【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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177話

 ボクの鼓膜を叩いてきた不思議な声は、外に飛び出すことによってさらに大きくなっていく。それはまるで、今この瞬間にもボクに近づいてきているようで……

 

「おお、完璧だな!!サイズもぴったりだし見栄えもいいぞ!!」

「何よりも写真通りの見た目と。これでしっくりくるとね」

「うんうん。かっこいいね!!」

 

 ジュンが被り物を乗せたことによって、ピオニーさんの写真と同じ姿になった像を見て声を上げるホップとマリィ、そしてユウリ。ようやく見ることになったその姿を前にして、物凄くテンションをあげている3人だけど、それ以上に頭に響く声に気を取られすぎてそちらに反応できなかった。

 

「声……だんだん近づいている……でもどこから……」

「フリア……?どうしたの……?」

「なんだ?せっかく像が完成したのに、なんでフリアは上の空なんだ?」

 

 どんどん大きくなっていく声に思考を奪われ、フリーズ村のあちこちに視線を飛ばすけど、一向にその声の主が見えてこない。そのことがどうしても気になってしまい、ヒカリとジュンから声をかけられてしまっても反応を返すことが出来ない。そんなボクの態度が気になったみんなは、像のことは一旦おいておいて、代表してヒカリがボクに声をかけて来る。

 

「フリア、本当にどうしたの?あの像の頭に物を乗せてから、明らかにちょっとおかしいわよ」

「えっと……」

 

 さすがにボクもこのまま無視……いや、無視しているつもりはないんだけど……このまま反応しないのはおかしいから言葉を返すんだけど、みんなが聞こえていない声に対してどういう説明をすればいいのか分からなくて、ついつい言葉が詰まってしまう。そんなボクの様子にますます疑念を抱いて行くヒカリたちに、『もう思い切って全てしゃべっちゃおうか』なんて思った時、再び頭に声が駆け巡る。

 

(こちらである……気づいてくれ……)

 

「っ!?」

 

 もう何回も聞いた不思議な声。しかし、今までは何かの鳴き声としてしか反応できなかったその声は、今回ははっきり意味の分かる言葉として耳に届く。何かの鳴き声なんかじゃなくて、人間の言葉を話してきたその不思議な声に、少なくない驚愕を感じた。しかも、それだけじゃない。

 

「ねぇ……今、何か聞こえなかったかしら?」

「ヒカリもか?オレも何か聞こえた気がしたんだよな……」

「じゃあ今の声ってきのせいじゃないってことと……?」

「その様子だとみんな聞こえてたんだ……何かの鳴き声みたいだったよね?」

「ああ、何を言っているのかまではわからなかったけど、確かに何かポケモンのような生き物の鳴き声だったぞ」

 

 どうやら今まで声を聞き取ることが出来なかったヒカリたちまでもが、今回は声を聞き取ることが出来たようだった。ボクと違って、声の内容までは聞き取ることはできなかったみたいだけど、少なくともボクとカトレアさんが今まで聞いてきた声までは聴くことが出来ているようだった。

 

(ボクとカトレアさんが聞こえていたものがみんなにまで聞こえているってことは、この声の主の力が戻ってきたって事……?じゃあ何をきっかけに……いや、十中八九ジュンがあの像の頭に被り物を乗せたことが原因なんだろうけど……)

 

「フリア……!」

「カトレアさん!!」

「お嬢様!急に出歩かれては危ないですよ!!」

 

 声が大きくなってきた理由に頭を回しているときに突如かけられる声。振り向けばカトレアさんが家から飛び出している所であり、その後ろにはいきなり動き出したカトレアさんに驚きながらも、従者としての職務を全うしているコクランさんの姿があった。ヒカリたちも、急に民宿から飛び出してきたカトレアさんの姿に驚きを隠せない様子だった。

 

「今の聞いたわよね……?」

「はい。確かに『こちらである……気づいてくれ……』って言ってました」

「あたくしも同じ言葉が聞こえたわ……声も大きくなっているし……ここまでくれば場所も特定できる……」

「「「「「え!?」」」」」

 

 一方で、カトレアさんが出てきた理由をしっかり把握しているボクは、カトレアさんからの質問にすぐさま返す。ボクとカトレアさんのやり取りにびっくりした声を上げるみんなだけど、コクランさんだけは事情の一端を知っていたからすぐさま適応する。

 

