【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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前回のあとがきに書き忘れてしまいました。

きれあじについて。本来なら1.5の倍率がかかりますが、現状のエルレイドはまだこの力を使いこなせていないので、実機風に言えば倍率は1.1か1.2くらいです。まだまだ成長の余地ありですね。


157話

 白く輝くエルレイドの刃が、ダイオウドウとすれ違った瞬間に叩き込まれる。

 

 今までのかわらわりやインファイトの時とは違う、一瞬で潜り込み、相手を切り裂きながら駆け抜ける、刀の達人が行う居合切りを彷彿とさせるようなその刹那の一撃は、ダイオウドウの体に確かな傷をつけ、自身はしっかりと残心。今の一撃に満足することなく、再び向き合っては両の刃を構え、いつもよりも数段研ぎ澄まされているその刃をさらに鋭く研ぎ澄ませる。

 

 さっきまでと比べて全然圧力が違う。そのことに気づいたダイオウドウもピオニーさんも息を飲む。勿論ボクも、今までのエルレイドと違うことに驚いているけど、ボクが一番気になったのはそこでは無い。

 

(今の技……『せいなるつるぎ』……?確かに『せいなるつるぎ』なら今のダイオウドウには『インファイト』よりも大きなダメージになる技だけど……)

 

 ボクが気になったのはエルレイドの使った技だ。せいなるつるぎは相手の能力を無視して攻撃することができる。今回で言えば、てっぺきで能力をあげたダイオウドウに対して、てっぺきの分を無視して殴ることが出来るという訳だ。てっぺきによる防御アップの影響を受けてしまうインファイトと比べると、今この状況においては火力が上になる。この説明を聞けば、今のダイオウドウにせいなるつるぎで攻撃することは最適解だということがわかるし、それを指示せずとも理解し、自分で繰り出したエルレイドは傍から見れば称賛ものの活躍だ。しかし、これができるならそもそもボクだってさすがに気づいて指示を出すし、聡いエルレイドならここまで追い詰められる前に自発的に使ってくれるはずだ。ではなぜ今使ったのか。その答えは簡単で……。

 

(エルレイドって、そもそも『せいなるつるぎ』を覚えなかったような……)

 

 エルレイドのことは、ボクのエルレイドがキルリアだった頃から進化の可能性があったので一応調べてはいた。けど、基本的にせいなるつるぎを覚える個体がいたという話を聞いたことがなかった。もしかしたら、別の地方ならそういう子がいる可能性もあるけど……

 

(って、今はそんなことはどうでもいいか。とにかく、今のエルレイドは『せいなるつるぎ』が使えることを頭に入れて戦う!!)

 

 気になることは沢山あるけど今は対戦中。思考を回すのなら謎に対してではなく、目の前のダイオウドウに向けるべきだ。幸いにもせいなるつるぎがきれいに刺さったおかげでダイオウドウの足元はおぼついていない。畳みかけるならここしかない。

 

「エルレイド!!『せいなるつるぎ』で追撃!!」

「エルッ!!」

「おいおい、そんな技使えるなんて聞いていねぇぞ!?『じゃれつく』で何とか跳ね返せ!!」

「パオッ!!」

 

 どうやらせいなるつるぎによる反撃はピオニーさんにとっても予想外だったらしく、ここに来て初めての驚き顔を見せて来る。しかし、そんな予想外の状況でも判断をたがえることをしないのはさすがの手腕。自慢の鼻を振り回しながら突撃を行い、エルレイドから繰り出される刃を何とか弾いて行こうと試みる。フェアリータイプの力を纏ったその攻撃は、かくとうタイプの技であるせいなるつるぎの威力をそぐことが出来ると読んでのこの行動は確かにかなり効果的ではある。エルレイドがかくとうタイプであることも考えればなおさらだ。

 

そんなセオリー通りの行動は豪快なことが好きそうなピオニーさんが好むとは思えないほど普通過ぎて。

 

「エルレイド!!蹴り上げて!!」

「エルッ!!」

「パオッ!?」

 

 故に読みやすく、こちらも動きやすかった。

 

 ダイオウドウが散々地面に落ちてきたおかげですっかり固められてしまった地面の雪の塊を蹴り上げ、ダイオウドウの顔面に飛ばしていく。

 

 自身の体に深い傷をつけた鋭く大きな刃に視線を奪われていたダイオウドウにとって、急に飛んでくる雪の塊は完全に不意を打たれる形となって、ダイオウドウの視界を奪っていく。当然いきなり視界を奪われてしまえばダイオウドウの動きはぎこちなくなる。それでも動きを止めてはだめだという一心から必死に鼻を振り回すダイオウドウにはさすがと言いたい。けど、やたらめったら振り回される攻撃は予想はしづらいかもしれないけど腰が入っていないから火力が低い。それはエルレイドでもはじけてしまう程までには落ちていて。

