【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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148話

「まず結論から言わせてもらうと……ズガドーン、デンジュモクの2人はお互いを倒すために攻撃をしている訳では無いわ……」

「攻撃しているつもりがないィ!?あれだけ派手に暴れているのにィ?」

「周りにだって被害が出ているとよ?他のポケモンだって逃げてると」

「それなのに戦っていないってどういうことだ?全く意味がわからないぞ?」

「カトレアさん。急にそう言われても俺たちは納得できないぜ」

 

 カトレアさんから告げられる言葉はボクとユウリにとっては既に予想された範疇のものだ。なので、特に驚くことも無くこの言葉を受け入れることが出来るものの、全く予想していなかったクララさんたちにとってはにわかに信じられない話だ。こういう発言が出てくるのもおかしくは無い。

 

「なるほど、だから傷が少ないんだ。納得したかも」

「そうなると問題は何をもってこんなことをしているのかという事ね」

 

 そんな彼らに対して、既に違和感にたどり着いているヒカリとシロナさんはカトレアさんの言葉を素直に受け取り、次のステップへと思考を回していた。声を上げていないだけで、コクランさんとマスタードさんも同じく違和感にはたどり着いているので一緒に考えている。

 

「な、なんだなんだ?ユウリやシロナさんはカトレアさんの言葉をそんなにあっさり受け止められるのか?」

「だって……ずっと戦っているのだとしたら、もっとズガドーンとデンジュモクの身体に傷があってもおかしくないのに、すごく綺麗な体をしているから……なんか、おかしいなって」

「身体が綺麗……?」

 

 カトレアさんの言葉に特に疑問を持たないボクたちの言動が気になったジュンがすかさず疑問をなげかけてくるけど、その問いに対してはユウリが自分でたどり着いた結果を提出することで解答をする。その答えの意味がまだよくわかっていないみんなは、最初こそ頭にハテナを浮かべていたものの、ユウリの言葉につられて改めてズガドーンたちをみて、すぐに反応を表していく。

 

「確かに……あれだけ暴れているにしては全然傷を負ってなかと……」

「それにィ、よくよく見れば今やってる攻撃も激しくはあるけどォ、お互いの身体には当て合っては無いようなァ?」

「言われてみたらそう見えるが……」

「それはそれで意味が分からないぞ……あの2人は何をしているんだ……?」

 

 ユウリの言葉でようやく違和感の答えに辿り着いたホップたち。ひとまずはボクたちがどうしてカトレアさんの言葉を受けいれられたのか納得はしたみたいだけど、今度は別の疑問に辿り着く。

 

 ズガドーンとデンジュモク。今ここで暴れている両者は、いったい何が目的でこんなことをしているのか。

 

 巣穴の中のポケモンが全員逃げ出すほどの迷惑をかけているからには、それ相応の理由があるのではないか?そう思っているホップたちは、この理由についてもテレパスの力で理解したであろうカトレアさんに視線を向けて、言葉を待っていた。ここに関しては、ボクもシロナさんもわからないところだし、予想の仕様もない所なので純粋に気になる部分だ。なので、ボクもホップたちに倣ってカトレアさんに視線を向けるのだけど……

 

「……あまり期待しない方がいいわよ……?」

「?」

 

 言葉数は少ないながらも、いつもははっきりまっすぐ言葉を伝えてくるカトレアさんにしては珍しく歯切れの悪い言い方。とてもいい辛そうな表情を浮かべているカトレアさんからは、『本当にこの言葉で納得してくれるかどうか』という不安そうな感覚を受けた。あのカトレアさんがこんな表情を見せる理由となると、よっぽどのものだとは思うんだけど……これは余計に内容が気になる。そんな思いを抱いたのはボクだけではないみたいで、みんなの視線が再びカトレアさんに集中する。こんな状況では説明しないわけにもいかない。そう観念したカトレアさんは、ちょっとあきれたようなため息を零しながら説明を続けた。

 

