【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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125話

「キュイキュイ!!」

「あな……たは……?」

 

 窓から外を見ていたところに、上から落ちてきて目の前に止まり、私を見て嬉しそうな声を上げる謎の生き物。ポケモンと言ってもいいのかさえ怪しい不思議な雰囲気を纏ったその生き物は、夢の中で聞いたあの声と全く同じ声の持ち主だった。その姿は、雲のようなフワフワした見た目で、まるで宇宙を想像させるような紫と黒の体に星がキラキラと光っているような色をしていた。大きさは手のひらサイズで、宙にフワフワしているから重さはわからないけど、間違いなく軽いんだろうなぁと感覚でわかる見た目をしたその子は、とてもじゃないけど1人で旅ができるような強い子には見えない。きっとお母さんかお父さんがいる子だとは思うんだけど、はぐれてしまったのかな?

 

「ねぇ、あなたはどこから来たの?」

「キュイ~……」

 

 そう思って質問を投げかけたものの、帰ってきた返事はどこかおびえているような、それでいてどこか寂しそうな声で、その一言だけで、この子にとって何か問題があったからこそ、ここまで来てしまったんだというのがわかってしまう程。

 

「何があったんだろう……」

 

 そこからさらに震えだしたこの子が更に心配になって、けどどうしたらいいのかわからなくて頭を悩ませてしまう。

 

「ユウリ~。そろそろご飯できるから、配膳とかホップたちを起こすのとかやってもらっても……どうしたの?」

「あ、フリア。あのね?窓から外を見たらこの子が降ってきて、何か困っているみたいなんだけど……どうすればいいのかわからなくって……」

「この子?……あ、今ユウリの掌にいる……初めて見る子だ」

「フリアも見たことないんだ……」

 

 どうすればいいのか悩んでいるところに後ろから声をかけてきたのは、朝食の準備を大体終えたと思われるフリアの姿。相変わらずエプロンがよく似合っている姿に思わず微笑みがこぼれそうになるのを今はぐっと我慢して、フリアと掌のこの子について話し合う。

 

「ポケモン図鑑とかでもわからないの?」

「あ、そういえば試してなかった……ロトム!」

 

 私の呼び声に反応してカバンから飛び出してくるスマホロトム。私の掌にいるこの子のことを知るために、スマホロトムのカメラがスキャンを始める。

 

 最近使っていなかったこの機能に懐かしさを感じながら、果たしてどんな情報が出てくるのかとはやる気持ちを抱え、フリアと並んで画面をのぞき込む。フリアとの距離が近くなっていることにちょっとドキドキしながらも、そんな気持ちはスマホロトムから告げられる音によって霧散していく。

 

「ERROR。ERROR。該当ポケモン無しロト」

「該当ポケモン無し……?ってことは他の地方のポケモンって事?」

「ボクも試してみよっか」

 

 予想外の結果に思わず固まってしまったけど、そこは経験豊富なフリアがすぐさま行動する。だけど、フリアの持つロトム図鑑からも、該当ポケモン無しという結果がはじき出される。

 

「シンオウ地方でも見当たらないポケモン……実は初めて見つかるポケモン、とか?そもそもポケモンかどうかも怪しいけど……」

「結局何もわからないね。どうすれば……」

「キュイ……?」

「ん?どうしたの?」

「キュイキュイ~!」

「「?」」

 

 図鑑をもってしてもわからなかったので、いよいよどうすればいいのかわからなくなった辺りで、私の掌の上にいた子がふわふわと飛びながら部屋の中に入っていく。

 

 急な行動にフリアと顔を見合わせながら首を傾げ、とりあえず中に入っていったフワフワの子について行く。暫くフワフワ飛んでいたその子は、ちょっとついて行けば何が目的で行動していたのかすぐにわかった。

 

「キュキュイ~!!」

「フリアの料理の匂いにつられてたんだ。お腹すいたのかな?」

「それはあるかもしれないね。今から1人分増やしても特に手間かからないから、ささっと作っちゃうね。ユウリはみんなを起こすのをお願いしてもいい?」

「うん。任せて」

 

