「ただいま〜」
「戻ったと〜」
「帰ったどォ〜ッ!!」
3人揃ってヤドンを抱きしめながら集中の森をゆっくりと抜け出したボクたちは、集中の森の入口にて争ったあとはあるものの、人の姿もポケモンの姿も確認できなかった。森の外だと言うのに森の中にいた時くらい静かとなっていたその場所の状態に若干の不安が襲ってきたものの、休憩所に下がっている可能性を信じて気にせず帰宅。それでもみんなの姿を見るまでは不安がずっと残っていたけど、いざ休憩地点に戻ってみれば、ボクたちとともにいろんなところを駆け回った戦友たちが、みんな顔をそろえて休憩や手持ちの治療、談笑に花を咲かせていた。
そんなところに響き渡るボクとマリィとクララさんの帰宅の声。門下生たちや、ユウリたちにとっては待ちに待った人たちの帰還の声に、一瞬空気が凍ったかのようにみんなの声がピタリと止まり、そして次の瞬間、耳を塞ぎたくなってしまう程の大声が響き渡る。
「「「「おかえりぃぃぃっ!!!」」」」
「ぴぃっ!?」
「うるさいィ!?」
「……凄い歓迎されようとね」
そのあまりにも大きな声に思わず驚くボクとクララさん。あまり表情が変わらないマリィさえもその表情を少しゆがめてしまう程の大音量に、ボクも思わず変な声をあげてしまう。耳を塞ぐことで少しは抑えることができたけど、それでも貫通するこの大きな声はどうにかならないものか。特にジュンとホップの声が破壊力が高く、普通は声の高い女性の声の方がダメージが大きそうなのに、それを上回る2人の声にはある意味感心させられる。
「どうだった!?って、その腕につかまえているヤドンを見れば一目瞭然だよな」
「上手くいったんだな!!凄いぞ!!」
「3人とも無事に帰ってきてくれて本当に良かった……お疲れ様」
がやがやわいわいと、四方八方から色々な声をかけられるボクたち。そんな中でも、もう何回も聞いたいつものメンバーの声はハッキリと聞き取ることができ、自然とそちらに視線が引っ張られる。その先には、疲れ切ってはいるものの、とても晴れやかな表情を浮かべているユウリとホップとジュンの姿。少し乱れた髪と汗の跡から、きっとかなり大変な戦いがあったのだろうということが感じ取れた。後でそのあたりのことについても聞いてみても面白いかもしれないね。
「ユウリたちもお疲れ様。みんな無事みたいだね」
「集中の森の入り口見たと。そっちも相当激しかったみたいやんね」
「ここの野生のポケモン、血の気多いからァ……絶対師匠の仕業よォ……」
「「「ヤァン……」」」
ユウリたち3人の無事も確認できたところで、ボクたちもほっと溜息を一つ。心なしか、腕の中にいるヤドンたちも凄く疲れているようにも見える。まぁ、今日一日あれだけ走り回って、そのうえでかなしばりにまひと、自身の体の自由を何回も奪われていたら、物凄く疲れるのも納得と言ったところだ。マスタードさんのところに報告しに行った後、労いのポフィンでもプレゼントしてみようかな。本当なら今すぐ労ってあげたいんだけど、残念ながらこのゲームのクリアはマスタードさんに報告するまでだ。もう夕暮れをさえも過ぎ去ろうとしている。ここで駄弁りすぎて時間切れでしたなんておまぬけな結果だけはちょっとしたくない。ここまでの苦労を考えたら余計にだ。それに、ボクたちはここから一番重要なことを決めなくてはならない。
「さて、無事にヤドンを3匹とも捕まえることが出来たんだけど……」
「このヤドン3匹の捕獲を、誰の手柄にするかってこととね」
マスタードさんの提示したゲームクリアのご褒美は、『ヤドンを捕まえた3人』だけだ。順当にいけばボクとマリィとクララさんの3人が受け取ることになるだろう。しかしここまでの作戦を見てわかる通り、決してボクたち3人だけでクリアできたわけではない。ここにいる全員の力を協力したからこそ勝ち取ることのできた結果であって、ボクたちがやったと胸を張って言える結果ではなかった。それだけに、このままこのヤドンをずっと捕まえておくのは少し……いや、かなり忍びなかった。それに、ボクは最初からこの報酬受け取り会議からは降りるって言ったしね。
