今日よりまたいつも通りに戻ると思います。
……何気に初代ポケモンと同じ数になりました。長く続いて自分でもびっくりです。
ポケモンSVもすごく楽しいですし、まだまだ沢山楽しめますね。
「ふぅ……よし、みんなお疲れ!!戻って〜」
ボクの終わりの言葉に返事をしたみんなが、お互いを労うように声を掛け合いながら手持ちのボールへと戻っていく。そのボールの重さをひとつ、またひとつと確かめながら、11個全てのボールをしっかりと腰のベルトやカバンに固定しておく。その後で、ボクも体をリラックスさせるために大きく伸びをする。
「んんぅ〜……はぁ……今日も今日とて、いい特訓ができた」
朝に色々起きてしまったため、合間合間にてヒカリやマリィにからかわれるというちょっとした妨害はあったものの、それ以外は別段特に変わったことも無く、カトレアさんやコクランさん、シロナさんといった、もはや師匠と呼んでも差し支えない方たちに師事してもらい、またひとつ強くなった実感がある。その事にちょっとした満足感を感じながら、一先ず体を休めるために自分の部屋と戻っていく。
道中すれ違ういつものメンバーに、「調子はどう?」とか「お疲れ様」とか、「本戦楽しみにしているぞ!」等、色々な声掛けをしながら部屋に戻ったボクは、バッグやホルダーなどを机の上に置き、自身の身体を軽くしてまた伸びをひとつ。あとはご飯を食べ、お風呂に入れば今日は終わりだ。そして同時に、本戦の始まりへと1歩近づく。
「なんか、こうして先のことを考えると少しドキドキするなぁ……」
部屋の中にこだまする独り言。いや、正確には、ボクの声に反応するようにモンスターボールがカタカタ揺れているから独り言にはなってはいないのだけど、こうやって直接的な人の視線がないところで改めて言葉を口にしてみるととても感慨深い。
シンオウ地方でジュンともう一度約束して旅立って、長い長い旅をしてきたはずなのに、なんだかガラル地方にやってきたのがつい昨日のように思い出される。それが今やもう大会トーナメントまであと少しだ。
「色々あったなぁ……ん?」
頭を通りすぎていく思い出は、ボクがガラル地方に訪れてから体験した数々の思い出たち。どれも楽しく、大切なそれは、想起するだけで心から何かが湧き上がってくるような感覚がする。そんな時に何かが開く音が聞こえたのでふと視線を横に向けてみると、そこにはボクの相棒が現れていた。
「ヨノワール……どうしたの?」
自分からボールを開く回数こそ多いものの、それでも基本的にボクに対して自発的に何かをしてくることの少ない彼にしては少し珍しい行動。それが気になったボクは、素直にその気持ちを口にする。けど、相棒はそんなボクの言葉をスルーして窓の方にふよふよと動いて言った。
無視された。とは思わない。もとより口数の少ない彼だからこそ、言葉よりも行動で示すというスタンスを理解しているボクは、特に何を言うでもなくヨノワールの行動を見守っていく。すると、ヨノワールはいきなり窓を開け出して、とある一点を見つめだす。その姿がどうにも昨日のことと重なってしまい、思わず耳を塞いでしまいそうになるけど、それ以上にヨノワールの視線の先が気になったボクは、ゆっくりと窓際によって外を眺める。
そこには、恐らくジュンとヒカリが見たであろう光景と全く同じだと思われる景色が映っていた。
バトルコートの端にて空を見上げてじっとしているマスタードさん。その姿にひどく視線を奪われてしまったボクは、しばらくマスタードさんを見つめた後、なぜか呼ばれている雰囲気を感じたため、無意識のうちに足を動かしていた。
まだ遅い時間というわけではない。なのに、ボクがマスタードさんへと向かうまでの道中、なぜか誰も人がいない。それがますますボクをバトルコートへと案内しているように見えて……そんな不気味な程静かな廊下をボクとヨノワールが並んで駆け抜ける。
