176話
「さて、んじゃぁ最後の伝説の話をするか!!」
「「「おお〜!!」」」
伝説の3鳥とのやり取りがあった次の日の朝。またリビングにて全員が集合したところで、ピオニーさんがいつもの大声で宣言し、その声にジュン、ホップ、ユウリが元気に返答。マリィとヒカリも声こそ出してはいないものの、その表情は『楽しみ』という感情で埋まっていた。特にヒカリは、昨日あれだけの重労働を行っていたので今日の体調が若干心配だったものの、今のこの感じを見るに大丈夫そうだった。さすがは旅経験者。このあたりの体調管理は完璧だ。
「ううん……」
「フリア?どうかしたの?」
「ううん、ちょっとね……」
むしろ、今日に関してはボクの方がいろいろ考えこんでいるから、周りから見たら少し体調が悪そうに見えてしまうかも知れない。その証拠に、ボクの顔を横からユウリが心配そうにのぞき込んできた。実際には体調自体は悪くないから普通に言葉を返すのだけど……。
「……」
ふと視線を横に向ければ、ボクと同じように悩んでいるそぶりを見せるカトレアさんの姿。というのも、昨日夕飯の前に聞こえたあの謎の鳴き声。実は、あの時聞いたものが最後になったわけではなく、それから夕飯を食べている時も、お風呂に入っている時も。果ては寝る直前にも聞こえ、そのたびにカトレアさんと話し合って考えた。しかし結果はダメ。しかも不再議なことに、あの鳴き声はボクとカトレアさんにしか聞こえていないみたいで、ユウリたちにそれとなく聞いてみても首を傾げられるだけに終わってしまっていた。
(やっぱり意味が分からないし、気になっちゃうなぁ……)
ボクとカトレアさんにしか聞こえない謎の声。そのことが気になりすぎて、眠れないとまではいかなくても、ボクたち2人の思考はかなりそちらに割かれていた。コクランさんにも相談してはいるけど、心当たりはないらしく、結局わからずじまい。そのままこうして今日を迎えてしまったという訳だった。
「今日は最後の伝説に挑むんだから、そんなに暗い顔したら楽しめないよ?」
「そう……だね。うん。そうしなきゃ!」
一晩経っても解けない謎に凄く頭を悩ませてしまったけど、ユウリの言う通りこれからみんなで冒険に行くんだ。そんな中ボクだけ難しい顔を浮かべているのもおかしな話で、それは他の人を心配させるだけでなく、せっかくの明るい空気を壊しかねない行為だ。どうせ考えても解決できないのなら、今は放っておいてこっちに集中した方がよさそうだ。幸いにも、ボクが他のことに意識を向けている間にもカトレアさんは考えてくれるだろうし、昨日も感じたけどもしかしたらこの謎の声は、これからピオニーさんに聞く最後の伝説に関係があるものかもしれないしね。
「坊主、悩みは解決か?」
「ばっちり……とは言いませんけど、区切りはつきました!!大丈夫です!!」
「そうかそうか。んじゃ、はじめっぞ!!」
ボクの様子を見て判断したピオニーさんが、懐から紙を一枚取り出して机に叩きつける。
「いよいよ最後の伝説……『神秘!伝説の王と愛馬のキズナ伝説!!』だ!!」
「「うおおお!!」」
バンッという大きな音と共に告げられた最後の伝説に、ホップとジュンが声をあげながら拳を突き上げる。思いの他テンションの高い2人に気をよくしたピオニーさんが、そこから言葉を続けた。
「まずはおさらいから行くぜ。ここで言われている『伝説の王』はこのフリーズ村で始まった噂だ。それは村の中心にあるあの意味深な像が物語っているな!!」
「確かに、ここの初めて来たときは寒すぎて気にも留めていなかったけど、変な像が立っていたよね」
「それはユウリだけと。みんなこの村に来た時にまず目が入ってたと……」
「あれ……?」