 私の言葉を聞いてすぐさま料理を再開するフリアを見届け、私はさっきの子を抱えながら部屋に戻る。

 

「フリアの料理はすっごく美味しいから、楽しみにしててね」

「キュイ!!」

 

 私の声に元気よく返事をした謎のポケモンは、そのまま机の上に着地して楽しそうに待っていた。体を揺らしなぎら声を上げるその子を見ていると、なんだか昔のホップのウールーや、卵から帰ったばかりのエレズンをお世話していた時のような感覚が蘇ってくる。これが母性本能ってものなのかな?となるとお父さんは……

 

(……いやいや!何考えてるの私!!そんなこと考えるよりも、今はやることやらないと!!)

 

 頭の中に浮かんだ淡い想像を、頭を左右に振って一蹴。すぐに気持ちを切り替えて、自分のするべきこと……ホップたちを起こす作業へと取り掛かっていく。

 

「ホップ!!マリィ!!クララさん!!起きて!!もうちょっとでフリアのご飯ができるよ!!」

 

 私が窓を開け放ったことによって、部屋の奥まで入り込んできた陽の光と、私の『フリアのご飯』という単語、さらに、私の言葉を裏付けするように、キッチンの方から漂ってくる甘い匂いに釣られて、みんなもうっすらと目を開け始める。

 

「んく、ふあああ~…………よく寝たぞ…………」

「ふぁ……おはよ、ユウリ……」

「ううぅ……あと5時間……」

「おはようホップ。マリィ。そして2度寝はダメです。早く起きてくださいクララさん」

 

 そのまま素直に覚醒し、伸びをしたり欠伸をしながら挨拶をしてくれた2人には挨拶を返し、2度寝に取り掛かろうとするクララさんは、再びベッドに体を預けられてしまう前に、私の腕をクララさんの体の下に滑り込ませて、無理やり起き上がらせる。ホップやマリィがこんなにも朝のんびりしているのは珍しいけど、クララさんに関しては平常運転だ。

 

「とりあえずみんな顔を洗っておいで?その間に私も色々準備するから」

「おう……わかっ━━」

「そうさせてもら━━」

「ううぅ……今日くらいもう少し寝てても━━」

「ピュイピュイ!!」

「「「…………え?」」」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら、私の提案に乗る形で揃って洗面台に行こうとしていたところに、机の上でお行儀よく待っているあの子も、まるで『おはよう』と言っているかのような鳴き声を落とす。この子にとってはただ普通に挨拶をしただけ。でもホップたちにとっては、急に聞きなれない声が響いたので、思わず体を硬直させながら、先程響いた声の主は誰なのかと、部屋中に視線をくまなく向けて探す。勿論、ご飯を楽しみにしているあの子は、特に隠れるわけでもなく、相変わらず机の上で楽しそうにゆらゆら揺れながら佇んでいるだけだから、ホップたちの視界にすぐ入り、再びホップたちの体の動きが固まってしまう。

 

「…………キュイ?」

「……みんな?」

 

 そんなみんなの行動が不安になってきてしまい、机の上の子と揃って首を傾げた瞬間。

 

「なぁユウリ!!この子一体なんなんだ!?」

「不思議な子……ねぇ、もしかしてユウリがゲットしたの?いつ?」

「きゃあああっ!!超絶キュートなこなんですけどォ!!ふわふわキラキラでバエバエェ!!ユウリン!!写真撮ってネットにあげてもいいィ?」

 

「ピュピュイ!?」

「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて!?」

 

 3人揃って、先程まで眠そうに動いていたのろまな姿から一転し、初めて見るポケモンにテンションが急上昇。気づけば机の上の子の目の前にまで迫っており、3人から同時にそれぞれの特徴がよく出た質問をぶつけられてしまう。

 

