【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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いよいよ明日発売……

あと、今回はあとがきの最後にてちょっとお知らせがございます。


150話

「ユウリ〜、朝だよ〜。もうご飯できてるよ〜」

 

 ズガドーンとデンジュモクという2人のウルトラビーストの問題を解決した次の日。疲れた体を癒すため、お風呂に入り直した後に早々に就寝したボクは、昨日の疲れはすっかりと抜けており、気持ちの良い朝を迎えることが出来た。そんなこともあり、朝からそこそこ体が軽くなっていたボクは前と同じようにキッチンに向かい、いつも通り早起きして朝ごはんの準備をしてくれていたヒカリとミツバさんと合流。そのまま朝食の準備をしながら、軽い雑談をしていた。激動だった昨日と比べてこういういつも通りのまったりした時間を過ごすことによって、問題が解決したんだと改めて実感したボクは、この日常をのんびりと楽しんでいたし、ヒカリもどこかやりきった感というか、ちょっとした満足感を漂わせながら朝食作りに励んでいた。そんなこともあってか、わりと順調に朝食作りが進んでいき、いつもよりもちょっと早く、そしてより美味しそうにできた朝食は、とてもいい匂いを道場内に運んでいき、お腹を空かせた門下生たちがその匂いにつられて起き始めてくる。

 

 程なくして人が少なかった食堂に活気があふれ初め、最初こそ昨日の爆音について不安げな表情を浮かべ、そのことについて話し合いながら集合していたものの、美味しいご飯を目の前にそんなことはすぐに忘れ去り、いつものメンバーも顔を見せ始めたころにはすっかりいつもと同じ風景が広がっていた。

 

 この時間が終われば、またいつも通りの厳しい特訓の時間が帰って来る。そうなれば、昨日のことなんてもうみんなの記憶からは消えていくことになるだろう。国際警察がらみということでカトレアさんとコクランさんからも箝口令が敷かれているため、できればあまりこのことについて口にしたくないボクたちにとってはとてもありがたい状況だったりする。嘘をつけないわけじゃないけど、あまり嘘をつき続けるのもちょっと心苦しいしね。特に、ホップやジュンなんかは嘘がへたくそだから別の意味でも心配が大きかったり。そのあたりを気にしなくてもいいことから、ボクとヒカリ、そしてクララさんとマリィとそろってほっとしたのは2人には内緒のことだったり。

 

 さて、ここまで話したことでもうわかったと思うけど、ここにきてひとつ気になることが生まれた。それは、もうみんなが朝食を食べ終わりそうなタイミングになってもユウリが食堂に顔を出さないことだ。

 

 食べることが大好き且つ、ボクたちの中でも割と時間に対してはしっかりとした対応をするユウリにしてはこれは珍しく、みんなして心配してしまうほど。特に、昨日あれだけのことが起きたので、もしかしたらボクたちが知らないだけで何かあったのではないかと思い、みんなを代表してボクが起こしに行き、冒頭に戻る。というわけだ。

 

「ユウリ~。大丈夫~?」

 

 コン、コン、コン、コン。

 

 礼儀正しく4回ノックをしながら声掛けを試みるも、やっぱり反応はゼロ。女性の部屋だし、勝手に入るのはものすごく気が引けるんだけど、昨日が昨日だったので流石にこのまま放置もできず、シロナさんやマリィと言った女性陣にお願いしようにも、どうにも今回の件についてはみんなボクを行かせたいらしく、全然取り合ってくれない。

 

「ユウリ~。入るよ~?」

 

 そのため、ものすっごく気乗りはしないんだけど、今回は仕方なくお邪魔させてもらう。ノックも念入りにしたし、声掛けもしたのに声が返ってきていないということはおそらく着替え中というわけではないはずだ。と考えると、例え事故みたいなことが起きたとしても最悪のケースである可能性は低いと言っていい。

 

 ほんの少し緊張でしっとりとしてしまっている掌のことを考えないようにしてゆっくりとドアを開けるボク。

 

