「よっととと……こんな感じでいいのかしら?」
「そそ。そのまま思いっきり投げてしまえば、晴れて捕獲完了だよ」
「オッケー。じゃあ……せ〜のっ!!」
ニドキングとのレイドバトルを終えたボクたちは、ヒカリにレイドバトルが終わった後の、ダイマックスポケモンの捕まえ方をレクチャーしていた。
今回倒したニドキングは確かにガラル地方で考えたら珍しいかもしれないけど、シンオウ地方は勿論、他の地方も冒険しているボクたちにとっては物凄く珍しいというわけでもなく、またボクやユウリはガラルトーナメントが控えており、ここで手持ちを増やしてもトーナメントまでに調整が間に合わなかったり、そもそもニドキング自体がボクのシンオウ地方の手持ちと同じ理由で大会に出場させてあげることが出来ないため、今現在捕まえてあげる理由というのがとくには存在しなかったりする。なのでいつもならここはスルーして、元の大きさに戻ったニドキングにきずぐすりを使ってあげた後にリリースしてあげるというのがいつもの流れなんだ。けど、今ボクたちはダイマックスアドベンチャーを行っている最中。このダイマックスアドベンチャーで捕まえたポケモンは研究員さんに渡されて、この洞窟内に蔓延している特別なガラル粒子の研究としての大事なサンプルとなる。……いや、サンプルって言い方をしたら悪印象を与えてしまうかもしれないけど……勿論そんな悪い扱いはせず、一通り研究が終わったら洞窟内にリリースしているらしいからそこは安心して欲しい。とにかく、このガラル粒子の研究のためにも、ここにいるポケモンたちは基本的に捕まえる必要があるため、手持ちに入れるつもりがなくてもモンスターボールを投げなくてはならない。そこで、どうせなら今日初めてダイマックスを行ったヒカリに最後までやってもらおうということで、みんなで手取り足取り教えていたというわけだ。
ヒカリが気合を入れた声を上げ投げられた巨大なモンスターボールは、空中で蓋を開けたと同時にニドキングを丸呑みする勢いで飲み込んでいく。ニドキングを飲み込み、蓋をがっしりと閉じたモンスターボールは、そのまま大きな音を立てながら地面に落下。地面についた後、3回その体を揺らしたモンスターボールはダイマックスの光を散らしながら元の大きさに戻っていき、カチッという音とともに完全に閉じ切る。ニドキングを無事捕獲した証だ。
「ふぅ、これで捕獲完了だよ。お疲れ様」
「お疲れ様ヒカリ!初めてなのにナイスダイマックスだったよ!」
「ありがと2人とも。みんなの指示が的確だったからよ。シロナさんもありがとうございます!」
「だとしても、初めてにしてはいい動きだったわよ。この呑み込みの速さはさすがね」
捕獲されたニドキングのボールを回収しながら改めて褒め合うボクたち。想像以上に綺麗に事が運んだし、何よりも特に大きなダメージを受けることなく勝つことが出来たというのもボクたちの雰囲気がいい理由の1つだろう。シロナさんのドレディアによる合間合間のかふんだんごの回復がとても刺さっている印象だ。
「さて、この後は本来なら今捕まえたニドキングと、私たちのうちだれかのポケモンを交換して次のダイマックスバトルに挑むことになるのだけど……」
ニドキングのボールを持ちながらボクたちを順番に見まわしていくシロナさん。だけど、ボクたちはだれもそのボールを受け取ろうとしない。さっきも言ったけど、シロナさんの回復や、みんなの連携が的確過ぎて全然消耗していないから、正直ここで交換する必要性が全くないためだ。まぁ、最初からこうなることを望んでバトルを展開していたから、想像通りの結果ではあるんだけどね。それはシロナさんも同じなので、特に驚く様子もなくそのボールを懐にしまっていく。
「決まりね。まぁ、万が一何かあったら途中で入れ替えることも視野に入れておきましょう。何も今ここで入れ替える必要はないからね」
シロナさんの言葉に頷くことで返事を返したボクたちは、先に進むためにニドキングが立っていた場所からさらに奥の方向へと視線を向ける。その先にはまた洞窟があり、ボクたちを誘うかのように大きな口を開けて待っていた。
「では次に行きましょうか。この調子で何事もなく進めたらいいのだけど……」
「さすがにどこかでつまりそうですよね」
