ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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気づけばUAが500,000超えていましたね。たくさんの人に見ていただいているようで、嬉しく思いながら少し緊張もしていたりします。これからものんびりと頑張ろうと思いますので、この作品をよしなにお願いしますね。


152話

(不思議な感覚だ……)

 

 今日にたどり着くまでに、ボクとヨノワールは何回も感覚の共有を行ってきた。

 

 最初は相手の攻撃が避けられないことから始まった。

 

 ボクとヨノワールの感覚共有によって研ぎ澄まされた感性に気付くことが出来ず、攻撃の軌道こそ見え、確かに避けたのに、攻撃へとシフトする動きが速すぎて攻撃が通り過ぎるのを待つ前にまた前へと出てしまったことによって被弾をし続けていた。この現象がちょっとずつ起き始めたのが、ボクの記憶が正しければ大体7番目のジム……そう、キッサキシティのジムリーダーのスズナさんとのバトルの途中から……だった気がする。

 

 ただでさえその辺から明確にコウキとの差を感じ始めていたのに、その上急に意味のわからない現象に悩まされてしまったせいで、あのころのボクは上面は素面を装っていたけど、その実少しずつ焦りと不安を蓄積させていた。それが積もりに積もってスランプという結果を起こしてしまったわけだしね。

 

 そこから長く苦しい時期が続いて、本格的に置いていかれて……けど、今は違う。

 

 ジュンが引っ張りあげてくれて、ガラル地方でまた1から初めて、そしてネズさんのところで再発こそしたものの、この現象と向き合い始めて……そしてこのヨロイ島にてようやく使いこなすまでに至ったこの現象。

 

 沢山の人のおかげで、もはやラグを生むことなくこの状態に突入することができ、さらにちょっと前の自分のように、この現象に振り回されたり酔ってしまったりすることももうなくなっている。ただ、それにしたってやけに身体の調子がいい。

 

(体が軽い……)

(ノワ……)

 

 言葉を交わさなくても心がつながっている感覚はずっとあったけど、ここまで完全につながって、こんなにも体が軽くなったのは初めてだ。

 

(いや、キバナさんとの闘いの最後のも、こんな感じだったっけ……)

 

 その時も、今回のようにヨノワールの身体には闇が纏っていたはずだ。その闇の中にたたずむヨノワールの姿も、その時のようにいつもと違った姿をしていた。

 

 闇を振りはらったヨノワールの目はいつもの赤から変色し、ボクの目の色と同じ淡い水色に輝いていおり、クールな印象を与えるヨノワールの姿がより研ぎ澄まされていく。そんな水色の目に見とれていると、今度は振り払った闇が渦を巻きながら再びヨノワールの方へ集まっていく。集まった闇はヨノワールの首周りへ集中し、とある形を取り始めていった。それはヨノワールの首元から風によってたなびき、ゆらゆら揺れながら伸びていく。その姿はまるでボクがいつもしているマフラーのようで……首の周りで実体を持ったその黒い靄に右手をかけるその姿はボクがマフラーに手をかける時と全く同じしぐさだ。これだけでかなり姿が変わっているけど、更に変わっているところがヨノワールの身体。闇の靄を纏うことによってほんのりとその体を全体的に黒く染め、ヨノワールの大きな特徴であるお腹の口は、その両端から水色の焔をこぼしていた。

 

「それがお主の変化した姿か……」

「ノワ……」

 

 首元の灰色の襟をよけるように巻かれた黒いマフラーで首周りを隠しながら小さく、しかしはっきりとした声で呟くヨノワール。その姿を見たマスタードさんも、思わず見とれるような反応を示していた。

 

「かっかっか、実に良き!お主とヨノワールの迫力、ひしひしと伝わるぞ!!」

「迫力だけじゃない……ボクたちの本気を見せつけます!!『かわらわり』!!」

 

