【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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142話

「う〜ん、いい天気!絶好の特訓日和ね」

「そうですね」

 

 マスター道場から外に出たボクたちは、マスタードさんに言われた通りの場所である一礼野原の砂浜まで歩いてきていた。今日の天気も快晴であるため、海は日の光りを綺麗に反射させ、煌びやかな景色を映し出してくれていた。本格的な夏に入っているため気温はかなり高くなっており、この景色を作り出してくれている日光はボクたちに向かっても容赦なく降り注いでいるため、正直暑さもなかなか辛いところではあるんだけど、時折吹き抜ける海からの風は、そんな不快な気持ちにさせる暑さを少し和らげてくれている。それがどこか心地よく夏を感じさせてくれるため、それらを総評するとやっぱりシロナさんの言う通り『いい天気』という表現で落ち着く。暑いのがあまり得意では無いボクも、どこかこの暑さを楽しんでいる節があった。

 

「ほんと……あなたは元気ね……」

「そういうあなたは普段から外に出ないからそんなに辛そうなのよ。もっと外に出たら?」

「余計なお世話よ……」

「お嬢様、あまり無理はなさらぬように」

 

 一方で後ろに振り返ってみると、カトレアさんがこの日差しと暑さのせいで既にしんどそうに見える表情を浮かべていた。隣にはコクランさんが常に付き添って、日傘をさしてあげながら反対の手には水分補給用の飲み物をしっかりと持って控えており、さらに視線を少し横に逸らせば、休憩用のテントや椅子、更には熱中症になったとしてもすぐに体を冷やせるような準備でもしてあるのか、クーラーボックスの存在も確認できたあたり、執事として抜け目なしと言うか、完璧な対応はとっているみたいだ。これならカトレアさんに万が一何かあっても、コクランさんが適切な対応を取ってくれるだろう。とは言っても、カトレアさんの体が心配なのは変わらないし、ここまで無理をしているのにボクが関係しているというのが、どうしてもボクの心に少ししこりを残していた。

 

「あの、カトレアさん。もし体調が優れないのでしたら、別に今日ではなくても……」

「いいえ、気にしないでちょうだい……」

「ですが……」

「大丈夫ですよ、フリア様」

 

 そんな心配の様子を見せていたボクに対して、コクランさんが少しだけ前に出て発言をする。

 

「お嬢様はたしかにあまり外に出ないので、こういう場はあまり強くありませんが、それでも四天王を務める方です。これくらいの悪状況など大した障害ではありません。もし何かあっても、わたくしがしっかりとフォローしますので、フリア様は気になさらないでください」

「これはあたくしが望んでしていること……言ってしまえばあたくしの自業自得なのよ……普段あまり外に出ないあたくしが、それでも外に出て確認したい程の興味をあなたに抱いただけ。あなたは気にせずにその力の探求に励めばいいのよ……」

「それに、最近外に出てないからこうなっているだけで、こういう生き生きとしてる姿の方が、昔のカトレアらしくて私は嬉しいわね」

「……あたくしの昔話は今はどうでもいいのよ」

 

 ほんのり頬を赤く染めながら反論するカトレアさんは、初めて会った時の少しダウナーっぽく、それでいて少し近寄り難い雰囲気を出していた姿とは程遠く、シロナさんやコクランさんによって作り上げられたカトレアさんの柔らかな雰囲気に、思わずボクの頬も緩んでしまう。

 

(なんだか……意外と話しやすそうな人なんだなぁ)

 

 四天王という肩書きもあるせいか、カトレアさんに対して抱いていた少し硬そうなイメージがいい意味で崩れ始めた瞬間だった。

 

「それよりも……早く本題に入りましょう?」

「そうね。フリアを混じえての昔話も楽しそうだけど、今は特訓の時間。時間は有限だし、早速始めましょうか。フリア、準備はいいかしら?」

「はい!ヨノワール!!」

 

 カトレアさんからの言葉でようやく本来の目的に話が戻ったところで、ボクは懐から相棒の入ったボールを取り出し、宙へ投げた。

 

 軽快な音を立てながら割れたモンスターボールから現れたのは、朝の特訓の疲れをちゃんと取りきったいつもの相棒の姿。凛と構えるその姿には相変わらずの頼もしさが溢れており、また、これからの特訓に対する気合いも十分みたいで、まるで公式バトルの時と同じくらいに気合いの入った姿でこちらを見つめていた。