「技構成を自分で選べないのがちょっと不便なところよね」
「それが出来るのであれば、そもそもアトラクションとして展開されなさそうだけどね」
ひとまず一戦を終えての感想を、シロナさん、ボク、ヒカリ、ユウリと順番に述べていく。
このダイマックスアドベンチャーを1回闘ってみて思ったことは、『そのポケモンがどんなことが出来るかが重要』という事だ。今でこそボクたちが力を借りているポケモンたちは全員バランスよくいい技をそろえているけど、捕まえたその場でそのポケモンをすぐに起用するとなると、この先偏った技構成をしている子も出てくることが予想できる。勿論その子を弱いというつもりはないんだけど、活躍が限定的な子は、この先どのポケモンと戦うことになるのかが予想できないこのアトラクションにおいては、どうしても動きずらさを感じてしまう要因の1つとなってしまう。例えば、今手に入れたニドキングのようにたくさんの技を覚えている子はとても戦いやすい子と言えるけど、中には覚えている技4つのうちのほとんどが変化技で埋められてしまっている子もいる可能性がある。それがリフレクターやひかりのかべのような、とりあえず使えばいいだけの技ならいいんだけど、このゆびとまれや、なかまづくりみたいな使い方の難しい技ばかりだとかなり戦うのが難しくなっていく。そうなるとただでさえ変化技によって使える技の量を圧迫されるのに、そのうえでそのポケモンが覚えている攻撃技が相手に効果がなければ目も当てられない。そうなってしまえば、どんなに能力の高いポケモンだったとしてもその場面では活躍することが出来なくなってしまう。だからこそ、ポケモンを交換するときは、そのポケモンの能力よりも、そのポケモンがどんな技を覚えていて、どんなことが出来るのかに目を向けないといけない。
「正直そのあたりは運任せとしか言いようがないわね。もしかしたら、私たちが選んだこの4人のポケモンたちは、実はかなりのあたり枠なのかもしれないわね」
「だとしたら、この子たちの消耗はより抑えないといけないかもしれないですね……」
「途中にポケモンセンターみたいな簡単に回復できる場所もないから、本当に消耗が命とりになるわね」
「このアトラクション……もしかして想像以上に頭を使わないといけない……?」
ヒカリの結論にちょっとだけ不安そうに答えるユウリ。この中で一番トレーナー経験が少ない彼女にとって、今回のような事前知識を問われる展開はちょっとだけ気後れするところがあるのかもしれない。だとしても、ユウリの地力はもうかなり成長しているからこの場でも問題なく活躍できるはずだ。現に、ニドキングとのバトルでは一番最初に行動してみんなのサポートをしてくれたわけだしね。そのことを加味しても、ユウリがボクたちの足を引っ張る可能性なんて万が一にもないだろう。……正直、シロナさんというベテランなんて言葉では生ぬるい人の前では、誰しもが経験不足扱いされそうだから本当に気にしなくていいとは思うんだけどね。
「大丈夫よ。ヨロイ島での特訓を見る限り、あなたの能力は十分高い水準にあると思うわ。そう気負わずに、気楽にいきましょ?何かあっても私たちがちゃんとサポートしてあげるわ。……さっきの戦いに関しては、むしろ開幕サポートしてもらっちゃったしね?」
「……はい!」
シロナさんも同じことを思っていたみたいで、さっきの戦いのことを思い出しながらユウリを励ましていく。ポケモンバトルだけでなく、こういった人の心を支えるのもうまいあたり、本当に尊敬できる凄い人だと改めて思う。
「それにしても、ダイマックス楽しかったなぁ……フリアはこんな楽しいことをずっとしていたのよね?いいなぁ……」
「楽しいは楽しいけど、今までダイマックスをしてきた人全員強かったから、それ以上に大変だったっていう感想の方が強いけどね」
ユウリの方の話が一通り落ち着いたところで、改めてヒカリとダイマックスについて語り合う。
「バトル自体はわたしもアーカイブで視させてもらったわよ。ガラル地方のジムリーダーはみんな強そうだったから、たしかに当の本人たちは大変なんだろうけど……それ以上に見てる側からしたら展開がわかりやすいから、ダイマックス含めて物凄く面白そうに見えるのよ。だから自分でもいつかやってみたいって気持ちが出てきたわけだしね?」