「あの子たちが技をぶつけ合っている理由……それは……」

「それは……?」

 

 

 

 

「どっちが『より派手なことが出来るか』の勝負をしているためよ……」

 

 

 

 

「「「「「「「「「「……え?」」」」」」」」」」

「だから……どっちがより派手かの勝負をしているのよ……あの子たち……」

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」

「その反応がわかっていたから言いたくなかったのよ……」

 

 ボクたちの反応が悪い意味で予想通りだったみたいで、大きなため息を零すカトレアさんは、本当に嫌そうな顔を浮かべていた。最初こそみんな、カトレアさんの言葉を冗談かなにかと捉えていたけど、この様子を見るととてもじゃないけど嘘を言っているようには見えない。そんな予感を無意識のうちに感じ取ったボクたちは、けどなんと言えばいいのか分からず、次の言葉が口から出なかった。

 

「まぁ一応……理由はあるみたい……それも説明するわ……」

 

 そんなボクたちの様子に、ある種の同情のようなものを感じ取ったカトレアさんは言葉を続けていく。どうやら彼らがなぜそんな意味のわからないことをしているのかという理由についても大方のものは把握しているみたいで、その点についていちから説明をしてくれた。その内容をまとめるとこうだ。

 

 ズガドーンとデンジュモク。この2人は、ウルトラホールを通ってここに迷い込んでいたみたいなんだけど、最初はここにはズガドーンしかいなかったらしい。右も左も分からないこの謎の場所に突然移動させられたズガドーンは、最初こそちょっとしたパニックになったものの、本人のひょうきんな性格もあってか、とりあえずいつも通り周りのポケモンや人を驚かせて、その時に溢れる生気を吸って、命を繋ごうとしていたみたい。そのために、この巣穴の中であの爆発を繰り返していたんだけど、その爆発がきっかけでもうひとつのウルトラホールが発生。もしかしたらここから帰れるのでは?と考え、近づいてみたところでデンジュモクが現れたんだとか。

 

 これがズガドーンとデンジュモクの出会いらしい。

 

 デンジュモクが通ったと同時にウルトラホールはまた閉じられ、帰ることが出来なくなった両者。初めて出会った相手とこの状況に、最初こそはどうすればいいのか分からず混乱していたみたいだけど、運良く相性が良かった両者は意気投合。なんとかコミュニケーションを取り始めた。しかし、ここでもうひとつの想定外が起きる。

 

 それは2人の身体に起きたダイマックス現象。

 

 本来なら驚いた時に溢れる生気と、多大な電気を養分として吸い取る彼らは、その代わりとして知らず知らずのうちにダイマックスエネルギーを吸収していたらしく、吸収したエネルギーが一定量に到達した瞬間にダイマックスが発現。ズガドーンとデンジュモクが同時にその身体を大きくさせてしまう事となってしまう。突如大きくなった自分の姿に当然戸惑った彼らは、慌てて思考を自分が元居た世界に帰ることにシフトした。その時に、ズガドーンが自分の攻撃がきっかけでデンジュモクが通ったウルトラホールが発現したことを説明。それを受け取ったデンジュモクが、1人で穴が開くのなら、2人で暴れればもっと穴が開きやすいのでは?という提案をし、そこからお互いの模擬戦がスタート。それを実現させるために、両者派手な攻撃こそすれどお互いにあてることなく打ち合う日々が送られることとなった。これが全ての始まり。

 

 しかし、お互いが技をぶつけ合っていく中で、だんだんと楽しくなり始めた両者が、目的を少しずつ忘れてしまい、最終的にお互いがいかに派手な攻撃を出すことが出来るかにすり替えられた結果が今のこの状況らしい。

 

「……だから、今の2人にはあたくしたちのことは眼中にない……今彼らは、『とにかく相手より派手であろう』という事しか考えていないわ……」

「なんだよその理由……わけわからないぞ……」

 

 ひと段落したカトレアさんの説明。それに何とか返せたのはホップだけで、その言葉すらもあっけにとられてかすれていた。

 