 ボクが右手を振り上げながら技名を宣言すると、ヨノワールも同じように右手を振り上げながら直進。

 

 ただひたすら、馬鹿みたいに真っすぐ突っ込む単純な行動。しかしその動きは先ほどあんこくきょうだを放つために懐に飛び込んできたウーラオスと同等……否、それ以上の速度をもって飛び込み、ボクと動きをシンクロさせて右腕を振り降ろす。その右腕は今までの攻撃とは威力が違うんだぞと思い知らせるように、いつもの白い輝きではなく、黒い輝きをまとっていた。

 

「ラゥッ!?」

「……やりおる」

 

 あの時の仕返しとばかりに放たれたその技は、ウーラオスに防御させる間もなく叩きつけられ、ウーラオスを大きく後退させる。その際のヨノワールの動きは、口の端の焔とマフラーがたなびいた軌跡だけがその動きを教えてくれるほど速く、普通には視認することが出来ないほど。

 

「ここから反撃する……行くよヨノワール!!」

「ノワッ!!」

「ウーラオス!!まだいけるか?」

「ウラァッ!!」

 

 ヨノワールが叫ぶとともにあふれ出す黒色のオーラ。辺りを怪しく照らすその光は、ヨノワールから放たれるプレッシャーとしてさらにウーラオスたちを威圧していく。それに対し、かわらわりで抜群のダメージを受けながらも、その圧力を気合とともに放つ叫び声によって押し返していく。

 

「滾る……熱い……実に良いぞ!!」

「ボクも……今最高に楽しいです……!!」

 

 ヨノワールが変化した姿によって放たれる黒いオーラと、ウーラオスが力を入れることによってあふれる黒いオーラがぶつかり合い、びりびりとした空気を響き渡らせる。

 

 黒と黒。お互いの全力と全力をぶつけ合うバトルは、まだまだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨノワール!!『いわなだれ』!!」

「ノワッ!!」

 

 指示と共に左手を上に掲げたヨノワールは、その手をゆっくりと振り下ろす。同時に起きるのはまさに岩の雨。ウーラオスに対してはもちろんのこと、ダイマックスを前提としたこの広いステージ全てを範囲とした岩の豪雨が降り注ぐ。本来いわタイプでは無いヨノワールではここまでの芸当なんて出来ないはずなのに、それでもできてしまうのはやはり、今行われている主と繋がっている絆の最高点……あの変化現象が原因なのだろう。

 

「ウーラオス!!『インファイト』で打ちくだけぇい!!」

「ゥラァッ!!」

 

 一方で降りそそぐ岩石の雨に対抗するは長年の修行にて辿り着いた技の最高峰。全てを一撃の名のもとに屠るその両の拳は、今回は威力よりも手数を重視し、何度も何度も上に向けて繰り出され、落ちて来る岩石のことごとくを打ち砕いて行く。結果として、あらゆるところに岩石が突き立っているのにウーラオスの周りだけは岩の粉がパラパラと散っていくだけにとどまっていく。パラパラと落ちて来る粉の中心にて、拳を振り切った姿でとどまるウーラオスはまさに歴戦の戦士としてみるものを引き付けていた。

 

「『ポルタ―ガイスト』!!」

 

 しかし今のインファイトで止めたのはあくまでもヨノワールの準備の1つに過ぎない。ヨノワールが新たに憶えたゴースト技のポルターガイストが周りの岩石全てを包み込み、ウーラオスめがけて縦横無尽に飛び回る。

 

「『つばめがえし』でいなせ!!」

 

 ゴーストのエネルギーを纏った岩はかくとうタイプであるインファイトではすり抜けてしまい弾くことが出来ない。かといってあんこくきょうだでは一発一発力を籠める必要があるため、この数のポルターガイストをさばくことが不可能だ。なので火力は心もとないとわかっていてもつばめがえしを行うしかない。

 

 しかし、足りない火力は技術で補う。

 

