き分け……か」
「みたいですね」
ダイマックスによる力比べはほぼ互角。場に残ったのは、キョダイゲンスイとダイナックルによる追加効果のみ。正直ダイマックス同士のぶつかり合いで決着がつくなんて最初から思っていなかったから予想通りだ。ただ、予想外のことがあったとすれば……
「ノワ……ッ!!」
「キョダイゲンスイのせいで削られた体力が思ったよりも大きい……」
思わず地面に手をつきそうになる姿を見て、ヨノワールがどれだけ疲れたのかがよく分かる。初めてのダイマックスということもあるかもしれないけど、それにしたって疲れすぎだ。そしてなによりも気にするべきことは、ボクたちにとってはここからが本番だという事。
「ジュラルドン!!『ドラゴンクロー』!!」
「ヨノワール!!『かわらわり』!!」
ダイマックスから元の大きさに戻ってすぐさまぶつかり合う両者。同時に発生するのはボクの視界のぶれ。
「……来た」
視界からの情報の一切が失われ、耳に聞こえるのはかわらわりとドラゴンクローがぶつかり合う音のみ。音からして、物理攻撃が得意なヨノワールが少し押しているみたいだけど、ボクがこの状態ということは彼もおそらく視界があまり鮮明ではないはず。となれば、このまま打ち合えば負ける可能性が高い。この戦いがダブルバトルなのであればなおさら。
「サダイジャ!!『アイアンヘッド』!!」
「ブラッキー!!『でんこうせっか』からの『まもる』!!」
音的にすながくれによって姿を消していたサダイジャがヨノワールの後ろから奇襲を仕掛けようとしたと思うところに、ブラッキーが頑張って移動してバリアを展開。弾かれたサダイジャは、再び砂にまみれてその姿を消す。
「ブラッキー!今度はジュラルドンに向けて『イカサマ』!!」
「ブ……ㇻッ!?」
「……ッ!!」
続いて、ヨノワールを援護するべく攻撃を指示。それに従って動き出そうとするブラッキーだけど、短く聞こえる悲鳴から察するに、麻痺によってその動きを阻害されているらしい。ヨノワールも視界がだんだんとブレ始めているのか、押され始めているようなうめき声が聞こえる。
「おらおら!そんなものか!?ジュラルドン!!」
「ジュラァッ!!」
「ノワッ!?」
ついに押され切ったヨノワールがジュラルドンによって弾かれる音が聞こえる。
「サダイジャ!!『へびにらみ』!!」
「ヨノワール!!」
弾かれたところでヨノワールの機動力を奪おうとする的確な判断。またブラッキーが身代わりになろうとするものの、いまだに痺れて動けないみたいで間に入ることもできない。ここでヨノワールがまひになれば、視界が共有されるまでの時間稼ぎどうこう言っている場合ではなくなってしまう。かといって、ボクの視界もヨノワールの視界もぶれて役に立たない以上、避けることも難しい。
このままではヨノワールまでまひする。そんな未来を予想していたボクだけど、次に耳に入ってきたのは、キバナさんからの意外な言葉だった。
「……なんでだ?ヨノワールがまひしねぇ……?」
(まひしない……?どうして、別にヨノワールにそんな能力は……いや違う!)
へびにらみは相手をにらむと同時に自分の体の模様などを見せる必要がある。けど、今のヨノワールには視界がない。つまり、自分をまひさせるものが見えない。
(キバナさんはまだヨノワールの目が見えていないことに気づいていない!!今のうちに!!)
