【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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今回はあとがきにてちょっとしたものがございます。


138話

「「「ヤァンッ」」」

「モルペコ!!『タネばくだん』!!」

「ドラピオン!!『かみくだく』!!」

「ネオラント!!「ねっとう」!!」

 

 ヤドン3匹が重なった姿から放たれるサイコキネシスの波及び、それに巻き込まれた倒木や岩に対して、こちらも技を使って相殺していく。しかし、こちらから攻撃を当てることはできないため、威力は調整しないといけない。いつもとは違う戦い方を強いられているせいで、ドラピオンたちもかなりやりづらそうな表情を浮かべていた。普段のバトルで手加減をしながら技を使うなんて経験は滅多にない。それを強要させられるこの戦いには、たしかに窮屈さがある。けど、これが最後の壁だ。何がなんでも乗り越えていきたい。

 

「「「ヤァンッ!!」」」

 

 ぶつかり合うサイコキネシスの嵐とドラピオンたちの攻撃。激しい音を奏でながらぶつかり合う両者の攻撃は、しかしヤドン側は最後のひと押しの火力が、ドラピオンたちは相手を傷つけられないという制約が、相手を倒すための力として1歩届かない。そんなじれったい状況に先に行動を起こしたのはヤドンたち。相変わらずフラフラと、しかしそれでいて絶妙なバランスとチームワークによって華麗に動く彼らは、サイコキネシスの使い方を変えることによって、戦況を動かそうと試みる。

 

 先程までこちらに真っ直ぐ飛んできていた障害物たちはその軌道を変え、ボクたちの周りを取り囲むように配置される。右も左も前も後ろも、果ては真上さえも倒木や岩石に覆われ、それを確認したマリィたちの表情に焦りが浮かぶ。同時に響き渡るヤドンたちの叫び声。それを合図に、ボクたちの周りに浮かんでいた物体たちが、ボクたちを圧縮しようと一気に迫ってくる。

 

 全方位からの同時攻撃。これを全部捌くなんて不可能。だから、逃げることを優先する。

 

「マリィ!!クララさん!!後ろ!!ネオラント!!『ねっとう』!!」

「モルペコ!!『オーラぐるま』!!」

「ドラピオン!!『かみくだく』!!」

 

 逃げる方向は後ろ。後ろから迫って来る障害物に対して、みんなで同時に技を放ってすぐさま逃げる。正直逃げる方向はどこでもよかったんだけど、一番最悪なのが前に逃げた時にすれ違いざまにヤドンに逃げられることだ。これは横も同様で、左か右に逃げた時、このサイコキネシスの嵐の反対側から逃げられたら追うことが出来ない。だからそこをケアするための後ろ逃げ。ヤドンたちとの距離は離れることになるけれど、逃げられて失敗することはない守りの一手だ。そんなボクの考え通り、綺麗に下がることが出来たおかげでヤドンたちに逃げられることはなくなったものの、今度はボクたちを押しつぶす予定だった倒木や岩石たちが、一つに集まった瞬間にこちらに押し出してくる。それは大きな自然の砲弾で、後ろに下がったばかりのボクたちには避ける方法がない。

 

「『れいとうビーム』!!」

「『クロスポイズン』!!」

「『オーラぐるま』!!」

 

 慌ててみんなで技を放って飛んでくる攻撃を迎撃する。やはり、3人そろっているとはいえ、威力自体はこちらの方が上なため、攻撃を打ち落とすことはできるけど、忘れてはいけないのは、この捕獲作戦は夕食までに終わらせないといけないという時間制限付きであること。確かにヤドン側にはボクたちに対する決定打は存在しないかもしれない。けど、ヤドンたちの勝利条件は『制限時間いっぱい逃げ切ること』であって、『敵であるボクたちを倒すこと』ではない。ならば、ヤドンたちにとって、今回のように技を使って相手を引かせ、時間を稼ぐだけで実は十分だったりする。

 

 此方は攻撃を当ててはいけないのに、あちらは力の限りを尽くしてこちらを攻撃してくる。時間制限もあるという焦りのせいで、どうもうまく攻め切れない。

 

 モルペコがヤドンに向かって走り出したところを、目の前に倒木を動かして止めようとするヤドンに対し、倒木にねっとうを放ち吹き飛ばすネオラント。目の前の障害物がなくなったことによって再びモルペコが猛進し、そんなモルペコたちに対してドラピオンが援護としてモルペコとヤドンの間にミサイルばりを放ち、土煙をあげて視認をなくそうとする。この間にモルペコがヤドンを捕まえられればと願うものの、今度はサイコキネシスを器用に操り、落ちている葉っぱを集め、大きな団扇を作り出すヤドンたち。その団扇を、同じくサイコキネシスによって操り、大きく振るうことによって突風を巻き起こす。結果、ドラピオンが巻き起こした土煙は晴れていき、体の小さいモルペコは風によって押し返されてしまい、マリィの足元まで戻される結果となる。これによって、ボクたちの立ち位置はまた振り出しに戻される。