「お、お邪魔しま~す……」

 

 ノック等で反応がないことは確認したけど、それでもやっぱり湧いてくるちょっとした不安から思わず小声になりながら中を見渡したボクは、部屋の構造が自分の使わせてもらっている部屋と同じであることを確認しながら体をゆっくりと部屋の中に滑り込ませている。

 

(なぜだろう、物凄く悪いことをしている気がする……)

 

 心の中に芽吹く謎の罪悪感に若干の戸惑いを感じながら部屋の中に入ったボクは、後ろ手にドアを閉めユウリの姿を確認する。

 

「やっぱり、昨日の疲れがたたっていたのかな……?」

 

 そこにはベッドから少しだけでも身体を起こそうともがいていたユウリの姿。本当に眠そうな身体を、それでも朝だからということで頑張って起こそうとするユウリを見ていると、不思議と鼓動は落ち着き、なんだか庇護欲を掻き立てられるような感覚に陥る。

 

「なんか……こんなユウリを見るのはちょっと新鮮……ユウリ、大丈夫?」

 

 そんなユウリに声をかけながらベッドに近づき、顔の高さを合わせるようにしゃがみ込む。

 

「ぅん……ふり、あ……?」

「そうだよ~。フリアさんですよ~」

 

 なんだかシュートシティの宿で行われたやり取りをやり返しているみたいで少し楽しい。そんな思いからついつい伸びてしまったボクの右手が、ユウリの頭の上にぽふっと乗せられる。そのまま軽く左右に手を動かせば、寝ぼけ眼を少ししんどそうに擦っていたユウリの目が、細く気持ちよさそうなものへと変わっていた。

 

「ふりあだ〜。えへへ〜」

「……うん」

 

(……あれ!?なんかいつもと様子違うくない!?ふわふわしてない!?)

 

 頭に手を乗せてしまったのでちょっとは小言を言われちゃうかなぁなんて思っていたんだけど、帰ってきたのは物凄く幼く純粋な反応だった。いつものユウリとどこか違うその反応は、ボクの思考を鈍らせていき、思わず動きを止めてしまう。その際、ユウリに乗せていた右手の動きも止まっていたみたいで、そこを感じ取ったユウリが少しだけ顔を不満に歪ませる。

 

「むぅ……もっと〜……」

 

 今度こそ怒られるかもとちょっとだけ身構えたものの、ユウリがとった行動はボクの右手を取って無理やり左右に動かすというもの。どうやらまだ撫でられたりないみたい。そのおねだりに無意識のうちに従ってしまったボクは手の動きを再開。程なくしてユウリはボクの手に添えられていた自分の手を降ろし、その手を今度はボクの身体に向けられる。

 

「えへへ〜……ふりあ、おはよぅ〜……」

「お、おはよう……ってユウリ!?」

「んぅ……すぅ……」

 

 今度は一体何をされるのか。落ち着いていたはずの鼓動がまた早くなるのを感じながら、しかし手を止めてしまうとまた不満を言われそうな気がしたので、手の動きは止めずにユウリの動きに気をつけていると、ユウリの腕がボクの背中に回されてしまい身動きが取れなくなってしまう。さらにその状態でボクにもたれかかって、そのうえで二度寝に入ってしまった。

 

「……ん!?」

 

(ちょ、ちょっと!?これどうすればいいの!?)

 

 寝ているというのに……いや、寝ているからこそしっかりとボクの背中に回されている腕は、とてもじゃないけど簡単には外せそうになく、むしろここで無理やり外してしまえばユウリが腕を痛めるのではないかという気持ちになってしまう程。それに右手はともかくとして、左腕の方は身体と一緒に抱き留められているため下手に動かすことが出来ない。

 

 ……それ以上に、この状況になぜかどんどん速くなる鼓動と、体の芯から仄かに湧き上がってくる温かさのせいで力が入らないというのが一番の原因なんだけど……。

 

「ユ、ユウリ~!起きて~!!」

 