「ブラッキー!!ヨノワールの掌に!!」
キバナさんに気づかれる前に攻撃するべく、まずはその準備。ボクの指示でブラッキーがヨノワールの掌の上に乗り、バレーのレシーブのような姿になっているはずと予想する。
「打ち上げて!!」
「まさか……?いや、今はそれどころじゃねぇ!」
そのままヨノワールが腕を振り上げることによって、ブラッキーは上空へ。
このタイミングでヨノワールの目が見えていない可能性に辿り着いたキバナさんは、しかし、上空に打ち上げられたブラッキーに何かされるんじゃないかと警戒するために、一度その思考を捨てて上へと視線を向ける。
さっきはボクが思考に足を引っ張られたけど、今度はキバナさんが足元を掬われる番だ。
「ヨノワール!!『じしん』!!」
「ッ!?そっちが本命か!!」
ブラッキーに皆の視線が集まっているうちに、ヨノワールが地面に拳を打ち付けてじしんを起こす。フィールド全体を攻撃するじしんなら、例え目が見えていなくても攻撃を当てることはできるし、ブラッキーは上空にいるから巻き込まれる心配もない。
「ジュラルドンは軽くなっておけ!!サダイジャ!!お前は『ポイズンテール』でジュラルドンを打ち上げろ!!」
ヨノワールを中心に広がっていくエネルギーをみて、すぐさま指示を出すキバナさん。体重を軽くすることによって、サダイジャの攻撃で空中に飛ばしてもらいやすくして、サダイジャはジュラルドンには効果がないポイズンテールによって、味方へのダメージすら出すことなく、じしんがこうかばつぐんなジュラルドンを逃がすという完璧な判断。
願わくばここでジュラルドンに大ダメージがあれば嬉しかったけど、ここはサダイジャへのダメージだけで満足しておこう。それに、空中に逃げたジュラルドンはブラッキーが攻撃できる。
「ブラッキー!!『イカサマ』!!」
「『ドラゴンクロー』で迎え撃て!!」
落ちてくるブラッキーと昇っていくジュラルドンがぶつかろうとする。ここまできて、自身の異変にようやく気付いた。
(あれ!?もう見えるようになってる!?)
いつの間にか視界のぶれが消え、ヨノワールとの視界共有が完了していた。いつもならもっと時間がかかっているところなのに、何ならいつもよりも鮮明に共有出来ている気がする。キバナさんと熱い戦いをしているうちに、自然とボクとヨノワールの波長が重なったのかもしれない。と、今はこの思考に時間を割くのがもったいない。ヨノワールも既に視界が共有されていることに気が付いているので、すぐさま行動に移す。
「ヨノワール!『かげうち』で援護!!」
ぶつかり合うブラッキーとジュラルドンへ横槍を入れるために、影の手を伸ばすヨノワール。距離があったため、威力の伴った攻撃をすることはできそうになかったけど、地面から伸びたその手は、ジュラルドンの足を掴み、わずかに引くことによってドラゴンクローの距離を見誤らせ、空ぶらせる。
「小癪な!」
「ブラッキー!!」
空ぶった隙を逃さずイカサマを構えたブラッキーがジュラルドンに突撃し、そのまま地面に叩き落とす。着地後、再び痺れる体に苦しみながらも、それでも確かに攻撃を当てたことにブラッキーが吠えた。
「よし!」
「サダイジャ!!『アイアンヘッド』!!」
「ッ!?ヨノワール!後ろ!!」
しかし、二人がかりでジュラルドンを攻撃しているうちに砂にまぎれたサダイジャがヨノワールの後ろに出現。そのままアイアンヘッドを背中に叩きつけて、ジュラルドンの方に戻っていく。
「ノワッ!?」
「あぐっ」
背中から感じる鈍痛に思わずうめき声を漏らしてしまい、ブラッキーが心配そうにこちらを見てきたのを視線で大丈夫と伝えて、すぐさま意識をバトルに集中させる。
「お前とヨノワール……やっぱ何か……おかしいな……?」
「今は……何も聞かないで下さい。ただ、全力でボクと勝負をお願いします!!」
ここまで戦ってさすがに何かがおかしいと気づいたキバナさんが、こちらを心配するような視線を向けてくるけど、その優しさを無視してただバトルすることをお願いする。痛がっていたあの表情を見られていたから、何かあったらまずいという考えからの発言なんだろうけど、間違いなく今までで一番この現象と上手く向き合えている。