 

「エルレイド!!今!!」

「エルッ!!」

 

 その隙に地面の雪を巻き上げる勢いで踏み込んだエルレイドが両腕で鼻を弾きながら、さっき切りつけた時以上の速さでダイオウドウの横をすり抜け、同時に両腕の刃にて斬撃を叩き込む。てっぺきでしっかり固くなっていたはずのダイオウドウの身体を、トウフにナイフを入れるかのようななだらかで、それでいて確かな速度をもって刻んでいく。

 

 攻撃を終えたエルレイドは、そのまま勢いを殺さずボクの目の前で膝を着いた姿勢を取り、まるで居合を終えたあとの侍が刀を納刀するかのようにゆっくりと伸ばした刃を元の長さに戻していく。そして……

 

「……エル」

「パオッ!?」

 

 刃が元の大きさに戻り、腕に集まっていた光が霧散すると同時に、ダイオウドウの身体の側面に大きくクロスの斬撃痕が刻まれる。言うまでもなく、せいなるつるぎが叩き込まれた跡だ。

 

「ダイオウドウ!?」

「パオ……ゥ……」

 

 自身の防御を無視して刻まれる2度目と3度目となるその斬撃に、何とか耐えようと1度踏ん張りはしたものの、きれあじの上がったエルレイドの攻撃を受けすぎてしまったダイオウドウは、こらえきることが出来ずにその巨体をゆっくりと雪の中に沈めていく。

 

「……かぁ、あんまし自分で強いとか言うもんじゃねぇなぁ……オレの負けだぜ。完敗だ!」

「そんなことないですよ。とても強かったです。ありがとうございました!……エルレイドも、お疲れ様」

「エル……」

 

 雪に沈んだダイオウドウにリターンレーザーを当ててボールに戻しながら、少し恥ずかしそうというか、ちょっと歯切れが悪そうな表情を浮かべるピオニーさん。あれだけ啖呵をきったのに勝ちきれなかったことに思うところがあるようで……けど、対戦していたボクからすれば、元ジムリーダーという肩書きも納得の強さだった。さすがにマスタードさんほどとまでは行かないけど、近しいくらいの強さはあったのではないかと思うほど。そんな強敵に勝てたのも、エルレイドが頑張ってくれたおかげだ。

 

「本当にありがとうね」

「エル……!!」

 

 エルレイドを労うようにそっと頭を撫でてあげると、とても幸せそうな声を上げると同時に、膝まづいていた姿勢から体を起こし、ボクの方に飛びついてくる。

 

「ちょ、エルレイド!?もう、仕方ないなぁ……」

「エルエル!!」

 

 ボクを抱きしめて、本当に嬉しそうな声をあげるエルレイドをそっとなだめで、甘やかしてあげながら、ボクたちはひとまずの勝利の余韻に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーハッハッハ!!まさか若造にコテンパンにされるとは思わなかったぜ!!」

 

 あれからエルレイドが落ち着くまでちょっと待ち、その後シロナさんからのアドバイスを頂いたボクは、エルレイドを戻して改めてピオニーさんと対面していた。その時にエルレイドが新しく覚えた技と、エルレイドが新たに身につけた特性についてシロナさんから説明を受けたんだけど……うん、とても凄かったし、とても頼りになる力だった。けど、まだまだ使い方が甘いところがあるので、そこはもっと特訓しなさいとの事。勿論、ボクもエルレイドもこんなところで満足するような性格では無いので、しっかりと気を引き締めて先のことを考えている。と、とりあえずエルレイドのことは一旦ここで締めておいて、今気になるのはこうしてボクたちと対面しているピオニーさんについてだ。

 

「ボクも、まさか元ジムリーダーだとは思わず……いい経験をさせて頂きました」

 

 きっかけはちょっとアレだけど、戦えたこと自体はボクに取ってはプラスの経験でしかない。実際に、このバトルのおかげでエルレイドがさらに強くなるためのきっかけに出会えたわけだしね。そのことに感謝こそすれ、邪険に扱うなんてとてもじゃないけどできない。そんなことを考えているとアドバイスのためにボクの近くにいたシロナさん以外のみんなもこちらに近づいてくる。

 

「フリアお疲れ様!!」

「ありがとユウリ!!」

 