 

「相変わらず、いつ見ても素晴らしいヨノワールね。よく育てられてる……正直、メリッサのヨノワールよりも強く育って見えるわ」

「あたくしも、シキミのヨノワールを見せてもらったけど……ここまで育ってはいなかったわね……まぁ、シキミの場合、ヨノワールはレギュラーではなかったけど……」

「ええ、バトルキャッスルでも何匹かヨノワールを拝見しましたが、その中でも抜きんでてよく育っておられます。トレーナーの愛が感じられますね」

「あ、あんまり手放しに褒められるとちょっと……」

 

 ヨノワールが出てくると同時に周りから掛けられる声は賞賛の声。掛け値なしに褒められることによって若干の恥ずかしさを感じたボクは、思わず視線をそらしてしまう。ヨノワールの方も、ここまで褒められるのはなれていないせいか、若干目が細くなっているのが確認できた。ヨノワールもヨノワールで恥ずかしがっている様子だ。

 

「それだけあなたの成長と能力が凄いという事よ。四天王と元チャンピオン。そしてバトルキャッスルのオーナー代理に褒められたことをしっかりと胸に刻んでおきなさい」

「……はい!」

 

 確かに、ここまで凄い人たちに手放しに褒められることなんてまずないだろう。チャンピオンや四天王、バトル施設のトップの位を担っていることもあり、お世辞で人を褒めるなんてこともしないはずだ。となれば、これは素直な賞賛。ここは素直に受け取っておこう。

 

「それに、もしかしたらこの子は、これからのポケモンバトルの歴史に名を刻むかもしれないしね……」

「え?」

 

 そういいながらヨノワールを見つめるシロナさんの視線は、どこか期待したような面持ちをしていた。

 

「そんなに、ボクのヨノワールって凄いんですか……?」

 

 ボクのヨノワールが凄いことはボクが一番理解している。ボクが小さいころから一緒にいたパートナーだし、ボクの中でも特別な存在となっているこの子は絶対的な信頼を置いてある。誰にも負けない……と言い切るのは、コウキに勝たないとまだ出来ないのがちょっと申し訳ないけど、それでも『ヨノワールがいれば何とかなる』という精神的支柱にはなっている。ただ、シロナさんの言うように歴史に名を遺すほどなのかと言われたら、さすがに言葉がに首をかしげてしまう。勿論、ヨノワールとともに歴史に名を遺したいという気持ちはある。けど、今のボクたちはまだまだ成長過程で未来がわからない。なのにここまで言われるというのは、いくらシロナさんとも言えども言いすぎなのではないかと思わなくはない。けど、そんな疑っているボクにシロナさんははっきりと返答してくれた。

 

「正確には『あなたも含めて』よ。あなたのヨノワールは明確に他のヨノワールと違うと言えるわ。それはあなたもわかってきているのではないかしら?」

「……共有化」

「成程、今は共有化、とあなたは読んでいるのね」

 

 指摘されたのはおおよそ予想通りの共有化について。確かにこの現象は、他のヨノワールは勿論、ポケモン全体も見てもこのようになっている姿は見たことがない。前例がないからこそボクも手探りなわけだし、最初は感覚を共有していることすらわからなかったからこそ、ボクはスランプに陥って勝てなくなってしまったのだから。

 

「はい。どうしてか理由はわからないんですけど、ヨノワールと何かがつながり始めた時、だんだんとヨノワールと感覚がつながっていっている感じがするんです。一番わかりやすいのは、視覚と痛覚……ですかね」

「視覚はともかく痛覚まで……道理で、あの時痛がっていたのね……」

「あの試合見ていたんですね……」

「ガラル地方のジムチャレンジは世界的にも注目のイベントですからね。逆に言えば、ジムチャレンジの中継くらいでしかわたくしやお嬢様が知る機会はありませんよ」

「そう言えば……」

 