今なら、もっとヨノワールのことがわかりそうだから。だからまだバトルをやめたくない。そんなもったいないことをしたくない。
ボクの視線を受け止めたキバナさんは……
「ジュラルドン!!『10まんボルト』!!サダイジャは裏を取りな!!」
バトル続行を選択。そのことが嬉しくて、思わず頬が緩みそうになるのをぐっとこらえて、こちらもすぐに指示を出す。
「ヨノワールは『いわなだれ』!!ブラッキーは『ねがいごと』!!」
いわなだれによってできた壁がジュラルドンの電撃をしっかりと受け止め、その間にブラッキーが回復の準備を進めていく。そんなヨノワールたちに対して奇襲を仕掛けてこようとするサダイジャだったけど、すながくれによって姿がかなり希薄になっているはずのサダイジャが動く影が、確かに視界の端に映った気がした。
「っ!!ヨノワール!!」
「ノワ」
ボクと視界共有をしているヨノワールももちろんその影を見つけている。いや、視界共有したからこそ、すながくれで隠れているサダイジャの姿を確認出来たボクとヨノワールが、そのままアイコンタクトで指示を出す。
ヨノワールが地面に手をついた瞬間伸びた影が、サダイジャの正確な位置へと伸びて、サダイジャをがっちりとつかみ取る。
「取った!!」
「フシャッ!?」
「何!?」
「ブラッキー!!『イカサマ』!!」
動けなくなったサダイジャにブラッキーが走り込み、イカサマにてヨノワールの方へ吹き飛ばす。自分の方へ飛んできたのを確認したヨノワールはすぐさまかわらわりを構え、サダイジャに叩きつけた。
「ジュラルドン!!『りゅうのはどう』!!」
サダイジャを大きく飛ばされているものの、それでもキバナさんはするべきことを見逃さない。イカサマを打った後、まひの痺れとキョダイゲンスイによって生まれた疲れで体が止まってしまったブラッキーを逃すことなく、ブラッキーに向かってりゅうのはどうを放つ。ブラッキーもただで喰らうわけにはいかないと必死に逃げようとするものの、まひと疲れが限界まで回ってしまったみたいで、一歩も動くことが出来ずに被弾してしまう。
「サダイジャ、ブラッキー戦闘不能!!」
ブラッキーとサダイジャの戦闘不能宣言。と同時に、天より降りそそぐねがいごとの光。その光がヨノワールをやさしく包み込み、背中の痛みが和らいでいく。
「お疲れ様。ありがとうブラッキー」
「よくやった。お前の砂、本当に助かったぜ」
お互いの手持ちを労いながらボールに戻す。
場に残ったのはお互いのエースのみ。
「ヨノワール!!」
「ジュラルドン!!」
お互いの言葉に反応し、直進するヨノワールとどっしり構えるジュラルドン。
「『10まんボルト』!!」
「『いわなだれ』からの『かげうち』!!」
飛んでくる電撃に対して岩で壁を作って防御。そこから影の手を呼び出し、岩を掴んでジュラルドンにぶつけるために伸ばしていく。
「『ドラゴンクロー』!!」
対するジュラルドンは両手に竜の爪を携えて、飛んでくる岩を打ち砕いて行く。そんな四方八方から襲い掛かって来る岩の弾丸を何とか弾いて行くジュラルドンに向かって駆けていくヨノワールは、最後の岩を砕かれた瞬間に懐に辿り着き、かわらわりを上段に構える。
「『10まんボルト』!!」
そのかわらわりを無理やり止めるべく、自身の体から電気を放ってヨノワールへぶつける。すでに懐に入っている以上、ここから引くことが出来ないヨノワールは腕をクロスすることで少しでもダメージを軽減しようと試みる。
「っつぅ……」
両腕に走る痛みに声を漏らしながら、それでも電撃を耐えたヨノワールは再びかわらわりを構えて、今度こそ上段から振り下ろしてジュラルドンに叩きつける。
「『ヘヴィメタル』!!」
しかし攻撃が当たる瞬間自身の体を重くして、どっしり攻撃に備えることでかわらわりをしっかりと受け止めるジュラルドン。右手に響く痛みが、かわらわりをしっかりと受け止められたことを物語っていた。けど、ここで攻撃の手をやめると、今まさにジュラルドンが反撃のために構えているドラゴンクローにやられるのが確定しているので、痛みを我慢して前を見る。
ヨノワールと共有された視界にて、左から薙ぐように振られている竜の爪が見えたため頭を下げる。髪の毛にかかる風圧で技をよけたことを確認し、続けて右から振られる爪を右手のかわらわりで相殺し、ジュラルドンの左爪を弾く。そのままの勢いを利用してその場で右に1回転。遠心力を乗せた右手のかわらわりを再びジュラルドンに叩きつける。
