【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

130 / 374
130話

「ゴウカザル!『マッハパンチ』!!」

「くっ、エンペルト!『アクアブレイク』!!」

 

 両手に紫色の焔を携えたゴウカザルがエンペルトに向かって駆けだす一方で、エンペルトはこの焔を防ぐべく、両翼に水を携えて構える。

 

 エンペルトの目の前に踏み込んだゴウカザルが両方の拳を連続で叩きつけるのに対して、エンペルトが頑張って翼で防ごうとするものの、ゴウカザルの拳が当たるたびに小さな爆発が起こり、そのたびにエンペルトの翼が弾かれてだんだん防御と水の集まりが甘くなっていく。

 

(カブさんの戦法を真似てみたなんちゃって戦法だけど……ゴウカザルは凄くうまく対応してくれているし、エンペルトに対してもの凄く圧力をかけられてる……この戦法、そんなに強いんだ……)

 

 さっきこっそりとゴウカザルに教えたばかりの戦法を完璧にこなしてくれるゴウカザルに感謝をしながら前を見る。

 

 おにびを携えた攻撃は対象に攻撃がヒットするたびに小さな爆発を起こしてくれるうえ、直撃すればおにび本来の効果であるやけど付与も狙うことが出来る。特殊攻撃も物理攻撃もどちらも可能なエンペルトに対しては、やけど状態は絶対的な有利展開とまでは言えないけど、アクアブレイクとアクアジェットというエンペルトの物理主力且つ、こちらの弱点をしっかりと突いてくる技の威力を下げられる点はかなり強い。

 

 ジュンもそれをしっかりと理解しており、技の威力では勝っているものの、技の回転力では負けているためこのままではやけどを貰ってしまうという事を嫌って、ジュンは一度ゴウカザルから離れる判断を下した。

 

「一回下がるしかないか……エンペルト!!『アクアブレイク』を地面に!!」

 

 地面に打ちつけて砂を巻き上げてこちらの視界を遮ったエンペルトは、アクアジェットでジュンの下へと帰っていく。

 

「自分の不利を悟ってしっかり下がる……そういう冷静な判断も覚えたんだね……ボクは嬉しいよジュン……」

「お前の中でオレの評価って何だったんだよ~!!」

「え、猪突猛進罰金ボーイ?」

「物凄く不名誉なんだが!?」

「だったら普段の行動から見直しなさいよ……『おにび』!!」

「ちょ、会話中!!」

 

 舞い散る砂が落ちて視界が晴れたところで、今度は拳につけたものではなく口から吐き出したおにびがエンペルトに向かって真っすぐ飛んでいく。

 

「全部押し流せ!!『ハイドロポンプ』!!」

「『ハイドロポンプ』をよけて、エンペルトに『おにび』を出しながらダッシュ!!」

 

 それに対してジュンはハイドロポンプですべてを押し流すことを選択。一瞬で消火される紫色の焔を横目に見ながらまた前に走り出す。ハイドロポンプは確かに強力だし、特訓によって強化されたそれは普通の技に比べてさらに太い攻撃にはなっているけど、ゴウカザルの速さなら避けられないわけではない。紙一重で横にずれて前に走り出し、ハイドロポンプに向かって斜め右下を駆けながらエンペルトに向かっておにびを吐き、それについて行くように走り出す。

 

「絶対に近づけさせるんじゃないぞ!!『うずしお』!!」

 

 対するエンペルトは、その場で独楽のように回転しながらハイドロポンプを維持。その結果、エンペルトを中心とした巨大なうずしおが形成され、おにびもゴウカザルも、全てを巻き込まんとその規模をどんどんと大きくさせていく。

 

 広がっていく大きな渦によってエンペルトに飛んでいったおにびはすべて消火されたけど、エンペルトの口から吐き出されたハイドロポンプから派生したこのうずしおは、エンペルトの口の位置より身長の低いゴウカザルの頭上に展開されているためこちらに被害はまだない。勿論、ここからエンペルトが口を下に下げてうずしおの位置を下げられてしまえば、ゴウカザルも巻き込まれることになる。

 

(でも、回転しながら口から吐いている水によってうずしおを作成している以上技の自由は効きづらいはず……なら……!!)