バトルコートへの扉をあけ放ち、長い一本道をとにかく駆け抜けたボクとヨノワールは、昨日と同じく、夜のバトルコートにて待つマスタードさんのもとに辿り着く。
「うんうん。今日も月がきれいだね~」
「そうですね……でも、星の方がきれいだと思います」
「あらら、振られちゃったね~。それとも、星は昨日のヒカリちんのことかな?」
「さぁ……どっちでしょうね?」
「あ、それともユウリちんかな?」
「ユ、ユウリは関係ない……じゃなくて!!」
「むふふ~、ちょっとはわしちゃんに対する返しがわかってきたみたいだけど、まだまだ詰めが甘いね~」
「知りません!!」
何故か心がざわつくやり取りを無理やり切ってマスタードさんと向かい合うボク。さっきまで感じていた不思議な魅力が霧散してしまいそうな気持ちになるけど、それでも最低限の威厳は保ったうえでこう言う行動を起こしてくる来るからたちがわるい。今だって、変な会話をしているけど気を抜くタイミングなんてないのだから……。
「うんうん……相変わらず、ちゃんと気張るところはわかってるね〜。いや、この合宿でその心持ちが鍛えられたというのもあるのかなん?」
「……誰のせいですか」
「ふっふっふ〜」
ボクの問に対して本当に楽しそうに笑うマスタードさんからは威圧感こそ無くならないものの、しかしその笑顔もまた嘘ではないということもよくわかるほど晴れやかなもので……これが自惚れじゃなかったら、多分だけどかなり気にいられているということがありありとわかってしまうほど。これ自体は凄くありがたいことなんだけどね。ただ、どうもマスタードさんは気に入った相手にはとことん意地悪をしてくるみたい。好きな子にちょっかいを出す子供みたいだ。
「……本当に、フリアちんたちが来てくれて、毎日がとても楽しいよん」
「……」
けどそのちょっかいをどこか心地いいと感じてしまっている自分がいるのも本当なところ。だって、楽しいと思っているのはボクも同じだし、何よりも、マスタードさんはボクとヨノワールが明確に成長している原因でもある。シロナさんやカトレアさんのことを師匠と呼んでいたけど、マスタードさんもそう呼ぶに相応しい……ってこんな言い方したら、何上から目線で言ってるんだなんて思われるかもだけど、とにかく、それだけ感謝している相手だ。そんな人と長時間一緒にいれば、少なくない恩を感じるのは必然だと思う。
そんなマスタードさんから告げられた珍しくストレートな感想に、ボクは思わず言葉が詰まってしまう。
「勿論みんなが来る前からこの島は賑わっていたよん?けど、ここ数日間の賑わいは……うん、やっぱり凄かったよねん」
「そんなに変わったんですか?」
「それはもう凄い変わりようだよ~。シロナちんとカトレアちんというトップトレーナーのおかげで、全体の力の底上げがされた。フリアちんやユウリちん、ジュンちんと言った実力は違うけど歳が近い馴染みやすい人と競い合うことで向上心を刺激された。ヒカリちんのおかげでご飯がさらにおいしくなってみんなの士気が上がり空気が明るくなった。……チミたちが来ただけでこれほどのプラス要素があったんだよん?これを凄いと言わずしてなんていうのかなん?」
「そう言われると……否定はできないかもですね」
特にご飯に関しては生活の潤いもそうだけど、ポケモンたちの体調管理にもつながっている。この食に気をつけることによって、ポケモンたちの気持ちは勿論、ポケモンたちの体を内側からつくることができ、常にハイクオリティなパフォーマンスをすることが出来るように整えることが出来る。……って、偉そうなことを言っているけど、これは全部ヒカリの受け売りだ。ポケモンの体調に関して誰よりも気を遣っているヒカリだからこそ、彼女がこの道場の食事に関わっている今の状況というのはマスタードさんにとっても予想外のプラス効果なのだろう。ミツバさんも食の知識という点ではかなり凄いのだけど、コンテスト仕込みの食生活のバランスからたたき込まれているヒカリの方が1枚上を行っている。だからこそ、ミツバさんもヒカリを勧誘しているわけだしね。
