【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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174話

「ミミィ!!……ミッ!?」

「パチッ!?」

「ミミロップ!!」

 

 伝説の3鳥をまとめて撃破し、自分が勝者であることを宣言すかのように叫ぶミミロップ。しかし、ここまでの激闘が身体に響いたのか、はたまた、勝ったことで緊張が解けて力が抜けたのか。……おそらく両方が原因だと思うけど、その両方に身体を襲われたミミロップが、その場でガクンと態勢を崩してしまう。未だにミミロップの肩に乗っかっているパチリスがそのことにびっくりして声を上げ、ヒカリも慌てて声を上げながら近寄っていく。

 

「ありがとうミミロップ。本当によく頑張ってくれたわ。パチリスも、ナイスサポートだったわよ。お疲れ様」

 

 ミミロップが倒れる寸前でどうにか抱きつくことのできたヒカリは、ミミロップを抱きしめたまま一緒に地面に座り込む。遠目から見ているだけでもわかるミミロップの怪我の多さに、近づいて抱きしめることによってより強く感じたそれを労わるように、ヒカリはゆっくりとミミロップを撫でてあげる。勿論、今回のバトルの影の功労者でもあるパチリスへの賛辞も忘れないけど、やっぱり今日の主役は彼女だろう。パチリスもそのことを理解しているようで、どちらかと言うとヒカリと一緒にミミロップを褒める方へと行動をしていた。

 

「勝っちゃった……ひとりで、伝説に……」

「本当に、コンテスト専門にしている人の強さなのか……?」

「にわかには信じられなかと……」

 

 一方で、このバトルを最後まで見届けていたユウリたちは、『ポカン』という効果音がぴったりなほどなんとも言えない表情を晒していた。その姿がちょっと面白くて、思わず笑ってしまいそうになってしまう。

 

「さすがヒカリだぜ!!やっぱりオレたちと一緒に色々乗り越えただけはあるよな!!」

「それはそうだけど、あの時ジュンってそんなに活躍してたっけ?」

「お、おいおい!!ちゃんとオレも戦ってただろ!?覚えてないとかないよなぁ!?」

「うそうそ。流石にあれを覚えていないはまずいからね」

「おまえの冗談は心臓に悪いんだよ……」

 

 一気に脱力してぐでっとしているジュンをよそに、ボクの視界はまたヒカリに戻される。さっきと特に変わっていないその姿からは、バトルによる疲れを少し感じさせるけど、ほどなくしてミミロップとともにゆっくりと立ち上がる。しかし、やっぱり思ったように力が入らないようで、2人そろって倒れかけてしまう。

 

「ヒカリ!」

「っとと……悪いわねフリア……ちょっとふらついちゃったわ……」

「それのどこがちょっとなのさ……とりあえず、お疲れさま?」

「どういたしまして……とりあえず……ミミロップ、ゆっくり休んでちょうだい。改めて、ありがとうね」

 

 ボクが肩を支えている間に、ミミロップにリターンレーザーを当ててボールに戻すヒカリ。同時に、ミミロップの肩にいたパチリスがヒカリの肩に飛び移る。しかし、そのちょっとした重さでさえ、今のヒカリにとってはなかなかつらいものがあるみたいで、ほんの少しだけ声が漏れたように聞こえた。パチリスも、自分の行動が負担になってしまったことに気づいて、不安そうな顔をしてヒカリをのぞき込む。

 

「大丈夫よ。心配させてごめんねパチリス」

「パチ……」

「ヒカリ……流石にちょっとは休んだ方がいいんじゃ……」

「そうもいかないわよ……」

 

 それでも自分の仲間を心配させまいと声を張って答えるヒカリに、ボクもちょっと不安を感じてしまったので休むことを提案するものの、案の定断られてしまう。この後ヒカリがしようと思っていることも、これからしないといけないことも、どちらも想像がついているので、確かに彼女の力が必要なのはわかるんだけど、それでも本心ではちゃんと休んで欲しいと思っている。もっとも、こうなってしまったら彼女は意地でも意見を変えないので、ここはヒカリがちょっとでも楽が出来るように、出来る限り手伝ってあげることとしよう。