 

「ああもうゥ!!どこまでしつこいのよォ!!ここまで追い詰めたんだからいい加減捕まりなさいよォ!!」

「今回に関してはクララに同意と。本当に捕まえられる気がしなか……」

「……」

 

 クララさんとマリィの言葉を聞きながら思考を回すボクも、おおよそ同じ感想を抱いていた。

 

(本当に厄介だ。何をするにしても必ずどこかで『サイコキネシス』の壁があらゆる形で邪魔してくる……)

 

 サイコキネシスの効かないあくタイプが前を走れば岩や倒木で防がれて、土煙で隠せば風で対処され、今度はモルペコが速さ勝負を挑もうと走り回れば、ヤドンは木の根や倒木を撒き散らし始めて足場を悪くし、モルペコの機動力を潰してくる。

 

 本当に、これがトレーナーに指示されずに独断で戦っているポケモンなのか。それが怪しいレベルで的確にこちらの動きを邪魔するヤドン。その効果は覿面で、気づけば周りの色がだんだんと黒色に染まっており、目に前にいるはずの、ピンク色のまったりものの姿が徐々に黒色に隠されていく。

 

 タイムリミット(日没)が近づいてきた。

 

(なにかアクションをしなきゃなのに、こちらのアクションの悉くを『サイコキネシス』に潰される……。『攻撃を当ててはいけない』という制限のせいで、こちらの動きがぎこちなくなっているのもあるけど、それにしたって『サイコキネシス』が厄介すぎる。どうにかしてあの技を攻略しないと、どんな動きをしても多分意味が無い!!)

 

 いくら速く動いても、いくら搦手を利用しても、自身に攻撃が来ないのなら対処は簡単という事なのか、サイコキネシスひとつで全てを返されてしまう。

 

 普通に戦う分には、こちらはあくタイプが豊富に揃っているため、全く難しい要素は存在しない。しかし、こちらから攻撃が不可能という条件が想像以上に辛かった。いや、厳しいことは理解していたのだけど、ヤドンたちのサイコキネシスのアレンジの幅が広すぎてどうしようもない。こちらからいろんな手を使って搦め手を行っても、そのすべてがサイコキネシスひとつで抑えられてしまう。

 

(ってことは、この状況をどうにかする方法って、そもそも『サイコキネシス』そのものをどうにかして封じなきゃいけないってことか……なら、もしかして搦め手でヤドンに近づくことを考えるよりも……いや待って……)

 

 そこまで考えて、一つ大きなことに気づく。

 

(もしかして、ヤドンってさっきから『サイコキネシス』()()使っていない?)

 

 ありえない速さで動きながら、サイコキネシスを巧みに扱うその姿は、今まで戦ってきた相手で心当たりがある人が1人いる。それはキルクススタジアムにて戦ったメロンさんのヒヒダルマだ。特性『ごりむちゅう』によって、1つの技を出し続けることを強制されているはずのそのポケモンは、しかしその技を巧みに使いまわすことによって、高い攻撃力を維持したまま1つの技で暴れまわっていたし、相手の技に対してもとことん対応を取ってきていた。モスノウとインテレオンが苦戦したのが記憶に新しい相手だ。そんなヒヒダルマの戦い方に、このヤドンの戦い方は雰囲気が凄く似ている。なのだとしたら、実はこのヤドンに対する対策は、ものすごく簡単なのかもしれない。

 

「クララさん!ヤドランとヤドキングってまだ戦える!?」

「ヤドランとヤドキングゥ……?多分どっちも戦えると思うけどォ……どうかしたのォ?」

「その2匹のどっちかってさ、『かなしばり』を使えたりしないかな?」

「たしか、ヤドランが覚えていた気がするけどォ……」

「っ!?そういう事と!!クララ!!すぐにヤドランで『サイコキネシス』を『かなしばり』すると!!」

「そういう事ォ!?確かにそれならあのヤドンの攻撃止められるジャン!!流石フリアっち!!出てきてヤドラン!!」

 

 ボクの意図に気づいた2人の言葉と同時に、クララさんの懐から放たれたボールからガラル地方のヤドランが現れる。セイボリーさんも持っていたそのポケモンが構える技は、くしくもセイボリーさんの持っていた個体も覚えていたかなしばり。