 真っ先に近づいてきたのはユウリで、ボクが勝ったことに対して物凄く喜んでくれているのか、笑顔を浮かべながら駆け寄ってきてくれた。そのことに対してお礼を言いながら、後ろから続々と続いてきたみんなにも視線を向けていく。

 

「最初はやばいかと思ったけど、それでもやっぱり勝ち切っちゃうあたりさすがだぞ!!」

「ほんと、よく逆転したとね……エルレイドも凄かったと」

「相変わらずお前の底がわかんないな……オレも、まだまだ強くなんないと……」

「ガラル地方の元とは言えチャンピオンだものねぇ……フルバトルではないとはいえ、勝っちゃうのはさすがよね……」

「みんなも、押し付けてきたことはともかくとしてありが……って、チャンピオンだったんですか!?」

 

 各々が各々の感想を述べてきたのでそれに対して返答していると、最後のヒカリからとんでもないことを言われて思わずピオニーさんの方に振り返ってしまう。他の人の反応を見る限り、どうも知らなかったのはボクだけみたいで、ちょっとそのあたりは物申したいような気もするけど、今は聞いたことの確認をすることが先だ。

 

「あ~……そうだなぁ……」

 

 ピオニーさんの過去があまりにも気になったボクはしばらくピオニーさんの方を見るけど、肝心の本人はどうも歯切れが悪そうな表情を浮かべながら後頭部に手を伸ばす。表情もどこか後ろめたさを感じさせるものを浮かべているあたり、どうも彼にとってはあまりいい思い出ではないのかも知れない。その結論に至ったボクは、すぐに視線を下げて謝罪の言葉を述べる。

 

「す、すいませんでした!!……話しづらい事、聞いてしまいましたか?」

「いや、単純にオレが逃げただけっつーかなんつーか……まぁ、気にせんでくれや」

「えっと……?」

「それよりも!!愛しの我が娘のシャクちゃんがいねぇじゃねえか!?」

「そう言えば……」

 

 どうもこの話題はピオニーさんにとっては地雷だったようで、あまり触れてほしくないみたいなのでピオニーさんのごまかすような叫び声にこちらも乗っておくことにする。あのままだと変な空気になっていただろうし、ピオニーさんのことは気にはなるけど、急にいなくなったピオニーさんの娘さんの動向も確かに気になる。ピオニーさんにとっては大切な娘さんだろうし、余計に心配になっていることだろう。

 

「娘さんならあちらの方に行かれましたよ……?」

 

 娘さんを探すために彼方此方に視線を飛ばすピオニーさんに対しておずおずと声をかけながらとある方向を指差すのはユウリ。その場所は、今ボクたちがいる場所から東の方向へ少し言ったところにある、縦に長くぽっかりと口を開けて、入ってくる人を歓迎しているように見えるひとつの洞窟の入り口だった。

 

「おお、あの洞窟か!そういやシャクちゃん、『ダイマックス巣穴』っつー所に行って『ダイマックスアドベンチャー』をしたいっつってたな!!ってーことはあれか?先に行ったのはパパに追っかけてほしいからってことか?ったく愛情表現が相変わらずへたっぴちゃんだなぁ!ま、そんなところもド・愛らしいんだけどな!!そうと決まれば善は急げ!!っちゅー訳でオレはもう行くぜ!!じゃあな!楽しいバトルだったぜ!ポケモン強い坊主と、その愉快な仲間たちさんよ!!」

 

「あ、ちょっと!ピオニーさん!!」

「余程娘さんのことを大事になさっているのでしょう」

「でもあれは……娘さんがかわいそう……」

「愛が深いのも考え物ね……」

 

 娘さんの行き先がわかった瞬間に、もう誰にも首をつっこませないと言わんばかりに言葉を並べたかと思えば、ボクたちに別れを告げて洞窟に走りだしてしまったピオニーさん。よっぽど娘さんのところに行きたかったのか、もうすでにピオニーさんの姿は見えず、洞窟の闇の中に吸い込まれてしまっていた。そのあまりにも極端な姿にボクたちはそろって開いた口がふさがらず、何とか反応できたコクランさん、カトレアさん、シロナさんも苦笑いを浮かべながら戸惑っていた。

 

 嵐のような人だったピオニーさんがいなくなったことによって静かな空気が漂い始め、これからどうしようかという無言の会議がボクたちの間で始まる。が、ほどなくしてその空気も霧散する。

 

「くちゅん……ご、ごめんなさい……」

「うぅ……そういえば忘れていたけど、ここは雪国だったぞ……」

「フリアの試合を見ている間ずっと止まっていたから身体が冷えてるとね……」

「とりあえず歩いて、少しでも身体を温めましょ?」

「だな。幸いにも、ピオニーさんを追いかけるにしても、村に行くにしても、途中までは道は一緒みたいだしな」

 