 まさかのボクたちが視界にない発言。

 

 さっきはズガドーン、デンジュモクの全力攻撃を耐えるのがきついという発言を残したけど、そもそもこちらを視界にとらえていないのはもっとめんどくさい状況になる。なぜなら、あの2人がこちらを見ていないということは、奇襲やふいうちといった概念が消え失せるため、あの攻撃の嵐を突き抜けるものを2人にあてないといけないからだ。となると当然じしんのような高火力技を使わないと止めることは不可能。しかし、そうなると今度は巣穴の崩壊が待っている。

 

「いっそこっちを見てくれたら、『ふいうち』なり『かげうち』なりで奇襲を仕掛けるんじゃが……」

「こっちを見ていない以上、そういった奇襲は全く意味を成しませんからね……」

「かといって、放っておけば巣穴の崩壊は進んじゃう……」

「いよいよどうするんだ!?」

 

 マスタードさんとコクランさんも唸る中、ユウリとジュンの悲壮感漂う声が響くが、誰もその言葉に答えられない。

 

「あの子たちは今、派手さで勝負している……なら、彼らよりも派手なことをすれば或いは……」

「でもでもォ、巣穴を傷つけずに派手なことってェ……?」

 

 あの2人を振り向かせるほど派手なこととなると、それこそ彼らよりも激しい攻撃が必要になって来る。そんなことをしてしまえば、間違いなく巣穴は崩壊だ。

 

(どうすれば……)

 

「成程成程……」

「え……?」

 

 そんな絶体絶命な状況において、危機感を持っていなさそうな声が響く。こんな時に響くその緊張感のない声は、ここにいる一部の人からいぶかしげな視線を向けられるものの、少なくともボクとシロナさんはその人と目が合った瞬間に、弾かれたように頭の中に作戦が思い浮かんだ。

 

「ようは、巣穴にダメージを与えることなく、2人の視線を奪えばいいのよね?」

 

 その声の主はヒカリ。

 

「そうだけど……すっごく難しかとよ?」

「何か良いアイデアとかあるのォ?」

「良いアイデアも何も……」

 

 自信満々なヒカリに対して、さらにいぶかしげな視線と言葉を贈るマリィとクララさん。しかし、そんななかでもヒカリの自信は全く揺らぐことなく……

 

「こと『魅せる』という分野において、今ここにいるメンバーの中でわたし以上の適任なんていないわよ。まぁ、ここはお姉さんにまっかせなさい!!」

 

 溢れんばかりの笑顔を浮かべながら、そう答えた。

 

「フリア、1つだけお願いしてもいい?」

「任せて!」

 

 そんなヒカリに応えるために、ボクもそっと、1つのボールを構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いまだぶつかり合うズガドーンとデンジュモク。激しい爆発と電撃の音が鳴り響く中、しかし、そんな場所を見ても全く臆することなく歩く1つの影があった。

 

「さぁ……行くわよ!!」

 

 それはボクの幼馴染が1人のヒカリ。

 

 彼女が気合の入った声をあげると同時に、6つのモンスターボールが宙に投げられる。そのボールたちは、薄い青色のカプセルのようなものに包まれており、その表面には氷の結晶のようなシールが沢山張られていた。

 

「みんな出ておいで!!」

 

 ヒカリの言葉と同時に現れたのは、エンペルト、マンムー、エテボース、トゲキッス、パチリス、ミミロップ。その全員が飛び出ると同時に、周りに氷の結晶をまき散らしながら現れた。

 

「まずはマンムー!『あられ』!!」

「ムー!!」

 

 飛び出てくると同時に行われるのはあられ。夏の季節に場違いな霰がしんしんと降りそそぎ、ポケモンたちが出たと同時に舞い散った雪の結晶と合わ去ることで幻想的な空間が出来上がる。

 

「次にエンペルト!!『うずしお』!!」

「ペルーッ!」

 