 

 ウルガモスとのバトルの時にも活躍してくれたこの技は、最後に相手が使った技を封じ込めることによって、相手の行動を著しく制限することが出来る技だ。相手がサイコキネシスを主力とした戦い方をするのだというのならば、それを封じ込めればいい。むしろ、あれだけクララさんに褒められたけど、なんで今までこんな簡単なことに気づかなかったのかと、自分を責めたい気分だ。

 

「でも、本当に『かなしばり』しちゃって大丈夫ゥ?攻撃禁止されているのにィ、ここで当てちゃったから怒られるなんて流石にないィ?」

「『かなしばり』はあくまでも変化技だから大丈夫なはず!!もしそうじゃなかったとしても、『かなしばり』ならヤドンにダメージは入らないから、ボクが何とか丸め込んで見せる!!」

「……フリアそういう発言、ちょっと新鮮と」

 

 それだけこのゲームに少なくない感情を抱いていると思っていただきたい。さすがのボクも、このゲームを絶対にクリアしたいという気持ちがかなり強く出てきているし、ここまでしてダメでしたって言われるのは絶対に嫌だからね。

 

「とにかくゥ!うちがあいつらをしっかりとめてやっからァ!その間に捕まえっぞォ!!」

 

 兎にも角にも、ようやく見つけた明確な突破方法を前にテンションが爆上がりなクララさんの指示を援護するべく、ヤドンがサイコキネシスで作り上げたものをねっとうやオーラぐるまで次々と壊し、かなしばりが通るようにする。かなしばりは目と目が合えば発動する技だ。その導線さえ確保すれば発動できる。そしてその視線が今、ヤドンとつながる。

 

「「今!!」」

「待ってましたァ!!ヤドラン!!『かなしばり』ィ!!」

 

 つながった瞬間クララさんから高らかに宣言されるかなしばり。

 

 ヤドン3匹に順番に目を合わせていくヤドラン。同時に、あれだけ荒れ狂っていたサイコキネシスがピタリと止み、宙を舞っていた物たちが一斉に地面に落ちていく。

 

「ふぅ……もっと早く気づけばよかったよ……」

「でも、本当にこの子たち『サイコキネシス』しか覚えてなかったとね……」

「ここまで育っていれば他の技も覚えていそうなものだけどォ……」

「ね……って、ん?」

 

 サイコキネシスの嵐が止み、ようやく一息つけるようになったところでヤドンの方に視線を向けると、ヤドンの体に擬態するかのようにピンク色に染められた1枚の布が目に入った。

 

「あの布……もしかしてそういう事?」

 

 その布はどこかで見たことがあるような気がして、じっと見つめてみるとボクの記憶の中にあるとあるアイテムと一致する。

 

「どうかしたと?フリア」

「何かじっと見つめてるけどォ……」

「ああ、あのヤドンの体に巻いてある布を見ててね?」

「「布……?」」

 

 ボクの言葉につられてヤドンの首元に視線を向けるクララさんとマリィ。2人はボクに言われることでようやくその布に気づいたみたいで、不思議そうな顔を浮かべながら首を傾げた。

 

「ピンク色の布……いや、塗られているだけェ?」

「これは一体何と?」

「これは多分、『こだわりスカーフ』だよ」

「「『こだわりスカーフ』?」」

「うん」

 

 こだわりスカーフ。

 

 メロンさんが仲間にしているヒヒダルマの特性、『ごりむちゅう』のアイテム版且つ、攻撃ではなく素早さが上がるアイテムだ。その道具の名前通り、1つの技にこだわる代わりに、爆発的な素早さを得ることが出来る。このアイテムがあれば、確かにヤドンでも圧倒的素早さを手に入れることが可能ではある。勿論、この固体自体、かなり素早さを集中して育てられているため、他の個体と比べたら相当足の速い子になっているはずだけど、それをアイテムでさらに補っているとなれば、なるほど今までのあのスピードも納得だし、サイコキネシスしか使わなかったのも納得がいく。よくよく考えたら頭に浮かんできそうな一つの可能性だっただけに、すぐに思いつかなかったのが、なんだかちょっと悔しい。

 

「ほんと、これならもっと早く『かなしばり』に気づけても……」

 

 そこまで発言し、何か大事なことを忘れているような気がしてしまい、ヤドンの方に改めて視線を向ける。すると、そこにはこちらに突撃しようと構えを取るヤドンの姿がいて……

 