「成程、今の声……あれがお嬢様たちがいつも聞いている声でしたか……そして、お嬢様たちだけが言葉の意味を受け止めることが出来たと……」

「そうよ……ずっと頭に響いて気になっていたけど……ようやく答えが出そうね……」

「声の方向は……あっち……ですよね?」

 

 カトレアさんの言葉に頷きながらボクは感覚的に声が聞こえたと思われる方向に指を差してみる。その先は、ボクたちが借りている民宿の裏手を進んだところにある小さな広場だった。木々に囲まれたこの広場は、もしこの村が子供であふれていたなら今頃雪だるまがたくさん並んでいたことが予想されるくらいには絶好の遊び場ポイントのようにも見えた。

 

「あっちに何かあるのか?」

「さっき見て回った時は何もなかったけど……」

 

 ボクが指を差した方向を見ながら言葉を零すユウリとホップ。2人の言う通り、先ほど村を回った時にはあの広場にはなにもいなかった。隅々まで探したうえ、特に何か障害物があるわけでもないので見落とししているという可能性だってない。でも、確かに今聞こえてきた方向は間違いなくあちらだ。他のみんなも先ほど何も見ていないことから半信半疑になっているけど、それでもここは信じてもらいたい。

 

「行きましょう。絶対何かいるはずだから……」

「ええ……」

 

 先陣を切るのは勿論ボクとカトレアさん。真っすぐはっきりと発言し、迷いのない足で進んで行くボクたちの姿を見て、信じるしかないと判断したユウリたちも後ろをついてきてくれた。そのことに対してちょっと申し訳ない気持ちを抱きながらも、それ以上にこの声の主が気になるので、ボクとカトレアさんはザクザクと音を立てながら進んで行く。とはいえ、それほど距離があるわけでもないので、目的の場所にはすぐにたどりつく。

 

「君は……」

「あなたが……声の主なのね……」

 

 広場に着いたボクたちを待ち受けていた物。それは、1人のポケモンと思わしき生き物だった。

 

 顔の形はシキジカやオドシシのそれに似ており、頭にはカンムリのような、巨大な緑色の球体を頭上に乗せている。また、首周りには数珠のような、小さな球体が連なった首飾りをかけていた。大きな冠をかぶっているせいで頭の主張が激しいけど、対する身体は細く、足は特に顕著だ。頭を除けば全体的に小柄な印象を受けてしまうこの子は、しかしそれでいて、その細さが彼の優雅さを強調しており、佇むだけで威厳が確かに伝わって来る。

 

 対面するだけで確かな緊張感がある。それがかのポケモンだった。

 

(よくぞ……ヨの言葉を受け止めてくれた……)

「いえ、むしろ気づくのが遅れてごめんなさい」

「言葉の反応を感じるのに……時間をかけてしまったわね……」

「え!?フリアとカトレアさんは何を言っているのかわかるのか!?」

「……ジュンには、この子の声はどんなふうに聞こえてるの?」

「えっと……『かむんぱ、くらうんぱ』……?」

「なにそれ……?」

 

 対面した子から聞こえた声に返事をすると、ジュンから驚きの声が上がる。どうやらジュンを含め、ボクとカトレアさん以外は彼の声を聞き取ることができないらしい。試しにジュンになんて聞こえたのか聞いてみると、返ってきたのは謎の呪文のような言葉だった。全く意味の分からない言葉は、意味が伝わっているボクたちからしたらちょっとした悪ふざけのようにも聞こえたんだけど……ユウリたちも真面目な顔をしているままだし、ヒカリに関しては何回も頷いていたからこの言葉に間違いはないのだろう。とりあえず、このことに関しては置いておいて、今はこの子と対面することにしよう。

 

(ふむ……オヌシらにはヨの言葉が正しく伝わっておるが、他のモノには伝わっておらぬようだな……)

 

「ですね。他のみんなには呪文のような言葉となって伝わっているようです」

 

(成程……では……)

 

「おいおいおい!!ちとトイレに行ってから出てみたら民宿に誰もいねぇからド・驚いちまったぞ!!……ん?なんだその緑と白の奴は……?」

 

 ボクとジュンのやり取りから、自分の言葉が全員には正しく伝わっていないことを理解した彼は、何か解決案を考えようとしていた。そんなところに、いつの間にか自分以外が外に出ていることに気づいて慌てて外に出てきたピオニーさんが合流してきた。急に全員いなくなったら確かにびっくりするだろう、ピオニーさんの気持ちも何となくわかる。

 

