【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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178話

『ヨの復活のために、手を貸してほしい』

 

 バドレックスから伝えられた、はっきりと芯の通ったお願い。威厳溢れるその言葉は、こちらの決まっていた返事をするのに一瞬詰まらせてしまうほど。勿論協力したくないから詰まったのではなく、これは単純にバドレックスに見とれてしまっていたからだ。こういうところで、バドレックスは元々王様だったんだなというのを実感させてくるあたり、やはり伝説の名に恥じないポケモンということなのだろう。

 

「手を貸してあげるのは吝かではないわ……けど……具体的にどうするつもりなのかしら……?」

 

 しかし、ずっと見とれてしまう訳にも行かないので、一番最初に我に返ったカトレアさんが、バドレックスに対して質問を投げた。カトレアさんの言う通り、『手伝う』といっても言葉が抽象的でどうすればいいのか分からない。ここの内容いかんによっては、ボクたちが役に立てないかもしれないしね。そんなボクたちの思考を汲み取ったバドレックスが、小さく頷きながら言葉を綴る。

 

『至極真っ当な質問である。そこについても答えよう』

 

 改めてみんなを一瞥したバドレックスは、自身の手を見ながら続きを喋る。

 

『力を戻す一番の正攻法は、ヨの存在を再び知らしめ、信仰を取り戻すというものである。しかしこれは現実的では無い。理由は……オヌシたちが調べてくれたであろう?』

「うん……」

 

 バドレックスの言葉に、みんなして少し苦い顔を浮かべながら頭を縦に振り、その理由を代表してボクが述べていく。

 

「バドレックスのことをもう誰も憶えていない以上、これからみんなの前に姿を現しても効果はあまり見受けられないと思う。それ以上に、奇跡的に上手く行ったとしても、フリーズ村は限界集落に片足を入れてしまっている場所……バドレックスの全盛期がどれくらい凄かったのかは、ボクたちは想像することしかできないけど、多分この村の住民全員から信仰を得られたとしても、とてもじゃないけど信仰力は……」

『うむ。間違いなく足りないであろうな。そしてそもそもこの村の人の子を、『ヨが豊穣の王である』ということを納得させるだけの力が、今のヨには備わっておらぬ。信仰を再び集めるのは、おそらく不可能だろうな』

「でもよ、あくまでも力を少しでも取り戻すことが今の目的だろ?それに今この村は畑が育たなくて困ってる。そこを手伝えばちょっとくらいは信仰は手に入りそうだぞ?」

 

 ボクとバドレックスの言葉にツッコミを入れたのはホップ。確かに彼の言うとおり、今この村にある問題をバドレックスが解決をすれば、信仰が戻ってくる可能性が高い。けど、この方法はそもそもの前段階の時点で躓いてしまっているため、実行が不可能なのだ。

 

『すまぬな、そのほんの少しの手伝いをする力すらも、今のヨにはほとんどないのだ。一度の祈りでせいぜい野菜のタネを2つ、育てられるかどうか……』

「それは……」

 

 バドレックスの言葉を聞いたたホップが、また申し訳なさそうな顔をうかべる。それに対して、バドレックスは少し苦い表情を浮かべながら、しかしホップを気遣うように言葉を落とす。

 

『そう気を落とすでない。ヨは豊穣の王である。人に期待をするほど浅はかでは……いや、オヌシらのことは信用しているのではあるが……』

「あなた……周りから甘いって言われるでしょ……」

『……黙秘するのである』

 

 バドレックスの言葉がふよふよし始めたあたりで、カトレアさんがズバッと切り込む発言を残し、それに対してバドレックスが明後日の方向を見始める。威厳はあるのに人当たりがよく、優しい一面のある王様がここに来て可愛らしく見えてきてしまった。そう感じたのは他のみんなも同じらしく、みんなの表情がどこか緩んだような気がした。

 

『ん……話を続けるのである……』

 

 そんなちょっと緩んだ空気をごまかすように咳払いをしたバドレックスは、自身の力を取り戻す続きの話をする。

 

『先ほど話した通り、信仰によるヨの力の復活は望みが薄い。それゆえヨの力が全盛期のそれに戻ることはまずありえないであろう。しかし……信仰に頼らずヨの力を取り戻す方法はひとつ存在する』