「本当に、感謝してもし足りないね~」
「それを言うなら、ボクも感謝ばかりですよ」
しかし今回のこの合宿はそもそもボクたちのためにあるものだ。さっきも言った通り、この合宿のおかげでボクはヨノワールとの戦い方を大分身に着けることが出来た。だからこそ、マスタードさんに多大な恩を感じているわけだしね。その事を思いながら、ボクはマスタードさんに対して真っすぐ思いのたけをぶつけた。
「マスタードさんのおかげで大分形になりました。本当にありがとうございます」
「ほう……成程成程……感謝か……」
「……ッ!?」
ボクの言葉を受け、それに返事をしながら歩み寄って来るマスタードさん。しかしそんなマスタードさんから放たれる威圧が一気に膨れ上がる。
「確かにお主のヨノワールはかなり強くなっておるみたいじゃな……しかし、
「……」
感謝の言葉に対して返されたのはマスタードさんからの挑発的な言葉。その言葉に芯を貫かれた気がした。そして同時にマスタードさんが今このバトルコートで待っていた理由に思い至った。
「ワシはお主とヨノワールの可能性を信じておる。こ奴らならきっとワシでも見たことの無い高みに行くのではないかというな……しかし!!」
マスタードさんが普段来ている緑色のジャージを脱ぎ、帽子とともに宙に放り投げる。すると下から現れたのは、剣と盾の模様が書かれた山吹色に輝くユニフォーム。帽子がなくなったことによってしまわれていた白色の頭髪は根本以外が赤く染められており、まるで魂を燃え上がらせているかのような印象を受ける。今まで何回かマスタードさんが口調を崩し、威圧をまき散らすことは何回もあったけど、今回のようにスタイルまで変え本気でこちらを見てくるのは初めてのことだった。
否が応でも気が引き締まる。
「その可能性は今ここで立ち止まっていては永遠にたどり着くことはできぬ。確かにお主たちは現在進行形で成長しておるだろう……しかし、ワシから言わせてみればまだまだ足りぬ。だから……」
懐からモンスターボールを取り出しながら空中に飛び出すマスタードさん。そのまま何回も体をひねり、回転を終えたマスタードさんはバトルコートに端に着地しながらこちらに向かってモンスターボールを突き付けてきた。
「ワシの道場をにぎやかしてくれたお礼……そしてお主とヨノワールの特訓の大きな壁として……ワシと一戦、いかがかな?」
本気のマスタードさんからのバトルのお誘い。これこそがマスタードさんがここで待っていた理由。
ボクを誘い、ヨノワールとボクをさらに上のステージへと引き上げてくれるための荒業。
(そんなの……ボクからの答えなんて最初から決まっている!!)
こんなことをされて乗らないなんてありえない。ヨノワールに視線を向けてうなずいたボクは、すぐさまマスタードさんとは反対側のバトルコートへと駆けていき、振り返る。
「やりましょう……マスタードさん!!」
「その返事やよし!!」
ボクの言葉に嬉しそうに返事をするマスタードさん。それと同時にさらに威圧が増していく。
「では行くぞ!!フリア!!」
「はい!!……いくよ、ヨノワール!!」
「ノワ……ッ!!」
その威圧に負けないように、気合を引き締めたヨノワールが前に出た。
「久しぶりじゃな……こんなにも血沸き、肉踊り、心が燃え上る!!強敵とのバトルはいつになっても辞められん!!今はお主がヨノワールしか持っておらん故、一対一でしかバトルできんのが少しもったいなく思うが……だからこそ、本気のヨノワールとぶつかり合うこの場を楽しもうか!!」
ハイパーボールを握り締めながら、声高に叫ぶマスタードさん。
「さぁ、世界一楽しい勝負の始まりじゃ!!」
道場主の マスタードが
勝負を 仕掛けてきた!