ユウリの言葉にみんなで苦笑いを浮かべるけど、話が逸れそうなのでピオニーさんに視線を向けて続きを促す。
「とにかくだ。あの像がその『伝説の王』であり、噂では『豊穣の王』って呼ばれているやつだ。だが、前も言った通りオレが知ってる姿とちと違うんだよな」
「頭がちょっと違うんだっけ……?」
「ピオニーさんの写真には、何か被り物をしているような像が映っているけど……」
「この村にある像にはそんなもんなかったよな?」
ピオニーさんの言葉に乗っかる形でヒカリ、ボク、ジュンが今の状況をまとめる。話題にあがった像はこの村でもかなり目立つところに建っており、この民宿の窓からも確認ができるけどやっぱり頭には何もなく、ピオニーさんが見せてくれたものとはちょっと違っている。
「うん……やっぱりかぶってないよね……」
「被り物……やっぱり被り物も木製なのか?」
「さぁ……って『も』って……どういう事と?」
ユウリも一緒に確認していたのでボクと同じような感想を述べると、ホップが気になることを述べた。マリィも突っ込んでいるけど、あの場所に建っている像が木製だってことは誰も知らない情報だ。それをホップが知っているということに少なくない驚きを感じている。
「どういうことって、この前ジュンと外で遊んでた時にたまたま近くを通ったから、気になって少し観察したんだぞ。最初は銅とか金属なのかなと思いながら近づいてみたんだけど、明らかに金属系のそれじゃなくてな……それで、ますます気になって少し触って見たら、明らかに木の感覚だったんだぞ」
「なんというか……ジュンとはまた違った好奇心の伸び方だよね」
「……なんか、ホップを褒めながら、またフリアにサラッと毒を吐かれた気がするんだが?」
「気のせいだよ」
未知のものにただ走るだけのジュンとは違い、物事の根幹に疑問を持とうとするホップの姿勢は、どちらかと言うとシロナさんやナナカマド博士のような研究者が持つ視点によく似ている。もしかしたら、ポケモン博士の道を選んでみたら、ホップは意外と活躍するのではないかと思ってしまうほど。まぁ、今はチャンピオンをめざしているし、ホップ自身がバトルの方が好きそうだし、未来は彼自身が決めるものだから変に口出しはしないけどね。
「とにかく、あれが木製なら、頭についているこれも木製ってことでよかと?」
「うん、その方向性でいいんじゃないかな?」
「じゃあまずはこの頭の部分を探しましょうか。ついでに、この村の人への聞き込みも行いましょ?この伝説がこの村の発祥であるのなら、色んな人から情報が聞けるはずよ」
少し話が逸れてしまったところをマリィが修正し、その言葉にユウリとヒカリが続く。ヒカリが出した提案は凄く真っ当で、まずは何から始めるかで少し悩んでいたボクたちの行き先が定まった。そしてやることが明確になったのなら、いつも通り彼が動き始める。
「おし!じゃあ早速聞き込みと確認、そして頭探しに行こうぜ!!」
我先にと扉の方に歩いていくジュンの姿に、自然とやる気を引っ張られたみんなは苦笑いを浮かべながらも身体を椅子から離していく。なんだかんだ、こういう先陣を切ってくれる人というのは心強かったりするものだ。だからこそ、みんなこんな表情を浮かべながらも内心少し感謝しているのだろう。他でもないボク自身がその感情を抱いていることだしね。
「遅れた奴!そんでもって、この伝説に貢献できなかった奴は罰金1000万円な!!よーい、どん!!」
「あ、ずるいぞ!!オレも頑張るぞ!!」
「「「「……」」」」
なんて、ちょっとプラスの感情を抱いた途端にこれだ。彼は褒めたらその分評価を下げないと気が済まないのだろうか?今回ばかりは、素直について行くことの出来るホップがちょっとうらやましい。