 

「ヨノワール、グライオン。お願いしていい?」

「ノワ」

「グラ」

「フリア……悪いわね」

「気にしないで。どうせ休んでくれないなら、手伝ってさっさと済ませた方がいいでしょ?」

「そうね……」

「フリア、ヒカリ、これからどうすると?」

 

 ボクとヒカリでどんどん話が進んで行く中、このやり取りを眺めるだけで話についていけていない他のみんなを代表してマリィが声をかけてきた。その質問に対して、ヒカリが自分を奮い立てるように声をあげながら答える。

 

「どうって、まだ片付いていない問題があるでしょ?」

 

 そう答えるヒカリの視線の先には、先の戦いで地面に崩れている伝説の3鳥の姿があった。地面に落ち、重なるようにして倒れている彼らは、確かに戦闘不能状態になっている。しかし、視線だけはまだしっかりとしており、若干敵意を込められていたそれは、いまだにヒカリの方にしっかりとむけられていた。

 

「もしかして、その姿であの伝説に近づくのか!?」

「さすがに危険じゃない……?」

「それでも、あの子たちを無視して『はいおしまい』ってわけにはいかないわ。少なくとも、あの子たちの本来の目的も達成させてあげないとね……」

「「「本来の目的……?」」」

 

 ヒカリの言葉に理解が追いついていないホップとユウリ、そしてマリィ。声に出していないだけでジュンもまだ理解出来ていないのか、首を傾げたままだ。一方で、ボクはしっかりと理解出来ているため、ヒカリを伴ってファイヤーたちの方へ近づいていく。

 

「ギャォ……」

「キキィ……」

「フォゥ……」

 

 身体は動かないけど目は動かせる。そのため、視線をこちらに向けて、倒れてもなおプレッシャーを放ってくる伝説たち。特に、フリーザーは視線で攻撃を行うことが出来るため、細心の注意を払って近づかなくてはならない。

 

「……本当に近づいて大丈夫か?」

「なにかしてくるほどの体力は無いはずだから大丈夫……それよりも、わたしの道具たちはちゃんとあるかしら?」

「道具?道具って……もしかして調理器具?」

「それならフリアが洗ってたと。それで今は……」

 

 心配するホップとこの期に及んで道具を気にするヒカリに困惑を隠せないユウリとマリィ。しかし、全員に説明する間も惜しいと感じているヒカリは、これを一旦スルーし、自分にとって宝物と言っても差し支えない大切な道具を探し始める。ユウリの言った通り、ヒカリがバトルをしている間にボクが集め、綺麗にしておいたヒカリの調理器具たちは、ファイヤーたちから少し離れたところに準備されていた。そばにはインテレオンとエルレイドが控えており、彼らがこの準備をしてくれたことを物語っていた。

 

「さすがフリア。準備万端のようね。インテレオンとエルレイドもありがとう」

「レオ」

「エルッ!!」

 

 2人の声を聴きながらボクの肩からそっと離れたヒカリは、ゆっくりとその足を動かしながら調理器具の前に立つ。

 

「フリア」

「はいはい。頼んではいるから、もう来ると思うよ」

「ノワ」

「グラァ!!」

 

 ボクがヒカリに言葉を返したと同時に聞こえてくるボクの仲間の声。そちらに視線を向けてみると、ヨノワールとグライオンは2人で協力して、大きな赤い実を持ってきていた。

 

「赤いきのみ!?いつのまに!?」

「っていうか、どうやって収穫したんだ!?」

「明らかに重そうと……グライオンとヨノワールが力持ちだったとしても、上から持ってくるってなるとかなり厳しそうだけど……」

「まさか、ヒカリが闘っている間ずっと指示していたのか!?」

 

 上から順にユウリ、ホップ、マリィ、ジュンと、ヨノワールとグライオンが持ってきた赤い実をもって驚愕の声をあげて来る。どうして持っているのかを問い詰めるためにどんどん迫って来る彼女たちを何とかなだめながら、彼女たちの視線をボールレイク湖の水面に誘導していく。