 真正面から飛んでくるポルターガイストの群れを、1つ目は屈んでかわし、2つ目は左手の甲を使って、向かい合ったポルターガイストを右から軽く叩いて自身の左後方へと逸らしていく。続く3つ目と4つ目を右手のアッパーと右足の回し蹴りで弾き、5つ目に対して体重をかけた左足でソバットを放ち、ポルターガイストを跳ね返す。跳ね返されたポルターガイストが他のポルターガイストに干渉することによって飛んでくるものをさらに何個か撃ち落とす。これでそこそこの数のポルターガイストが相殺されたものの、これは四方八方から襲い掛かって来るポルターガイストのほんの一部に過ぎない。まだまだ襲い掛かってくるポルターガイストに対して今一度拳を構えたウーラオスは、つばめがえしを巧みに使って次々と攻撃をいなしてく。その様はまるで攻撃の嵐の中で舞を踊っているようにもみえ、思わず見とれてしまう程綺麗だった。

 

 一方で、ポルターガイストをさばかれている側のヨノワールは当然この状況を黙ってみておくことなんてしない。

 

「ヨノワール!『じしん』!!」

「ノワッ!!」

 

 ポルターガイストを操作しながらもしっかりと右手を地面にたたきつけたヨノワールは、自身を中心に激しい地面エネルギーを放ち、大きな揺れとしてウーラオスを攻撃していく。

 

「ウーラオス、上じゃ!!」

「ラァッ!!」

 

 周りすべてをポルターガイストに囲まれ、地面からは地震が迫ってきているという、まさに八方塞がりな状況に立たされるウーラオス。しかしそんな状況でも全く動じていないウーラオスの主は、ウーラオスにすぐさま指示を飛ばし、その指示に答えたウーラオスは軽く飛び上がりながら前宙返り。そのまま迫って来るポルターガイストの1つに向けて、ひこうタイプのエネルギーを纏った足でかかと落としを行う。すると、ポルターガイストを殴った反動がウーラオスへと帰っていき、その勢いに身を任せた彼が空中へと飛び上がっていく。

 

「追撃!!『かわらわり』!!」

「そのまま宙を舞えぃ!!」

 

 空中へ飛んだことにより隙だらけになったと判断したヨノワールが再び両手を黒く光らせながら猛進。一気にウーラオスへと詰め寄り、左手を右から左へ、右手を上から下へと十字を切るように振り、追撃を行う。これに対してウーラオスが行った戦法は、なんと空中まで追いかけてきたポルターガイストを足場にして宙を舞うというもの。本来なら空中では身動きは取れないはずなのに、両手両足にひこうエネルギーを纏っている今なら、ポルターガイストを無理やり足場にすることが出来るという判断を下し、機動力を無理やり手に入れるその手腕には素直に見惚れてしまう。

 

 そこから始めるのはヨノワールとウーラオスによる空中戦。

 

 ポルターガイストを足場に飛び回るウーラオスと、変化によって手に入れた身体能力を全力で発揮し飛び回るヨノワールによる激しい打ち合い。本来の素早さなら間違いなく自分の方が上のはずなのに、両者の動きはすばやさに自信のある自分でさえ見失ってしまう程身のこなしが上手かった。

 

 ぶつかり合う技と技。そして笑い合うお互いのトレーナー。

 

 ボクの主とウーラオスのトレーナーの本当に楽しそうな笑顔は、見ているだけでこちらも嬉しくなってしまう程。と同時に、少しだけボクの心に影を落とす。

 

「レオ……」

 

 バトルとしては本当に最高峰のモノ。それをこの目で見られたことに物凄く感動は覚えた。しかし、それ以上にその場に自分が立っていないことにとても大きな悔しさを感じてしまっていた。

 