 ユウリがくしゃみを1つこぼすことによって、改めて自分たちの今の状況を思い出す。

 

 寒さを訴えるホップとマリィに対して、とりあえず進むことをみんなに提案するジュンとヒカリ。その提案に特に反対することなく全員で頷くことで賛成の意を伝え、ボクたちの足はとりあえず洞窟の入り口の方へと向いて行く。もし洞窟に行くのならこのまま直進すればいいし、村を優先したいのなら、右手に見え始める坂道を下ればいいだけだからね。

 

 サクッ、サクッ。

 

 雪国ならではの子気味のいい足音を奏でながら歩くボクたちは、その間に雑談をし、少しでも寒さを紛らわせるようにしていた。勿論ボクもそのうちの1人で、この集団の中でも先頭を歩いているシロナさんの隣に並びながら話を振る。

 

「シロナさん、昨日と言い今日と言い……エルレイドが本当にお世話になりました」

「気にしなくてもいいわよ。私とあなたの仲じゃない」

「それでもです。それに、シロナさんにはエルレイドだけではなく、いろいろお世話になっているので……」

 

 シンオウ地方での旅の道中でも、道を塞ぐコダックのための頭痛薬を作ってもらったり、このガラル地方でジムチャレンジをするための推薦状を出してくれたりと、振り返れば感謝の言葉だけではとても返すことが出来ないほどたくさんのことを送ってくれた恩人とでもいうべき人だ。この人がいなかったら、ボクは今も家のベッドで腐っているのではと思うと正直シャレにならない。

 

「それなら私もよ。今も私の個人的な仕事に巻き込んでしまっているもの。テンガン山の件もあるしね?だから、あなたたちはあなたたちの思うまま旅を楽しんでくれればいいのよ」

「……はい!」

 

 こういう余裕のある所は素直に尊敬できる人だ。お家の方は……ちょっと残念なことになっているけど、さっきもっと癖の強い大人の人を見てしまったせいか、シロナさんが凄く聖人に見えてしまう。

 

(ボクが大人になったとしても、ピオニーさんのようにはならないように、気を付けよう……)

 

 別に悪い人だとは思わないんだけどね……?とりあえず、ピオニーさん。ごめんなさい……。

 

 そんな謝罪文を頭の中に浮かべながら歩いていると、程なくして洞窟へ行くか、村の方へ行くかの分かれ道にたどり着くこととなる。

 

「さて、どっちから行きましょうか?」

 

 着くと同時にシロナさんが振り返り、さっき置いておいた問題を再び提出する。しかし、今度はさっきまでの悩み時間はなく、ここまで歩いてくる途中にしっかりと決めておいた自分の答えを順番に口に出していく。

 

「やっぱり村に行くのを優先したいです」

「オレも賛成だぞ」

「さすがに荷物とか置いて色々安心したいからな……」

「洞窟も村から遠くない場所にあるし、洞窟に行きたいとしても、腰を落ち着けてからでも構わないものね」

「身体も温めたかと」

 

 ユウリ、ホップから始まり、マリィで締められる意見は全員村優先という内容。その意見に頷きながら、次はカトレアさんたちの方へ耳を向ける。……とは言っても、正直答えは予想できるけどね。

 

「断然村派……あたくしはそもそも洞窟に興味無いもの……」

「わたくしはお嬢様について行くだけなので……」

「ボクもどちらでも。みんなに合わせます」

 

 予想通りのカトレアさんの回答と、そのカトレアさんの意見に乗っかるコクランさん。そして最後に言ってなかったボクの意見を添えて、シロナさん以外全員の考えを提出する。

 

「私も村に行くことを優先するわ。……って、当たり前よね?」

 

 最後の意見を抱えているシロナさんに全員の視線が向いたところで、シロナさんも自分の意見を提出。結果は満場一致で村優先。やっぱりこの寒さからちょっとでも早く逃げたいという気持ちをみんな抱えているみたいで、その雰囲気を何となく感じ取っているシロナさんも、分かりきっていたけど『さっきは色々あって考えが纏まっていなかったから一応ね?』と微笑みながら言葉をこぼす。その様子にボクたちもつられてしまい、表情が緩む。

 

 相変わらず寒いけど、今のやり取りで少しだけ暖かくなった気がした。

 

「さて、それじゃあさっきの人の言葉を借りる訳では無いけど、善は急げ。村の方に向かいま━━」

 

