【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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137話

「さて、じゃあ大体の班決めはできたかな?」

「うん。門下生の人たちも大体がどこで戦うかは決められたし、私たちもどう動くかは決めたよ」

 

 攻略方法を話し終えた数十分後。みんなでの話し合いもまとまりだし、ヤドンたちを集中の森に追い詰めた後の話もし終えたところで、この攻略方法の重要所である、追いかける役割の人物を考える。

 

「あと動きを決めていないのは、クララとマリィ、そしてフリアだけだな」

「フリアに言われたからあたしはどこの班にも入らないようにしたけど……」

「クララさんはわかるけど、どうしてマリィまで?」

 

 現状ボクたちの中で決まっていることは、ユウリが清涼湿原、ジュンが鍛錬平原、ホップがチャレンジビーチに行くことだ。けど、ボク、クララさん、マリィの行く場所は決めていなかった。その理由は、この3人でなければあのヤドンのスピードに追い付くことが出来ないからだ。もしかしたらここにユウリもワンチャン入るかもしれなかったけど、残念ながらユウリの手持ちで追いかけるとなると、ちょっと綱渡りをするか、技を変えてもらわないといけないため、今回はマリィにお願いする結果となった。しかし、みんなはマリィが特性が『かそく』のポケモンを持っているわけではないことを知っているため、とても不思議そうな表情を浮かべている。その疑問を解消するために、ボクはゆっくりと理由を説明していく。

 

「マリィが追いかける側に回っているのは、彼女も追いかけられるだけのスペックを持ったポケモンを持っているからだよ」

「あたしの手持ちに……?」

「それって一体誰ェ?」

「モルペコだよ」

「「モルペコ……あ!!『オーラぐるま』!!」」

「正解!」

 

 ボクがモルペコの名前を出した瞬間、ユウリとマリィが答えに辿り着いたので肯定する。

 

 モルペコが覚えているオーラぐるまという技は、放てば放つほど素早さが上がっていく技だ。加速のように無条件というわけではないけど、相手を攻撃しながら自分を成長させることのできるこの技は、今回においてもヤドンを追うのに最適な技となっている。ちなみに、ユウリでもここの枠に入る可能性があると言ったのは、エースバーンがニトロチャージを覚えていたらという話だね。ニトロチャージも同じく、打てば打つほど素早さの上がる技だし、エースバーン本人も元々足の速いポケモンだから、もしこの技を覚えていたのなら追いかける側としての適性は十分高かったはずだ。もっと言えば、ジュンのギャロップもここに入るのだけど、ジュンのギャロップは既に戦闘不能になっているからね……

 

 あと1つ、先ほど挙げた『綱渡り』はポットデスの特性の『くだけるよろい』とからをやぶるを利用した作戦のことなんだけど、さすがに防御力の低下が激しすぎるのでこちらはやめておいた。みんなに守ってもらえるとはいえ、間違いなく一番激しく攻撃にさらされるこのポジションに、耐久力を下げてまでお願いするのはいくら何でも賭けが過ぎる。その点でも、飛んでくる攻撃や、襲い掛かって来る野生のポケモンに対して反撃をしながら素早さをあげられる、『かそく』や素早さを上げながら攻撃できる技を持つ存在というのは、かなり適性が高かった。

 

「でも、ヤドンを攻撃するのは禁止だろ?そこはどうするんだ?」

「そんなの、こちらをせき止めてくる野生のポケモンに打てばいいだけだよ。ヤドンへの攻撃は禁止されているけど、ヤドン以外への攻撃は禁止されていないしね?実際に、ボクたちもホップたちも、野生のポケモンとバトルはしたでしょ?」

「成程……確かにそうだぞ」

「それに、マリィのモルペコが全作戦を通して一番重要なポジションになりそうだからね……」

「ん?何か言ったか?」

「ううん、何でもない」

 

 ホップの疑問に答えることで、この3人の……特にマリィの重要性にみんなが納得してくれたところで、話を次の方向へとむけていく。ちょっと小声で漏れた言葉があるけど、今は大事ではないのでとりあえずおいておいて……

 

「以上を考慮して、ボクとクララさんとマリィはそれぞれ違う場所に行くよ。2人とも、どこに行きたいかの希望はある?」

 