「はぁ……なぜかどっと疲れた気がするわ……まぁ、今に始まったことではないのだけど……」
「だねぇ……ま、気にせずいつも通りいこっか」
慣れたくないけどこの流れに慣れてしまったボクとヒカリは渋々頷きながら外へ。
「あ、ちょっと!おいて行かないで~!!」
「はぁ……なんか、出鼻くじかれたと……」
続いて駆け寄って来るユウリとマリィ。
「良い報告、待ってるぜ~!!」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
そして、そんなテンションの落差がひどい冒険者を送るのが、またもやテンションが全然違う2人。
「ほんと、まとまりないなぁ……」
思わずそんな言葉を零してしまいながらも、ボクはコクランさんとピオニーさんに『行ってきます』と返しながら、フリーズ村の住人の元へと足を運んだ。
☆
「そうですか……」
「ごめんねぇ……」
「いえ、ありがとうございました!!またお話させてください!!」
「いやいや、あたしも若い子と久しぶりに話せて楽しかったわ。またいつでも、話しにおいで」
「ぜひ!では失礼します」
ボクがちょっと残念そうな顔を浮かべてしまっていたので、それに対して申し訳なさそうな顔を浮かべてしまったお婆さんに慌てて謝りを入れるボク。そのあとは話も区切りがついたので、こんなボクに対しても嫌な顔一つ浮かべることなく対応してくださったおばあさんにお礼を言って離れ、近くでボクを待っていたみんなの元へと歩いて行く。
「どうだったと?……って、その様子だと……」
「うん、特に何も……収穫はゼロだね」
「はぁ……まさかこんなに難儀とは思わなかったなぁ……」
ボクが近づいてきたことに対し、質問を投げながらもどこか諦めたような表情を浮かべたマリィと、ボクの返答を聞いて『やっぱり』という空気を出しながら空を仰ぐユウリの姿。ヒカリとホップも特に期待していなかったようで、その表情はどこか浮かない。ジュンに至っては、さっきまでのやる気がどこに行ってしまったのかと疑いたくなるほどのやる気のなさそうな表情を浮かべていた。
「今までで一番難しい捜査になりそうね」
「なんだかんだ、他2つは明確なヒントとか、前情報があったからなぁ……今回はそれがないのが厳しいぞ……」
ヒカリとジュンの言葉を聞きながらう~んと唸るボクたち。2人の言う通り、何もない所から手探りで探していく今回の伝説は、今まで歩んできたもののどれよりも難しいものとなりそうな雰囲気を醸し出していた。
「もしかしたら、今までの行動を振り返ってみたら何か見つかるかもしれないし、もう一度考え直してみよっか」
このままではどんどん暗い雰囲気になってしまうので、とりあえずまずは行動をしようとボクから一つ提案し、みんなで考えてみる。
民宿を出たボクたちがまず行ったのは、このフリーズ村にある像の確認だ。ホップの言葉を疑っているわけではないけど、やっぱり一度は自分の目で確認したいということで、何かを象られた像を直接触ることで確認したボクたちは、改めてその像が木製であることを知る。雪が降りしきるこの場で、それでも立派に立っているその像は、どうやら地面に埋められる形で作られているみたいで、ちょっとやそっとではびくともせず、まるでこの地の守り神なのではないかと思わせるような不思議な力を感じさせた。しかし、やっぱり写真に写っていた物はなく、こうしてまじまじと見つめてみるとどうにも物足りなさを感じてしまう。定期的に手入れはされているのか、雪はそんなにかぶっていなかったけどね。