 そんな空間の中心にて、次に行われるのはエンペルトのうずしお。エンペルトを中心に広がっていくそれは時間が経つたびにどんどんその径を広げていき……

 

「『たきのぼり』!!」

「ペルッ!!」

 

 次の合図で宙に飛びあがってエンペルトを追うようにして、大きな水の柱がうずしおから伸びていく。その伸びはダイマックスしているズガドーンたちと同じ高さまで到達したところで停止し……

 

「マンムー!『れいとうビーム』!!」

 

 マンムーのれいとうビームによってすべてが凍り、氷柱となる。

 

 急に現れた氷柱に、ズガドーンとデンジュモクの視線が一瞬だけ動いた気がした。

 

「まだまだよ!!ミミロップ!『でんこうせっか』!エテボース!『みだれひっかき』!トゲキッス!『エアスラッシュ』!!」

 

 そんなズガドーンたちの反応を無視して行われるヒカリの行動。指示された3人のポケモンは、それぞれが指示をされた技を用いて氷柱を攻撃していく。しかしそれは適当に攻撃しているわけではなく、すばやく、しかし確かに繊細な作業で行われており、ほどなくして氷柱を攻撃した結果を視界に入れることとなる。

 

「うわぁ……」

「すっげぇ……」

「綺麗……」

 

 現れたのは氷のお城。あの大きな柱を削ることによって生まれたこの大きな氷城は、圧倒的な存在感と神秘的な輝きを放っていた。その姿に見惚れたユウリ、ホップ、マリィからは、感嘆の声があげられる。

 

「フリア!!」

「了解!!モスノウ!『オーロラベール』!!」

「フィィ!!」

 

 そんな時にかかるヒカリからの合図に頷きながらモスノウに指示を出す。すると、先ほど完成した氷の城を包みようにオーロラが展開され、元々神秘的だった城が更に神秘的になっていく。

 

 薄く緑色に輝くオーロラに包まれたそれは、まるでおとぎ話のようで……その城に向かって、ヒカリが1歩ずつ歩みを進めていき、オーロラの壁をすり抜けていく。すると、ヒカリの体が淡く輝き、その輝きがはじけた瞬間、ヒカリの服装がいつもの服から、薄い水色から藍色へと裾へ行くたびにグラデーションで変わっていくドレスへと着替えられていた。

 

 ヒカリがポケモンコンテストの時に着る服。そのなかでも特に勝負服として選んでいるものの1つ。それに早着替えをしていた。

 

「パチリス!トゲキッス!」

 

 綺麗なドレスに着替えたヒカリは、自身のそばへパチリスとトゲキッスを呼ぶ。呼ばれたパチリスはヒカリの肩に乗り、トゲキッスはヒカリの前で着地をし、ヒカリを待っていた。

 

「お願いね、トゲキッス」

「キィ!!」

 

 そんなトゲキッスの背中に乗ったヒカリは、トゲキッスの背中をひと撫で。それを合図に空に飛びあがったトゲキッスは、主を氷の柱の頂上へと連れていく。

 

「ありがと」

「キィ……」

 

 そのまま氷の城の頂上に辿り着いたヒカリは、トゲキッスをひと撫でしながら、お城の一番高いバルコニーへと足をつけた。その一コマは、まるで有名なおとぎ話のワンシーンで、見るものをすべて引き込んでしまう程幻想的で……気づけばあのズガドーンとデンジュモクさえも攻撃の手が止まりつつあった。

 

 しかし、ヒカリのステージはまだ終わらない。

 

「エテボース!トゲキッス!『スピードスター』!!」

「エポッ!」

「キィ!」

 

 ヒカリの指示に従って、今度は巣穴の天井近くにスピードスターが飛んでいき、天井にぶつかる寸前のところでピタリと止まる。と同時にボクへのアイコンタクトがヒカリから送られる。それに頷いたボクは、懐からもう1つボールを取り出し、相棒に一言小声で指示を出す。

 

 

「『くろいきり』」

「ノワ……」

 

 