「……まずっ!?2人とも!!一回ポケモンを引かせて!!」

「「え?……っ!?」」

 

 急なボクの言葉に一瞬固まる2人だけど、すんでのところでヤドンの動きに気づいた2人は、慌てて自分の仲間と一緒に後ろに下がる。

 

 技をこだわったポケモンは確かに一つの技しか使えない。今回で言えば、サイコキネシスしか使えず、その状態でかなしばりを受ければ当然その技は封印される。現に、今のヤドンはサイコキネシスを使うことはできない。なので、かなしばりやいちゃもんと言った、技を封じてくる変化技は、技をこだわらせて戦うポケモンに対して圧倒的に強く出ることが出来る。では、そうやって技を縛られたポケモンはおとなしく相手にやられるのをただ待つだけの存在になってしまうのか。

 

 答えは否だ。

 

 技を封印されたポケモンは、確かにその技を使うことが出来ず、こだわったポケモンは当然、封印された技以外の技も使えない。しかし、そんな状態だからこそ行うことが出来る唯一の技というものが存在する。 それが『わるあがき』だ。

 

 読んで字のごとく、何もできないながらもやみくもに体をぶつけて、敵に無理やり攻撃するその技は、お世辞にも強いものとは言えず、ダメージは与えることはできても決して脅威になるものではない。しかし、今この状況においては、この行動は致命的となる。なぜなら、わるあがきには()()()()()()()あるからだ。本来であれば、敵が使う分には何も考える必要のない、むしろプラスに働く効果。しかし、今ボクたちは『ヤドンに攻撃すること』を禁止されている。勿論、わるあがきという技は相手の攻撃技であってこちらの攻撃技ではないため、実は気にする必要は一切ないのかもしれない。しかし、ボクたちはこのルールの裏を突いて、『変化技は攻撃じゃないからいいよね』ということでヤドンに技を使った。なら、自傷ダメージは逆の屁理屈として通されてしまう可能性がある。杞憂かもしれないけど、ここまで来てそんな理由で失格にでもなったら、ユウリたちに合わせる顔がない。

 

「みんな、絶対にヤドンたちから攻撃を受けちゃだめだよ!!」

「なんか最初よりハードになってないィ!?」

「さらに縛りが増えてると!!」

 

 ただでさえ『攻撃をしてはダメ』という縛りがあるのに、そこから更に『攻撃を受けてはダメ』という縛りも追加されてしまう。幸いサイコキネシスと違って、わるあがきは体を無理やりぶつけてくる技なので、避けること自体は難しくない。予備動作もわかりやすい方なので、ボクたちなら避けられるだろう。しかし、それはヤドンがかなしばりを受けている間だけだ。

 

 当然だけどかなしばりには時間制限がある。しばらく時間が経ってしまえば消えてしまうし、そうなればヤドンは再びサイコキネシスを使えるようになってしまう。こうなってしまうと再び振り出しだ。今度は警戒されるだろうからかなしばりも効かない可能性がある。そうなってしまえば、夕飯までに捕獲することは不可能だろう。

 

 このかなしばりが消える前に、ヤドンから一撃も貰うことなく捕獲する。それが最終目標だ。

 

「言いたいことはわかったと!!」

「けどどうするのォ!?ヤドンの足が速いことに変わりは無いから、攻撃を貰わずにってなかなか難しいわよォ!?」

「そこはこっちから速攻をしかけて何とかするしかない!!賭けになるかもだけど着いてきて!!」

 

 最終目標についてまだ何か言いたいみたいだけど、かなしばりに制限時間がある以上のんびりはしていられない。本当はしっかり説明したいけどそれも出来ない状況なので、クララさんには悪いけど、簡潔にまとめてクララさんにして欲しいことだけを素早く伝える。

 

「一瞬でいい!力技でもなんでもいいから、ヤドンを足止めできる!?」

「すっごい無茶ぶりィ!?ケド……やってやらァ!!ドラピオン!!地面に向かって『アイアンテール』!!……やだ、今の指示フリアっちっぽいィ!!」

「ドラァァッ!!」

 

 よく分からない感動とともに放たれた指示を遂行したドラピオンによって簡易的な地震が起き、ヤドンたちの足が強制的に止められる。同時に、地面にころがっていた倒木たちがアイアンテールの勢いによって吹き飛ばされ、地面が綺麗さっぱり掃除される。

 

 これでモルペコが走り回れるようになった。

 

「マリィ!!」

「何となく、フリアの言いたいことがわかったと!!モルペコ!!」

「モルペッ!!」

 