「そう、報酬を貰えるのはヤドンを連れてマスタードさんに報告をした3人だけ。だけど、今回ヤドンを捕まえるために頑張ったのはみんな一緒。誰ひとりとして、『自分ひとりだけで充分だった』なんてことは思ってない」
ボクの言葉に頷くみんなを見れば、ボクの言葉が間違っていないことがよくわかる。ジュンだけはちょっと不満そうな顔をしているけど、今は無視しておこう。
「つまり、ここにいる誰しもが報酬を受け取るに値すると思っている。それだけ難しいゲームだったし、みんな頑張ってたもんね」
封鎖班がいなければボクたちが最後まで追い込むことが出来なかったし、護衛班の人たちがいなければ、ヤドンを追いかけている途中に潰されていたか、集中の森で逆に追い詰められてタイムアップになっていただろう。それだけこの作戦は総力をあげた大きなものとなっていた。その頑張りや功績に、大きさや価値なんてつけるのは無粋というものだ。その褒美をボク1人で享受するのはやっぱり忍びない。勿論それだけが理由では無いけど、ボクが報酬を貰う席から降りる理由にするには十分だ。
「そんでもって、この作戦を始める前から言った通り、ボクはこの報酬を貰う役からは降りる。だから、このヤドンを誰が持っていくのか、それはみんなで決めてほしい」
抱いているヤドンのまひを治すために、まひなおしを使いながらみんなに問いかけているボクは、今抱いている子の治療が終わったところで、今度はクララさんとマリィが抱いている子を預かって、順番に治療していく。……どうでもいいけど、もし運悪く攻撃が当たったとしても、きずぐすりで治せばもしかしたらバレなかったのかも……
(いや、マスタードさんなら匂いでその辺当ててきそうだなぁ。うん、やっぱり却下)
なんてちょっと邪推してみたけど、未来予知にも匹敵しそうなほどの計画を立ててきている人に、そんな誰でも思いつくような簡単な子供だましなんて絶対に通用しないと思うので頭の中から追い払っていく。そんな割とどうでもいいことを考えているうちに、ヤドンを巡っての会議はマリィとクララさんを中心に進んでいた。
「やっぱり、捕獲してくれた2人は貰うべきなんじゃないか?話を聞く限り、捕獲戦もかなりつらかったんだろ?」
「でも、あたし的には封鎖班の人がいなかったらそもそも集中の森まで追い込むことが出来なかったと。特にあたしなんかはたまたま相性のいい仲間がいただけ。そんな運がよかっただけなあたしなんかよりも、他の人の方が……」
「それだったら俺たちなんかよりも護衛班の方がいいと思うぜ。なんせ、俺たちだけだと野生のポケモンを抑えきれなかったからな……悔しいが、戦闘面においてはあいつらには勝てないぜ……防御なら自身があるんだがなぁ……」
「むしろ私たちが加勢するまで耐えてくれた封鎖班の方が凄いと思うけど……私は攻めることは得意だけど、耐えることなんて全然だもの。あれだけの野生のポケモンを前にして、最後まで引かなかったその根性の方こそ、報酬を貰うべきだと思うわ」
進むとは言っても、ホップから始まったその話は、マリィ、封鎖班の男性、護衛班の女性と順番に巡っていき、結局は誰もかれもが、『自分よりも他の人の方がふさわしい』という言葉に着地してしまい。堂々巡りになってまとまらなくなっていた。
(う~ん、これはこれで予想外……まいったなぁ……)
正直何人かは、『だったら自分が~』なんて、自己を主張してくる人が出てくると思っていたため、その人に譲ればいいかなと思っていたんだけど、誰一人でないどころか、あのせっかちボーイのジュンまでもが静観のスタイルを取るという、明日はかいこうせんでも降って来るのではないかと疑いたくなってしまうような、不思議なことまで起きてしまっている。
(あ、あのジュンが人に譲ることを憶えている……!?)
(おいおい、なんなんだよその目は!!オレだって空気を読むときはちゃんとだなぁ!?)
(日頃の行いだよ。でも……成長したんだね……)
(ああもう!!なんだってんだよ~!!)