 

「そんな難しいことしてないよ。ほら、あれ……」

 

 ボクが視線を誘導した先には、湖に浮かぶ大きな赤い実の姿があった。それも1つだけではなく、いくつもの実が転々と浮いており、中には湖に住んでいるポケモンに食べられているものもあった。

 

「赤い実が沢山……どうして?」

「少なくとも、あたしたちが来たときは1つも浮いてなんてなかったと……」

「もしかして、ヒカリと伝説たちのバトルの余波で揺れて落ちてきたのか?」

「ホップ、正解だよ」

 

 ユウリとマリィの言葉から1つの予想を立てたホップの言葉に肯定を返す。彼の言っている通り、この実はあの激しいバトルの余波によって木が揺らされ、その時に落ちてきた実だ。あれだけ大きな実なのだから、落ちてきたときにはそれなりに大きな音と水しぶきが上がってはいたんだけど、みんなヒカリのバトルに集中してて気づいていなかったみたいだ。まぁ、それだけヒカリのバトルが凄かったという事でもあるんだけどね。

 

「湖に落ちていた赤い実を拾ってきただけ。だからボクは何もしてないし、特に凄いこともしてないよ。……ありがと。ヨノワール、グライオン。お疲れ様~」

「ノワ」

「グラッ!!」

 

 そんな話をしている間に、赤い実をヒカリの近くに降ろし終えたヨノワールとグライオン。2人にお礼を告げると、今度はヒカリの方に視線を向ける。

 

「これでいい?」

「ええ、本当にありがとう。助かったわ」

「どういたしまして。料理の方でも手伝って欲しいことがあったら言ってね。ボクにも手伝えることは多いし、ヒカリはバトル終えたばかりであまり体力が万全じゃないんだから……」

「わかってるわ。けど、今回はわたしのちからでどうにかしたいから……どうしてもきつかったら、その時はお願いするわね」

「了解。……無理しないでね。頑張れ」

「ええ」

 

 そういい、ボクはヒカリから離れて彼女が料理に集中できるような場を用意してあげる。

 

「……よし、始めるわよ!」

 

 ボクが離れたことを確認したヒカリは、そこで一度目を閉じて深呼吸。心が落ち着いたところでゆっくりと目を開けて、目の前の食材に包丁を片手に挑んでいった。

 

「……本当に大丈夫?」

「大丈夫……とは言い切れないけど、ああなったヒカリは本当に梃子でも動かないからなぁ……」

 

 料理を始めたヒカリを眺めているときに横から声をかけてきたのはユウリ。その表情はやはり心配の色に染まっており、今もちょっとおぼつかないように見える足取りに、少しはらはらしながら見つめていた。手もあわあわと揺らしながら見つめている姿から、本当に心配しているんだろうということがよく分かる。けど、ボクが言った通り、何かと強情な彼女は何を言ってもおそらく自分を曲げることはない。となると、今のボクたちにできることは、ヒカリを見守ること。そして……

 

「……大丈夫だよ。そんなに警戒しないで。ヒカリは、キミたちをどうこうしたいわけじゃないんだよ」

「ギャォ……」

「キキィ……」

「フォォ……」

 

 現在進行形で、ヒカリのことを『訳が分からない』と言った表情で見つめ続けている伝説たちを落ち着かせてあげることだろう。

 

「……よし、ヒカリの料理が出来るまで暇だし、こっちはこっちでやることをしよっか」

 

 誰に言うでもなくそうつぶやいたボクは、ファイヤーたちに近づいて腰を下ろし、持ってきたカバンから道具を取り出し始める。

 

「ギャォ……ギギャッ!?」

「こらこら。おとなしくしてないと……傷口広がっちゃうよ?」

 