 相棒から放たれるくろいきりは、氷城だけでなくこの巣穴内の空間全てを包み込み、ダイマックスエネルギーのおかげでほんのり赤く輝いていた灯さえも闇に閉じ込めた。

 

 真っ暗で静かな空間。音も視界もないそんな場所に、不安を感じたみんなが少しだけ動こうとする音が聞こえる。けど、そんな無の時間も、ヒカリの言葉で切り裂かれる。

 

「トゲキッス!『マジカルシャイン』!!パチリス!『スパーク』!!」

「キィ!!」

「パチッ!!」

 

 真っ暗だった空間から輝きがあふれ、上へと伸びていった2つの技は天井付近のスピードスターの群れに当たって弾ける。

 

「「「「うわぁ……っ!!」」」」

 

 同時に漏れ出すホップ、ユウリ、マリィ、クララさんの声。そしてカトレアさんたちも、声には出さないものの、上を見上げて見とれてしまう。

 

 みんなの上空に浮かぶのは星空。マジカルシャインの光を吸収したスピードスターたちは、それぞれが小さく、しかしはっきりと光を放ち、夜空に浮かぶ星たちのように天井から優しい光を下ろしていた。そして、その星々をつなぐように引かれるスパークの軌跡。その軌跡をたどれば、浮かび上がってくるのは星座。実際に見ることが出来る星座をしっかりと再現されたこれは、さながらプラネタリウムのようで……。

 

「さすがヒカリね……」

「はい……」

 

 その星から落ちてきた淡い灯に照らされる氷の城と、そこに立つヒカリはいつも以上に綺麗に見えてしまい、シロナさんの言葉に無意識のうちに頷いてしまう。

 

「ピュピュイ~!!」

「あ、ほしぐもちゃん!!」

 

 巣穴内にて完成された幻想的な景色。そんな中を、まるではしゃぐ子供のような声をあげながら駆け回るほしぐもちゃん。普通のポケモンなら空気感を壊しかねないその行動は、しかしほしぐもちゃんの見た目のおかげもあってか、夜空を駆け回る流れ星のようにも見え、より一層幻想度を増していた。

 

「ズガガ……」

「デンシュ……」

 

 もう、ズガドーンもデンジュモクも、この景色に目を奪われて動けない。

 

「ピュピュイ~ッ!!」

「ふふふ、楽しんでくれているかな?」

「ピュイ!!ピュピュイ!!」

 

 そんな中、一通り飛び回って遊びつくしたほしぐもちゃんが、この景色を作り出した人の元へと飛んでいき、ヒカリはそんなほしぐもちゃんをやさしく受け止める。本当に楽しんでいるという感情を全身で表すほしぐもちゃんに、ヒカリも優しそうな笑顔を浮かべてあげていた。

 

 その時だった。

 

「……おい!あれ!!」

 

 ジュンが指を差す先に、別の光があふれてきた。

 

「あれは……ウルトラホール……!」

 

 その光の正体を唯一知るカトレアさんから、決定的な一言が発せられる。

 

 ついに、目的を達成する瞬間がきた。

 

「さぁ、フィナーレ行くわよ!!ほしぐもちゃんも手伝って!!」

「ピュピュイ~!!」

 

 ヒカリの一声にのったほしぐもちゃんが、星空の真ん中へと飛びたって行く。

 

「トゲキッス!!『サイコキネシス』!!」

 

 そのほしぐもちゃんを見送ったと同時に、トゲキッスはサイコキネシスを発動。対象は空に輝く全ての星たち。その星たちを支配下に置いたトゲキッスは、ほしぐもちゃんを中心としたまま、ゆっくりと星々を回転させていく。その様はまるで星空をタイムラプスで撮影した時のように綺麗な光の軌跡が伸びていく。

 

「これが……グランドフェスティバル準優勝者……」

「ええ。素晴らしい演技です」

 