 結果ボクが出来ることと言えば、こうやって小声で叫ぶという謎に器用なことだけ。ユウリを傷つけたくはないし、できればこの気持ちよさそうな顔をしている彼女を起こしたくはないんだけど、同時に速く起こしてあげないと、朝食を一番美味しくいただける作り立ての状態が提供できないという2つの想いの板挟みの証みたいなその中途半端な対抗策は、どうやらユウリを起こしたいという気持ちに軍配が上がったらしく、二度寝をしてしまったユウリの瞼が再びゆっくりと開かれる。

 

「ぅん……ふぁ……」

「お、起きた……?」

 

 小さくあくびをしながら、少し腕の拘束を緩めるユウリは、まだ半分ぐらい夢見心地でありながら、ゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

「んぅ……幸せな夢……見たなぁ……」

「夢……?」

「ぅん……」

 

 まだ完全な覚醒ではないため言葉はたどたどしいし、目の焦点もあっているようには見えない。けど、ちょっとずつ、確かに瞼は持ち上がっているため、そう遠くないうちにちゃんと覚醒してくれるだろう。

 

「……あのね?……なんだかね?ねむくて、ねむくて、しかたのないわたしをね?フリアがぎゅ~ってしてくれるをゆめをね……?」

「…………うん」

 

 しかしなぜだろうか。このままユウリが起きたら絶対ダメなことになりそうな気がして、ボクの心がいろいろな意味でざわめき始めた。しかし、そんな状態でも抱きしめられているボクにできることはなく、そして覚醒を始めているユウリを止めるすべもない。ボクはこの変な空間において、ただひたすらに待つことしかできない。

 

「みたんだぁ……ぽかぽかしてて、あたたかくて……幸せだったん……だ……よ?」

「そ、そっか……それは、よかった……ね?あ、あと……改めて……おはよ……?」

「お……おはよ……?」

 

 そしてついに、その時がやてくる。

 

 自身が先ほどまで見ていた夢についてゆっくりと、そして曖昧なまま喋っていたユウリの目が完全に開かれ、意識も覚醒しきり、同時に今の自分の状態を確認する。

 

「…………」

「…………」

 

 さっきまで夢だと思って話していた状況が、今まさに目の前に起きているということに思わず動きを止めてしまうユウリと、そんなユウリを前にして動くことが出来ないボク。そのまま制止した時間が続いていったけど、その時間を打ち破ったのはユウリ。ユウリはボクの目を見た後、ゆっくりと顔を伏せ、そのまま額をボクの胸へと押し付けながら小声でつぶやく。その内容は……

 

「し、幸せな夢だったな~……」

 

 完全な現実逃避だった。

 

「え、えと……ごめん……ね?」

「ううん……大丈夫……フリアは悪くないから……」

 

 若干声を震わせながらそういうユウリ。表情は見えないけど、ちらりと見える耳は真っ赤に染まっており、それだけで彼女が物凄く恥ずかしがっているんだなというのが嫌でも伝わって来る。

 

(……ユウリだけじゃなくて、ボクも恥ずかしいんだけどなぁ)

 

 ユウリが顔を真っ赤にしているのと同じように、多分ボクも真っ赤になっていることだろう。正直ボクも恥ずかしさから動くことを放棄したいけど、このまま2人で抱き合っているのはもっとまずい。こんなところを誰かにでも見られたりしたら……

 

「ちょっとフリア~!早く降りてこないとユウリの分冷めちゃう……」

「「あ……」」

「あ……」

 

 なんてことを考えているときに聞こえるのは、さっきボクが入ってきた扉が開かれる音。そして、その音の後に聞こえてきたのはヒカリの声だ。

 

 さて、では改めて今のボクの状況を確認してみよう。

 

 顔を真っ赤にさせながら抱き合うボクとユウリ。それも、ユウリに至っては涙目だ。これは先ほどまでの自分の行動故の恥ずかしさから起きた結果なんだけど、それを知っているのはボクとユウリだけ。今入ってきたばかりのヒカリには全く知らないもの……そうなれば当然彼女の反応なんて1つしかないわけで。