 

「『うずしお』が下がりきる前にエンペルトの下へ!!」

「ガウッ!!」

 

 さらに背を低くし、地面を這うように駆けるゴウカザルは、自身の頭にうずしおが当たる前にエンペルトの懐に入ることに成功する。

 

「エンペルト!!『アクアブレイク』に切り替えだ!!」

 

 ジュンの指示でうずしおからアクアブレイクにスイッチするエンペルト。懐まで入られた今、うずしおで巻き込むことよりも、いっそ近距離技で思いっきり弾き飛ばした方が安全と悟ったジュンによる素早い指示変更により、水の刃を携えながら回転するエンペルトは、ますます独楽の姿に近づいていた。技を大きく強化させながら放たれているこの独楽を簡単に止めることなんてできないだろう。けど、この行動がわかっていたのなら対処はまだ可能だ。

 

「地面に『マッハパンチ』!!」

「やっぱりそうくるかっ!!」

 

 おにびを纏った拳は何かに着弾した瞬間小さな爆発を起こす。その性質を利用し、エンペルトの足元にマッハパンチを放つことによって、エンペルトの足元が爆発する。

 

「ぺルッ!?」

 

 ただでさえ砂浜という足元の悪い場所なのに、さらに爆発によって足元を崩されたエンペルトは大きくバランスを崩す。回転も弱くなっていき、徐々に攻撃の威力が落ちていく中、懐に入り込んだゴウカザルが、拳を力強く握りしめた。

 

「『インファイト』!!」

「『アクアジェット』で距離を離すんだ!!」

 

 拳の焔をさらに燃え上がらせ、連続で両の拳を叩きつける準備をするゴウカザルに対し、全身に水を纏い、急いでここから離れようと逃げの一手を構えるエンペルト。アクアジェットという技の兼ね合い上全身に水を纏う事となるので、その水でおにびをある程度抑えることが出来き、且つ素早くゴウカザルから離れられるという逃げと防御を同時に行えるこの行動。多分ジュンはそこまで深くは考えておらず、とにかく逃げられたらそれでOKという思考だとは思うけど、こういう副次効果をいつの間にか起こしてしまうのも彼のちょっとした強さというか、恵まれているところだろう。

 

 後ろに全力で下がろうとするエンペルトに対して、追うゴウカザルがいくつかの拳を叩き込む。

 

 拳の焔は水によって消火されてしまったけど、みずタイプのほかにはがねタイプも複合として持っているエンペルトに対して、本来のインファイトのタイプであるかくとうが抜群で刺さるため、後ろに飛んでいくことによって若干威力を抑えられたものの、それでも十分なダメージを与えることには成功。

 

 若干苦しそうな声を上げながら、それでも何とか下がりきることのできたエンペルトは、自身のダメージをごまかすかのように叫び声をあげながら再び構えを取る。

 

(体力半分手前くらい……ってところかな?)

 

 技の当たり具合とエンペルトの様子から、相手の残り体力におおよその検討をつけておく。あと2回くらいインファイトを叩き込むことが出来れば確実に勝ち切れると思うけど、そう簡単に当てさせてくれるとも思わないので、またおにびやマッハパンチで牽制や攪乱をしながら攻めるしかないだろう。

 

(有利はこっちにあるからもう一度、焦らずゆっくりと……)

 

「エンペルト!!こっからの逆転劇を見せつけてやるぞ!!『ハイドロポンプ』!!」

 

 エンペルトの口からまた吐き出される激流。けどこの攻撃はもう何回も見たし、そもそも、元々あまり命中力があまり高くないこの技を避けるのはそんなに難しい事ではない。素早く左右にステップを踏むことで的を散らし、うまくねらえないようにして前に走るゴウカザルは、紙一重でハイドロポンプを躱そうとし……

 

「エンペルト!!今のお前の最大出力だぁ~!!」

「ペルッ!!」

「グゥキッ!?」

「ゴウカザル!?」

 