思わず懐疑的な目でジュンを見つめていると、ジュンから不服そうなアイコンタクトが返ってきた。けど、昔から彼を知っている人が今のジュンの姿を見ると感動することだろう。ヒカリなんてショックのあまりに病院を薦めてしまいそうだ。
(コウキにも見せてあげたいなぁ……)
この成長した姿をコウキが見たらなんて思うだろうか……っと、関係ない話はこの辺にして……
「そろそろ誰が貰うか決まった?早く決めないと、日没が来ちゃうけど……」
「とはいっても、みんな頑張っているからやっぱり決められないよ……」
「さすがに今回ばかりはうちも出しゃばれないっていうかァ……」
ジュンとのやり取りを区切って再び会議の中心に視線を向ければ、帰って来るのはユウリとクララさんの困ったような声。やっぱりあれから話は全く進んでいないようで、ユウリたち以外に目を向けてみれば、今も尚わいわいがやがやと賑わいを見せていた。譲り合いの精神は美徳ではあるんだけど、今この瞬間においてはただただ時間を浪費するだけの悪手になってしまっている。そしてそれはユウリとマリィも危惧するところらしく……
「ねぇフリア。何かいい案ないかな?このままだと日没までに絶対に話がつかないと思うんだけど……」
「せめてフリアが、この人がいいって推薦するべきと」
「と言われてもなぁ……」
そんな現状を見かねて、マリィがボクに誰かを推薦することを提案するけど、それだとボクが見ていない鍛錬平原や、チャレンジビーチで頑張っていた人を正確に評価することが出来ないから、とてもじゃないけど公平なジャッジと言えなくなってしまうため、ボク的にはこの手も取りたくはない。しかし、ユウリとマリィが言っていることもごもっともではあるので何か手を打つ必要はある。
「……仕方ない。ここまで話し合っても決まらないなら、いっそ運で決めよっか」
「「運……?」」
ボクの言葉に首をかしげる2人の横を通って、ボクは再びみんなの前に立って声を上げる。
「みんなちゅうも~く!!」
ちょっと声を張ってあげた言葉に、みんなの視線が引きつけられる。いろんな人が声をあげていたため、ボクの声がみんなに届くのかがちょっと不安だったけど、全員の視線を確認できたことから、ちゃんとボクの声が届いたことが分かったので、そのままボクの考えをしゃべっていく。
「どうもみんな遠慮してて話が進まないみたいだから、ここは思い切って運で決めようと思うんだけど!」
「運……?運って、どうやって決めるんだ?」
ボクの言葉にユウリとマリィと同じような反応を返してくるみんな。そんな中で代表してホップが質問を投げてきたので、その質問に対して大きな声で続けていく。
「日没まで時間もあんまりないから単純に行こうと思う!その名も皆でじゃんけん大会!!」
「じゃんけん大会?」
「そ!ルールは単純。ボクがじゃんけんの掛け声とともに手を出すから、みんなも合わせて手を出して!それで、ボクに勝った人だけが生き残って、負け、もしくはあいこの人はそこで脱落。これを繰り返して最後まで残った3人に報酬をプレゼント!これなら文句ないでしょ?」
「成程ォ……」
「確かにそれなら恨みっこなしで決められるし、時間もそんなにかからなさそうだな」
「このままだと日没迎えちゃいそうだもんね」
「これならたとえ報酬を受け取れるってことになっても、変に気負う必要もなさそうだし……アリだな!!」
ボクの言葉に納得の声を漏らすクララさん。その声につられて、周りのみんなも首を縦に振りながら肯定の意を示していく。結果として、ここにいる全員からの同意が確認できたところで、ボクは右手を思いっきり上に掲げる。残念ながら身長の低いボクでは、ここから背伸びをしても大した高さになりはしないけど、幸いなことに、ボクの手が見えないなんて人はいなかったみたい。よかったよかった。
「よし、じゃあ時間もないことだしさっさと始めるよ!」
ボクの掛け声に、同じように手を掲げるみんな。その姿を確認したボクは、頷きを一つし、高らかに声を上げる。
「いくよ~!!じゃ~ん、け~ん━━」
日が落ち、茜色も黒く染まり始めた清涼平原にて、急遽大きなじゃんけん大会が開催された。
☆
「「「「「「ただいま戻りました!!」」」」」」
「おお~これはこれは、みんなおつかれちゃ~ん」
じゃんけん大会を終えたボクたちは、じゃんけんを勝ち抜いた3人にヤドンを抱えてもらった状態で、みんなの足並みをそろえてマスター道場へと帰ってきた。