 一方詰め寄られた側である机の上の子は、いきなり目の前に迫ってきたホップたちのせいでビックリしてしまい、体が震え、泣き出しそうな表情へと顔を歪めてしまう。その変化にホップたちは気づいていないようで、このままではまずいと感じた私は、みんなの前から取り上げるように机の子を抱き抱えて、みんなから1歩離れた場所に下がった。

 

「もう、この子怯えてるでしょ?興味があるのはわかるから、今は顔を洗ったり着替えたり、することちゃんとして!!」

「お、おう……悪かった」

「ご、ごめん……」

「ごめんなさいィ……」

「全くもう……」

 

 私の言葉にようやく自分たちのしていたことを理解したホップたちが、慌てて誤りだしたのを確認して、私もこの子をゆっくりと机の上に下ろしてあげる。

 

「急なことでびっくりしちゃったよね?ごめんね?」

「すまん!!この通りだ!!」

「ほんとにごめん!ついつい、初めて見るポケモンにテンションが……」

「こんなキラキラ綺麗なポケモン初めてだったからァ……」

「キュイキュイ!」

 

 机の上に降ろした瞬間にこの子が浮かべるのは、先ほどまでと同じ星のようにキラキラした笑顔で、ホップたちの謝罪に対しても、もう気にしていないのか楽しそうな声をあげながらまたゆらゆらしていた。

 

「追加分含めて朝ごはんで来たよ~……って、何があったの?」

 

 一通り丸く収まったタイミングで再びこちらに姿を現すフリア。

 

「ううん、何でもないよ。ね?」

「キュキュイ!!」

「そう?ならいいんだけど……あ、ユウリ。ご飯できたから運ぶの手伝ってくれる?」

「うん、いいよ」

 

 キッチンの奥から甘い匂いを運ばせながら首をかしげるフリアに向かって、もうすでに終わった問題でいらない心配を与えないためにも、何でもないように笑って返す私たち。笑い合う私たちを見てちょっと不思議そうにしたフリアは、けれども何もないならいっかという考えからすぐさま思考を朝食へ。私もおなかがすいてしまい、フリアの美味しい料理をすぐにでも食べたいと心が向けられてしまっていたので、フリアのお願いを聞いてキッチンへと向かった。

 

「……ねぇ、なんか手馴れてるくないィ?」

「しっ、言わない約束と」

「ん?何の話だ?」

「気にしなくて大丈夫と」

 

 後ろからのささやき声を軽く流しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぐんぐ……成程、俺たちが起きる前にそんなことがあったのか……っと、ごちそうさまだぞ!」

「「「ごちそうさまでした」」」

「お粗末さまでした」

 

 そんなこんなで、フリアが用意してくれた、新鮮なきのみから作られたジャムがたっぷりと使われ、さらにミツハニーの巣からからとれた、あま~いはちみつがたっぷりとしみ込んだフレンチトーストに、みんなでほっぺたを落としそうになりながら幸せな朝食を食べ進め、その間に朝起きたことをすべてホップたちに話し終えた私たちは、フリアの食器を洗う音をBGMに、食休みをしながらまた話を続けていた。

 

 

「確かに、こんなに小さいポケモンってなると、お父さんかお母さんはいてもよさそうと」

「だから、そこまでこの子を送ってあげたいんだけど……」

「肝心の、この子が何者なのかがわからないってことねェ?」

「うん……改めて聞くけど、みんな知らない?」

 

 ガラル地方の図鑑でスキャンして見つからなかった以上、フリア以外にガラル地方以外の場所を知らないこのメンバーに聞いても望む答えは返ってこない。けど、そうとわかっていても、ほんのわずかな可能性にかけてみんなに質問してみる。しかし……

 

「「「知らない……」」」

「だよね……」

 

 返って来るのはやっぱり予想通りの言葉。それも、ガラル地方本土だけでなく、少し離れた孤島についても詳しいクララさんからも改めて否定の言葉が入ったため、いよいよもって手詰まり感が否めない。