 元々太かった水の柱をさらに太くしたハイドロポンプに弾かれた。当たりは浅かったものの、ただでさえ強力なハイドロポンプを更に凶悪なものに変えたその一撃は、確かにゴウカザルの勢いをそいでいく。何とか受け身を取って追撃をされないようにすぐに意識をエンペルトへと向き直してはいるものの、その表情からはかなりのダメージがうかがえた。

 

(でもなんでいきなりあんなに威力が……)

 

 今まで手を抜いていたのかとも考えたけど、そんな器用なことがジュンにできるはずもないのでその考えはすぐに捨てる。となると、原因はエンペルトの方にありそうだけど……

 

「行くぞエンペルト!今のお前は最強だ!!」

「……ペルッ!!」

「……そういうことね」

 

 エンペルトに視線を向けると、エンペルトの周りに淡い青色の光が立ち昇っていくのが見えた。ボクのインテレオンでも発症した同じ現象。それは、初心者用のポケモンのみずタイプのポケモンが持っている特性。自分の体力が減るとみずタイプの威力がかなり強化される『げきりゅう』と呼ばれるその特性は、『なるほどこれならあの威力が出てもおかしくない』と納得すると同時に、『げきりゅうが発動するほどまだエンペルトを追い詰めてはいない気がする』という新たな疑問をボクに残す。

 

 体力を数字として視認できるわけではないから、相手がどれくらい追い詰められているのかは正確にはわからない。けど、何回も戦った経験のある相手なら何となくの感覚がちゃんとボクの中にある。最初こそは、『久しぶりのバトルで感覚がちょっと麻痺して、予想よりもエンペルトを追い詰めていたのかな?』なんて思ったものの、エンペルトの姿を改めてよく見て、やっぱり本来の『げきりゅう』が発動するところまでは追い詰めていないことを確信した。もしそこまで追い詰めているのなら、ハイドロポンプを打った後に間違いなく疲れたような表情を見せるはずだから。けどそれがなく、今も元気に雄たけびをあげながらこちらをにらんでくるエンペルトからはとてもじゃないけど手負いのそれには見えない。となれば、考えられることは1つ。

 

「シロナさんとの特訓で、『げきりゅう』をより簡単に発動できるようにも成長しているのか……」

「オレはフリアみたいに何かを考えるのは得意じゃないし、コウキのような第6感もない。どこまで言ってもオレの取り柄はこの愚直さと思いっきりの良さだけだ!なら……オレはそこをとことん伸ばす!!押してダメならもっと押せ!!押して押して押しまくる!!力こそパワーだ!!エンペルト!!『アクアジェット』!!」

 

 通常の状態でも十分な速度を誇るアクアジェットが、『げきりゅう』によって強化されたせいでさらに速度が強化された状態でこちらに襲い掛かる。縦横無尽に駆け回るその姿はまるで一本の大きな水の矢で、下手をすればルリナさんのポケモンのアクアジェットよりも速いのではないか……否、確実に速いと断言できるほどのものだった。最も、あの時のルリナさんの手持ちはジム用に調整されていたため、あれが全力だとは思わないけど、それにしたって速すぎる。さらに、自身の体に纏う水の量も厚さを増しているため、もはや真正面から受け止める。ないし、相殺することはほぼ不可能だろう。

 

「行け!!エンペルト!!」

 

 そんな凶悪な技がいよいよゴウカザルを攻撃しようと突っ込んでくる。目で追うのがやっとなその攻撃を、しかし持ち前の身体能力の高さと自慢の素早さを生かしてギリギリのところで避けていく。けど、傍から見ても危なっかしいその回避は、もうあと何回か攻撃をされれば直撃するのが目に見えてしまっていた。

 

(ただ純粋に速く、強くなってる……たったそれだけなのに、だからこそシンプルに強くて対処が難しい。あの『アクアジェット』に対抗するのなら、こっちもそれ相応の速度か威力を持たないと……となると、あれを試してみるしかないかな?)