 ボクの合図と同時にマリィから指示を受けたことにより、足を止めたヤドンに向かって走り出すモルペコ。オーラぐるまによって最高まで素早さを高めたモルペコの足は凄まじく、物凄い勢いでヤドンとの距離を詰めていく。しかし、ヤドンたちも段々と態勢を整え始めており、このままではモルペコが到着するまでに攻撃の準備が整ってしまう未来が見えてくる。

 

 あと1歩足りない。けど、その1歩を、ネオラントなら埋められる。

 

「ネオラント!!『おいかぜ』!!」

「フィィィッ!!」

 

 突如モルペコの後ろから流れていく風は、あと少し足りないモルペコの速度をそっと後押しする。結果、ヤドンが態勢を整える前に、ついにヤドンの体にくっつくことに成功した。

 

「マリィ!!」

「マリィセンパイ!!」

「モルペコ!!『でんじは』!!」

 

 マリィからあがる力強い指示。その指示に従って、激しく、それでいて相手を傷つける威力を出さないように、繊細に威力を調整した電波がヤドンの体を包み込む。

 

「「「ヤド……ッ!?」」」

 

 でんじはによってヤドンの体にまひが走り、わるあがきを行おうとした体が痺れて動きを止める。

 

「今!!」

「「っ!!」」

 

 あれだけ素早く動いていたヤドンの動きが嘘みたいにのろくなった……いや、本来はのろいポケモンだからこれが普通のはずなんだけど……とにかく、この絶好のチャンスを逃さないためにみんなで走ってヤドンに向かって飛び込む。ヤドンたちも、飛び込んでくるボクたちを見て慌てて逃げようとするものの、その動きも体の痺れによって阻害されてしまう。

 

 身動きが取れないヤドンに迫るボクたち。そしてついに……

 

「「「捕まえた!!」」」

 

 ボクたち3人の腕に、ヤドンが抱かれた。

 

 一応、クララさんの時みたいに尻尾を自分から切断して逃げられる可能性があるので、そうならないように胴の部分をしっかり抱きしめていると、今回は逃げられないと悟ったのか、ヤドンも観念し、力を抜いてボクたちに体を預けるような態勢を取り始める。

 

「今度こそ……大丈夫、と?」

「多分……」

「ほんとォ?ほんとに大丈夫ゥ!?」

「うん。ヤドンからも抵抗の意思がないし、大丈夫だよ」

 

 ここまでの苦労を考えて、いまだに半信半疑な2人に対して、今のヤドンの状態から考察して本当に大丈夫だと思ったので説得をする。それでも少しの間不安そうな表情を浮かべていたけど、本当にぐったりして抵抗をやめたヤドンを見て、改めて、ようやくこの鬼ごっこが終わったことを自覚する。

 

「お疲れ様、2人とも」

 

 そんな2人にボクが声をかけると、2人は一回うずくまり……

 

 

「「やったああぁぁぁぁぁっ!!!!」」

 

 

 2人の歓喜の声が森に響き渡った。

 

 長く続いた鬼ごっこが、ようやく幕を下ろした瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




鬼ごっこ

ようやく終幕。本当なら、サイコキネシスをモルペコがタイプで突っ切って、くっついた後にでんじは。という流れで終わるつもりだったのですが、いろいろ思いついてしまい、わるあがきという技にもスポットを当てたくなったのでこういう展開に。
自傷も防がなくてはいけないというさらに一転した話もできたので、個人的には更にマスタードさんのおかしさを少し表現出来たのではないかなと。

わるあがき

でも実際、ここまでの素早さを持った生き物にわるあがきをされたら、それだけで致命傷を受けそうですよね。




さて、今回のあとがきなのですが、なんとこの作品を読んでくださっている方からフリアさんの絵をいただきました!
元々フリアさんの見た目は作品内で書いてありましたし、自分でも、キャラ作成アプリを通してそれとなくフリアさんの見た目を作ってはいたのですが、いただいた絵を初めて見た時、しっかりとその特徴が捉えられていたので、思わず感動してしまいました。
帽子についているゴーストバッジも、ヨノワールを意識してあってとても素敵ですね。



【挿絵表示】



此方の絵は、pixivにもあがっています。『ひのは』さんという名義で投稿されていますので、よろしければそちらでも視聴してみてくださいね。

9/28。フリアさんの誕生日兼、ダイパの発売日という記念すべき日の近くに、こういった素敵なものをいただいて本当にうれしかったです。

私自身、ファンアートをいただいたことが初めてでしたので、表情が緩んでしまうのを止められませんでした。
あらためて、本当にありがとうございました。

これからもこの作品をよしなにお願いしますね。




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