 いきなり近づいてきたボクに警戒度を一気に引き上げ、威嚇しようと動くものの、身体に刻まれたダメージが大きく、思わずうめいてその場にうずくまってしまうファイヤー。そんな彼に注意をしながら、ボクはどんどん道具を取り出していく。ちなみに、サンダーとフリーザーも同じように警戒心をあらわにしてはいるけど、ファイヤーの痛がり具合を見て、自分も同じようなことになるだろうと判断した彼らは、こちらをじっと見つめて来るにとどまっている。伝説のポケモンは他のポケモンと比べて、その個体が持つスペックはかなり高いという話はしたけど……どうやらこの子たちは知能もかなり高いみたいだ。……って、そんなことはヒカリと戦っているのを見たらわかるよね。

 

「じゃあまずはファイヤーから。順番にしていくからおとなしくしててね」

 

 動いても無駄だと悟ったファイヤーもようやくおとなしくなり、ボクの行動をいやいやながらも受け入れてくれた。そんな渋々許してもらえたボクがこれから何を始めるかと言われたら、ファイヤーたちの治療だ。ヒカリは勿論、ボクたちは別にファイヤーたちを傷つけたくてここに来たわけではない。今回のバトルだって、突発的だったからこうなっただけであって、本来なら遠目から確認するだけの予定だったんだ。けど、ヒカリのちょっとした暴走と、ヒカリが見てしまったとあるものが理由でこうなったという色々タイミングの悪いことが重なった結果こうなってしまった。ヒカリも、むしろこれからすることの方が本題と思っているので、その時にファイヤーたちがちゃんと動けるように、彼らの手当てをしてあげるのが一番だ。

 

「ちょっとしみるけど、我慢してね~……マホイップ。手伝ってくれる?」

「マホッ!!」

「ギャゥ……」

 

 きずぐすりを吹きかけ、その部分にゆっくりと包帯を巻いて行く。この時、ちょっと薬が染みるのか、ファイヤーが少しだけ顔をゆがめる。その姿がちょっとかわいそうだったので、その痛みを少しでもやわらげてあげるためにマホイップにお願いして、辺りにあまいかおりを漂わせる。

 

「キキィ……」

「フォゥ……」

「甘くて、いいかおり……」

 

 マホイップを起点に広がっていくその香りは、ファイヤー以外にも届いて行く。結果、近くにいたサンダーとフリーザーは勿論、料理をしている途中のヒカリの下まで届いていた。

 

「……マホイップ……クリーム……成程!フリア!!少しだけマホイップのクリーム分けてもらえないかしら?」

「勿論。マホイップも大丈夫?」

「マホマホ!!」

 

 ヒカリからのお願いが入ったので、今度はそちらに向かっていったマホイップの背中を見送りながら、ボクは手当の続きをしていく。

 

「フリア!オレたちも手伝うぞ!!」

「何かできることはあると?」

「なんでもするよ!」

「ヒカリを待つだけってのも暇だしな!!」

 

 離れていったマホイップと入れ替わるように近づいてきたのは、ようやく今の状況に慣れて動けるようになったユウリたち。既にヒカリの心配をすることをやめた彼女たちの表情はもう慌てている様子はない。

 

「じゃあ、次はサンダーの治療に進もうと思っているから、その道具の準備をお願いしてもいい?回復用のオレンのみとかも、近くから集めてくれると嬉しいかも。あ、でも、この後のことを考えて、あまり量は持ってこないようにね?」

「「「「了解!!」」」」

 

 ボクの指示に元気に返答をしたみんなは、それぞれが自分の出来ることをやろうと動き出した。これなら安心して頼ることが出来るだろう。

 

「お疲れ様ファイヤー。あとはちょっと安静にしていたらオッケーだよ」

「ギャゥ……」

 

 そうこうしている間にファイヤーの治療が無事終了。次の子に移るために、身体の向きを変えていく。

 

「じゃあサンダー。次は君の番だよ」

「キキィ……」

 

(こっちは何とかしておくから、頑張ってね。ヒカリ……)

 

 大きな赤い木の下で、方や料理を。方や治療をという、少しミスマッチな、けど、それでいてなぜか自然に見えてしまう、不思議な時間が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出来た!」

「お、ついにか!!」

「待ってたぞ!!」

「わ〜い!!」

 