 

「ゴウカザル!!今度は足にも『おにび』をセットして!!」

 

 ギリギリで避けているゴウカザルに指示を出し、紫色の焔を何とかまた装着する。先ほどと比べて両足にも紫の焔を纏ったその姿は、ちょっとしたおどろおどろしさを感じさせた。

 

「今度は両足にも『おにび』……けど、今のオレのエンペルトの技の前じゃ、そんなのろうそくの火みたいなもんだぜ!!かき消せ!!」

 

 さらに水の勢いを増しながら駆け回るエンペルト。ノリにノッてどんどん調子を上げていくエンペルトの前では、確かにこの両手両足に宿った焔程度では間違いなくエンペルトの水の鎧は突破できない。焼け石に水もいい所だろう。けど、この焔は攻撃をするためだけにつけたものじゃない。

 

「ゴウカザル!地面を思いっきり踏みつけて!!」

「ガウッ!!」

「相変わらず何するのかわかんないけど……またお得意の変な行動をしてくるんだな……させる前に倒せ!!」

「ペルッ!!」

 

 ボクの指示に従って地面に足を叩きつけるゴウカザル。その行動の意味をまだ理解していないジュンは、それでも嫌な予感は感じ取ったみたいで、さっさとゴウカザルを落とそうと突っ込んでくる。けど、その行動よりも先に、少しだけ早くゴウカザルに動きがあった。

 

 この手足のおにびは、先ほども言った通り何かに当たった瞬間小さな爆発を起こす。その爆発は小さいながらも確かな威力を秘めており、じばくやだいばくはつ、はじけるほのおなんかと比べたら当然劣りはするものの、相手に確実にやけどとダメージを与えるくらいの規模はあり、勢いだってある。

 

 そしてこの勢いは、相手への攻撃だけでなく、移動にだって使えるはずだ。

 

「なっ!?」

「ペルッ!?」

 

 エンペルトの目の前で足を砂浜に叩きつけた瞬間ゴウカザルの足元が爆発し、同時にゴウカザルの体が空に浮き上がる。その動きは、エンペルトにとっては目の前から一瞬にして消えたように見えた事だろう。

 

「ゴウカザル!手と足のおにびはそれぞれを打ち付けあったら爆発する!それを利用して駆け回って!!」

「ガウッ!!」

 

 ゴウカザル自身もこの機動力にはちょっと驚いたみたいだけど、ボクの言葉を聞いた瞬間すぐさま落ち着く。そしてこの現象を理解し、足同士を3回打ち付けあい、同じ回数だけ爆発音が響かせる。

 

「その速度に乗ったまま『マッハパンチ』!!」

 

 爆発音が響く度に動きを加速させ、空中を弾かれるように飛び回るゴウカザルは、アクアジェットで駆け回るエンペルトの動きを先読みし、水の勢いが一番強い真正面からではなく、比較的薄く見える側面から拳を叩きつける。

 

 エンペルトに当たったと同時に再び響く爆発音。

 

 エンペルトの体にまとわれていた水が爆風で少し飛ばされ、ゴウカザルの拳がエンペルトに突き刺さり、殴られたエンペルトは砂浜に落ちていく。

 

「『インファイト』!!」

「『アクアブレイク』!!」

 

 地面に落ちたエンペルトに対して致命傷を与えるためにインファイトを構えるゴウカザルと、迎撃のためにアクアブレイクを構えるエンペルト。拳の焔は先ほどアクアジェットを殴った時に消えてしまったけど、まだ足の焔は残っているので、インファイト中に拳と一緒に足も叩きつけることで、やけどと爆発のダメージも狙っていく。一方で、先ほどまでの有利な状況から一転、一気に不利に落とされたエンペルトは、それでもあきらめることなく両翼に水の刃を纏って振り回してくる。

 

 水の弾ける音と爆発音と、そして両者の攻撃が何回もぶつかり合う打撃音が連続で鳴り響く。

 

 アクアブレイクが何発かゴウカザルに当たっているものの、それを上回る回数の拳と足を叩きつけることによって、ダメージレースに勝つゴウカザル。おにびを纏った蹴りも何回か直撃しているため、エンペルトの体にはやけど状態になっていることを示唆する赤い火花が定期的に走っていた。これでエンペルトの攻撃力は実質ダウンしたこととなる。本来ならインファイトで防御面が下がっているはずのゴウカザルも、物理方面だけならまだまだ耐えることが出来るレベルのダメージに抑えることができるのも、ゴウカザルにとってはかなりの追い風となっていた。