像に関してはこれくらいで、次にボクたちが行ったのはこの像の頭探しだ。もしピオニーさんから頂いた写真通りだったり、ボクたちが感じた物寂しさが事実ならば、この像の頭に被せるものがどこかにあるはずだ。そう考え、このフリーズ村を一周していろいろ探し回ってみた。しかし結果としては惨敗。頭のあの字も見つからないのではという程どこにも見当たらなかったし、家の裏に転がされているなんてこともなかった。
では、もしかしたら誰か別の人が管理しているのではないか。その考えを思い描いたボクたちは、次にこの頭を探すついでに、今回の『豊穣の王』に関する情報の聞き込みを開始した。このフリーズ村が発祥である伝説ならば、この像について詳しい人も多いだろうし、同時にこの像の頭が見つかる可能性も高いからだ。……まぁ、そんなこと言わなくても誰だって思いつくよね。実際、ボクたちの一番の目的はこれだったのだし。というわけで、さっそくこの伝説についてこの村の住民たちに質問をして周り、豊穣の王について聞き込みを開始した。今回の一番の目的ということもあり、ジュンが更にテンションをあげて臨んだのが今でも記憶にしっかりとある。が……
聞く前からわかる通り、結論から言うとこちらも収穫はゼロだった。
誰に聞いても、『そんなものは知らない』。もしくは、『本当にそんな存在がいるのなら、今すぐこの村を豊かにしてほしい』と言った愚痴しか聞くことがなかった。フリーズ村にいる住民は決して多いとは言えないので、全員から話を聞くことは簡単だったのだけど、その全員から同じような言葉が出てくれば、さすがにボクたちも頭を抱えざるを得ない。唯一村長さんだけは少しだけ知識が深そうに感じたけど、そんな村長さんも、『実際にいれば観光客が~』と愚痴をこぼすだけに終わってしまった。
そして、先ほどのおばあさんとのやり取りに戻る……というわけなのだけど……
「だめね、振り返ってみても何もわからないわ……」
「しいて言えば、『何もわからないこと』がわかっただけだったね……」
みんなで今日の行動を改めて口にしてみたけど、やっぱり手掛かりはゼロ。ヒカリとユウリの言う通り、出てきた結論は『わからない』だった。
「っていうか、なんでこの村発祥の伝説なのにこの村で知っている人がゼロなんだ?おかしくないか?」
「確かに……発祥の地なら、ガラル地方のいろんなところにある剣と盾の英雄よろしく色々証拠や話がここであってもおかしくなかと……」
いい加減じれったくなったジュンが、言葉に若干の苛立ちを募らせながらそもそもの謎を口に出す。マリィの言う通り、あの剣と盾の英雄と比べ、これだけたくさんの人に話を聞いたのに何一つ話題がないというのは明らかにおかしい。
「もしかして、この伝説はハズレ……とか?」
「おいおい、ここに来てそれはないぞ……」
そのあまりにも証拠がないことから、いよいよユウリとホップが諦めの言葉を出し始める。確かに、伝説の話というのは眉唾物の方が多い。むしろ、今までがどちらも大当たりだったことの方が本来はすごい事なのだ。そう考えると、この伝説がハズレだったとしても何らおかしなことはなかったりする。けど……
「にしては、あの像は大切にされているんだよね……」
ボクはどうしてもこの村の中心にあるあの像が気になって仕方がない。何の意味もなく、あの像が大切にされている理由がよくわからないからだ。それに……
(フォ~……フォ~……)
(まただ……また聞こえた……)
ボクたちがこの伝説を調べ始めてからというもの、あの謎の声が聞こえる頻度が明らかに上がってきているのだ。相変わらずこの声はボク以外には聞こえていないみたいだから、明確な証拠として提示することが出来ないのが残念だけど、どう考えても何か関係があるとしか思えない。ただ、同時に少しの違和感も感じた。
(でも、今まで聞こえてきた声よりも……少し小さくなってる……?)