 ボクよりもはるか前から主のパートナーとしてずっとそばで支えていたヨノワール。彼と自分を比べたら、至らないところなんてたくさんあることは百も承知している。初めて彼と並んだときはその圧倒的な実力に気圧されたし、当時泣き虫だった自分はすぐさま泣きそうになってしまっていた。けど、しゃべらないながらも確かな優しさをもってボクと接してくれた彼に抱く感情が、恐怖から憧れに変わるのにそんなに時間はかからなかった。

 

 ボクよりもずっとすごい、ボクのあこがれのポケモン。彼には実力では勝てないとは思っている。けど、それでも、そんな彼に対しても唯一負けたくないものがある。

 

 それは主への想い。

 

 主と初めて出会ったまどろみの森での出来事は今でもしっかり覚えている。初心者用のポケモンとしてとある2人のトレーナーの前に呼びだされたボクたち3人は、どっちに選ばれるのかドキドキしながらその時を待っていた。まだまだ外の世界を知らないボクにとってこれは新しい旅の始まりだし、この先どんな人と出会うのか、そしてどんなポケモンと手を合わせるのか、そんなことを考えれば考えるほど、臆病ながらもワクワクしていた自分が確かにいた。

 

 けど結果は、そのどちらからも選ばれなかった。

 

 サルノリは少年に選ばれ、ヒバニーは少女に選ばれた。元の持ち主に、『きみは俺と来よう!』と呼び掛けてもらえたものの、それでもやっぱり新しい気持ちで外に出る気でいた自分としてはかなりショックな出来事だった。

 

 別にボクを選ばなかった2人を恨んでるつもりはないし、当時のボクはとにかく弱気で、サルノリにもヒバニーにも自分は劣っていると思っていたから、選ばれなかったことも仕方ないという気持ちはあった。だけど、そんなボクでも、確かに悔しいという気持ちに襲われていた。そんな気持ちを抱いていたからこそ起こしてしまった、近くにいたウールーを巻き込んだ失踪事件。後から聞いた話だと、入ってはいけないと言われているまどろみの森に迷い込んでしまって、アーマーガアに襲われたあの瞬間。

 

 ああ、ここで倒れちゃうんだと、全てをあきらめようとしたときにボクの前に現れた運命の出会い。ボクとウールーを守るように立ちふさがった1人の少年。

 

 最初こそ、急に現れたその人に大きな恐怖を感じたけど、その人が放つ優しく柔らかい雰囲気は、ボクの心を一瞬でほぐしていった。そこから彼に介抱され、森から外に出るために一緒に歩いたあの時間は今までで一番安心のできる時間で……

 

(この人と、一緒に旅をしてみたい)

 

 先日まで選ばれることを考えていた受動態な自分が、この人にだけは自分からついて行きたいと能動的に思うようになったあの瞬間。元の持ち主に返される瞬間が、あんなにも嫌だと思ってしまったのは後にも先にもあれが最後だったと思う。そんなボクの思いが通じて、あの人ととともに旅ができるようになった時は本当にうれしかったし、そのあとに初めてサルノリと戦った時に、ボクの力を全部信じて、ボクを勝ちに導いてくれた主には本当に感動したし感謝した。

 

 そこから始まった主との旅は本当に楽しくて……でもそんな旅の途中に主の悩みを知ったボクは、どうにかして主の役に立ちたいと思った。

 

 ボクを外の世界へ連れてきてくれた主のために、ちょっとでもその恩返しをするために、それこそマホイップとの戦いのときは無理を通してでも戦場に出させてもらって活躍して……喜んでくれる主の顔がとてもうれしかった。

 

 けど、それからのジムでは大きな活躍というのはできなかったと思っている。

 