「頭でけぇ!?なぁなぁ!!なんなんだこいつ!!」

「え、えっと……」

 

(新しい人の子か……ふむ、これならできるな……)

 

「え?」

 

 そんなピオニーさんがこの子を見て純粋な言葉を発すると同時に、ピオニーさんに一番近いマリィに説明を求めた。急に話を振られたことと、まだ彼の言葉の意味を理解できていないため、情報が整理できていないマリィは当然この言葉に返すことが出来ず、たじたじな反応をしてしまう。そんな2人のやり取りを見て、ボクがどうにかしようと思った時に、彼から何かを決意したような声が聞こえてきた。それがボクの中の興味を一気に惹き、思わず彼の方に目を向けてしまう。すると、彼は一瞬空に浮かび上がったと思ったら、ピオニーさんの目の前に急降下。

 

「おわぁっ!?」

 

 突然目の間に現れた彼に思わず変な声を上げるピオニーさん。他のみんなも、声を出してはいないけどいきなりピオニーさんの目の前に移動したことに少なくない驚きを示していた。

 

「な、なんだぁ……?」

 

 目の前に現れたと思ったら、じっと自分の目を見つめてくる彼に、疑わし気な声を上げるピオニーさん。しかし彼はその言葉に対して一切返答する気配を見せずに、ただひたすら見つめ続けるだけだった。その時間には不思議な圧力があり、外から見ているボクたちは2人の間に入ることが出来ずにいた。

 

 そのまま待つこと数秒。

 

「な、なぁ……こいつは一体……」

 

(むん!!)

 

「え!?」

 

 なにもないことにしびれを切らしたピオニーさんが、今がどういう状況なのかを確認するために口を開いた瞬間、彼の目力が強くなり、一瞬だけほんのりと青色に発光する。そのことに驚いてしまったボクは思わず変な声をあげてしまう。

 

「どわぁっ!?」

「「「「「ピオニーさん!?」」」」」

 

 一方、そんな何かを込められたであろう眼力に見つめられたピオニーさんは、ボク以上に変な声をあげて目を見開いた。そんなピオニーさんの反応に一気に不安の気持ちが募ったユウリたちが声をそろえてピオニーさんの名前を呼ぶ。その瞬間。

 

 

『てょわわわぁ~ん』

 

 

「「「「「「……へ?」」」」」」

 

 素っ頓狂な声を発したと同時に、目を閉じて上を向き、腕をコオリッポみたいに下げて、つま先立ちをしているような姿をしたまま薄く青色に発光し、ちょっとだけ宙に浮きだすピオニーさん。その姿があまりにもシュールで、今度は全員口をそろえて変な声をあげてしまった。何とか声を上げることを我慢したカトレアさんとコクランさんも、目の前で起きた珍事に、目が点になっている。

 

(本当はピオニーさんの心配をする場面なんだろうけど……ご、ごめんなさい)

 

「ぶっはははは!!」

「ちょ、ちょっとジュン!笑わな……ふふっ……つ、つられ……ふふふっ……」

「わ、笑っちゃダメ……だよね……?……ふ、ふふっ……」

「………………んんっ……………ふっ」

 

 現在のピオニーさんの姿がおかしすぎて、とてもじゃないけど我慢しないと声が漏れてしまいそうになるので必死に口を抑える。しかし、ボクのすぐ隣でとっくの昔に我慢の限界を超えたジュンがおなかを抱えて笑い出してしまい、それにつられてヒカリも決壊。結果として、ボク、カトレアさん、コクランさん以外の面子は笑いをこらえきれなくて吹き出し始めていた。マリィなんて、下を向いてプルプル震えてしまったうえで声が漏れている。必死にこぶしを握ってこらえようと努力している姿がどこか可愛らしい。

 

『ふむ、なかなか良い強靭な身体をしておる』

 

 そんな若干のネタ空気になっているこちらのことなんてつゆ知らず、彼はピオニーさんの身体をおそらく乗っ取ったうえでピオニーさんの身体の調子を確認していた。その様子が余計にシュールさを増している。

 

『すまぬが少々借りさせていただくぞ』

「はぁ……はぁ……笑ったぜ……ってあれ、今の声、ピオニーさんが喋ってるわけじゃないよな?」

「確かに、口は動いているけど……とてもじゃないけどピオニーさんの意志で喋っているようには見えないわね……」

「ってことは、これはあの子が喋ってるってことなのかな?」

 