それは声の大きさだ。ボクたちの雰囲気が、『この伝説はハズレなのでは?』という答えを出しそうになるにつれて、聞こえてくる声がどんどん小さくなってきている気がする。それはまるで、今にも消えてしまいそうな、蠟燭の火のようなはかなさで……。
(やっぱり今回の伝説と関係があるのかな……)
声の聞こえてくる回数と、ここに来て小さく、弱々しくなっていく声に、朝に捨て去ったはずの疑問が再び浮かび上がってくる。どうにも自分の中で、この2つの関連性がどんどん明確化されているような気がしてならない。
「ひとまず、一旦民宿に戻りましょうか。ここに立ってても寒いだけだし……」
「うん……ちょっと温まりたい……」
「ピオニーさんとも、話しておきたいしな」
ボクが1人頭を悩ませていると、ヒカリが一旦帰ることを提案した。この案に反対する人は特におらず、寒がりのユウリと、今回の伝説に疑問を持ち始めたジュンは特に賛成の色を強くしていた。ボクもこれといって反対する理由もないので、ヒカリに提案に頷く。
全員の意見が揃ったところで、ボクたちは揃って民宿へ。大きい村では無いので、シロナさんが借りている所へはほんの数分で到着する。もう慣れきってしまったその民宿に、今更緊張をもつ必要も無いので特になにか思うことも無く扉を開け、挨拶をする。
「「「「「「ただいま〜」」」」」」
「おや、お帰りなさいませ。随分とお早いのですね」
民宿に戻ったボクたちを迎え入れたのはコクランさん。コクランさんの言う通り、ここを発ってから時間はあまり経っていないので、特に朝と変化は無い。近くで椅子に座り、若干眠たげな顔を浮かべながら、本に視線を落としているカトレアさんにも特に変わった様子は見受けられなかった。……もっとも、思考は間違いなくあの声に向けられているだろうけどね。だって、ボクが頻繁に聞こえたというのなら、カトレアさんも間違いなくたくさん聞いているだろうから。
「フリア……」
「はい。わかってはいるんですけど……」
なんてことを考えていたらさっそくカトレアさんから声をかけられる。しかし現状はボクから出せる情報は特にない。カトレアさんもあまり期待はしていなかったみたいで、ボクの言葉を聞くと同時に『そう』と言葉を残し、再び本へと視線を落とした。そんなボクとカトレアさんのやり取りを横目で見たコクランさんは、今のやり取りで何となく察したみたいで、少し影を落とした表情で声をかけてきた。
「その様子だと、あまりいい情報は得られなかったみたいですね……」
「そうなんだよ~……被り物はおろか、知っている人すらいなかったんだよな~……」
「知っている人すらいない……それはおかしな話ですね……」
ジュンの愚痴を聞いてすぐさま疑問点に辿り着くコクランさん。このあたりの思考の速さは本当に凄いと思った。
「だよな~……だからもしかしたら今回の伝説はハズレなんじゃないかと思ってな……そのあたりをピオニーさんに確認したかったんだが……」
「成程、そういう事でしたか。ピオニー様ならあちらにいますよ」
ジュンの提案に納得と言った顔をしたコクランさんが、リビングのソファへと指を差す。そこには……
「ぐがぁ……ぐごぉ……」
物凄く気持ちよさそうな顔をして寝ているピオニーさんの姿があった。
「なぁ、この人ってシャクヤって子を待つためにここに残っているんだろ?なのに寝てて意味あるのか……?」
「あ、あはは……」
その姿に思わず呆れた声をだすジュンと、苦笑いを零すユウリ。ボクたちが外で寒い思いをしながら情報を集めているのに、ピオニーさんはこの暖かい部屋でくつろぎまくっていることに少なくない何かを感じているみたいだ。声に出していないだけで、他のみんなもちょっと不満げな顔を浮かべていた。
「本当に、この人って自由奔放と……」
「この人に振り回されているシャクヤの気持ち……元々わかってはいたけど余計に同情するわ……」
「それよりも報告どうするんだ?さすがにたたき起こすっていうのはちょっと……」
これだけ色々話しているのに一向に起きる気配のないピオニーさんに苦言を呈するヒカリとマリィ。確かに文句を言いたくなる気持ちは分かるけど、ホップがボクたちの目的に引き戻すことによって、みんなの思考が正しい方向に流れ始めていく。そこからは、これからどうするかの会議が始まっていったのだけど……ボクはそれ以上に気になるものがあって、どうしてもその会話に集中できなかった。