 ボクの質問に、徐々に自分の重要性を自覚し始めた2人が若干緊張の色を浮かばせながら顔を合わせ、少しだけ考えるそぶりを見せる。けどその時間も、マリィが自分の行くべき場所をすぐに決めたことによって打ち破られる。

 

「ならあたしが鍛錬平原に行くと。チャレンジビーチにはスナバァやシロデスナ。清涼湿原にはヌオーやウパーがいる。作戦上、モルペコの『オーラぐるま』に頼るのなら、効果が出ないじめんタイプはできる限り避けた方がよかと。いいよね?」

「うん。異論はないよ」

 

 マリィの完璧な答えにすぐさま肯定の意を示す。マリィの言う通り、特性でタイプを変えられたとしても、モルペコが一番活躍できるのはじめんタイプのポケモンがいない鍛錬平原しかない。なら、ここはマリィの意見は通してあげるべきだ。ボクとクララさんはどこでも行けるから、そのあたりはボクたちが合わせてあげよう。

 

「じゃあうちがチャレンジビーチに行くぞォ!!もうジメジメしたところ嫌だし、湿原は見飽きたしィ……」

「ってことはボクが清涼湿原だね。ボクはどこでもいいから大丈夫だよ」

 

 残りの2つの枠はクララさんに選ばせてあげたことによって、ボクはの残り物の清涼湿原となる。どちらも湿地帯と砂浜という足元が不安定な場所なので、ペンドラーにとってどっちが走りやすいのかで選んでもらった方がいいかなとは思ったけど……どうやらそれ以上に、クララさんは気分を大事にしたいようだ。気持ちは分かるのでその辺は特に何も言わないでおこう。

 

「よし、じゃあ改めて班分けを言うね。ボクが清涼湿原、クララさんがチャレンジビーチ、マリィが鍛錬平原でそれぞれ追跡側に回るから、封鎖、援護の人たちは、清涼湿原に行く人はユウリ、チャレンジビーチに行く人はホップ、鍛錬平原に行く人はジュンをリーダーとして分かれて!」

 

 ボクの指示を聞いて、綺麗に3つに分かれていく門下生たち。とはいっても、重要なのは出てくるポケモンがガラッと変わるチャレンジビーチに行く人たちを考えることだけで、清涼湿原と鍛錬平原に関しては、出てくるポケモンは違っていても、出てくるタイプはそんなに変わらないため、あまり気にする必要はない。門下生の人が言ってくれた、こおりタイプやでんきタイプの技を使えるポケモンを持っている人が中心に、チャレンジビーチの方に行ってくれればそれだけで十分だったりする。というわけで、この班分けもつつがなく終了する。

 

「よろしくユウリ」

「うん!フリアの周りは任せて!!」

 

「頑張るぞクララ!」

「ホップきゅんと一緒なら心強いぞォ!!」

 

「よろしくと。ジュン」

「ああ!一番乗りを目指すぞマリィ!!」

 

 ボクたちもボクたちで改めて同じ場所に行く人同士でちょっとしたあいさつを交わし、準備完了。いよいよ作戦へと移行していく。

 

「よし、じゃあヤドン捕獲作戦……開始!!」

『おお!!』

 

 ボクの言葉に合わせて声を上げるみんな。そこからそれぞれの場所へと向かっていくホップたちの背中を見送ったボクは、みんなの姿が見えなくなったところでメガヤンマを呼び出す。

 

「さ、行こうか!メガヤンマ!!」

「シシィッ!!」

 

 3つの場所で行われる、ヤドン大捕獲作戦の幕が明けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メガヤンマはとにかく追いかけることだけに集中!!よけながら追いかけて!!」

「シシィッ!!」

「フリア!!右からバッフロン!!」

「俺に任せろ!!オトスパス!!『ドレインパンチ』!!」

 

 ヤドンを追いかけるメガヤンマに必死について行くボクたち。そんなボクたちを阻止するべく、横から走ってきたバッフロンに対して、門下生の人がオトスパスで対面しに向かう。その人に対して、『ありがとうございます』とお礼を残して、ボクは再び前に走っていく。

 

 ヤドンと追いかけっこをしてはや数十分。既に何体もの野生のポケモンをいなしてきたボクたちの周りには、ボクとメガヤンマを護衛する役割の人はその数を減らしており、湿原のどこを見てもバトルが行われている乱戦状態となっている。

 

