【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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164話

「おおぉ……うおぉ……」

「だから、大丈夫って言ってるでしょう?」

「大の大人が……みっともない……」

「お気持ちはわかりますので、まずは落ち着きましょう。こちらハーブティーになります。どうぞ」

 

「……何この状況」

「あ、フリア!おはよう」

「おはようユウリ。……で、これは何?」

「あ、あはは……」

 

 ダイマックスアドベンチャーを終え、民宿までたどり着いたボクたち。冷えた身体を温めるかのように作られた、ヒカリお手製の美味しいシチューをみんなで食べ、明らかに身体を震わせていたユウリを初めとして順番に入浴。その後、復活したユウリの姿を見て安心しながら、先に民宿に来ていたグループと意見交換をして、そこから民宿でできることをして過ごした後就寝。9人という大所帯ではあるものの、2階建てであるこの民宿はかなりの広さを誇っており、全員が足を伸ばして寝られるだけのスペースはちゃんと確保されていた。さすがに全員分の個室がある訳ではないので、床にみんなで雑魚寝状態だ。一応ベッドがあるにはあるけど、そのベッドはカトレアさんに優先的に回されている。お嬢様育ちであるカトレアさんにとっては、雑魚寝というのは慣れないだろうし多分寝られない。ボクたちは冒険者としてこの辺りのことは慣れているというのもあるし、カトレアさんの事情も理解はできるので、特に文句は起きることなく、その日は終わりを迎えた。

 

 ちょっと話はそれたけど、とりあえず昨日は長旅兼ヨロイ島との寒暖差による体力の消耗を癒すことに使ったことで、お陰様で朝からすっかり元気な姿で起きることが出来た。ただそれでもダイマックスアドベンチャーによってかなり体力を使わされていたみたいで、起きた時に周りを見れば誰もおらず、自分が最後に起きた人物であることを悟る。かと言って、別に慌てるようなことでもないので、軽く髪や服装を整えてから、賑やかな声が聞こえてくる1階に足を運び、みんなに合流しようとしたところで……ロビーの中心に泣き叫ぶピオニーさんがいて、冒頭に至るというわけだ。

 

「朝起きて1階に降りたら、大人の男性が声を上げて泣いてる……」

「その言葉を聞くだけだと、フリアの朝は最悪とね」

「オレが起きた時から泣いているから、かれこれ1時間は泣いているぞ」

「よく涙枯れないよな」

「みんなおはよ……ってそんなに泣いてたの!?」

 

 気づけば隣に立っていたマリィ、ホップ、ジュンの言葉を聞いて思わず変な声を出してしまう。まさかそんなに長い時間あの状態だなんて思わなかった。そこまで聞けば、対応しているシロナさんとカトレアさんが物凄く疲れている顔をしているのも納得がいく。朝から本当のおつかれさまだ。

 

(もうちょっと早く起きたら手伝えたのかも……?)

 

「フリアがいてもあまり変わらなかったと思うから大丈夫よ」

「ナチュラルに思考読まないでくれない?」

 

 ヒカリに当たり前のように読まれたので思わず突っ込む。表情にはあまり出るタイプでは無いと思っているし、バトルの時は動きが読まれることがあまりないから、ボクがわかりやすく顔に出るタイプでは無いと思うんだけど……

 

「フリア、性格がわかりやすいから表情にでてなくてもわかりやすいよ?バトルの時はそもそも思考方向が違うから読めないけど……」

「そうなの……?って、今はそんなことじゃなくて!!」

 

 ユウリによって今まで思考を読まれていた驚きの理由を知ったボクは、けど今はそんなことよりもピオニーさんのことが気になったのでそちらに視線を向ける。

 

「で、最初の問いに戻るんですけど……この状況はなんですか?」

「あ、フリア。起きたのね。おはよう。それでこの状況についてなんだけど……」

「シャクちゃんが民宿に来なかったんだよぉぉぉぉっ!!」

「ということらしいわ」

「あぁ~……」

 

 シロナさんと挨拶を交わして、理由を聞こうとしたところでピオニーさんのシャウトがカットインする。その叫びでボクは全てを理解してしまった。

 

 ダイマックスアドベンチャーの舞台となっているマックスダイ巣穴は、研究員が何人もいることと、場所が場所なため洞窟内に宿泊できる施設がある。じゃないと、アクセスが悪いのにその上泊まれる場所がフリーズ村の民宿しかない状態になってしまうからね。さすがにカンムリ雪原の日帰りツアーは距離的にちょっと辛すぎる。ピオニーさんの話を聞く限りだと、シャクヤもそこに泊まっていると考えて間違いないだろう。地方が建ててある設備でもあるわけだから、下手をしたらその辺のホテルよりもしっかりしている可能性だって高い。心配の必要は正直あまり無さそうだ。