 ボクが共有化を詳しく知ったのはネズさんと戦った時だ。シロナさんと最後に出会ったナナカマド博士の研究所の時よりもはるかに後の時間。当然ながらその間にシロナさんと連絡は取っていない。なのにシロナさんやカトレアさん、コクランさんがヨノワールのことを知っていると考えたら、中継を見たという事しか考えられない。っていうか、そもそもの話、今日の朝ヒカリと話している時もそういう話題が出てきたのを思い出した。ヒカリがボクの試合を動画で視聴しているのなら、一緒に旅をしていたと思われるジュンやシロナさん、そしてシロナさんの知り合いであるカトレアさんたちが見ていたとしても何ら不思議ではない。

 

「逆に言えば、そこでとても気にあるところを見かけたからこそ……あたくしはここに来たいと思えるほどの興味をあなたに見出した……」

「ボクと、ヨノワールに……?」

「ええ……」

 

 言葉を引き継いだカトレアさんが、コクランさんを伴ってボクの方に近づいてくる。昨日出会ったばかりで、四天王で、そのうえ見た目がとても綺麗で、年上なのにかわいらしいというイメージを抱いてしまう彼女に急に近づかれたことによって、少なくない動揺を覚えるものの、なぜかカトレアさんの目から視線を逸らすことが出来ず、じっと見つめて、カトレアさんの説明に聞き入ってしまう。

 

「あたくしの得意とするポケモンはエスパータイプのポケモンたち……そこであなたに質問……。エスパータイプのトレーナーの特徴は……?」

「えっと……トレーナー本人も何かしらの超能力を備えている……ですか?」

「ん……正解……」

 

 ボクの解答に頷きながら懐からモンスターボールを取り出した。現れたのはランクルス。緑色のセリーのような、液体と固体の中間みたいな物質に包まれた小さな子供のような姿をしたポケモンは、現れると同時にカトレアさんの周りを嬉しそうに飛び回り、2人の仲の良さを表してくれていた。

 

 暫くじゃれていた2人は、ランクルスの動きが落ち着いたところでスキンシップをやめ、カトレアさんは再び説明を始める。

 

「あたくしたちエスパータイプのトレーナーはみんな、何かしらの超能力を持っている……例えばジョウト地方の四天王のイツキや、あなたが特に知るセイボリーなんかはサイコキネシス……そしてあたくしやシンオウ地方の四天王のゴヨウなんかは、テレパシーを備えている……このおかげで、あたくしは指示を出すのに言葉を必要としないし、ポケモンとトレーナーがどれほどの思いでつながっているのかが可視化できる……」

 

 カトレアさんが説明しながらランクルスに視線を向けると、小さくうなずいたランクルスの体が少し発光。同時にボクたちの周りに飲み物が入ったペットボトルが浮かび上がり始める。それを受け取ったボクは、カトレアさんにお礼を言いながらそのジュースを一口いただく。

 

「今は分かりやすく目を合わせたけど、本来なら目を合わせる必要もない……アイコンタクトで指示を出す人は何人かいるけど、あたくしたちはそのタイムラグすら生み出すことなく指示ができる……強いテレパスを持った人ならこれくらいは簡単……」

 

 少し得意げに話をするカトレアさんに、思わず頬が緩みかけるけど何とか耐える。思いっきり表情が緩んでいるシロナさんをに気づいて視線を鋭くさせているカトレアさんを見るに、ボクまでもが顔を崩したら余計に話が脱線しそうなのでここは我慢だ。

 

「こほん……さて、ここからが本題なのだけど……あたくしはテレパシーの応用でポケモンとトレーナーの絆が可視化できる……。言葉で説明するなら、ポケモンとトレーナーの間に薄い青色の光がつながっている感じかしら……」

「成程……」

 

 カトレアさんなりにわかりやすく説明してくれているおかげで、とりあえず話にはついていけているボクは、ちらりとヨノワールに視線を向けながらカトレアさんの言葉を待つ。

 

「絆が深ければ深いほど……その青い光は太く、強くポケモンとつながるわ……けど、あなたたちはちょっと違うのよ……」

「違う事って、そんなに珍しいんですか?」

「少なくともあたくしは見たことがないわ……。四天王として数多のトレーナーを見てきたけど……あなたとヨノワールのように、金色の光でつながれているのは初めて……」

「金色の光でつながれている……その、ボクたちが他の人と光のつながりが違うっていうのは、やっぱり何か意味があるんですか?」

「それを確かめるために、あたくしがここに来たの……」

 

 そういいながらヨノワールに近づいて行くカトレアさんは、ヨノワールの目の前までたどり着いたのちに、そっとヨノワールの体に触れる。

 