 相手が強くなればなるほど、頼る相手は次第にボクからヨノワールへと移っていった。そのたびに、『昔からの仲間だから仕方ない』という気持ちと、『それでも、その信頼の少しでも自分に向けてほしい』という気持ちがぶつかり合い、とてももやもやした気分を抱えてしまっていた。勿論、優しい主のことだから、ボクたちに対しての信頼に順位をつけているなんてことはないのだろう。だけど、他でもないボク自身がそう思ってしまっていた。そしてその気持ちは今も、こうしてヨノワ―ルとウーラオスの激しい戦いを見ている間にどんどん膨らんでいっていた。

 

「レオ……」

 

 どうすればあの位置に行けるのか。どうすればまた頼ってくれるのか。そして、どうすればヨノワールのように強くなれるのか。

 

(強くなりたい)

 

 ヨノワールのように、彼の隣に誇りをもって立てるような仲間になりたい。

 

 きっとボクの主は、今のボクのまま成長が止まったとしても、あの優しい笑顔を浮かべたままボクを受け止めてくれるだろう。けど、それだと、ボク自身が納得できない。

 

「バスバース」

「グラ」

「レオ」

 

 そんなことを考えていると、後ろからとてもよく聞きなれた声が聞こえてくる。振り向けばそこにいたのは、あの日ボクと違ってちゃんと選ばれたことによって、一足先に旅立ったボクの幼なじみとでも言うべき人たち。どうやら激しい戦闘の音にひきつけられ、いつの間にかここに集まっていたらしい。

 

 あの頃と較べ、みんな最後まで進化したからそれ相応に成長してしまっている。しかしこうして3人で顔を合わせてみるとなんだか懐かしい気持ちが込み上げてくる。たとえ姿形は変わってしまっているとはいえ、3人でじゃれていた思い出が消える訳では無い。サルノリに棒でつつかれた時や、ヒバニーの走った跡に残った火の粉の音で驚いた時に思わず泣いてしまったこともあったけど、なんだかんだあの頃は本当に楽しかった。その時のみんなはただ漠然と、素敵なトレーナーと出会って、素敵な旅が出来ればいいなぁということしか考えていなかった。けど、今はそれぞれが自分が支えてあげたい主がそばにいる。その主のためにここにいる3人全員がもっと強くなることを望んでいる。そんなボクたちの前で繰り広げられる、遥か格上同士の戦い。その様子にボクたちは、ただ見とれるしかできなかった。

 

 これからボクたちは、主たちの人生の大きな分岐点の戦いに参加することとなる。勿論これだけでこの先のすべてが決まるわけではないけど、少なくとも大きな分岐点の1つにはなるはずだ。そんな大事な時に、大好きな主のために活躍できるのは何よりも名誉なことである。けど、今この場で繰り広げられているバトルを前にした時、このままの自分でこれほどの活躍が出来るのかとどうしても悩んでしまう。特に、ゴリランダーとエースバーンに関してはそれぞれの主のエースでもある。……ここに自分の名前が上がらないことにもっと悔しさが湧き上がるけど、とりあえず今は置いておいて……とにかく、この先の大会で活躍するのなら、このヨノワールは必ず立ちふさがる壁となる。つまり、どうにかしてこの壁を越えないと勝つことはできない。けど、今も空中で激しく拳をぶつけ合い、あまりの速さにその動きを見失ってしまう程のヨノワールとウーラオスのバトルを見ていると、自分があのレベルに追いつけるのかがわからない……否、今のままでは絶対に追いつけない。闘う前からこんな気持ちになるのはダメだけど、それ以前の話になってしまっている。

 

 どうすればいいのかわからない。そんなちょっとした後ろ暗い気持ちがボクたち3人を包む。

 

「あら、3人そろって……どうしたのかしら?」

 

 そんな暗い空気に刺さる新しい声。振り返るとそこにはこの道場でご飯を作ってくれる人がいた。

 

「随分と暗い空気ねぇ……せっかくあの人があんなにも楽しそうな表情を浮かべて、あんなにも面白いバトルをしているのに……もっと見とれるものじゃないのかしら?」

 