 

 しかし、娘大好きピオニーさんにとってはそれはそれ、これはこれらしい。いくら自分に付き合ってくれないからと言って、民宿まで戻ってこないというのはなかなか心にくるものがあったみたいだ。

 

「せめて夜くらいは帰ってこいよぉぉぉっ!!……ゴクッ、ゴクッ……」

「紅茶はそのように豪快に飲むものでは……」

「まぁ、連絡もなしに向こうで泊まられたら心配になるのは分かりますけど……」

「それが……スマホロトムにもちゃんと連絡は入っているのよねぇ。シャクヤ、意外としっかりしているから、その辺はちゃんとしているのよ」

「ええ~……」

 

 コクランさんの小声のツッコミをスルーしながらピオニーさんのフォローをするものの、シロナさんからそのフォローに対するカウンターをもらう。その後スマホロトムを見せてもらうと、確かにシャクヤから連絡は来ているし、なんならピオニーさんから『わかったぜ』と返信までしている。ここまでちゃんとやり取りをして、その上でこうなられてはさすがにどうしようもない。いよいよ手詰まり感が生まれ、どうしようか悩んでいると、紅茶を一気飲みし終えたピオニーさんがグッと顔を上げる。

 

「っしゃぁ!!紅茶を飲んだおかげで心が落ち着いたぜ!!コクラン……つったか?サンキューな!!お前さんの紅茶、ド・美味しかったぜ!!」

「は、はい。お褒めに預かり恐悦至極です……」

「ええぇ~……」

 

 そんなピオニーさんの口から告げられたのは、紅茶のお礼と心が落ち着いたというもの。シロナさんとカトレアさんが1時間かけても立ち直らなかったものが、たった紅茶1杯で綺麗に収まってしまった姿を見て、思わず変な声が出てしまう。当事者であるシロナさんとカトレアさんなんかは、頭を抑えながら首を左右に降っていた。

 

「シロナ……あたくしこの方と上手くいく気……全然しない……」

「奇遇ね。私も協力者を間違えた気しかしないわ……」

「ん?何だ何だ?朝から暗い顔してっと、幸せが逃げっぞ嬢ちゃんたち!!ダーハッハッハッハ!!」

 

 現在進行形で逃げてるとでも言いたそうな視線でピオニーさんを睨む2人だけど、当の本人は全く気にしていない。ジュンを超える暴走人間に出会うことは無いと思っていたけど、もしかしたらそれ以上の逸材かもしれない。そう感じたボクとヒカリは、密かに震えていた。

 

「もしもの時はなんとしてでも止めるわよ」

「……うん」

 

 ボクとヒカリが密かに決意を共にする瞬間だった。

 

「さて、とりあえずひと段落ついたし、ようやく腰を据えて話せるようになったし……本題の話と洒落こもうぜ!!」

「それもいいけど……まずは朝食を取らせてちょうだい……。まだ食べてないのよ……」

「まだ食べてなかったのか?今日から伝説巡りだってのに、随分とまったりしてるんだな」

「あなたのせいよ……」

「そ、そうか……いや、そうだったな……すまん……って、よくよく考えたらオレも食ってなかったぜ!オレも貰っていいか?」

「……はぁ。ヒカリ……。コクラン……」

「承知しました」

「1人増えるくらいならあまり手間は変わらないから気にしないでくださいな〜。……なるほど、カトレアさんのようにすれば止まるんだ……

 

 いい加減に疲れてきたらしいカトレアさんの視線を受けて、さすがに色々悟ったピオニーさんが頷くことによってようやく待ちかねた朝食を食べることとなった。カトレアさんに感謝である。カトレアさんにとっても、朝食を邪魔されたのはさすがに堪えたみたいだから、本人としては深く考えての行動ではなさそうだけどね。それ以上に、ボクはカトレアさんがサラッとヒカリにも朝食の準備をお願いしているところに驚いた。どうやらヒカリの腕は、お嬢様の御眼鏡にもかなうほどらしい。本当に凄い友人を持ったものだ。

 