 

「でも、外来ポケモンとも考えられないよね……?」

「ここガラル地方に限って、その可能性は一番遠いけんね」

 

 別の考えを建ててみるけど、そちらもすぐにマリィに却下されてしまう。忘れてしまいそうになるけど、ガラル地方はワイルドエリアという自然を保護するため、外来ポケモンは基本的に入国させることが出来ない。それでもここに外来のポケモンを連れくるには、ガラル地方のポケモンリーグと、渡来してくる人が元々いた場所のポケモンリーグの双方から許可を取ることが出来て初めて連れて来ることが出来るレベルだ。当然、この許可だって誰もかれもが取れるものではなく、リーグからかなり信頼された人が、ちゃんとした手順を踏み、用事を提示してようやく手に入れることが出来るほど厳しい。当然、万が一連れてきた人がその外来ポケモンを逃がしてしまおうものなら、風のうわさでしかその先のことは知らないけど、ガラル地方を永久に出禁にされるとか、地位剥奪とか、かなり大きい罰に処せられるらしい。

 

 そこまでしてようやく外来ポケモンを連れて来ることが出来るこのガラル地方において、マリィの言う通り外来からのポケモンという可能性は極めて低い。となると最後の考えとしては……

 

「やっぱり、今までにまだ発見されることの無かった新種のポケモンなのか……?」

 

 ホップのあげたこの理由しか思いつかない。

 

「だとすればどうするのが正解なんだ?」

「それこそ本当にわからないよね……」

 

「お待たせ……っと。その様子だとまだ答えは出てないみたいだね」

「お疲れさまフリア」

 

 みんな揃ってウンウンうなっているところに皿洗いを終えたフリアが帰って来る。けど、フリアもこのポケモンについて全く知らないというのは、誰よりも最初に私自身が確認しているため、フリアが帰ってきたからと言って話が発展するとは思えなかったし、実際しなかった。

 

「本当に、どこから来たんだろう?」

 

 みんな揃って視線を例の子に向ければ、机の上で楽しそうにコロコロと笑っている姿が目に入る。あの子以外に、フリアのマホイップと私のアブリボン、マリィのモルペコと楽しそうにじゃれている姿を見つめていると、なんだか悩んでいるのが馬鹿らしくなってくるほど朗らかで、ついついみんなの頬が緩んでいくのを感じる。

 

「とにかく、まずはこの子をどうするかってことを考えよっか」

 

 かわいらしいポケモンたちの戯れに、思考が少しすっきりしたと思われるフリアから提案が入る。

 

「ボクが思うに、これからこの子をどうするのかは主に3つの選択肢があると思う」

 

 指を立てながら説明するフリアの指にみんなの視線が集められる。

 

「1つ。迷子のポケモンとして、ガラル地方のポケモンリーグや、ジュンサーさんのところと言った、この子を預かってくれそうな所かつ公共施設に相談して預ける。2つ。正体不明なこのポケモンのために、今から頑張って色々調べてこの子をボクたちの手で返す。そして3つ。いっそユウリが仲間にしちゃう」

「……え、私!?」

 

 急に指摘されたことによって思わず声を出してしまう私。最初2つは理解できるけど、最後の一つがいきなりすぎて私の中で処理しきることが出来なかった。しかし、理解できていなのは私だけみたいで、他のみんなはむしろフリアの言葉に頷いていた。

 

「え、えっと……どうして私なの?」

「どうしても何も、その子さっきからユウリンになつきまくってる的なァ?」

「え?」

「キュキュイ!!」

「わわ!?」

 

 クララさんの言葉と、急に聞こえた鳴き声につられて視線を落としてみれば、いつの間にか私の膝の上にこの子が乗っかって嬉しそうな声をあげていた。その姿がとてもかわいらしく、思わず頭をひと撫で。急に頭に手を置かれて、怯えてしまうのでは?なんて疑問が頭をよぎったけど、特にそんなことなく気持ちよさそうに鳴きながら、この子は私の手を受け入れてくれた。