 あれからサンダーたちの手当も無事に終え、それでも時間が余ってしまったので、各々で自由な時間を過ごして時間を潰していると、ふと香ってくる甘い匂いと同時に、ヒカリが小さく、それでいてはっきりと通った声でお菓子作りの終わりを告げた。この声に目ざとく……いや、耳ざとく?とにかく、素早く反応したジュンとホップ、そしてユウリが嬉しそうに駆け出した。

 

「ボクたちも行こっか」

「そうね。あまり遅れたら、あたしたちの分も全部なくなってしまいそうと」

 

 そんな3人の後ろを追いかけるようにボクとマリィもヒカリの方へと歩いていく。すると、元々漂ってきていた、モモンのみのような爽やかな甘さを感じさせる匂いがさらに強くなったのを感じる。匂いだけでこちらの食欲を誘ってくるそれらに、隣にいるマリィも期待値が上がってしまったのか、喉を鳴らす音がかすかに聞こえた。かく言うボクも、昼を回った後ということと、ファイヤーたちの治療の後ということで空いてしまったお腹をしっかりと刺激されてしまっている。ボクたちでもこれだけ刺激されているんだ。もう間近まで近づいており、そしてボクたちよりも食べることが大好きなユウリなんかは、もうとんでもないことになっていそうだ。

 

「みんな、待たせて悪かったわね。けど、これで完璧なはずよ!!」

「「「「おお〜……っ!!」」」」

 

 ボクたちが全員揃ったのを確認したヒカリが嬉しそうに両手を広げながら、今回自分がつくりあげた料理たちを披露していく。あんなに大きな実を使ったと言うだけあってその種類は豊富で、今目の前の状況だけを切り取れば、ちょっとしたフルーツパーラーで贅沢に色々注文した後のような形になっていた。そのうえでまだまだ実が余っているあたり、本当にあの実の大きさがよくわかる。もしかしたら、カトレアさんたちの分を考えての分量なのかもしれないけどね。とりあえず、今は目の前にあるメニューに集中しよう。

 

 ヒカリが用意したメニューはとても豊富で、パフェにシャーベット、デコレーションケーキに、ゼリー、プリン等々多岐にわたる。冷やしたり焼いたりの過程はポケモンたちの力を借りたみたいで、そこにヒカリのあらゆる知識をプラスして作られたそれらは、本来もっと時間がかかってもおかしくないものばかり。それも外で作られているのが信じられないくらいのラインナップだ。

 

 外にいるのにいきなり現れたデザート群に、ボクたちのテンションもシビルドンのぼりだ。

 

「とりあえず今できる分をありったけ作った感じね。本当ならもっと凝ったものを作りたかったのだけど……」

「十分凝ってるっつーの……ほんとすげえな……」

「ヒカリの腕も凄いし、これだけ作ってまだ一個分使いきれてない赤い実も本当に凄い……」

 

 ヒカリの言葉にツッコミを入れるジュンと、ヒカリの腕と赤い実両方に素直な賞賛の言葉を零すボク。ガラル地方のみんなにとっては初めての出来事でお口あんぐり状態だけど、シンオウ地方の頃から経験しているボクたちはすでに慣れてしまっている。いや、それにしても凄いのは凄いんだけどね?ボクもヒカリに料理を教わってはいたけど、ここまでのモノは絶対に作ることが出来ない。

 

「こ、これ……本当に食べても……?」

「勿論。そのために作ったもの」

「じゃ、じゃあ……?」

「さっそく……」

「ええ、いただきましょうか!!」

「「「わ~い!!」」」

 

 ようやく動けるようになったユウリとホップ、そしてマリィは、ヒカリの言葉と同時に勢いよく赤い実のデザートに走り出す。

 

「みんなもたくさん食べてよね!!」

 

 そこから更に声をかけられるのはみんなの仲間のポケモンたち。ユウリたちに続くように吠えた彼らは、ユウリたちと同じようにテンションをあげながらかけていく。

 