相変わらず重い体に痺れる右手と、本当に効いているのか不安になって来るけど、たとえ効いていなかったとしても、長く続いたすなあらしによって、ねがいごとで回復出来たとはいえヨノワールの体力はかなり削れている。今ここで離れたら、もう近づけるチャンスはないかもしれない。
「ブラッキーが残してくれた最後の願いを必ず先につなげるんだ!」
「相手も体力はきついはずだ!最後の踏ん張りどころだぞジュラルドン!!」
キバナさんもこの打ち合いが最後の攻防であることを理解している。
「ノワァッ!!」
「ジュラァッ!!」
ボクとキバナさん。2人からの声援を受けた当事者は、最後の打ち合いに向けて咆哮を上げた。かわらわりとドラゴンクローを構えた2体が真正面から向き合い、本来素早いポケモンではない2体からでは考えられないスピードで技をぶつけ合う。
爪を避け、手刀を避けられ、ぶつけ合い、一歩も引かない殴り合いが始まる。
共有された視界でヨノワールがどのように動いているのかを見ながら、どうすれば勝てるかを指示していくうちに、自然とボクの体も動いて行く。ヨノワールが頭をかがめた時はボクもかがめ、みさせてもらった視界で縦にかわらわりを振りたいと思いながらボクが手を振れば、ヨノワールも同じように技を出してくれる。
(勝ちたい)
攻撃する。
(勝ちたい!)
攻撃を弾く。
(勝ちたい!!)
そのたびにヨノワールの動きが鋭くなる。
「な、なんだ……ヨノワールの姿が……?」
ボクとヨノワール。二人の気持ちと動きが少しずつ、でも確かに重なっていく感覚を、心で感じていく。その分、ヨノワールの感じる腕の痺れもまた強く感じることになるけど、その代わりにどんどん体が軽くなっていく。
(何、この感覚……)
「動きも、どんどん速くなってやがる……ッ!?」
気づけばジュラルドンを押し始めるボクたちは、そのままジュラルドンへ猛攻を仕掛けていく。
ジュラルドンの胴を薙ぎ、右からくる爪は影の手で弾き、左からくる爪を屈んでかわした瞬間に、両手のかわらわりを同時に叩きつけて、いよいよヘヴィメタルで重くなったジュラルドンを吹き飛ばすことに成功する。
(行ける!!)
「ヨノワール!!」
「ノワアァッ!!」
後ろに吹き飛んで倒れたジュラルドンにとどめを刺すべく、一緒に右手を掲げたボクとヨノワールは、そのまま地面に拳をたたきつける。
「『じしん』!!」
全身全霊。ジュラルドンにとどめを刺すその一撃は、大地を伝ってジュラルドンの残ったわずかな体力を削り切った。
「ジュラルドン、戦闘不能!!よってこのバトル、フリア選手の勝ち!!」
「ノワアアァァァァァッ!!」
「ッしゃああぁっ!!」
自身が勝った宣言が述べられたと同時にあがるボクとヨノワールの勝鬨と拳。
鳴りやまない歓声の中、拳を突き上げていたヨノワールは、黒い謎の渦にうっすらと包まれており、いつものヨノワールとは違う姿になっているような気がした。
キョダイゲンスイ
PPが減るという効果を、スタミナが減るというものに解釈しました。
リアルタイムバトルでPPは正直意味が分からないことになるのと、さすがにキョダイジュラルドンが弱すぎるので、ちょっと強く、それでいて意味が通るものに解釈しています。
多分、実際のバトルだとこうなる気がします。
ヨノワール
視界共有からさらに何かが変わりましたね。
まだ渦に包まれて、ほんの少し姿が違うだけみたいですね。
ブラッキー
マホイップに続いて陰の功労者その2。
この子の願い事がなければたぶんすなあらしのスリップダメージを含めて、ヨノワールが落ちている可能性が高いです。
エルレイドの身代わりになったりと、かなり献身的な戦いが目に付きましたね。
ちょっと書いてて罪悪感がありました。辛い役回りをさせてしまってごめんね……。
少し難産だったりしました。
意外と決着をどうするかが悩ましかったです。ダブル自体は書いててとても楽しいんですけどね。
そしてアニポケでサトシさんがいい感じですね。あの1000万ボルトの使い方は素直に凄いなぁと思ってしまいました。
ラスターカノンの止め方がとても好きです。