扉を勢いよく開け放ちながら、元気よく挨拶をする門下生たちにつられてしまい、思わずボクたちも気合の入った声をあげてしまう。そのことにちょっとした恥ずかしさを感じながらも、マスタードさんの言葉を受けながら道場内に入っていくボクたち。ふと視線を向ければ、シロナさんとカトレアさん、コクランさんにヒカリと言った、ゲームに参加していない方たちも、道場の端っこにて、この先の展開に興味でもあるのか、若干鋭い視線を向けてきていた。それが、なんだかボクたちを試しているようなものにも見えてしまい、さっきまで恥ずかしがっていた感情から一転、緊張した雰囲気を感じとる。
「さてさて、時間ギリギリだけど帰ってきたってことは、ヤドンちゃんたちを捕まえたって事かな~?」
「はい!!」
そんな感じでちょっとよそ見をしているうちに、マスタードさんから今回のゲームについての質問を投げかけられる。その問いに門下生のリーダー的な方が返事をすることによって話が先に進んでいった。
「うんうん。それじゃあ、誰が捕まえたのか、前に出てきてもらっちゃうよ~ん。ささ、前に出ておいで~」
「「「はい!」」」
マスタードさんの問いに対する答えは、ヤドン捕獲完了の報告。それを受け取ったマスタードさんは、続けて『誰が捕まえたのか』という質問を投げかけてきたので、今ヤドンを抱えている3人が前に出た。さっきまで清涼湿原で行っていたじゃんけん大会の勝者。それは、ユウリ、クララさん、そして、護衛班に所属していたひとりの女性の方。その3人が、それぞれの腕にガラルヤドンを抱えた状態で前に出る。
(さて、ボクたちが報酬を受け取る人をじゃんけんで決めたことは……なんか、ばれてそうだなぁ……)
その状況を少し離れたところで見守っていみるけど、ユウリたちを見ても、いつもの微笑んだ表情から全く顔色を変えないマスタードさんからは、やっぱり見透かされているような雰囲気がして落ち着かない。
「ヤドンちゃんを捕まえてきたのは、ユウリちんにクララちん、そしてモニンちんだねぇ」
ヤドンを抱えている3人を見つめながら微笑むマスタードさん。3人を順番に見つめていたマスタードさんは、しかしその表情からは何を考えているのかを読み取ることは出来ず、ボクは……いや、ボクたちはただただユウリたちを見守ることしか出来なかった。そんなあまたの視線に晒されているマスタードさんは、そんなことなどお構い無しにヤドンを順番に観察していく。おそらく、マスタードさんが出している、『攻撃を当ててはいけない』という縛りがちゃんと守られているかの確認だろう。捕まえた時も、まひを直してあげた時も、外傷は見当たらなかったので大丈夫だとは思うけど、それでも緊張はちょっとしてしまう。そんなドキドキの数分間を過ごしたボクは、次のマスタードさんの言葉で、その緊張をとくこととなる。
「うんうん。ヤドンちゃんたちみんな元気だね〜。きずぐすりの匂いもしないし、ちゃんとわしちゃんの出した課題も乗り越えてるねん。素晴らしいよ〜。これなら問題なく課題クリアだねん」
「「「ふぅ……」」」
(よかったぁ……)
マスタードさんからの言葉は合格。ボクたちの行動が無駄ではなかったことに安心感を覚えたボクとユウリたちは、そっとため息をこぼした。
(いや、本当に良かった……これでダメって言われたらどうしようかと……)
「さてさて!では課題をちゃ〜んと突破したユウリちんたちには、わしちゃんが最初に言った通り、ヤドンちゃんのしっぽを使ったフルコースをプレゼント〜!!ヒカリちん!ミツバちん!早速料理の配膳を━━」
「ま、待ってください!!」
「ん~?」
無事にゲームのクリアが決定し、ようやく待ちに待った晩御飯。それも、みんなが気になるヤドンのフルコースからキッチンに運び込もうとしたときに、ユウリからストップの声が上がる。ここまでの流れを断ち切るように放たれたその言葉は、ここにいる全員の視線を一気に集め、そのことにユウリがちょっとだけ委縮するような姿を見せる。よっぽどびっくりしてしまったのか、そのままこちらに視線を向けてきたので、ユウリが何を言おうとしていたのかはわからないけど、そのことを応援するためにしっかりと目を合わせてうなずくことで返事をする。それでユウリも安心したのか、不安そうだった表情を戻し、真っすぐマスタードさんを見つめなおした。
「あの、マスタードさん。言いたいことがあります」
「ふむふむ、何かな?」
不安を振り切ったユウリの言葉に、相変わらずニコニコしたままのマスタードさん。2人の姿に、ボクたちは何も言葉を挟むことが出来ない。
「今回のゲーム。確かに私は活躍できたかもしれません。けど、やっぱり私ひとりが頑張ったわけではないんです。ここにいるみんなで手にしたヤドンですから……」