「その方法は?」

『その方法は、愛馬を取り戻すことである』

「愛馬って……像であなたが乗っていたあの……?」

『左様である』

 

 バドレックスが語った力を取り戻す方法は、像でもバドレックスが乗っていた愛馬の存在だ。マリィとユウリの疑問に対しても真っすぐ解答したバドレックスは、過去を懐かしむような眼をしながら、それでいて、どこか不安そうな眼をもって虚空を見つめる。

 

「その愛馬もポケモンなのか?」

「どんなポケモンなんだ!?」

『遥か昔、ヨと共に野山を駆け巡り、数多の戦いを切り抜けた盟友である』

「豊穣の王の盟友ですか……さぞお強いポケモンとお見受けします」

 

 伝説と共に歩んだ大切な仲間と聞いて、ホップとジュンが目に見えてテンションを上げる。そんな彼らの質問に対しても、バドレックスは自分のことのように嬉しそうに返答した。その姿から、コクランさんも愛馬と呼ばれるポケモンに対して強い興味を示し始める。

 

『だが……今はどこに行ったのか、まったくもって行方は分らぬのである……それに、例え見つけられたとしても、力なき今のヨでは乗りこなせないやも知れぬ……』

「余程の暴れ馬だったみたいね……」

『なんせ、ヨと共にゆくまではこの地を荒らしていた厄介者と呼ばれていたのでな』

「言葉だけではその厄介さは分からないけど、さぞ激しいバトルだったのでしょうね……」

『実際かなり強かったであるな。生涯戦った中で2番目くらいには……な』

 

 カトレアさんとヒカリの質問で再び過去の思いをめぐらせそうになるバドレックス。しかし、このままではまた話しが逸れてしまうため、バドレックスはぐっと堪えていた……いや、正確にはそれ以上は考えたくないと言った表情……かな?とにかく、あまりいい感情では無いそれを浮かべ、次の話をし始めた。

 

『だが永き眠りより目覚めたばかりのヨは、現在力とともに記憶もかなり抜け落ちてしまっている。故に愛馬のことも、印象に深い出来事は辛うじて覚えているが、それ以外のことが何一つ残っていない。肝心の愛馬の見た目すら全く思い出せぬほどだ。共に駆けた盟友を忘れてしまうほど衰弱した己の未熟さが恨めしくある。……おそらく、今のヨはオヌシら誰と戦っても、手も足も出ずに敗れることになるだろう。だが、それでも、こうして姿を取り戻した今、ヨは再び友とこの地を駆けたい。そこでオヌシらにお願いである。どうにかして、ヨの愛馬を見つける方法を探しては貰えないだろうか』

「バドレックス……」

 

 長い前置きの末、ようやくバドレックスから頼まれたのは彼の愛馬の捜索。その捜索が、彼にとってはとても大きなことみたいで、頭を下げながらこちらに頼み込んでくる。

 

 バドレックスは豊穣の王だ。そんな人の上に立つものが、頭を下げるという行為には大きな意味が生まれてしまう。それを理解出来ていない人はここにはいなかった。

 

『頼む』

「あ、頭を上げてバドレックス!!私たちはさっきも言ったよ!!協力は惜しまないって……」

 

 それだけ本気のお願いなんだろうけど、ユウリの言う通りボクたちはとっくに協力することに賛成している。なのにそれ以上にお願いをされても、また同じ答えを返さないといけないのは正直時間がもったいないし、頭を下げられることにちょっとした重さを感じてしまう。

 

「もっと合理的に行きましょう……あなたも……早く力は取り戻したいのでしょう……?」

『オヌシら……やはり人の子は今も昔も、変わらぬものは変わらぬのだな』

 

 カトレアさんの厳しくも優しい言葉にようやく理解を示したバドレックスがゆっくり顔を上げる。その表情はもう暗くなく、復活を目指す意欲の目に変わっていた。その様子が嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。

 

「これからよろしくね。バドレックス!!」

 

 ここから始まるバドレックスとの協力関係。まずはそのきっかけとして握手をしようと、ボクはそっと右手をバドレックスに差し出した。

 

『…………』

 

 しかし、バドレックスは手を取ってくれるどころか、ボクの手を見つめて、小刻みに震え始めてしまう。

 