 そこから始まるのは一種の宴。食べて騒いで楽しむみんなの姿はとても楽しそうで、みているだけでこちらも楽しくなってきてしまう程。それは近くにいた野生のポケモンたちにも伝染しており、気づけばポケモンの数もとんでもないことになり始めていた。

 

「こうしちゃいられねぇ!!オレも楽しむぞ~!!」

 

 そんな光景を前にしてジュンが耐えられるわけもなく、人とポケモンが交じり合って楽しんでいる宴へと突撃していく。

 

「さて……」

 

 本当ならボクもここに混ざりたい。だけど、最後のやることをやらないといけない。ボクはヒカリと顔を合わせて頷き、ヒカリが今作った食べ物の一部をもって伝説の3鳥の前に歩き出す。

 

「待たせたわね。はいこれ。あんたたちの目的はこれでしょ?」

「ギャォッ!?」

 

 未だに警戒しながらこちらを見ていた彼らに近づいたヒカリは、何でもないようにそっと今作ったばかりのモノを置いた。この行動は全く予想していなかったみたいで、声を上げたファイヤーは勿論、こちらを見つめているサンダーとフリーザーからも同じような空気を感じた。

 

「あんたたちがお腹を空かせているのは戦ってみた時のちからの足りなさとか、ここに来て真っ先に赤い実にかじりついたところとかを見て分かってはいたけど、それにしてもやりすぎなのよ。最初のぶつかり合いで、いったいどれだけのポケモンが怯えたと思っているの?」

 

 3鳥たちの視線を集めていると自覚したところから始まるのはヒカリのお説教。そんな彼女の視線はダイ木の上へと注がれていた。

 

 その先には、わいわい騒いでいるみんなの輪になかなか入れないでいる、怯えたような視線でこちらを見ていたホシガリスたちだった。

 

「本来なら食べ物に飛んでいくような子たちなのに、さっきのことが怖くてこちらにこれない……小さいポケモンの、些細な出来事かもしれないけど、あの子たちにとっては死活問題。……少しくらい、周りのことも気に留めなさい。あと、わたしの料理道具を傷つけたことは今でも許してないから」

 

 ヒカリの圧が、道具の話になった瞬間だけ強くなった気がしたけど、気にせずヒカリの言葉を待つファイヤーたち。ここで突っ込んだらやばいと本能が理解したのだろう。

 

「……けど、わたしもちょっとやりすぎたとは思っているわ。だから、これはそのお詫び。そのまま赤い実を食べるよりも、遥かに美味しいんだから感謝しなさいよね?」

 

 そう言い残し、やることは終えたと離れていくヒカリ。そんなヒカリについて行きながら、ボクは声をかけた。

 

「もういいの?」

「大丈夫よ。あの子たち、凄く賢そうだもの。わたしの言うことだって理解出来ているはずよ。それに……」

 

 ヒカリが振り向いたのでボクも立ち止まって後ろを向く。

 

「あ……」

 

 するとそこには、先ほどヒカリが持っていったものを咥えて、木の上のホシガリスのもとに持っていき、いくつかに分けてホシガリスたちと一緒に食べている3鳥の姿があった。

 

「ふふ。……さぁフリア!速く食べないと無くなっちゃうわよ?あいにく、残りはジャム用とカトレアさんたち用だから、おかわりなんてないわよ?」

「大変。それは速く食べなくちゃ」

 

 人とポケモンによるフルーツパ―ティ。それは、伝説をも巻き込んだ小さな祭りとして、しばらく続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




赤い実

あれだけの料理を作って、まだ余っているという実。一体どれだけ大きいんでしょうね?

料理

全部を同時進行すれば、一応2時間以内に作ることはできますが……それでもかなり難しいかと。これが出来るヒカリさんは、速く店を出してプロになった方がいいかもしれません。

3鳥

本当なら渡り鳥というくだりも入れたかったのですが、彼らが渡り鳥ということはどうやっても知りようがないので、そのワードは出せませんでした。こういうところはちょっともどかしい。

ホシガリス

このダイ木、実機では何回も揺らすと……




ポケモンのDLCの発表もありましたね。イイネイヌの悪い犬感が凄くてわらってしまいました。




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