『あの!困ります!!これ以上勝手に動かれるのでしたら━━』

『この中にシャクちゃんがいるってのに止めるんじゃねぇ!!オレもそのナンタラアドベンチャーってのをするって言って━━』

 

「……」

 

 柔らかくなった雰囲気が広がり、いざ村の方へ行こうと足を坂道へ向け始めたところで、洞窟の方から微かだけど確かに揉めるような声が聞こえてくる。その声がてんで知らない人のものなら特に気にすることなく村へ行く判断を下すことが出来ただろう。けど、どう考えてもこの声の主は、先程までボクと激闘を繰り広げていた元チャンピオン……は本人が嫌がるからやめといて、元ジムリーダーであるピオニーさんのものだ。

 

「シロナさん……」

「はぁ……」

 

 頭に手を当てながら、やれやれと言った雰囲気でため息をつくシロナさんは、心の底から無関係を貫いて通り過ぎたいという空気を醸し出してはいた。しかし、ユウリに指差された後のピオニーさんの、人の話を聞くのが下手くそそうなあの姿を知っているため、その情報を持っている自分がこのまま困っている人を放っておいてい良いのかという気持ちと、かすかに聞こえる困っている女性らしい声に、同情の気持ちが沸いてしまい、足を鈍らせてしまっていた。優しい性格のシロナさんのことだから、できることなら助けてあげたいのだろう。……女性の方を。

 

 一方で、早く先に行きたそうなカトレアさんは、もう足の先が村の方へと向きかけていた。この寒いのが耐えられないと言った空気も出しており、こちらもこちらで急ぎたそうにしている。他には、マリィ、ホップがこちら側の思考だった。寒さに強くないユウリは珍しくこちら側ではなく、シロナさんの方に回っていた。

 

 ちなみにジュンは何も考えておらず、ただ先に行きたいだけの様子で、コクランさんは相変わらずカトレアさん優先のようだ。

 

「仕方ないわね。カトレア、コクラン。村に先に行くメンバーのまとめ役お願いできるかしら?民宿は私の名前で借りているから、私の名前を出せば大丈夫のはずよ」

「任せて……ちゃんと連れていくわ……」

「わたくしたちにお任せを」

 

 シロナさんの言葉に小さく頷くカトレアさんと、深々と頭を下げるコクランさん。2人から了承を得たシロナさんは、そのことに首を小さく縦に振りながら次のメンバーに視線を送る。

 

「助かるわ。ホップ、マリィ、ジュン。あなたたちは先に村に行って身体を休めておきなさい」

「だけど……」

「大丈夫、こっちは私たちで何とかするわ。気にせず村を目指しなさい」

「おう!!」

 

 助けたい気持ちはあるけど、寒さのせいでつらい2人は少し申し訳なさそうな顔で、先に行くことしか考えていない1人は元気よく返事をして村の方へ歩いて行った。

 

 これでこの場には、ボク、シロナさん、ヒカリ、ユウリだけが残ることとなる。

 

「ユウリ、寒いのは大丈夫?」

「身体も震えてるわよ?」

「結構寒い……けど、なんか放っておけないなって」

 

 そんな残っているメンバーで、ボクとヒカリはくしゃみをしていたユウリに確認を取るけど、ユウリは確かな意思をもって答えてくれる。これはユウリの意見を尊重してあげた方がいいだろう。シロナさんもユウリの意見を汲んで頷く。ちなみに、他のメンバーはシンオウ地方で寒い所を経験しているからまだまだ平気だ。

 

「さて、ユウリの意志もよくわかったところで、私たちは……」

 

 それぞれの状態を確認したボクたちは、未だにもめる声が聞こえる洞窟の方へと目を向ける。

 

「めんどくさいお父様を止めるとしましょうか」

「「「はい」」」

 

 ちょっとあきれた声を零しながら前を歩くシロナさんについて行くボクたち。

 

 面倒なことに巻き込まれている自覚を持ちながらもなぜか、この洞窟の奥から感じるものにちょっと興味を惹かれながら、洞窟の中へと吸い込まれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エルレイド

嬉しさだいばくはつ。ここまで喜ぶこの子は初めてかもしれませんね。

ピオニー

人の話を聞くのが苦手なお父さん。本当に好き嫌い別れそうな方ですよね。ボクの友人は嫌い派でした。どうでもいいですけど、口癖の『ド』……言いにくくないですかね?




ポケモンSVの要素もちょくちょく入れていきたいと言いましたが、ストーリーに直接かかわるようなものはいれるつもりは一応ありませんが……どんな小さなことでも、初見でいたいという方は、今更になってしまいますが、ブラウザバックの方がいいかもしれませんね。




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