 

「ま、まさかそこまで……お、お邪魔しました……」

 

 そっと謝りを入れながら扉を閉める。多分、ボクがヒカリの立場でもそうするだろう。しかし、ヒカリの性格上、絶対にボクとは違う行動を1つすることも想像できる。

 

『みんな~!!フリアがついにやったよ~!!』

 

 

「「誤解!!誤解だから~!!!!!」」

 

 

 扉越しに聞こえるのはヒカリのとんでもない叫び声。

 

 人をからかうことに全力をかける彼女にとって、これは絶好のえさでしかない。ゼッタイ止めなければ!!

 

「っていうか『やった』って何!?何のこと!?」

「あうあう……」

 

 問題を乗り越えた次の日の道場の朝は、こうやって騒がしく始まっていった。

 

「……クマぁ」

 

 そんな騒々しい一幕に、文句を告げるポケモンの声はかき消されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ、青春だね~」

「「ううぅ………」」

「あっはははは!……いやぁ、あのフリアがねぇ~」

「ヒ、ヒカリ……だからあれは誤解だって……」

「なぁ、何かあったのか?」

「わっかんねぇ。誰も教えてくれなくてよ~……全く、なんだってんだよ~……」

 

 あの騒々しい一幕から時間を空け、ユウリのお着替えと朝食が終わったところで改めて集合したボクたち。その間も終始ヒカリにいじられ続け、その言葉を聞きながら顔を赤くするユウリという状態がずっと続いていた。気づけばマスタードさんまで悪乗りしてしまい、もはや新手のいじめでは?と思ってしまう程のからかいになっていた。ただ、そんな2人の口撃を止めるものは誰もおらず、いつものメンバーに至ってはむしろ、ホップとジュン以外は暖かい視線を向ける始末。どうしてこうなった……

 

「違うもん……疲れてただけだもん……あれは夢だもん……」

「ふふふ……ごめんごめん。もう言わないから……ふふっ」

「だったら笑いこらえてよ~!!」

 

 ポカポカとヒカリを叩きながら抗議するユウリと、その様子を更に微笑ましそうに見つめるみんな。いい加減かわいそうだと思うんだけど、ボクも当事者なので手を貸すことはできない。

 

「で、フリアはどうだったと?」

「……何が?」

「ユウリのこと、ぎゅってしてあげたんでしょ?」

「……知らないもん」

 

 なぜならこうやってマリィに問い詰められているから。

 

(絶対に答えるもんか!……でも、暖かくて、柔らかかったなぁ……)

 

「成程成程、暖かくて柔らかかったと……」

「なんでわか……あ、いや!ちがっ!?」

「ふ~ん……?」

 

 もしかしたら表情に出ていたかもなんて思い、顔を抑えながら反応を返すものの、マリィのちょっとにやりとした表情を見てカマかけだと気づいたボクは慌ててごまかすための言葉を探す。しかし、出てくる言葉はどれもあたふたしたもので、形を保っていない。

 

「よかったとね?」

「よくないよぅ……」

「本音は?」

「……なぜかちょっとドキドキした」

「……こういう時のフリアって、反応が乙女と」

「う、うるさい!」

 

 これ見よがしにいじって来るマリィを少し睨んだあとそっぽを向く。これ以上は恥ずかしいから本当に勘弁してほしい……。

 

「はいはい。楽しい話で盛り上がるのは分かるけど、そろそろ切り替えるわよ」

「「はぁ~い」」

「「ううぅ……」」

 

 そんなボクとユウリの願いが通じたのか、シロナさんの手を叩く音でようやくいじりをやめてくれたヒカリとマリィ。どうせならもっと早く止めて欲しかった気がするけど、助けてくれたのは事実なので文句は言わないようにしよう。

 

 恥ずかしさからあらぶっている鼓動と心を落ち着けるために深呼吸。

 