「ゆくぞ、ウーラオス!!」
「ウラァッ!!」
「ヨノワール!!」
「ノワッ!!」
マスタードさんが繰り出すのはウーラオスと呼ばれるポケモン。腰を少し落としどっしりと構えるその姿は、どこから攻めても確実に受け止められ、そのうえで一撃で仕留めてくるのではないかという静かな、それでいて強大な圧力を感じる。
一瞬の隙も見せることはできないだろう。ボクもすぐさまヨノワールと心をつなぎ共有化。すべての感覚が一つになるこの現象に身をゆだねていく。その時間はもう一秒を切っているし、もう視界の共有で酔うこともない。カトレアさんとシロナさんのおかげで慣れることが出来たから。
(タイプはわかんないけど、多分かくとうが入っていると予想。それでもって、どことなくダクマに似ているような気もするから多分ダクマの進化系……なら相手のメインウェポンはボクたちには通用しない……と思う。けど、この嫌な予感……間違いなく、一手でもミスればこちらがやられる)
そしてそんな刹那の間にも思考を回すことをやめずに考える。
「良き速度。ならこちらも早速放つぞ!!」
頭を回しながら構え、ウーラオスの行動を見逃さないようにじっと見つめ続ける。すると、元々腰を少し落としていたウーラオスが、更に腰を少し落とす。そして……
「ウーラオス……『あんこくきょうだ』!!」
「ゥラァッ!!」
「「……ッ!?」」
ウーラオスの姿がぶれたと思った瞬間、ボクの両腕にありえないほどの衝撃と痺れが同時に襲ってくる。
「ッ……ぐぅ……ッ!!」
元々あった嫌な予感に従って無意識のうちに両腕をクロスしたことによって直撃こそ避けることが出来たものの、そのあまりにも重い一撃にヨノワールの身体が後ろに飛び、ボクにも少なくない浮遊感が伝わって来る。その衝撃はとても大きく、昔のボクだったら痛みと浮遊感にまた酔って膝をついていたかもしれないレベルだった。改めて特訓の成果を実感したとともに、ボクの中で答えが出る。
(この火力……間違いなくあくタイプの技……ッ!!)
耐久にかなり自信のあるヨノワールでさえこのダメージを受けるというのなら、その技の正体は間違いなくゴーストにばつぐんを与えることのできるあくタイプの技だ。一応ゴーストタイプも弱点を突くことが出来るけど、ゴーストタイプは基本的に物理技に強い技が多くはない。それに技名に『あんこく』の言葉があることからも、そうみてまず間違いないはずだ。
「耐えたか!本来ウーラオスの拳は『ふかしのこぶし』故守ることは不可能に近いが……共有化して感覚が研ぎ澄まされている主らは少し感じ取ることが出来るようじゃな!!それに本来なら正確に急所を打ち抜く技でもあるのにほんの少し体をずらして外しておる。見事!!」
「何そのインチキ特性……防御不可能って意味わからないし、そのうえ急所必中ってバカじゃないの……?」
マスタードさんの口から明かされるトンデモ説明につい言葉が悪くなってしまう。しかし、いくら悪態をついてもこの効果が変わるわけではない。それにこれはマスタードさんが本気を出している証でもある。なら、四の五の言う前に反撃をすることこそが最善の手。
「ヨノワール!!」
「ッ!!」
(確かにさっきの攻撃は強力。だけど、だからこそためが必要だし動きは直線だし、そのうえ後隙はちゃんとある。そんでもって相手があくタイプならこっちだってまだ有効打はある!)
もはや指示をすることなく、右腕を左から右に薙ぐことで発動したかわらわりは真っすぐウーラオスへと飛んでいき、先ほどのお返しとばかりに叩きつけられる。ヨノワールと同じように振っていたボクの右腕にもその感覚はしっかりと残っており、その証拠と言わんばかりにウーラオスがマスタードさんの元へと飛ばされる。
「『いわなだれ』!!」
そんな姿を見送る暇なんてなく、すぐさま技を指示。空中から降りそそぐ数多の岩石たちは次々とあたりに散らばっていく。
「『かげうち』!!」
その岩たちをすぐさま影の手で掴ませたヨノワールは、その影を操って次々とウーラオスへと飛ばしていく。
「キバナとの戦いでも見せた影の触手と岩による連続攻撃。成程よく考えられておる。だが明確な弱点もあるようじゃな!!『インファイト』!!」
「ッ!!」