「そういう見方もあるんだ……」
言われてみれば確かに納得できる。
ポケモンが急に大きくなって大技をぶつけ合うというのは傍から見ても派手だし盛り上がる。同時に、ダイマックスを使ったということは、ここがバトルの大きな分岐点だということが自然と理解できるため、例えポケモンバトルをよく知らない素人が観戦していたとしても、重要どころを無意識のうちに自覚できるというわけだ。この一目で状況がわかりやすい部分は、他のスポーツ観戦や他の地方のバトルにはない特徴かもしれない。
「興味が引かれたらわたしのようにダイマックスをしたくなって、小さい子供も、他の地方のトレーナーも、ダイマックスを体験するためにこの地方に来てみたくなる。そうなればこのガラル地方にはたくさんのトレーナーが集まって、たくさんのバトルが巻き起こる。そうやって色なんな人とバトルすることによって、この地方の人たちはどんどん強くなっているのかもしれないわね」
「他の地方に比べてポケモンバトルにストイックなのは、ダイマックスのおかげってところもあるのかもしれないんだね」
チャンピオンを巡っての争いにここまでジムリーダーが深くかかわる地方をボクは知らない。ジムリーダーすらも挑戦者であるこの状況は、ポケモンバトルというものに地方単位で取り組んでいる証拠だ。その原因にはやっぱりダイマックスというものの存在は欠かせない。
「ポケモンバトルに関わって、しかもガラル地方のエネルギーにも使われている……そう考えると、この洞窟の研究に必死になるのも何となくわかっちゃうね」
「そう考えるとこの研究施設は出来るべくし出来たのかもしれないわね……と、そうこうしていたらまた分かれ道ね」
ヒカリと話しながら歩いていると、2つ目の分かれ道に到達した。ボクとヒカリの後ろからついてきていたシロナさんとユウリも、分かれ道の存在に気づいて足を止める。そんなボクたちの目の前には右側に2つ、左側に2つの計4つの分かれ道が現れる。
「今度は4択の道ね」
「さっきよりも1つ多い……奥に行けば行くほど、どんどん複雑になっていくのかな?」
シロナさんとユウリの言葉を聞きながら、とりあえず耳を澄ませて4つの道すべてを何となく確認してみるけど、やっぱり聞き分けることはできない。
「どの道からも戦闘音が響いてて、やっぱり区別はできそうにないかな」
「さっきよりも道が多いってことは、より沢山の音が混じることになるわけだから、ただでさえ区別できないのにもっと区別できなさそうだものね……さて、どの道に進む?さっきはわたしが選んじゃったから、今回は他の人に譲るわよ?」
改めて完全なランダムなことを確認したうえで、ヒカリがボクたちの方に振り向きながら確認を取って来る。どうやら今回は他の人に選択権を譲るつもりらしい。とはいっても、さっきも言った通り、ボクたちは特にこれと言って我を通すタイプの人ではないから、こういった時の即決力は少し頼りない所がある。
「そうねぇ……じゃあ、ユウリ!あなたが決めなさい!」
「え、私!?」
それをヒカリも理解しているので、ヒカリは選択権を無理やり渡すことで解決する。ちょっと急かもしれないけど、こういう場面ではむしろありがたいかもしれない。
「う~ん……どの道でもいいんだけど……」
「だからこそ、直感でぱっと決めちゃいなさい!」
やっぱり悩んでしまうユウリの背中を押してあげるヒカリの言葉。その言葉につられて前に出たユウリが、少しだけ目を閉じて、『えいっ!』という言葉とともに、適当に指を振った。
「じゃあこの道に行きましょう」
そういいながらユウリが指を差したのは、左から2番目の分かれ道。
「じゃあこっちに行きましょうか!」
その選択に特に反対意見を述べることなく、ヒカリの言葉にボクとシロナさんも頷いて、4人そろってユウリが選んだ分かれ道を歩いて行く。
「次はどんな子がいるのかな?」
「楽しみという気持ちと、厄介な子が来ませんようにって気持ちが混じっちゃうね」
選ばれた道を歩きながら、ワクワクと不安が混じった表情を浮かべながら、それでもなお楽しそうに話し合うユウリとヒカリ。その様子を後ろから見て、微笑ましい気持ちになりながらついて行くボクとシロナさん。そんな和やかな時間とともにゆっくり歩いて行くと、ほどなくして再び開けた場所に辿り着く。