 若干のとげを含んだような発言は、しかしそんな挑発を受けても燃え上れないほど、ボクたちのテンションというのは高くならなかった。

 

「ま、この先どうにかして勝たないといけない当事者としてあのバトルを見たら、あまり気持ちのいいものではないのは分かるけどね」

 

 そうつぶやきながらその女性はボクたちの横に並ぶ。

 

「けど、明らかに勝てない敵が相手だったとしても、それであなたたちの主はあきらめるのかしら?」

「バス!?」

「グラ……」

「……」

 

 女性の言葉に衝撃を受けたような顔を浮かべるエースバーンと、考え込むような顔をするゴリランダー。かく言うボクも、きっと今は思いつめたような顔を浮かべていることだろう。

 

 この女性が言う通りだ。ボクたちの主は、たとえこのような敵が相手にいたとしても絶対にあきらめない。なのにボクたちだけが先にあきらめることなんてどうして許されようか。……でも、それでも気持ちだけであの壁を越えられるという楽観もできない思いが強すぎて……。

 

 ここまで成長したからこそわかる実力差。どうやったってその差を埋められるパーツが見つからない。

 

「……そんな悩めるあなたたちに、ちょっとだけ手を貸してあげることはできるわよ」

 

 そのパーツを埋めるための試行錯誤をしているときにかけられる女性からの声。

 

「あなたたちが、本気で主のために頑張りたいというのなら……どう?」

 

 女性の試すようなその言葉。これが言葉だけで何の意味もない可能性もあるかもだけど……この女性から向けられた圧力がその可能性を消してくる。その圧力に向かい合うボクたちは、ほんの少しの迷う時間すらなく首を縦に振る。

 

 2人は主のエースとして少しでもその座にふさわしくあるため。

 

 ボクはあこがれのパートナーに少しでも追いつくため。

 

「ふふふ……ほんと、あの子たちも罪なトレーナーね。ポケモンにこんなに思われているなんて……ついてきなさい。あなたたちにとっておきの料理をふるまってあげるわ」

 

 嬉しそうに呟いた女性は、そのまま道場のキッチンの方へと足を進めていく。

 

「ヨノワール!!『かわらわり』!!」

「ウーラオス!!『あんこくきょうだ』!!」

 

 その女性を追いかけるボクたちは、後ろから聞こえる戦闘音には振り向きもしなかった。

 

 だって、あの場所に立つためにも、少しだって時間は無駄にしたくないから。

 

「レオ……!!」

 

 むしろ次は、自分があのバトルをする番なのだ。そう決心したボクは、静かに闘志を燃え上がらせながら、道場へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヨノワール

というわけでようやく最終形態。フリアさんとおそろいの瞳と、ペアルックのようなマフラーを巻き、おなかの口からはメガリザXのような水色の焔が漏れ出る姿。
どこかで見かけたような気がする、記憶の中の「もしヨノワールがメガシンカをしたなら」というものを少し参考にしてみた姿です。今はもう検索しても出てこないかもですね。ゲッコウガもサトシさんを模したと思われる黒い前髪のようなものが出てきていたので、ヨノワールにもフリアさんの姿に少し似せてみています。目元を黒いマフラーで少し隠すヨノワールの姿に、1人で妄想して勝手に悶えている変な人の妄想の産物ですが……どうでしょうか。

インテレオン

フリアさんたちがバトルしている一方で行われるお話。インテレオンたちにも、この間指をくわえて待っているわけではありません。どうやら道場の料理担当であるあの女性に何かをしてもらうようですが……いったい何なんでしょうかね?




新ポケたちのパワーが高くてとてもびっくりしています。歴代で一番新ポケが多い環境になっていますよね。個人的にはとても新鮮なバトルが出来るので嬉しかったします。それでいて、エルレイドのように新しい特性を貰って強くなった既存ポケモンたちもいるので嬉しく思います。

エルレイド……新技ももらって本当に頼もしい……よかった……





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