 

 状況はどう見てもマウントを取っているゴウカザルが優勢。体力の優劣も逆転しており、このままインファイトが続けば間違いなくエンペルトが先に落ちるだろう。けど……

 

(……あのシロナさんに鍛えてもらっているはずのジュンとエンペルトが、こんな所で終わるわけない……)

 

 嫌な予感と妙な確信が同時に襲ってきて、この状況を見ても全く安心できなかった。実際、ジュンの表情から諦めている様子は一切なく、まだ何かをしてこようとしていることはわかる。しかし、ここからジュンがどのような手で逆転するのかが全く予想できないため見守るしかない。

 

 一体どんな手があるというのか。

 

 いよいよエンペルトの体力が尽きかけ始めたその時、ついにその手が明らかになる。

 

「エンペルトォ!!」

「ペルッ!!」

 

 ジュンの叫びに呼応するようにエンペルトが吠えた瞬間、エンペルトの体が青色に光り出し、ゴウカザルが少し弾かれる。

 

「なっ!?」

「ガウキッ!?」

 

 弾かれたゴウカザルの先に立つエンペルトの様子を見ると、『げきりゅう』によって淡く光っていた体はさらに濃く光り、そのうえでエンペルトの体からは次々と泡が立ち上っているように見えた。

 

(『げきりゅう』……?だけど、何か違う)

 

 今までのエンペルトと何かが違うその姿に思わず目を奪われる。

 

「エンペルト!!『うずしお』!!」

 

 体から輝く泡と水を立ち昇らせながら右手を思いっきり砂浜に突き刺すエンペルト。同時に、そこを中心としたうずしおが一気に広がっていく。このうずしおの展開速度も『げきりゅう』によってかなり強化されたみたいで、ボクの予想をはるかに超える速度で展開されたため、ボクがゴウカザルに指示を出す前にその渦に飲まれていく。

 

「ゴウカザル!!」

「ガウッ!?」

 

 このままでは渦に取り込まれてしまうためゴウカザルも必死にもがくけど、渦の流れが強すぎて全く動けず、その間に地面にしか広がっていなかったうずしおがどんどん高さを積み重ねていき、最終的には目の前に大きな立方体の水の塊が出来上がる。そこら辺の一軒家よりも大きくなっている水の立方体がうずしおによってかき混ぜられているその姿は、巨大な洗濯機のようにも見えた。

 

 流れる渦にもみくちゃにされながら体の自由を奪われたゴウカザルが、それでも必死にあがくけど一切抜け出せる兆しが見えない。そんなゴウカザルを見つめるのは水の立方体の真ん中の一番下から見上げているエンペルト。

 

「エンペルト!!『アクアジェット』!!」

 

 激しく渦巻く水の中で、しかしエンペルトだけはその流れの影響を受けることなく水中を駆け回る。水中を切り裂くように泳ぎ回るエンペルトが、渦の中で自由の利かないゴウカザルに対して連続で突進し、最後の仕上げにかかっていく。

 

 1回、2回、3回。

 

 連続でゴウカザルに突進を終えたエンペルトは、再びゴウカザルの真下に位置取り、とどめの一撃を構える。

 

「エンペルト!!『ハイドロポンプ』!!」

「ペルッ!!」

 

『げきりゅう』を限界まで解放したエンペルトによる最高火力。

 この一撃で確実に仕留めるという気持ちを込めた水の大砲をゴウカザルにロックオン。

 

 自身の苦手な水の中にとらわれ、うずしお、アクアジェットのコンボ喰らったゴウカザル。当然ここまで喰らえば既に満身創痍だし、ハイドロポンプを喰らえば確実に戦闘不能だ。けど、エンペルトが『げきりゅう』という追い詰められるほど自身を強くできる特性を持っていうのなら、同じく初心者用と言われるポケモンであるゴウカザルにだってその特性がある。

 

「ゴウカザル!!」

「ガウッ!!」

「そうだよな……お前のゴウカザルはこの程度じゃ落ちないよな……!!」

 