 彼がピオニーさんの身体の調子を確認し終えたところでようやく落ち着いたジュン、ヒカリ、ユウリもゆっくり現状の確認をしていく。と、そこまでみんなの動きを確認してからボクもあることに気づく。

 

「あれ、みんなも言葉を理解できてる……?」

「うん……そっか、フリアたちは最初から言葉が通じてたとね。今ならフリアたちの会話について行けると」

「ピオニーの身体を通して……あたくしたちに言葉を通しているみたいね……成程、なかなかいい考え……この子……頭もかなりいいわよ……」

 

 ボクの疑問にマリィが返答してくれたことで、ボクの謎に答えが提示された。そこからカトレアさんが今起きたことを整理していく。そんなカトレアさんの様子を見ながら、彼は小さく、それでいてどこか嬉しそうにうなずいていた。

 

『なかなか聡い人の子であるな。ヨとしても、話が速くてとても助かる』

「ポケモンに褒められる……初めての経験だから……なんだかちょっと複雑ね……」

『ふむ、無理もない反応ではあるが、こればかりはなれてもらうしかあるまい』

 

 ポケモンに褒められるなんて物凄く貴重な体験ではなかろうか?なんせ、人の姿を取るポケモンは何人か存在するけど、人の言葉を発するポケモンというのは本当に数が少ない。ボク自身も、人の言葉を話すポケモンはこの子が始めてだ。

 

『さて、これでようやく腰を据えて話すことが出来るのである』

「ピオニーさんは据えるどころか浮いているけどね……」

「そこは突っ込んじゃダメと。フリア」

 

 思わず出た言葉をマリィに窘められるけど、こればかりは突っ込んでしまったことを許してほしい。ボクらと出会ってから、なんだかピオニーさんが不憫に見えることが多い気がする。

 

『本当にすまぬとは思っている。なのでこの埋め合わせは後で行うことにする。……それよりも、まずはここまで引き延ばされてしまった自己紹介を行うことにしよう』

 

 彼の反応からして、これは本意ではないことが伝わって来る。彼もピオニーさんにあとで詫びると言っているし、この件に関してはとりあえずもうおいておこう。

 

『ヨはバドレックス。豊穣の王と呼ばれしものである』

「『豊穣の王』……」

「ピオニーさんが言っていた伝説の話だぞ!」

 

 彼……バドレックスの口から伝えられる彼の名前と二つ名。それを復唱するボクに乗っかる形で、ホップが嬉しそうに声を上げる。これでピオニーさんの持ってきた3つの伝説ツアー、そのすべてが実在することが証明された。そのことに、心の中で何か湧き上がるものがある。やっぱり、この伝説との邂逅の瞬間はワクワクしてしまうね。

 

「えっと、ボクはフリアと言います」

「わたしはヒカリ」

「オレはジュン!!」

「ホップだぞ!!」

「私はユウリです」

「あたしはマリィ」

「カトレアよ……」

「コクランと申します。そして、今バドレックス様が身体を拝借されている方の名はピオニー様でございます」

『うむ……オヌシらの名、しかと刻んだのである』

 

 バドレックスが自己紹介をしてくれたので、こちらも慌てて名前交換。ポケモンと名前を交わすことにやっぱり違和感はあるものの、それでもようやくお互いを名前で呼び合うことが出来ることに謎の嬉しさを感じる。

 

『まずはオヌシたちに一言礼を言わせてほしい。ヨの像を元の姿に戻してくれたこと……至極感謝である』

 

 感傷に浸っているボクにまず投げられたのは感謝の言葉。どうやらバドレックスにとって、この村にある像はかなり大きな意味を持つらしい。

 

『遥か昔、ヨはこの地を統べ、豊穣の王として君臨していた。草花を生やし、畑に実りを与え、人間から崇められていたのだ』

「この像は……その時代に作られたものね……」

『その通りである。信仰を力に変え、より強力な力を持って人の子を統べていたヨにとって、この像はヨの象徴であると同時に力の源でもある。ヨは土着の王故、信仰されないと姿すら維持できないのでな』

「シロナが聞いたら……喜んで飛びつきそうね……」

『オヌシらとともにいた最後の仲間であるな。是非とも、彼女とも言葉を交わしたいものである』

 

 その像について、カトレアさんとバドレックスが話すことによって、ボクの中で知見が広がっていくのを感じる。成程、それならジュンやホップたちが伝説を諦めかけた時に声が小さくなってしまったことも、像が完成した瞬間に声が大きくなったことも説明が着く。

 