 

「ピュ〜ィ〜」

「気持ちよさそうにしちゃって……やっぱりユウリに懐いてると」

「きっとさっき俺たちが詰め寄って怖がらせちゃった時、1番最初に助けたからだな!!」

「そう……なのかなぁ?」

 

 少しだけ不安な気持ちが残るものの、みんなの視線と、この子の態度から見て、少しは自信を持ってもいいのかもと思い始める。目を細めて、本当に気持ちよさそうな姿を見せるこの子に、緩む頬を自覚しながらさらに撫でていく。

 

「んで、結局どうするの?」

「……はっ!!」

 

 そんな少し幸せなひとときに浸っていたところに掛けらるフリアの声に意識を戻されて、先程フリアが上げた3つの方法を思い出す。

 

 どれも正しいように見えて、どれも確信してこれと言える訳でもない、本当に究極の3択。どれにすればいいのか、どれが正解なのか、本当に答えがわからなくてしばらく唸っていると、横からさらに声がかけられる。

 

「そんなに難しく考えなくていいよ?ユウリのしたいことを考えて。多分ユウリも感じてると思うけど、この選択肢、どれを選んでも正解だと、ボクも思ってるからさ」

 

 フリアからのアドバイス。それは今私が悩んでいることの根本的な解決にこそなってはいないものの、私の気持ちをいくらか軽くしてくれるもので、今自分がどうしたいのかを改めて見つめ直すことが出来た。

 

 一応私の中では、答えは決まっていたりする。

 

「私は……まずはこの子の帰る場所を探してあげたいなって思ってる。なにかに怯えてたように見えたから、どこかに預けるって言うよりは、私がついて、安心させてあげたままでそうしたい。……それで、故郷や保護者が見つかって、そこまで送り届けて、それでもこの子が私に着いてきたいって、そう思ってくれたら、改めて仲間にするかどうかを考えようかなって思ってる。……どう、かな?」

 

 現状私の中で出せる1番の答え、だと思っている。この子の気持ちと私のしたいこと。その両方を満たした満足のいく回答のつもりなんだけど、これはあくまで私の主観の問題だ。だからこそ、頼れる仲間がこの答えに対してどう思っているのか聞いてみたい。

 

 どんな返答が帰ってくるのか。それが少し怖くて、若干頭を下げ、上目遣い気味にみんなを見渡してしまう。一方で、フリアたちは私を除いた全員で顔を見合せて、先程の私の言葉に対して、首を振る動作だけで会話を進めていき……

 

「異議なし、かな」

「俺も!ユウリの考えでいいと思うぞ!!」

「出会ったばっかりだけど、こうもモルペコたちと楽しそうにしているところ見せられちゃうと、あたしもほっとけなかと」

「キラキラして可愛い子と旅とか、テンションもアゲアゲだしねェ」

 

 一斉に聞こえる賛成の意見。

 

「みんな、ありがと」

「キュキュイ!!」

 

 できる限り客観的に見た思考をしたとは思っているけど、それでも私のわがままがそれなりに含まれているこの意見に、揃って賛成してくれたことに素直に感謝をする私。そんな私の姿に、この子もこの子なりに何かを解釈したのか、優しい声で鳴き声を出す。

 

 この子の声に、再び和やかな空気が流れる宿部屋。ひとまずのやることが決まり、ほっと一息を着いた私たちの中で、今度はホップが、少しテンションを上げながら口を開いた。

 

「おし!それじゃあ次はこの子に名前をつけてあげるぞ!」

「「「「名前……?」」」」

 

 ホップの言葉に揃って首を傾げる私たちを無視して、ホップの言葉は続いていく。

 

「そ、名前だ。俺たちがどれくらい一緒にいられるかはわかんないけど、でもその間この子のことを、『この子』とか、『あの子』とか、そうとしか呼べないのは不便だし、何より可哀想だろ?だから名前をつけてあげるぞ!」