自分の腕の中にいるヤドンを見つめながら呟くユウリ。その姿からは彼女の静かな思いがひしひしと伝わってきており、それだけ報酬を自分が受け取るということに疑問を抱いているようだった。
「……私だけが受け取るというのはやっぱり納得いかないんです。だからマスタードさん!」
顔を上げ、再び真っすぐマスタードさんを見つめながら喋りだすユウリ。その視線に、もう迷いはない。
「ヤドンのフルコースをみんなで分けるってことできませんか?」
「「「「えっ!?」」」」
「ほうほう……」
ユウリの提案に驚きの声を上げる門下生たち。しかし、マスタードさんはむしろ笑みをさらに濃くしていた。
「フルコースにできるほど食材が沢山あるなら、全員にひと口ずつ分けられる量くらいはあると思うんです!……いえ、フルコースの内容を知りませんし、普通の量というのも知らないから、本当にそれだけの量があるかはわからないですけど……」
「ふむふむ……つまりユウリちんはこの報酬を3人だけじゃなくて、全員で分けたいと」
「は、はい!……って、この場合クララとモニンさんまで巻き込んじゃうけど……」
「私は異論ないです」
「ウチもないぞォ!」
「……え?」
「むふふ~」
ユウリの言葉を援護するように、ユウリの横に立つクララさんとモニンさん。2人の行動が予想外だったユウリが変な声をあげているけど、気にせず2人も発言する。
「さすがに私ひとりでその報酬を受け取れるほど、恥知らずではありません。ユウリさんの提案、私からもお願いします」
「ウチからも!師匠!ほんとうにお願いィ!!」
「2人とも……ありがとう。お願いします!」
自分と同じようにマスタードさんに真っすぐ発言する2人に感謝しながら、クララさんとモニンさんに倣って一緒に頭を下げるユウリ。
3人から真っすぐ頭を下げられたマスタードさん。相変わらず表情が微笑みから変わらないから読めないその姿は。しかし、確かに、頬がいつもよりも緩んだ気がした。
「3人の思いはよくわかったよん。じゃあ、今回は特別、ヤドンのしっぽのフルコースをみんなでいただこうか~!」
「「「!!」」」
「じゃあ改めて~、ヒカリちん!ミツバちん!!」
「はいは~い!ようやくお披露目だよ~!」
「ヒカリちゃんと腕によりをかけたんだから、みんなしっかり食べなさいよ~!!」
嬉しそうな笑顔を浮かべながら高らかに宣言するマスタードさんと、それを合図に物凄く美味しそうな料理を次々と運んでくるヒカリとミツバさん。ステーキに煮つけ、揚げ物に果ては刺身まで、ありとあらゆる方法で料理されたその食材は見るだけでよだれが零れそうで、一緒に見ている門下生たちからもものすごい歓声が上がっていた。
「さあさあ、みんな一緒に食べようか~!」
『いただきまぁす!!』
ヒカリとミツバさんの的確な行動によりすぐさま簡易的なテーブルの作成と配膳が終わり、道場内は一瞬でビュッフェのような状態に早変わり。あたり一面に漂う匂いは、ゲームですっかり空っぽになってしまったボクたちのお腹を一気に刺激してくる。それと同時にマスタードさんから高らかに声が上がる。そうなってしまえばもうあとはお祭り騒ぎ。空腹に飢えた食べ盛りのみんなを止めるものなんて何もなく、みんなして並べられた料理に手を付け始める。
食べ物が無くなる前にボクもいただこう。しかし……
(やれやれ、ここまで全部おみとおしなのかな……?)
此方を見てにやついているヒカリとマスタードさんを見ながら、『本当にどこまで読んでいるんだか』とため息を零す。
「フリアちんもお疲れさま~。さあさあ、ゆっくり食べていってね~」
「……はい、そうさせてもらいますね」
「フリア~!これすごく美味しいよ~!!早く早く~!!」
「は~い、今行くよ~!」
今日1日、マスタードさんに振り回されっぱなしだった。果たして、マスタードさんのお茶目を乗り越えることなんてできるのか。下手したら、ダンデさんに勝つのと同じくらいに難しいじゃないのか。そんなことを思わせられながら、しかし今だけはこの絶品料理を楽しんでおくために、ボクはユウリたちの呼び声に答えながら歩いて行った。
報酬
ということで報酬はみんなで仲良くいただいていますね。最も、ここまですべてマスタードさんの考え通りですが……。
作品が作品なら、計画通り……となっていそうですね。
ヤドンのしっぽ……実際はどんな味なんでしょうね?カロスでは高級料理ですし、アローラでは家庭の味。そしてガラルではスパイしー……う~ん、気になる……。