 おおよそテレビか写真でしか見ることの出来ないそれを、今まさに目の前で体験することに少なくない感動を覚えたカトレアさんとコクランさんの呟きも右から左へと流れてしまうほど、みんなしてこの光景に目を奪われる。しかし、そんな夢の時間も、惜しいけど終わりへと向かっていく。

 

「トゲキッス!!」

「キィッ!!」

 

 ヒカリの言葉を合図にゆっくり回っていた星座たちがその速度を上げて、徐々に中心にいるほしぐもちゃんの元へと集まっていく。否。星だけじゃなく、くろいきりもオーロラベールも巻き込んでいくサイコキネシスが、ほしぐもちゃんを中心にどんどん集まっていき、まるでほしぐもちゃんを核とした大きな星が誕生。

 

「行くわよ!!」

「ピュイ!!」

「キィ!!」

 

 そして、その大きな星は、自由にそして楽しそうに宙を飛びまわる。

 

 オーロラベールの綺麗な軌跡を残しながら飛び回るその姿は、銀河を泳ぐ彗星のようで。その彗星は色々なところを飛び回り、ボクたちに淡い光をこぼしていく。そして一通り飛び回った彗星は、みんなの頭上に飛び上がり……

 

「フィニ〜ッシュ!!」

「ピュピュ〜イ!!」

 

 ほしぐもちゃんの叫びとともに破裂。大きな音も衝撃もなく爆発したその彗星は、しかしズガドーンの爆発よりも、そしてデンジュモクの電撃よりも遥かに派手で綺麗に、何より優しく宙に花を咲かせた。

 

「ズガドーン!デンジュモク!どう?これが本当の『派手』よ!!」

「ズガガーン!!」

「デンショック!!」

「ピュピュイ!!ピュピュピュ〜イ!!」

 

 あまりにも綺麗で派手な演出に、ズガドーンもデンジュモクも大興奮。ほしぐもちゃんもよっぽど楽しかったのか、大はしゃぎをしながらとびまわる。そして……

 

「……さぁ、もうショーは終わり。そろそろ帰る時間よ」

 

 テンションがどんどん上がっていくほしぐもちゃんに共鳴するかのように、先程開いたウルトラホールがどんどん拡がっていく。いつの間にかダイマックスが切れてしまったデンジュモクとズガドーンが通るには十分な大きさだろう。

 

 漸く帰ることが出来る。

 

「ズガガーン!!」

「デンショック!!」

 

 そのことを理解した2人が、ヒカリに向かって手を振りながら、ゆっくりとウルトラホールへとその身体を滑り込ませていき、ズガドーンとデンジュモクの姿が完全に見えなくなったと同時に、ウルトラホールも閉じられる。

 

「……またのご来場。お待ちしております」

 

 今までの喧騒が嘘のように静かになった巣穴の中心で、スカートの裾をつまみながらおしとやかに一礼するヒカリと、彼女の周りに集まるポケモンたち。

 

 星の光で彩られた彼女たちに、ボクたちは無意識に拍手を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ズガドーン

相手を驚かせた時に生じる生気やエネルギーを吸って自分の力にします。ゴーストらしい特性ですよね。

デンジュモク

此方は電気を啜ってエネルギーに変換する子。いろいろなところを停電させてしまうくらいには大喰らい。

というわけで、この2人の攻略方法はまさかの『ポケモンコンテスト』でした。

実は当初の予定ではこの2人としっかり殴り合ってもらう予定だったのですが、アニポケ、サンムーンの78話でも一緒だったこの組み合わせは、ここでも派手さ対決をしていました。そこを思い出したときに、ヒカリさんと絡ませることが出来るのでは?ということでこの展開に。

ヒカリ

今回の主役。手持ちのメンバーは、気づいた方も多いかと思いますが、アニメをほぼなぞるような手持ちとなっています。衣装もアニメに出てきたものを意識してますので、分かり辛かったら検索してみてくださいませ。ちなみに、ジュンさんは実機準拠となってますよ。




アニポケの次のお話が何やら神作画の予感……楽しみですね。




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