 そんな波乱な早朝を乗り越えたボクたちは、ヒカリとコクランさんによって作られたサンドイッチに舌鼓を打ちながら、ひと時の幸せを文字通り噛み締めていた。相変わらずこの2人の料理の腕はとんでもない。ボクも料理できるけど、この2人には絶対に追いつくことが出来ないだろうなぁと思った。2人的にはもっと凝ったものを作りたかったみたいだけど、朝からあれだけの騒ぎがあって、時間がない中つくられたものと考えたら、ボクたちからすれば十分に凄いものだ。だって、サンドイッチに使う具は勿論、ソースまで一から手作りしていくんだから本当にこだわりが凄かった。食べた今でもきのみをどの分量で混ぜたのかが……って、あまりここの話をしても仕方ないよね。とにかく、本当に素晴らしいご飯を頂いた。

 

「ふぅ、食った食った!!紅茶の時からわかっていたが、ド・美味しいサンドイッチだったぜ!!こんなうめぇもん食ったことねぇぞ!!シャクちゃんにも食べさせてやりたくなったぜ……」

「当り前よ……あたくしの自慢の執事ですもの……」

「もったいなきお言葉です」

「わたしだって、料理には自信があるんだから!!」

 

 2人の料理を始めて食べたピオニーさんもこれにはご満悦。凄く嬉しそうな笑顔を浮かべながらコクランさんとヒカリのことを褒め、褒められた側も朝のことは一旦忘れて素直にその賛辞を受け止めていた。カトレアさんも、少しだけ自慢げにしているのがちょっと微笑ましい。

 

「朝食を貰ったことで改めて元気100倍だ!!」

「それならよかったわ。……いえ、本当に……さて、じゃあそろそろ本題の話と行きましょうか」

「そうだな!!飯の礼もあるし、しっかり話させてもらうぜ!!」

 

 朝食を食べ終えて、そのあとの飲み物もいただき、みんなが一通り落ち着いたところでシロナさんが今日ボクたちが行うことに関しての催促をピオニーさんにする。

 

「んじゃあさっそく、オレがシャクちゃんのために必死こいて調べた、自慢の伝説を紹介させてもらうぜ!!」

「前置きはいいからどうぞ」

 

 元気いっぱいにしゃべりだすピオニーさんと、『やれやれ』とため息を発しながら首を振るシロナさん。もしかしたらピオニーさんの情報に関して、昨日以上に信用してないかもしれないね。

 

「まあそう急かすなって!なんせオレが調べた伝説は全部で3つあるからな!!お前さんたちにささる奴がどれかわかんないから、順番に話していくぜ」

 

 3つ。話しぶりからして1つではない気はしたけど、本人から本当に複数あると聞かされるとさすがに驚いてしまう。それはこの場にいる全員が思ったようで、みんながみんな驚いた表情を浮かべていた。

 

「まずはひとつ目行くぜ!ひとつ目は~……デデン!!」

 

 自身の口で変な効果音を付け足しながら聞かされるピオニーさんの言葉と同時に、ピオニーさんから地図が出される。

 

 

『目撃!大樹に集う伝説の鳥伝説!!』

 

 

「鳥伝説……?」

「おう、そうさ!!」

 

 ユウリの言葉に嬉しそうに反応するピオニーさんは、そのまま地図を指差しながら説明をしていく。

 

「このカンムリ雪原は大きく分けて3つのエリアが存在する。まずは北側の雪原エリア。そして中腹にある草原エリア。そんでもって、南に位置する湖地帯のボールレイク湖エリアだ!……正確には、まだ洞窟や海もあるし、雪原も2つに分かれているみたいだが……」

「それはもはや『3つのエリア』じゃなくて『6つのエリア』な気が……」

「ダッハハ!細けぇこたぁ良いんだよ!」

 

 マリィのツッコミを笑い飛ばしながら、ピオニーさんは言葉を続ける。

 

「まず、今オレたちがいるフリーズ村がここなんだが……この鳥伝説があるっつー噂が立っているのはこの場所だ」

 

 北側においてあったピオニーさんの指が動かされた場所は、一番南にある湖地帯。ピオニーさんがボールレイクエリアと言っていた場所だ。

 

「この湖の中心にあるダイ(ぼく)の丘で、メラメラしたやつとギザギザしたやつ、そんでもってシャナリシャナリしたやつの3羽の鳥ポケモンがいるらしい!!」

「メラメラ……」

「ギザギザ……」

「シャナリシャナリ……」

 

 ピオニーさんが挙げた3つの特徴を反芻したのはホップ、ジュン、ヒカリ。その3人の言葉を受けて、ボクはあるポケモンたちが思い浮かんだので、その名前を口にした。

 