 今までたくさんの攻撃を受けて弱っているはずのゴウカザルが、水の中だというのに頭の炎をいつもよりも激しく燃え上がらせる。

 

 特性『もうか』

 

 言ってしまえば『げきりゅう』のほのおバージョン。だけど、エンペルトがここまで火力を出せているところを視てもらえば、特訓によりさらに強化されているジュンのエンペルトに比べたら見劣りはするかもしれないけど、十分強力な特性だということはわかってもらえるはずだ。

 

 残り僅かの体力を燃え上がらせ最後の抵抗を見せるゴウカザル。けど、あのエンペルトに対してはこれだけではまだ足りない。このまま攻撃しても返り討ちに合うだけだ。だから……

 

「ゴウカザル!!全身に『おにび』!!」

 

 ゴウカザルの体を紫色の焔が包み込んでいく。水の中でも燃え続けるその炎は、絶対にこのバトルに勝つというゴウカザルの執念にも見える。そして、炎を纏うと同時にうずしおの流れによって崩れた態勢を無理やり立て直したゴウカザルは、その場で高速回転をしながら『おにび』と『もうか』の力を更に開放してどんどん火力を上げていく。

 

 最後の反撃の準備は整った。

 

「ゴウカザル!!『フレアドライブ』!!」

「ガウッキィ!!」

 

 紫色の炎の塊が水中で高速回転をはじめ、爆発音が鳴ったと同時にエンペルトに向かって弾かれたように飛んでいく。対するエンペルトも溜めは十分。口の中に蓄えた水の塊を、ゴウカザルに向けて一気に解放する。

 

 

「「いっけぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

 水中でぶつかり合う紫の焔と水の大砲。

 

 水の蒸発する音と焔が爆発する音が連続で鳴り響き、水蒸気と舞い上がる砂のせいで視界もかき消されていく中、ここにいる誰もが耳を塞ぎながらも、決着の時を見逃すまいと真っすぐ戦場を見つめる。

 

 そんな状況が続くこと10秒ジャスト。

 

 一際大きな爆発が起こると同時に、砂と水蒸気全てが吹き飛び、バトルフィールドに向かい合って立つゴウカザルとエンペルトの姿が目に入る。

 

 青い光を纏うエンペルトと、紫の焔を纏うゴウカザル。

 

「エンペルト……」

「ゴウカザル……」

 

 先ほどまでうるさかったのが嘘のように、今度は静寂の時間が流れていく。

 

 誰もしゃべれず、誰も動けない。

 

 まるで時が止まったかのようなその時間。その制止した時間は……

 

「ペル……ッ!」

 

 右翼と左膝を地面につけたエンペルトが打ち破り……

 

「グ……キィ……」

 

 地面に倒れ込んだゴウカザルの音によって締めくくられた。

 

「そこまで!!勝者、エンペルト!!」

 

 高らかに宣言される、シロナさんによる宣言。

 

「あっぶねぇ……勝てた……」

「……お疲れ様。ゴウカザル」

 

 後に残るのは、ボクとジュンによる、全力を出し切ったことによる気の抜けるようなつぶやき声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おにび纏い

おにびを纏いながら戦う戦闘スタイル……特に、途中から行っている爆発による移動は、某狩りゲームの怨虎竜の動きを参考にしています。
あの巨体であの速度なら、ゴウカザルの体ならさらに速そうですね。

げきりゅう

エンペルトのげきりゅうは、実機風に言えばげきりゅう発動体力の上限が上がり、且つ少なくなれば補正もさらに増えるといった感じ。
普通に強そうです。
そして後半からなっていたげきりゅうの姿は、ポッ拳のエンペルトの共鳴バーストを意識しています。
うずしお→アクアジェット→屋い泥ポンプの組み合わせも、エンペルトのバースト技である『ディープブルーカイザー』意識ですね。
あの技かっこよくて好き……というか、ポッ拳の技が全体的にかっこよくて好きです。




ということで、何気にフリアさん初黒星ですね。けど、ここでゴウカザルが勝ってしまうのは物語的にはかなり不自然かなと。
でもこの2人の戦いを少し書きたかったんです。ゴウカザル、ごめんね……。
他でちゃんと活躍は準備しますから……。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。