 すぅ~、はぁ~。すぅ~はぁ~。……よし、もう大丈夫だ。

 

 深呼吸をして落ち着いたボクとユウリを確認したシロナさんは、そっと頷いて本題に入る。

 

「じゃあ早速昨日のことについてと、今日の特訓についてなんだけど……」

 

 シロナさんが言葉を喋ると同時に段々とふわふわしたものがなくなっていき、意識が引き締まっていく。それはみんなも同じみたいで、気づけばいつも特訓前の集中を始めるあの状態へとメンタルがシフトしていく。そんなちょっとした緊張感を持ちながらシロナさんから告げられた言葉を大まかにまとめるとこんな感じだ。

 

 まずは昨日のことについて。昨晩も言った通りボクたちには箝口令が敷かれることとなる。これに関しては正直予想通りというか、昨日からわかっていたことなので特に気にならないし、大事なことに関してはここにいるメンツは口が堅い……いや、1部不安な人はいるけど……それでも、まだ大丈夫だと思うので、ひとまずは大丈夫だろう。重要なのはもうひとつの方で、どうやら今回に件について詳しく聞きたいらしく、国際警察の方から人がこちらに来るのだとか。ウルトラビーストを担当している人が現在アローラ地方におり、距離が距離なため今日明日すぐにくるという訳では無いみたいだけど、それでもそんな人たちに質問されるとなると緊張する。一応シロナさんとカトレアさん、マスタードさんが対応するため、ボクたちには関係ない可能性があるけど、もしかしたら質問が来るかもしれないから頭には入れて欲しいとの事。少し怖いけど、その時はちゃんと協力しよう。

 

 そしてもうひとつは今日の特訓について。ヨロイ島での特訓もそこそこ長い日にちになってきた。本戦トーナメントこそまだ期間があれど、それでもジムチャレンジ突破時のような『まだ期間がある』と余裕を持つような時間は残されていない。ここからみんな少しずつ仕上げへと移行していくだろう。その説明を受けた。これに関しては各々が自分で考えることなので、後で考える。

 

 と、シロナさんからの説明はこんなところだ。上記のふたつの説明を受けたボクたちは解散し、それぞれ今日やることに向けて動いていく。思い立ったがなんとやら。みんながみんな今日することをぱぱっと決め即行動。気づけば残っているのはボクとユウリ、そしてマスタードさんだけとなる。と、この状況になったことでボクはずっと気になっていたことを漸くユウリに質問する。

 

「そういえばユウリ。その子はどうしたの?」

「ああ、この子?この子は……」

「この子はダクマちん。この道場で育てているポケモンだよん」

 

 最初こそドタバタしてて気づかなかったけど、ユウリの部屋を見た時からずっとそばにいた黒いヒメグマのようなポケモン。ユウリの言葉を遮りながら説明をしてくれたマスタードさん曰く、ダクマというポケモンらしい。

 

「今でこそガラルから離れた山岳地帯に生息しているけど〜昔の名残でまだここにいる子もいるんだよねん。そういった子たちを育てて、またここで過ごせるようになればなぁって思いながら頑張ってるんだよん。わしちゃんがこの島を買った理由の1つでもあるよん」

「「成程……」」

 

 初めて聞いたマスタードさんの想いにちょっとだけ心を揺らされる。普段は飄々としているというか、ふわふわしている人だけど、やっぱり根底にある部分は紳士なんだなぁと素直に憧れてしまう。こういうところが、たくさんの門下生に好かれている所以なのかもしれないね。

 

「しかし、ダクマちんがこうやってなつくなんてすごいねぇ」

「「そうなんですか?」」

「そうだよ~。この子、特訓に対してはストイックなのに、人間に対しては引っ込み思案なところがあるからね~。ストイックなのも自分に自信が持てないことの裏返し……意外とネガティブで繊細な子なんだよん」

「「へ~……」」

「クマぁ?」

 