「成程……確かに、ニックネームをつけてあげるのはいいかもね」

 

 ホップの言葉を聞いて納得するフリア。確かに、「この子」って呼び続けるのは抵抗が無いわけじゃない。世間的にも、自分の仲間のポケモンにニックネームをつける文化は普通にある事だ。私たちにそういうことをしている人がいなかったから、ちょっとした盲点だった。

 

「だろ?いい考えだよな!」

 

 フリアからの賛成を受けて、嬉しそうに頷いたホップは、再び私の方に顔を向けながら、ビシッと発言する。

 

「っと言うわけで、ユウリ!!何かいい名前を頼むぞ!!」

「え、また私!?」

「またも何も、その子はユウリンの仲間でしょォ?ならユウリン以外が名前を付けるのはお門違いでしょォ?」

「そ、そうだけど……」

 

 再び私に決断をゆだねられてしまったことに驚いてしまい、思わずたじたじになってしまう。今日はなんだかみんなが意地悪に感じる……。でも、クララさんが言っていることも間違いではないから反論の仕様がない。仕方ないので、この子の名前を決めるためにまた悩む私。

 

「う~ん……う~ん……」

「ピュイ……?」

 

 うなっている私を見ながら、この子はただ不思議そうに首をかしげている。

 

(改めてじっと見てみよう)

 

 私をじっと見つめてくるこの子と目が合う。綺麗な星が宇宙にちりばめられているような、本当に見とれてしまいそうなその見た目。さっきまで名前をどうしようかと悩んでいた私は、改めてこの子の姿を見て、すぐにひとつの単語が思い浮かんだ。

 

「星雲……」

「え?」

「星雲……ほしぐもちゃん……でどうかな?」

 

 雲のようにフワフワで、星のようにキラキラで、この子を表す大きな要因を言葉として並べたら、この名前しか思いつかなかった。見た目そのままの言葉。ひいては、安直と言われても仕方ない名前かもしれないけど、私にはこの名前が一番似合っていると、そう思った。

 

「ほしぐもちゃん……ねぇ」

「……どう、かな?」

 

 再びみんなに私の回答を考えてもらうターンが来る。今度はさっきと違ってフリアがヒントを出したわけではない、完全な私1人で考えた答え。だから、さっきよりも更に不安が大きかった。そんな私に対して、やっぱり一番大きなアドバイスをくれるのはフリアで。

 

「その質問は、ボクたちじゃなくて、その子にしてあげないとね?」

 

 フリアに言われてすぐさま視線を下に落とす。

 

 そう。この名前はこの子のためにつけるもの。だから、私が聞く相手はみんなじゃなくてこのに対して。

 

「ほしぐもちゃん……あなたのことは、今度からそう呼んでも、いい?」

 

 改めて、この子の新しい名前を付けてあげるべく、本人に最後の確認を取る。

 

 高鳴る心臓の音と、膨れ上がる不安につぶされそうになるけど、目だけは絶対に逸らさないようにする。

 

 ほんの一瞬。だけど、とても長く感じたその時間を経て、この子が行った行動は……

 

「キュキュイ~!!」

 

 満面の笑顔を見せながらのダンスだった。

 

 それは、私の考えた名前を喜んでくれた、何よりもの証。

 

「これからよろしくね!ほしぐもちゃん!!」

「キュキュイ!!」

 

 新しい仲間が、本当の意味で友達になった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




外来ポケモン。

一応、こういう扱いにしてみました。でないと、アニポケのような大会がシュートシティで開かれたときにどうしようもありませんからね。
管理厳しい許可制にしてみました。これはつまり……?

ほしぐもちゃん

やっぱりこの子の名前はこれかなと。
このタイミングでこの子の名前が⒲かあるはずがないので、名前をつけるとなるとやっぱりこれですよね。




ほしぐもちゃんとマホイップとアブリボンとモルペコによるじゃれ合い。
自分で書いててあれなんですけど、凄く見たいです……
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