「現状あなたたちだけが行っている意識の共有化……それにあなたたちだけ違うこの絆の糸……あたくしは、ここに何か関係があるとみているわ……」

「ヨノワールとの……絆……」

 

 そういえば、この共有化という現象がどういうものかというのはわかってきていたけど、この現象のきっかけは考えたことがなかったし、今も能動的に発動する方法はなんとなくでしか把握していなかった。けど、もしこの現象がボクとヨノワールの絆によるものだということが明確になれば、もしかしたらあの共有化をもっと簡単に、そして能動的に発動する方法がわかる可能性がある。

 

「あなたとヨノワールをつなぐその不思議な絆……。あたくしなら、その不思議な絆の正体を突き止めることが出来る……かもしれない……」

「……」

 

 カトレアさんの言葉を聞きながらヨノワールとボクが見つめ合う。けど、ボクとヨノワールの間には、何か不思議な力があると言われてもいまいち実感としてイメージすることが出来ない。さっきは能動的に発動できる可能性があるとは言ったものの、やっぱり絆というものが目に見えない以上、どうしてもイメージがしづらい。

 

「安心して……。さっきも言ったけどあたくしは超能力のおかげで本来目に見えない絆を可視化することが出来る……。そして、その力をこうすれば……」

 

 ヨノワールの体に触れていたカトレアさんが、その言葉とともに今度は反対の手をボクの胸に添えた。すると同時に、胸にどこか暖かな力を感じ始めていく。

 

「これは……」

「今あなたが感じているのは……ヨノワールとのつながり……。あなたが今これを感じ取ることが出来ているのは、ヨノワールの思いを、あたくしの体を中継することによってあなたが感じ取ることが出来るようにしているから……わかるかしら……?」

「……はい」

 

 カトレアさんを通じて伝わって来る思いに目を閉じながら意識を集中させると、確かに伝わってくる気がする。もっと強くなりたい。もっと上を目指したい。そして、コウキに勝ち、ボクの思いをかなえてあげたいという願いが……。

 

「……」

「感じているみたいね……それがヨノワールの思い……ヨノワールが、あなたに対して思っている……嘘偽りない願いよ……」

「そっか……こんなことを考えていたんだね……」

 

 ボクがコウキに勝てなくて、ずっと気にしていたことをみんなも気にしていたのは何となくわかっていた。けど、いざこうしてちゃんと向き合ってみると、その気持ちの大きさに嬉しさと恥ずかしさ、そして申し訳なさが一気に押し寄せてくる。

 

(本当に、好かれているんだなぁ……ありがとう、ヨノワール)

(ノワ……)

 

 ボクが4歳のころからそばにいてくれた何よりも頼もしい相棒は、出会ったころと変わらず、ずっとボクのそばに寄り添って支えてくれていた。

 

(そっか……そうだよね。昔からキミはそうだった……)

 

 改めて、ヨノワールのことをしっかりと振り返ると、思い出される記憶の数々。その一つ一つが、しっかりと結びついて行く。

 

 ヨノワールとの、つながりを強く感じる。

 

 いつものバトルをしている間に少しずつつながるあの感覚ではなく、自分たちから歩み寄って、能動的につながることが出来ている。今ならきっと、いつも以上に強く繋がれる気がする。

 

『『っ!?……これは……っ!!』』

『『カトレア!?』』

『『お嬢様!?』』

『『大丈夫……っ。物凄い力だけど……危害を与えてくるような力じゃない……むしろ温かい力……でもそれ以上に……っ!!』』

『『ヨノワールの見た目があのテレビの時みたいに変わり始めている!』』

『『お嬢様……無理だけはなさらぬように……』』

 

 カトレアさんたちの会話が遠くからかすかに聞こえてくる気がする。それも、ヨノワールとつながっていることもあってか、二重になって。しかし、意識をヨノワールに集中させすぎている今、外の声はほとんどボクに入ってこない。それ以上に、このままつながればもっともっと力を引き出せるような気がして、今はとにかくヨノワールに歩みよることばかりしか頭に浮かばない。

 

(もっと……もっと……!!)

(ノワ……ッ!!)

 

 つながる心。湧き上がる力。今なら、ボクたちがやりたいこと、なんでもできるような気がする。そして……

 

(もっとッ!!)