 メガヤンマとヤドンを先頭に必死に追いかけるボクたちは、長く続くこの追いかけっこに息を切らしながらも、飛んでくるミサイルバリやみずのはどうを何とか躱しながら走り続ける。本来なら異常に成長しているヤドンと、特性『かそく』の最高速度に到達しているメガヤンマに追いつくことなんてできないけど、逃げるルートが決まっており、さらに乱戦状態で攻撃が飛び交っているこの場所なら、効率よく追いかけることが出来ればギリギリ追いかけられる範囲ではある。かなりしんどいし、体力にあまり自信のないユウリなんかは特につらそうにしているけど、ここまで来たのならもうあきらめるわけにはいかない。ユウリも最後の気力だけで頑張ってついてきている状態だけど、その甲斐もあって、現状ルートはもう3つはつぶすことに成功している。今ボクたちが追いかけているこの4つ目のルートさえつぶすことが出来れば、あとは最後の仕上げに進むだけだ。

 

「フ、フリア……どう?行けそう?」

「大丈夫。もう4つ目のルートも全部把握したし、封鎖班の人にも連絡を入れたからもうちょっとで……」

「おい!見えてきたぞ!!最後の封鎖班だ!!」

「「ッ!?」」

 

 息も絶え絶えながら、それでも何とか質問してきたユウリに対して、最後のルートも封鎖が出来たことを教えると同時に、隣を走る門下生の人から声が上がる。その言葉につられてメガヤンマとヤドンがいる場所のさらに向こうを見ると、ドラピオンの群れと対峙しながらも、決して封鎖をやめない門下生たちの姿が見えた。当然その姿をヤドンとメガヤンマも捕捉しており、表情に焦りの様子を浮かべたヤドンが4回目のルート変更を行った。

 

「動いたぞ!!行け!!」

「ありがとう!!」

 

 そのルート変更を確認した瞬間にボクたちもすぐに向きを変更し、進路をルートDから集中の森へと続く道へ足を向ける。

 

 集中の森。

 

 ヨロイ島の中心に位置するこのエリアは、その名の通り鬱蒼と茂る森に包まれており、その深さのせいで日差しがあまり入りこまない薄暗い場所となっている。特に、今は夕暮れ時に近づいてきていることもあってか、その暗さがより際立っている状態となっており、自然を感じるよりも先にちょっとした不気味さを感じてしまう。この集中の森の真ん中を通る川の音も、どこか不安感をあおって来るものとなっておいた。できることならば、まだ日が高い時にゆっくりとここを散歩したいものだけど、今はそのことは置いておこう。

 

(ここまでは予想通り……このままうまくいけば……!!)

 

 

「ヤアアァァァンッ!!」

 

 

「って、そんなに甘くはないか!!」

 

 順調に追い込めたと思った瞬間にあがるヤドンの叫び声。

 

 ヤドンが集中の森と清涼湿原の境目を越えた瞬間にあげられたその大声は、集中の森に住む数多のポケモンを呼び寄せ、ヤドンが通り抜けた瞬間にその道を防ぐバリケードとなる。その面子は、ラランテス、モロバレル、ペンドラー、シュバルゴ、シザリガーと言うかなり厄介なラインナップで、この子たちを倒さなきゃ先に行けないけど、すぐさま彼らを倒すことが出来るかと言われたらかなり怪しい。無理して突破することが出来たとしても、そのころにはこちらは大打撃を追っているだろうし、その状態であのヤドンを最後まで詰められるかと言ったら怪しい。

 

(さて、どうするべきか……)

 

「エースバーン!!『かえんボール』!!ポットデスは『シャドーボール』!!」

「ルカリオ!!『はどうだん』だ!!」

「カイリキー!!『いわなだれ』!!」

「ゴロンダ!!『アームハンマー』!!」

「ルチャブル!!『フライングプレス』!!」

 

 ボクがどうするか一瞬だけ迷っている間に、すぐさまエースバーンとポットデスを呼び出したユウリが、先制攻撃と言わんばかりの全力攻撃を行い、さらにその行動に門下生の人たちが続いて連続攻撃を叩き込む。いきなり攻撃を受けると思わなかったラランテスたちにとって、この攻撃の嵐は予想外だったらしく、思わぬ大ダメージを受けたことによって怯んでしまい、厚いと思われたバリケードに確かな道が開かれる。

 