しかし、無数の岩たちはそのほとんどを一瞬で粉々に打ち砕かれてしまう。
「まず火力がない。ある程度の力があれば、その程度の岩なぞ簡単に打ち砕ける。そして何より……」
残った岩と影の手は片手で数えられるほど。しかし、それでも攻撃の手を止めるわけにはいかない影の手は懸命にウーラオスへと伸びていき……
「手というわかりやすい形をとっているため軌道が読みやすく、そして小回りが利かぬ」
その岩を小さく屈んで避けたウーラオスは、小さくステップを踏んで影の手首の横へと位置を取る。
「体の構造上手首付近のモノをその手で殴ることはできまい?影ゆえ普通の手首よりは可動域は広いみたいだが限界はある。その隙を縫えば……この通り」
その位置は綺麗に影の手の死角となり、そこを縫っていくウーラオスはすべての攻撃をよけ、再びヨノワールの懐へと潜り込む。
「『あんこくきょうだ』」
「『かわらわり』!!」
再び放たれる必殺の一撃に対して、なんとしてでも威力を削ぐために両腕を白く光らせたヨノワールがもう一度腕をクロスさせ、ウーラオスの真っ黒な右拳による正拳突きに対して叩きつける。しかし、あくタイプであると思われるウーラオスに対してばつぐんを取れるであろうかわらわりは、それでも威力を殺し切ることは叶わず、腕を貫通して再びボクたちの身体に深く突き刺さる。なんとか自分から身体を後ろに飛ばすことによって衝撃を逃がし、ダメージそのものを抑えることは出来たけど、後ろに下がったボクたちをウーラオスが逃がす訳もなく、すぐさま追撃準備に取り掛かる。
対するボクたちは、足を止めてしまえば再びあんこくきょうだが飛んでくるため、とにかく動きまくって的を散らすことに専念。さらに相手の進軍を少しでも止めるためにいわなだれとかげうちによる触手で相手の邪魔をする攻撃を放ちまくる。しかしもう種が割れている技が通る訳もなく、一瞬で安全地帯と死角を見つけたウーラオスは、その間をくぐり抜けるように走り出し、再びヨノワールの元へとたどり着く。幸いなことに、あんこくきょうだを打たせないように立ち回っているおかげで3発目は飛んできていないものの、代わりに放ってくるつばめがえしによる連撃にて、やっぱりボクたちの不利状況は変わらない。今も動き回りながらかわらわりで反撃を仕掛けるものの、縦に振り下ろした右手のかわらわりを下からアッパー気味に放たれた右手のつばめがえしに押し返され、体勢を少し崩される。その隙を逃さないウーラオスが、アッパーの勢いで少し宙に浮いた身体をその場で前宙返りさせ、今度は右足によるつばめがえしをかかと落としのように振り下ろしてボクたちに追撃をしてきていた。
(上手い、速い、正確、そして何よりも強い……!!)
「どうした!!そんなものか!!」
火力も手数も機動力も勝てない。延々と攻撃し続けられるこの状況。しかし下手な攻撃はむしろ相手に隙を与えるだけになってしまう。もはや今この場においていわなだれとかげうちはそういう技になってしまっている。あと使える技としてはじしんとかわらわりがあるけど、じしんはためが必要だから密着では中々打つことが出来ず、かわらわりは辛うじて打ちあえてはいるけど見てのとおり色々足りない。
(どうすればこの差を埋められる……!?)
打ち合う相棒を見ながら必死に頭を回転させるが答えは出ず、その状況は次第にボクを焦らせていく。
「ノワッ!!」
「ッ!?」
そんなまとまらないボクの頭を一喝し、意識を切り替えてくれたのはヨノワール。彼の言葉が頭に響くと同時に一気に視界は開け、ざわめいていた心が落ち着いていく。
「ヨノワール……いけるんだね」
「ノワ」
「うん……なら、任せる!!」
頼もしい言葉に全幅の信頼をよせ、ボクはひたすら前を見る。
「来るか!!ウーラオス!!」
ボクたちの雰囲気が変わったことを察したマスタードさんがウーラオスに指示を出し、迎撃準備へ。対するヨノワールはいわなだれを発動。自分の周りへと落とし、
「またその攻撃か?『インファイト』!!」
「ウラッ!!」
雰囲気の違いから構えていたものの、飛んできた技に若干の落胆を感じながら、それでも技を迎撃するために拳を構えるウーラオス。飛んでくる岩を叩き落とそうと握られたそれは、的確に岩の中心を捉え……