『話を戻そう。そんな人の上にたち、人の子を導いていたヨだが、長い時を経て、どうやら人々はヨのことを忘れ去ってしまったらしい。昔はあったヨへの捧げものも、今や影も形もない。先程も言った通り、ヨは信仰無くしては存在すらも危ぶまれる。人々に忘れられたことにより、ヨはどんどん力を失ってしまった』

「そっか……だからこの村であれだけ聞き込みをしてもなんの情報もなかったのか……」

「忘れ去られた王……少し、悲しいわね……っていうか、そんな王の話、ピオニーさんはどうやって見つけてきたのかしら……?」

 

 続いて説明された言葉によって、ジュンが納得した声を上げる。ヒカリの言う通り、あまり気分のいい話では無いのは確かだ。謎が多く、手段も気になるけど、もしピオニーさんがこの伝説の話を見つけてなかったらと思うと、少しゾッとしてしまう。バドレックスは1度、本当にピオニーさんに感謝をするべきだろう。現在進行形で乗っ取られてるけど……って思い出したらまた笑いそうになるので、ちゃんとバドレックスに意識を向けよう。

 

『かつての勢いを失い、威厳もなくなってしまったヨは、愛馬たちにも逃げられてしまった。愛想をつかされた、というのであろうな』

「そういえば、あの像では確かにバンバドロみたいなものに乗ってたと」

「けど今はいないってことは、そういうことなのか」

 

 像の姿と今のバドレックスの姿から、彼の言葉の信憑性が上がっていく。マリィとホップの言葉に頷いたバドレックスは、再び話を始めた。

 

『力も信仰も、そして愛馬も失い、ついにヨの象徴である像も冠を外されて半端なものとされてしまった。結果ヨは姿を維持することもできずに、かすかな声を出すことしかできぬ存在になってしまったのだ』

「それは……」

 

 凄惨すぎて言葉を失うボク。今も本当にギリギリのところでこうしてこの場にいるのだろう。

 

『あと少しでヨは完全に消え去っていたであろう。だが、オヌシらのおかげで、こうして再び姿を取り戻し、人の肉体を介して想いを伝えられる程度には力が戻ったのだ。……オヌシらはいわば恩人。恩人には、是非とも明るくいていただきたい』

「バドレックス……」

 

 余なんて仰々しい一人称を使っていることと、彼自身から放たれている伝説特有の緊張感も相まって、若干気後れしてしまうところもあったのだけど、こうして関わってみるととても人にやさしく、接しやすいポケモンだということが分かった。これだけ親しみやすい子なら、彼がしっかり王として存在していた時代はさぞかし沢山の人に慕われていたことなのだろうということが予想できる。

 

『そんな慈悲深い人の子であるオヌシらにひとつ……頼みごとをしても構わぬだろうか……?』

「頼み事……?」

「私にできることなら手伝うよ!」

 

 ここまでの話を聞いて、ユウリはもう手伝うことを決意している。他のみんなも、勿論ボクだって、声には出していないだけで気持ちはユウリと同じだ。そんなボクたちの視線を受け、バドレックスは視線を少し緩める。

 

『オヌシらの慈愛……誠に染み入る……』

「気にしないで!!」

 

 かみしめるようにつぶやくバドレックスに、努めて明るく返すユウリ。バドレックスの言っていた、『恩人には明るくいて欲しい』の返しとして、ユウリもバドレックスに明るくいて欲しいという事だろう。その真意をしっかりと理解したバドレックスは、一瞬下げた顔を引き締め、凛とした顔で皆を見つめる。

 

『では改めて、オヌシらに頼みを告げる』

 

 緊張感を再び纏ったバドレックスは、こちらを見つめ、はっきりと言葉を落とす。

 

『ヨの復活のために、手を貸してほしい』

 

 その言葉は、今までバドレックスから聞いたどの言葉よりも心に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バドレックス

ようやく登場。『冠の雪原』の大目玉ですね。彼を楽しみにしていた方が多いみたいで、お待たせしてしまい申し訳ないという気持ちと、やはり最後に持ってきてよかったなという気持ちがあります。彼の愛馬含め、これからの活躍を楽しんでください。

ピオニー

てょわわわぁ~ん

復活

この話は、常に横にあのピオニーさんがいます。




昨日の日曜日をもって、この作品も2周年ですね。ここまで長く、定期更新が続くとは思わなかったですね。これからもまったりと関わってくれたらと思います。3年目もよしなにお願いしますね。




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