「フリア!!先に行って!!」

「ここで足止めされたら体力も時間も足りない!!頼むぞ!!」

「私たちの分も頑張ってね!!」

「みんな……うん、ありがとう!メガヤンマ!!」

 

 ボクの周りにいた、数少ない最後の護衛班が全力で切り開いた道を通るべく、みんなにお礼をしながら前に走りだすボク。その行動を止めんと、攻撃を受けながらも立ちふさがるのはモロバレル。ヘドロばくだんの構えを取ったモロバレルは、そのままメガヤンマに向けて攻撃を放ってきた。

 

「メガヤンマ!!『むしのさざめき』!!」

「シシィッ!!」

 

 その攻撃を迎撃するべく、むしのさざめきを構えたメガヤンマがモロバレルへと高速接近。モロバレルの目の前まで迫って一気にその攻撃を放っていく。

 

 モロバレルの目の前で炸裂した緑色の波動は、ヘドロを構えたモロバレルに直撃し、腕にためたその爆弾を暴発させてしまう。結果として、モロバレルに大ダメージを与えることに成功し、わずかに開いていた道をさらに大きくすることが出来たものの、モロバレルの最後の悪あがきとして、爆弾をこちらの方に向けていたため、メガヤンマにも少なくないダメージが入ってしまう。結果としてバリケードそのものを越えることはできたものの、ボクの横を並走するメガヤンマは、この作戦中と情報収集の時を合わせて数時間に及ぶ追いかけっこと、ここまでに受けてきた攻撃の量が積み重なったこともあってか、かなりふらふらしながらの飛行となってしまい、傍から見てもこれ以上の戦闘や行動は厳しいように感じた。いや、むしろここまで体を張って最前線で走り続けてくれたことに感謝するのがメガヤンマに対して行うべき礼儀だろう。

 

「ありがとうメガヤンマ。ゆっくり休んで」

「シシィ……」

 

 若干申し訳なさそうな声をあげながらも、さすがに体力の限界を自分も感じていたらしく、おとなしくボールに戻っていくメガヤンマ。ボールに戻っていった彼に改めて『ありがとう』と告げながら、腰のホルダーにつけなおし、再びヤドンが向かったと思われる方向へ足を運んでいく。その間にも周りから別のポケモンに襲われてもいいように常に左手にモンスターボールを持ちながら走っていたけど、どうやら集中の森の入り口にて、バリケードとして立ちふさがりに行ったポケモンがかなり多かったみたいで、ボクの周りにはほとんどポケモンがいない状況となっていて、特に妨害を受けることなく走り続けることが出来ていた。……若干暗くなり始めてきた森にて、むしろ野生のポケモンからのアプローチが一切ない方が不安感をあおってきているため、できることならもう少し賑やかな方が嬉しいんだけどね。ま、これ以上は贅沢だ。とにかく、今はヤドンを追いかけよう。

 

「……いた!!」

 

 そんなこんなで森の中をかけていくと、ようやくヤドンの後姿を確認できた。森の中の分岐点で足を止めていたヤドンは此方に背を向けたまま動かない。それを『ヤドンの諦めなのかも』と思いながら近づいていくと、近くから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「ぜェ……ぜェ……今度こそ逃がさないんだからァ……」

「モルペコ、あとちょっと!頑張るよ!!」

「クララさん!!マリィ!!」

「フリアっち!!マリィせんぱい!!さっきぶりィ!!」

「フリア!!クララ!!この様子だとみんな上手くいったとね!!」

 

 そちらに視線を向けてみれば、現れたのは別の場所でヤドンと追いかけっこを繰り広げていたはずのクララさんとマリィの姿。ボクと同じくちゃんとヤドンを追い込むことが出来たみたいで、気づけばボクが追いかけていたヤドンの横には、さらに2匹のヤドンが追加されており、マスタードさんが逃がしたヤドン全員が今ここに集結したことが確認できた。ここまで来たら最後の仕上げ。あとは全力でヤドンを捕まえるだけだ。しかし、こちらもそれ相応に消耗はしていた。

 

 まずはクララさん。今日2回目となる全力の鬼ごっこだったため、休憩を取ったとしてもかなりの体力を消耗しており、ボクらの中で1番息が乱れていた。また、隣にペンドラーの姿がないことからも、ボクのメガヤンマと同様に数多の攻撃に晒された結果、深いダメージを負っているのだろうということが予想できる。ペンドラーというポケモン自体がかなり体の大きいポケモンというのも、被弾が増えてしまった理由の一つかもしれない。