「グゥッ!?」
「ウーラオス!?」
ウーラオスの
「ヨノワールッ!!」
「ノワッ!!」
ウーラオスに技が当たったことを確認したボクたちは、さらに追撃をするべく
「ウーラオス!!避けよ!!」
「グ……ゥラァッ!!……グゥ!?」
再び飛んでくる岩の嵐に今度は影の手の死角をついて避けようとするものの、この攻撃は岩が闇に包まれているだけで、岩を
「ぬぅ……この技は……もしや……!!」
飛び回る岩の嵐を見て、何か心当たりがあったのか呻くマスタードさん。そんな彼に対して、ボクたちはゆっくりと口を開く。
「そうです……これがボクたちの……『ポルターガイスト』です!!」
「ノワッ!!」
ポルターガイスト。
本来は相手のポケモンの持ち物を使って攻撃するこの技は、今回は周りの岩を代用することで可能としており、そしてこの技で操られているものはその間はゴーストタイプの物として扱う。つまり、インファイトなどのかくとう技で止まることの無い弾幕となる。
ヨノワールが特訓して、自身の影を操る力を昇華させ、ついに身につけることが出来たこの技。同時に脳内に流れるのは、この技を身につけるために、この孤島で特訓をしてきたヨノワールの記憶と想い。共有化の副次効果として、ヨノワールだけの記憶が少し流れてきていた。
(こんなにも、頑張ってくれていたんだ……)
ボクの知らないところでも頑張っていた彼の想いを受け、身体の奥からどんどんと熱い気持ちが溢れてくる。
(ヨノワール……本当にありがとう)
ひたすらに前を向き、自身を磨くその姿に感謝しか言葉が出ない。
(こんなにも誠実なヨノワールと戦えるんだ。ボクは幸せ者だ。でも……)
この子と隣合って戦える。それだけで誇らしい。けど、それだけじゃ足りない。
(そうだよね。ここで満足しちゃいけない!!)
ボクとヨノワールの身体を、闇の渦が包んでいく。
(もっともっと、気高く勝利に飢えなくては!!)
ヨノワールと、さらに心が繋がっていく。
「行くよ……ヨノワール……」
「ノワ……」
「……カッカッカ、ついに来よったか!!」
小さく、しかしどこまでも響き渡るボクとヨノワールの声。そして……
「今度こそ、
「ノワッ!!」
纏った闇を振り払ったヨノワール。
その姿は、いつものヨノワールとは違う姿をしていた。
ウーラオス
剣盾環境最強ポケモンの1体です。
ゴースト統一を好んで使う私なのですが、この子のおかげで酷い目に……ハチマキウーラオスに誰1人として勝てない……これが普通に野性で住んでいる地方があるんですから恐ろしい……パルデアにはくるのでしょうか?
あんこくきょうだ
剣盾環境屈指の壊れ技の1つ。多分これのおかげでニャオハさんたちの専用技もおかしくなってるのでは?と……
確定急所はただ火力が上がるだけでは無いということを、これでもかと知らしめてくれた技ですね。
マスタード
本気の師匠。
このお話を書くにあたって、何度か孤島のストーリーを見直していたのですが……やはりこういう老人キャラは渋いかっこよさがあって素敵ですよね。とても好きです。
ヨノワール
覚醒。最初から最後のきっかけはマスタードさんとのバトルでと決めていましたので。
ポルターガイスト
鎧の孤島似にて追加された新しいゴースト物理技。威力110、命中90という、物理型のゴーストタイプが喉から手が出るほど欲しがっていた技です。いつかこの技をメガジュペッタで使いたいなぁ……
今回はアニメっぽく、かげうちが進化したような表現にしてみました。ヨノワールも成長している証ですね。
ポケモン新作本当に楽しいですよね。作者はとりあえずヴァイオレットにて、ストーリーと図鑑を全て終えたので、今はレイド用やバトル用のポケモンの育成準備をしているのですが……ゴーストが豊作で嬉しいです。型を考えるだけでワクワクしますね。旅パもメンバーも愛着が湧いてしまい、本当に楽しいです。
あとは一通り落ち着いたら、スカーレットの方をフリアさんのアカウントとして、またゆっくりパルデアを回るつもりです。フリアさんの手持ちで内定しているキャラが少ないのが少し寂しいですが、逆に言えば新しい仲間を増やすことも出来るので、それはそれで楽しそうです。
ゲームフリークさん、本当にありがとうございます。