「もしかしなくても、ファイヤーにサンダー、それにフリーザー……?」

「おお!よくわかったな!!オレのメモした名前は確かそんな奴だ!!なんだ?結構有名なのか?」

「まぁ、かなり有名な方だと思いますよ?」

 

 ファイヤー、サンダー、フリーザーと言えば、幻の翼と呼ばれるほど珍しい伝説のポケモンであるが、伝説を冠するポケモンの中では生息地が割とわかっている方であり、徘徊するタイプもいるのかいろいろな地方にて目撃証言ある方ではある。勿論、だからと言って簡単に目撃できるわけではないし、現にボクも実際にこの目で見たことはない。なので、可能ならばぜひ見てみたいんだけど……

 

「確かに、彼らをこの目で見ることが出来るのならかなり貴重なのだけど……残念ながら今私が求めているものではないわね……」

「そっか、そいつはすまねぇ」

「いえ、気にしないで頂戴」

 

 シロナさんの言うとうり、今回ボクたちが求めている伝説とは関係がなさそうだ。そのことが分かったピオニーさんは少し寂しそうな顔をしたものの、すぐに気を取り直して次の伝説を口にする。

 

(ちょっとかわいそうだし、シロナさんの用事が速く終わったら他の伝説も回ろうかな?)

 

「そんじゃ次だ!!次の伝説はずばり……これだ!!」

 

ボクがこの後のことを考えている間に、ピオニーさんより2つ目の伝説が口にされる。

 

 

『神秘!伝説の王と愛馬のキズナ伝説!!』

 

 

「伝説の王と愛馬……?」

「おうよ!」

 

 次にピオニーさんが挙げたのは馬と王様の話。鳥伝説の時と同じように声を上げたユウリに、これまた自信満々に答えるピオニーさん。

 

「王っつーのは『豊穣の王』のことを言ってるみてーだな!!その王サマと、そいつが乗る愛馬の伝説がこの村に伝わっているらしいぜ」

 

 そういいながら、今度はフリーズ村を指差すピオニーさん。どうやらこの伝説は、この村が発祥であるらしい。そう言われてとあるものが思い出される。

 

「そう言えば、この村の畑の近くに何かを象ったような像が……」

「そうそうそれだよ!!そいつが関係あるらしいぜ!!……と言っても、オレが調べた奴とあの像、ちと形が違うんだけどな」

「形が違う……?」

 

 ピオニーさんのが疑問の声をあげながら1枚の紙を取り出したので、その紙をのぞき込むようにみんなで見てみると、確かに形が違って見える。具体的に言えば、ピオニーさんの紙に写っている像は頭に大きな何かを乗せていたけど、ボクがこの村で見かけた像の頭にはなにも乗っかっていなかったと記憶している。

 

「もしかしたら、まだ他に似た像があるのかもしれねぇな!……んで、どうだ?こいつも欲しかった奴じゃねぇ感じか?」

「そうね……これも違うわ」

「そうか……んじゃ最後だ!」

 

 こちらはこちらでかなり気になるけど、これもシロナさんの求めるものではないのでまたスルー。いよいよ最後の伝説だ。

 

「最後の伝説はこれだ!!」

 

 

『発見!開かずの扉と伝説の巨人伝説!!』

 

 

「!?」

 

 最後の伝説の発表とともにみんなの表情が変わった。

 

 巨人。それはまさに今シロナさんが追いかけている伝説にも使われている言葉だからだ。

 

「……顔色かえたな?っつーことはこれが求めてたもので間違いないな?」

「……まだ話を聞かないと、なんともね」

「任せな!!」

 

 ピオニーさんも手ごたえのある回答が来てくれたことに満足しながら説明を続けた。

 

「この伝説がある場所は、平原エリアから東に行ったところにある洞窟を抜け、その先に広がる海の端っこだな。そこにポツンと、赤と黄色の遺跡が建っててだな……その中に、点々の巨人が眠っているって話だぜ」

「点々の巨人……シロナさん……!!」

「ええ……どうやら私が求めているもので間違いなさそうね……」

「っし!ようやくビンゴだな!!」

 

 ピオニーさんの説明でテンションの上がったヒカリがシロナさんに視線を向けると、シロナさんも頷いた。どうやらシロナさんの目的は達成できそうだ。シャクヤのお願いがとりあえずはプラスに働いたみたいでよかった。

 

「私がその伝説について持っているのは、大地を引っ張った巨人が、この地でドラゴンエネルギーの結晶と電気のエネルギーの結晶を固めてとある巨人を作り上げたというものね」