 

 そしてマリィ。こちらはメガヤンマとペンドラーと違い、初めて鬼ごっこに参加となったモルペコなんだけど、体が小さいこととボクたちと違って今日初めての追いかけっこということもあり、疲れた様子こそ見せてはいるものの、まだ頑張れそうと言った表情に見えた。この後に行われる捕獲フェーズも、何とか活躍してくれそうだ。

 

 3人全員合わせた消耗は決して少なくは無い。けど、ヤドンを捕まえる分の体力は十分にあるはずだ。それに、ボクたちをここまで送ってくれたユウリたちのためにも、ここで失敗する訳にはいかない。

 

「2人とも、最後の詰めだよ!!ここまで来たら絶対に逃がさない!!」

「うん。絶対に捕まえる!!あたしたちをここまで守ってくれたジュンたちのためにも!!」

「うちだってェ!!ここであったが100年目ェ!!ホップきゅんのためにも、絶対に捕まえてやるんだからァ!!」

 

 3人で声を上げながらヤドンを見つめる。

 

 ヤドンの後ろには既に道はなく、完全な袋小路となっているため、いちばん警戒するべきなのはこちらから前に詰めすぎて、すれ違いによってボクたちの後ろに回られること。そうなってしまえば全てが水泡に帰す。そうならないようにするためにも、心は熱くしながらも頭は冷静に、ゆっくりとヤドンとの距離を詰めていく。

 

 1歩。また1歩。着実に距離を詰めていくボクたちは、横から抜けられないように、合間合間にクララさんとマリィと目を合わせながら足並みを揃えて前に歩く。そんなボクらを見つめるヤドンもまた、足並みを揃えて少しずつ後ろに下がっていく。

 

 緊張が張りつめる、音のない空間。

 

 ジリジリと動くこの状態に、先にじれたのはヤドンたちの方だった。

 

「ヤァンッ!!」

「「ヤァ」」

「来るよ!!」

 

 真ん中の子が声を上げた瞬間、同じように声を上げて返事をするヤドンたち。その合図と同時に、ボクたちの周りのものがどんどん浮き上がっていく。

 

「『サイコキネシス』……っ!!」

「追い詰められたから最後の抵抗ってことね」

「にしては出力高くないィ!?」

 

 周りに次々と干渉して行くその力は、逃げられないと悟ったヤドンたちによる最後の抵抗。

 

 逃げられないのなら、追い返すまで。

 

 そんな強い意志を感じさせるその行動は、確実にボクたちの足を止める。しかし、そんなことよりももっと衝撃的なことが目の前で起きた。それは……

 

「な、何あれ……曲芸……?」

「これは想定外なんだけどォ!?」

「マスタードさん……なんてことを教えこんでると……」

「「「ヤァン」」」

 

 まるでトーテムポールのように縦に重なったヤドンの姿だった。

 

 重なった状態で動くその姿は、とてもじゃないけど危なっかしくて見ていられない。しかし、なぜかそれでも崩れることの無いそのトーテムポールは、さらにおかしなことに元の素早さを失うことなく動き回る。そのうえで、ヤドン3人分のサイコキネシスが重なっているのだから、周りの空間は目に見えてゆがみまくっている。今ボクたちに影響が出ていないことが不思議なくらいだ。

 

(これが最後の壁……なのかな?)

 

 もしそうなのだとしたら、ボクたちがヤドンを3人同時に追い詰めるこの状況すらをも予想されていたことになる。

 

(ほんと、どこまで考えているんだか……)

 

 マスタードさんの先読み能力に気が遠くなりそうになる。けど、それはここで諦める理由にはならない。

 

「ネオラント!!」

「ドラピオン!!」

「モルペコ!!」

 

 ボクたち3人もポケモンを出して構える。

 

 追いかけっこ、最後の攻防が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




モルペコ

まさかの重要ポケモン。とっとこ走ってもらいます。

ヤドン

気持ちはDQに出てきたスライムタワーですね。ポケモンで例えるならネイティとかがよくやっているイメージです。ちょっとかわいい……




最近ポケモンSVをしている夢を見ました。夢の中では広大なマップに感動していましたね。実機でもこうだと嬉しいです。
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