 マスタードさんの言葉につられてボクたちが視線を向けるのは、いまだにユウリの腕の中で若干眠そうにしているダクマ。そんなちょっと愛らしい彼からは、とてもじゃないけどマスタードさんの言うようなネガティブさなんて感じられなかった。

 

「ふっふっふ~、本当になつかれているね~。……よかったらユウリちん。その子を貰ってみるかい?」

「「え!?」」

 

 ダクマを眺めているときに急に提案されるダクマを預かるかどうかの話。話を聞く限りとても貴重というか、大切なポケモンだというのは分かったけど、だからこそこんなにも簡単に打診されることにボクもユウリもそろって驚いた。けど、さすがにそう簡単に話がうまくいくわけではなく……。

 

「勿論、それ相応の試験は受けてもらうけどねん。ユウリちんのお兄さんもそうやってダクマちんを手にしたわけだしねん」

「お兄ちゃんも……」

「当然その試験はちょっとやそっとでこなせるものじゃない。少なくとも、試験を受ける許可を出せるのはジムチャレンジの本戦が終わった後だね~」

「トーナメントの後……ダクマのための……」

 

 ダクマを見つめるユウリ。彼女の決心はすぐについた。

 

「……やります。やらせてください!」

「うんうん。ユウリちんならそういうと思ったよ。お兄さんと同じ……いや、それ以上に良い目をしているからねん……待っておるぞ。若きトレーナーよ」

「はい!!」

 

 元気に返事をしながらダクマをマスタードさんに渡すユウリ。マスタードさんも、ダクマを受け取る時は背筋を伸ばし、ときたま見せる威圧感と荘厳さを前面に押し出していた。

 

「さぁ、今日も励むとよい」

「そうさせていただきます!行こう、フリア!!」

「あ、うん……って、ちょちょ、引っ張らなくても~!」

 

 マスタードさんとの会話を終えたと思ったらボクの手を引っ張りながら走り出したユウリ。その勢いにびっくりして、思わず抵抗しそうになるものの……

 

「絶対、迎えに行くんだ……その時は、今よりもっと立派なトレーナーとして、胸を張れたらいいなぁ。……えへへ」

「……頑張ろうね。お互い」

「うん!!本戦……全力でぶつかるね、フリア!!」

「勿論!!」

 

 ユウリの笑顔に見とれてしまい、気づけば隣を走っていた。

 

 笑顔で拳を軽くぶつけ合うボクたち。そんな彼女の顔からは、昨日巣穴で見たような不安や悩みはすっかり消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




寝起き

個人的には避けづ展開よりも、こうやってしっとりというか、ゆるい甘さというのが好きです。まったりな甘さが届けられたらいいなと思っていたり……

ダクマ

マスタードさん曰く実は奥手なダクマさん。実機ではそう言われてますけど……実際はどうなんでしょうね?生息地に関しては公式設定です。実はこの子が野生で生息している場所が別にもあるらしいんですけど……そこ、絶対対戦環境やばそうですよね……




明日。いよいよ。SVの発売ですね。
私は相も変わらずパッケージも欲しい人間なので、パッケージ版が来るのを待ちます。スタートダッシュは行いません。なので、おそらくしばらくはTwitterを見ないようにするかも……ワンチャン通知とDMだけは分かるようにするかもですけどね。もっとも、活躍の場なんて現状ほぼないのであまり関係ないかもですが。




さて、本題のお知らせに入ります。

本小説の次の投稿日は、本来なら11/21になるのですが、土曜日から私事ですが一週間ほど家におらず、まとまった執筆時間が取れません。そのため、少しの間投稿をお休みすると思います。具体的な日付をこたえると、次の投稿は最遅で11/29になると思われます。少し長めのお休みとなりますが、ご了承くださいませ。……ご時世的に、そこからさらに伸びる可能性があることも……もしそうなったら本当に申し訳ありません。

できれば、その間にひとつくらいは出したい気持ちはあるのですが……

ちょっと間が空いてしまいますが、それでもお持ちいただけたら嬉しいです。

以上、お知らせでした。




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