「さあ2戦目、誰が来るのかしら?」
シロナさんの言葉とともにボールを構えたボクたちは、広場の中心に集まる赤い霧を見つめる。
「グラッ!!」
その赤い霧を振り払うかのように、叫び声をあげながら現れたのはキングラー。それもただのキングラーではなく、いつもの姿と違うキョダイマックスキングラーとして、ボクたちの前に立ちふさがる。
「次の相手はキングラーか……」
「この子はワイルドエリアでも見る子だ……でも、最初からキョダイマックスしている子は知らないかも……」
「ただダイマックスポケモンが多いだけじゃなくて、キョダイマックスポケモンも歩き回っているってことね。ますます興味深いわ」
「見とれるのはいいけどまずは戦う準備!ほらみんなもポケモン出して!!」
ワイルドエリアでも見ることの出来る、ニドキングと比べたら珍しいわけではないポケモン。しかし、最初からキョダイマックスした状態で相まみえることはかなり珍しい。そんな状況に思わず手が止まりそうになるけど、ヒカリの言葉にハッとしてすぐさまボールを構えなおし、ジュカインたちを呼び出す。
「グラッ!!」
ボールから飛び出ると同時にすぐに戦闘態勢を取るジュカインたち。その姿を見たキングラーも、自慢のハサミを大きく掲げながら再び声を上げる。
「じゃあキングラー……対戦よろしくね!!」
その叫び声に応えるようにボクたちも構え、バトルに臨む。
いつもと何かが違うバトルアトラクション、ダイマックスアドベンチャー。
その魅力に、ボクたちは少しずつ惹かれ始めていた。
☆
「ユウリ!!捕獲できるよ!!」
「うん!!お願い、モンスターボール!!」
目の前にいるミルタンクが大きく態勢を崩し、ダイマックスの維持が出来ないくらいに弱ったところでユウリに声をかけるボク。その言葉に頷いたユウリは、手に持っているモンスターボールを大きくして、ミルタンクに向かって投擲。慣れた手つきで行われるその動作によって綺麗な放物線を描いたモンスターボールは、ミルタンクの目の前で大きく口を開け、そのまま中に吸い込んでしまう。
「相変わらずいつ見ても仰々しいわね〜……普段から見て慣れている光景のはずなのに、サイズが変わるだけでこんなにも変わって見えるなんて」
「サイズが変わるだけと言っても、その変わりようが凄いからそう見えるって感じなんだろうけどね」
「よし、捕まえたよ〜!!」
さすがにここまで来ればもう慣れてしまった捕獲シーンを見てぼそっと呟くヒカリ。そんなヒカリと並んでその様子を見ていると、程なくして捕獲を終えたユウリがモンスターボールを拾い、大きく手を振りながらこちらに駆けてくる。
「みんなお疲れさま。大分慣れて様になってきたわね」
ユウリが駆けてきたと同時に後ろから声をかけてきたのは、たった今木の実でドレディアのまひを治してあげていたシロナさん。ミルタンクの使ってきたでんじはで少し厄介な状況になってしまったものの、弱点をつけるバシャーモをダイマックスさせて素早く撃破することで被害を押えて勝利を収めたことに、シロナさんも凄く満足そうな表情を浮かべていた。ちなみにこの木の実はボクたちが持参したものではなく、この洞窟の道中に転がっていたもので、ありがたく回収させてもらったものだ。っていうか、このアトラクション、きずぐすりとかも持参できないからこういったものでしか回復ができない。この辺りもガラル粒子が関係しているとかしないとか。ガラル粒子が別の意味で万能の言葉になっているね。
「それにしても、結構奥まで来たわね……」
捕まえたミルタンクを今の手持ちたちと交換するかどうかの話し合いをした結果、今回も交換をすることなくシロナさんの懐にしまわれることとなり、このままの手持ちで先に進むために次の洞窟への入口を見つめながらヒカリが呟く。
たった今戦ったミルタンクを含めて、ここまでボクたちが戦ってきたダイマックスポケモンは5人。最初からあげていくと、ニドキング、キングラー、サンドパンのアローラの姿、ダグトリオ、そして今回のミルタンクという順番だ。ここまで連続で、しかも普段のポケモンとは違う子でレイドバトルをするとなると、さすがのボクたちもちょっと疲れが出始めている。シロナさんだけはまだ余裕そうなあたり、ボクたちとのちょっとした違いを感じたけど、あと1、2戦もすれば、先にユウリの限界が来てしまいそうだ。唯一幸いなのは、ここまでポケモンたちの消耗はかなり抑えることが出来ているので、もう使い慣れていると言っても過言ではない今のメンバーを入れ替える必要がないというところだろうか。とりあえず、この挑戦の間は、ボクたちはどの子も入れ替える必要はなさそうだ。