「ドラゴンと電気……ってコトは、タイプもその2つって事か?」

「おそらくね。最も、言い伝えではドラゴンの方は未完成らしいのだけど……」

 

 ジュンの質問に返答するシロナさん。カンムリ雪原に来るまでに、シロナさんが歩んできた道は一通り話を聞いたけど、シロナさんは現在いわ、こおり、はがねの巨人を手に入れている。伝承によると、この巨人を集めると何かが起きるらしいのだけど……シロナさんはその先を見たいらしい。この地に眠るでんきとドラゴンの巨人を加えると一体何が起きるのか……そして何がわかるのか……こう言われるとボクもかなり気になってきた。

 

「私が調べた範囲だと、わかるのはその巨人の大まかな生態くらいね。あとは遺跡の場所について。場所に関しては、私の持っている情報と一致しているから信頼度は高そうよ」

「んじゃ、オレが知っていることを話させてもらうぜ」

 

 シロナさんが巨人についての情報を提示し、次にピオニーさんが言葉を引き継ぐ。

 

「オレが知っているのはその遺跡に書かれている文字だな」

「文字……」

「ああそうだ」

 

 シロナさんのつぶやきに返し、ピオニーさんが1枚のメモを取り出した。半分が赤で半分が黄色の、独特なタッチで描かれた遺跡と思われる外観の絵の下に、殴り書きされた文字が書いてある。

 

「この伝説を説明した時に『開かず』っつったろ?実際この遺跡の入り口はかたーく閉ざされてんだが……その入り口に点々が掘られててな。そいつを頑張って解読したら、こう書いてあったんじゃないかって予想がたてられててだな……」

 

 

『…つのき……ん…つま…し…き、うん……の…びらひら…ん』

 

 

 メモ帳にも書かれている、虫食い状態の言葉。それを復唱したピオニーさんは、そのまま難しい顔を浮かべながら言葉を続ける。

 

「遺跡の入り口にあった点々文字……そいつを、かろうじて読めるやつが解読して、何とかわかったのがこれだけだ。あとは点々が欠けてたり、解読者が未熟だったみたいでな。ここまでしか読めなかったらしい。これだけだとてんでわからんだろ?点々だけにな!!ダーハッハッハ!!」

「くだらない……」

 

 ピオニーさんの変なシャレにため息をこぼすカトレアさん。みんな思っていたことだけど口にしなかったそれを、スルッと言葉にするあたりカトレアさんっぽい。そのことに苦笑いをしながらシロナさんが言葉を続ける。

 

「点字なら私が解読することが出来るわ。その遺跡の解読が出来なかったのは、点字が欠けただけが原因ではないのよね?」

「おう、読めないところもあったらしいから、お前さんが読めるのならもっとわかる部分も多そうだな!!そうなれば開かずの扉を開けるヒントもわかるんじゃないか?」

「そういう事なら大丈夫そうね。私がそこに向かう理由はしっかりとあるわ」

 

 自分が向かうことによって情報が更に進むことを確信したシロナさんのやる気が目に見えて上がっていく。もうあと数分を待つのも嫌だという感覚がひしひしと伝わってきた。それはここにいる全員が感じたみたいで……

 

「わたし、お昼のお弁当の準備するわね!!」

「オレも準備しなきゃだな!!」

 

 ヒカリとジュンが準備に走り出したのを見て、周りのみんなもにわかにせわしなく動き出す。勿論、ボクも急いで準備をしなきゃだから、2階に戻って準備をするためリビングから走り出す。

 

 巨人の伝説への挑戦。そのことにどんどんボクの鼓動が速くなる。

 

 そんな状態で階段を駆け上がりながら、ふとシロナさんの方に視線を向けてみる。すると、シロナさんの表情がみたこともないくらい晴れやかなものになっていた。

 

(シロナさん、楽しそう……)

 

 その表情を見て、ボクもつられて微笑んでしまう。

 

(ボクも……楽しもう!!)

 

 なかなか経験することの無い貴重な体験。それを心から楽しむべく、ボクは再び2階へ足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




宿泊施設

マックスダイ巣穴にある川分かりませんが、あってもおかしくなさそうだなと。むしろ、ないと凍死する人が多そうです。

伝説

ピオニーさんから告げられる3つ(のちに4つ目が出ますが)の伝説です。どうでもいいですけど、どれも『伝説』の文字が2回入っているため、ちょっとムズムズしていたりします。実機でも狙ってこのタイトルなのでしょうけどね。




いよいよ巨人伝説ですね。いったい何が出てくるんでしょうか……楽しみですね。
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