(ノワッ!!)

 

 完全に意識がつながった。

 

「「ッ!!」」

 

 体を包み込む暖かで、それでいて力強い思い。それが全身にいきわたった瞬間、弾かれたようにボクたちの体に衝撃が走り、無意識のうちに目を見開いてしまう。と、同時に今まで意識の中に集中していたせいで、無意識のうちにシャットアウトしていた外の情報が一気に流れ込んでくる。

 

 いつも以上に重なったことで、ヨノワールの視界もより鮮明に見えてしまい、ぐちゃぐちゃに混ざり合う2つの景色に、全ての音が混ざり合って二重に聞こえてくるこの耳。更に、自分は地に足をつけているはずなのに、ヨノワールは常に浮いているから、立っているはずなのに浮いているという矛盾した感覚がボクを襲う。

 

 ぐちゃぐちゃの視界にごちゃごちゃした聴覚、そして浮ついたこの感覚が一気に脳に流れ込んできて、一瞬にしてボクのキャパをオーバーしてしまう。結果……

 

「うぐっ……!?けほっ、ぇほっ……」

「フリア!?」

「「っ!?」」

 

 気持ち悪さと吐き気となってボクの体を蝕んだ。

 

 喉からせりあがってくる感覚に、反射的に口を抑え、しゃがみ込みながら下を向いてしまうボク。しかし、ここでみっともない姿を見せるわけにはいかないという変な意地を張った結果、すんでのところで耐えきったボクは、この症状によって荒くなった息を何とか落ち着けようと深呼吸を繰り返す。

 

「大丈夫!?無理はしなくていいのよ?」

「ふぅ……ふぅ……大丈夫です……ありがとうございます」

「コクラン!!」

「ええ。フリア様、こちらを……」

「コクランさんもカトレアさんも、ありがとうございます」

 

 その間、背中をさすりながらこちらを気にかけてくれているシロナさんと、飲み物を準備してくれたコクランさんとカトレアさんにお礼を言いながら、ゆっくりと立ちあがる。と、同時に視線を横に向けたら、ヨノワールも不安そうな目でこちらを見つめていた。

 

「ヨノワールも、心配かけてごめんね?」

 

 そんなヨノワールの体をやさしくなでながら、ようやく体が落ち着いたことを確認したボクは、シロナさんたちに視線を向ける。

 

「何があったのかしら……?」

「どうやら、いきなりボクとヨノワールの感覚を強くつなげすぎたせいで、ボクの体がその感覚に追いつくことが出来なくて、感覚酔い、みたいなことが起きたみたいです……心配かけてすいません」

「謝るのはあたくしの方……。ごめんなさい、そこまで考えが及ばなかったわ……」

「そんな!カトレアさんは何も悪くありませんよ!」

 

 この現象自体初めて見るものなんだ。こんなことが起きるなんて予想できた人は世界を探してもいないだろう。だからカトレアさんが謝る必要なんてどこにもない。

 

「カトレアさんのおかげでこの現象の正体がつかめてきた気がするんです。むしろこちらからお礼をしたいくらいです!!」

「そう言ってもらえると嬉しいわ……。けど、あたくしの不注意だったのは事実……。感覚をつなげすぎると、そういう事が起きてしまうのね……」

「でも、今までで一番この現象の正体に近づいた気はするんです。だから、全部が失敗というわけでもないと思うんですよ」

「そう……。なら、今度はあたくしの方で調整してみるわ……」

「お願いします!」

「では、わたくしはまた倒れても大丈夫なようにいろいろ準備しておきますね」

「私も手伝うわ」

 

 そこから始まるのはボクとヨノワール、そしてカトレアさんによるトライ&エラー。何度も倒れそうになるものの、それでも何かをつかみ始めたボクは、確実にこの現象の終着点に近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




共有化

特訓回兼、カトレアさんを出した理由ですね。そして感覚酔い。アニメではこういうのはあまり書かれていませんでしたけど、2つの視界を両方見れるというのは、人によってはすごく酔うと思うんですよね。なのでちょっと苦労を多めに。可愛い子には旅をさせよではありませんが、ちょっとは苦労して欲しいという謎の目線がありまして……




さて、お披露目はもう少しでしょうか。到達地点はどのようになっているんでしょうかね?
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