「そう言えば、結局このアトラクションのゴールはどこなのかしら?」
「最奥に強力なポケモンがいるって事しか聞いてないですよね?」
「まさか今のミルタンクが強力なポケモン……ってそんなことないわよね?」
「思いっきり続きの道があるからね」
疑問の声を上げるヒカリに対して、ユウリが言葉に疲れを乗せながらも返答し、なんとかボクたちについてきて洞窟の奥へと足を進めていく。流石にここまで来てしまうと、洞窟という決して変わることの無い周りの景色に少なくない飽きを感じ始めてはいる。アトラクションをつまらないとは思わないけど、そろそろゴールを見てみたい気持ちも出てきていた。
「ユウリの体力的にも、そろそろゴールだとありがたいんだけど……」
「うう、ごめんなさい……」
「あ、謝る必要はないって。ボクも結構つかれているし、元々ユウリは外の寒さに辛そうにしていたところもあったから、その分を考えると……ね?もしきついんだったら、今から来た道を戻るけど……」
ここに来るまでにもなかなか体力を使っているはずのユウリをここまで付き合わせてしまっているのはむしろボクたちの方だ。その点を考えると謝りたいのはボクたちの方だったりもする。けど、それでもユウリは前を見る。
「だ、大丈夫。まだ頑張れるから……それに、もうちょっとでゴールがありそうな気がするから……」
少し息を荒くしながらそういうユウリにつられて前を見ると、今までは分岐点があったはずの道が、今回は一本道になっていた。そのことに気づいたシロナさんは、ボクたちより先行して前の様子を確認し、すぐに振り返る。
「ユウリの言うとおりね。この先から、何か凄い気配を感じるわ……おそらく、最奥に待っている強力なポケモンっていう子のことだと思うのだけど……」
シロナさんの言葉に急に緊張感が高まり、周りの空気が引き締まっていくのを感じる。自然と会話も少なくなっていき、足も速くなっていくボクたちは、気づけば6度目になる開けた空間に出てきた。
「……みんな、気を付けて」
その空間に出た瞬間に感じる、今までとは明らかに違う圧倒的なプレッシャー。その空気にあてられながらも、シロナさんからの忠告のおかげでしっかりと前を見ながら構えることが出来た。そんな中、目の前の赤い霧が霧散していき、今回ボクたちが歩んだルートの最奥に待つ、強力なポケモンが姿を現した。
「このポケモン……まさか!?」
「「「ッ!?」」」
そのポケモンを見た瞬間シロナさんが声を上げ、ボクたちも息をのむ。
そのポケモンは、ジョウト地方で伝わる伝説のポケモンのポケモンの1匹だった。
しなやかな体躯はダイマックスした身体でもなお美しく、額のクリスタルを思わせるリングから放たれるオーロラの光も相まって、思わず見とれてしまう程綺麗だ。しかし、そのポケモンから吹きすさぶ風は、こちらの身体を芯から凍えさせてしまうのではないかと錯覚するほど冷たく、さっきからぶつけてくるプレッシャーと相まってこちらを畏怖させてくる。
北風の化身。
ある場所ではそう呼ばれるポケモン。その名は……
「スイクン!?」
オーロラポケモン。スイクン。
最奥にてボクたちを待っていたのは、湧き水のやさしさを宿した、伝説の清きポケモンだった。
ダイマックスアドベンチャー
実機では4体目が伝説ですが、このお話ではちょっと増やしてます。特に深い意味はないのですが、しいて言えば、分岐点を増やして、ルートを複雑にすることで、選んだ道を記録するという実機の設定の意味を通すためですね。実機では不思議のダンジョン方式ですが、お話的には合わないかなと。
スイクン
実機でもチュートリアルで出てくる伝説のポケモン。この作品でも、ここの壁として立ちはだかってもらいます。
あけましておめでとうございます。くしくも、去年と同じ投稿日ですね。今年も定期更新を頑張りたいと思いますので、この作品をよしなにしていただけたら幸いです。