「う~ん……」
「どうしたのフリア?」
みんなの会話から少し浮いて声をあげているところが気になったユウリが、ボクに対して言葉を投げて来る。それに対し、ボクもみんなの意見が聞きたかったので、思い切って今思っていることをしゃべってみた。
「ねぇ、ピオニーさんが枕にしているあれって……もしかして……」
「「「「「え……?」」」」」
ボクの言葉に沿って、ピオニーさんの頭の後ろにおいてあるものに視線を動かしていく。
それは、枕にしては珍しく木でできており、まるく膨らんだようなその姿は、どこかで見たことがあるような形をしていた。例えるなら……
ピオニーさんからもらった写真に写っていた、あの像が被っていた冠のような……。
「「「「「ああ~~~!!」」」」」
「木彫りの頭!!こんなところに!!」
「ふごがっ!?」
ピオニーさんが枕にしているものが、まさしくボクたちが求めているものだと知った瞬間、ジュンが物凄い速さでその枕を奪い取り、駆けだしていった。その際に、枕をいきなり奪われたピオニーさんが頭を思いっきり落とされてソファの角にぶつけてしまっていたけど、それを心配する人は誰もいなかった。……今回ばかりはちょっとフォローできそうにないので、ボクもノーコメントを貫こう。
「これ!!早速あの像に被せて来るぜ!!」
風のように出ていったジュンを見送るボクたち。ひとまずこれで1つ話が進みそうで何よりだ。
「はぁ……灯台下暗しとはよく言ったものね……まさかここにあったなんて……」
「あたしたちの時間、返して欲しかと……」
「いてぇ……な、なんだなんだ!?地震でもあったのかぁ!?」
ヒカリとマリィがどっと疲れた表情を浮かべながら言葉を零す中、ようやく目が覚めたピオニーさんが慌てて周りを見渡し、みんなに何事かを聞いて回るが、みんなから塩対応をされてしまう。
「畜生……なんだってんだよ……いつの間にかお気に入りの枕ちゃんもいなくなっちまってるしよぉ……」
「あはは……」
その対応に若干しょんぼりとした表情を浮かべるピオニーさん。流石にここまで来るとちょっとかわいそうに見えてきた。やっぱり後でフォローを……
「しなくていいわよフリア」
「だから読まないでって……」
しようと思ったところでヒカリに釘を刺される。っていうか、またさらっと心を飛んでくるあたり、下手をすればカトレアさんよりもエスパーに長けているのではないだろうか。
「とにかく、ようやく情報が見つかってよかったぞ」
「まだどうなるかわからないけど、手詰まりではなくなったもんね」
またもや脱線しそうになったところを引き戻すホップ。そこにユウリが乗っかることによって話が再び伝説の件の方向へ。ユウリの言う通りこれからどうなるかはわからないけど、とりあえずは一歩前進だ。
「じゃあそろそろジュンを追いかけましょうか。被り物も載せているでしょうし……」
「あたしも確認したいし、賛成と」
「これで写真と同じになっているといいんだけど……」
「だな。それを確認するためにも早く行くぞ!」
みんなが像を確認するために足を動かし始めたので、ボクもそれについて行こうと足を動かし始める。
(これで新しい情報が手に入ればいいのだけど……)
(フォ~……フォ~……)
「「!?」」
そんな時にまた聞こえた不思議な声。それも、今までで一番大きな声で、ボクの頭を駆けて行った。
「フリア……」
「はい……」
勿論ボクと一緒に気づいているカトレアさんもこちらを見て来た。
(やっぱり……この声の正体って……)
うすうすは勘づいていた。けど、最後の答えが出てこなかった。
でも今まさに、その答えに近づいている。そんな気がした。
豊穣の王
此方で言う土着神みたいな扱いですよね。信仰がなくなれば存在を保てなくなってしまう神様と同じ雰囲気を感じます。実際に、現在の豊穣の神様は誰にも覚えてもらえていませんしね。
像
全部木製なんですよね。これだけ雪が降るここだと、簡単に傷んでしまいそうなので、おそらく表面に何か塗ってあるのでしょうが……技術とか、彼の出来事とか考えると、いろいろハテナが浮かびそうですよね。いつ建てられたのでしょうか……。
枕
実機でも枕にしていたみたいですね。硬すぎて頭痛めそうです……。
こうしてみると本当に鋼の大将という言葉が似合いますよね。頑丈な方です。