『す、すまぬフリアよ……何故か分からぬが……ヨは手のひらを見せられると、情けないことに身体が震えてしまうのだ……オヌシの気持ちは充分わかっておるし、そのうえでこの言葉をオヌシに向けるのは失礼と分かっている。それでも……その手は隠して貰えまいか……』

「そっか……」

 

 手のひらが苦手……初めて言われたけど、人に個性があるように、ポケモンにだって個性はある。ちょっと不思議だけど、ここはバドレックスの言う通り手を下げよう。

 

「じゃあ、こうならどうだ!」

 

 そう思い、手を引っ込めているところをジュンに掴まれ、手をぎゅっと締められて再びバドレックスの方に突き出された。

 

「って、いつつ……ジュン強引だって!!」

「わ、わりぃわりぃ。でも、手のひらがダメならグーでどうだ?」

「そんな屁理屈な……」

 

 いきなり変な行動をしてきたジュンを睨みながら、しかし屁理屈と言いながらもどこか期待したボクは、再び視線をバドレックスに戻す。

 

『……うむ。これならヨも怯えることなく拳を合わせられる。フリアよ。これからの友好と先程の謝罪を載せて、この拳を当てさせてもらう』

「っし!!」

「ほんとに通っちゃった……」

 

 すると、先程の震えは既に収まり、嬉しそうな表情を浮かべたバドレックスがそっと拳を差し出した。その事に嬉しそうにするジュンに、思わず呆気に取られてしまうボク。けど、バドレックスに嫌な思いをさせなくて済んだことにほっと一安心したボクは、コツンと拳をバドレックスとぶつけ合う。

 

「わ、私もグータッチしたい!!」

「オレもするぞ!!」

「あ、あたしも……」

「もちろんオレも!!」

「じゃあわたしもお願いしようかしら」

 

 その姿をみて、カトレアさんとコクランさんを除いたここにいるみんながバドレックスと拳を当てあった。

 

『オヌシら……誠に感謝する』

「おう!気にすんな!!」

 

 その光景に感極まったバドレックが、再び顔を下げようとするものの、それを無理やり持ち上げてジュンが視線を合わせてにかっと笑う。その笑顔につられたバドレックスも顔が崩れていった。微笑ましい2人のやり取りを見送ったボクは、みんなの方に振り返りながらこれからの予定を話し出す。

 

「さて、これからの目的は決まったけど……まずはどうしよっか」

「伝承が昔のこの村発祥なら、もしかしたら記憶はなくても記録はあるんじゃないかな?」

「成程……この村なら本とかになりそうとね」

「でも、本がたくさん保管されていそうな所なんてなさそうだけど……」

 

 ボクの質問にユウリとマリィがきっかけを提示するけど、それに対してヒカリが問題点を挙げた。確かに、この村に図書館なんてたいそうな建物は存在しないし、あるのは民宿と民家だけだ。ただ伝承として噂されていて、像も存在するのなら何かしらの形で残っている可能性は確かに高い。

 

「そうなると、石碑とか像が一番有力になるのかな?」

「ってなるとダイ木のところか?あそこ、沢山石碑みたいなのがあった気がするぞ?」

「でもこの村から遠くない?バドレックスってこの村の王様でしょ?ならその石碑や石像も基本的にこの村の近くにあると思うのだけど……」

「それもそうだよなぁ……実際木彫りの像はここにあるんだし」

 

 が、ホップの考えもヒカリの返答によって綺麗に返されてしまう。もしかしたらもっと深く探せば何か見つかる可能性は十分あるかもだけど、それにしたってまず行う場所ではない気がする。

 

「となると……やっぱり聞き込み?」

「でもこの村で伝承を知っている人は……」

「うう~……答えが見つからないぞ……」

 

 どれにしたって先ほどまで無駄足だったことが足を引っ張って、どうしても足を動かそうという気持ちにはならなかった。どれからやっても遠回りな気がして、どこかに近道があるのではと思ってしまう。

 

「でしたら、村長にお話を聞くのはどうでしょうか?」

「村長に?」

 

 そんな時に助け舟を出したのはコクランさん。悩んでいろんな議論が飛び交っている間に飛び込んできた案に、ボクが代表で言葉を返す。

 

「でも、村長さんも話は聞きましたけど特に詳しい知識は……」

「それはあくまでも知識の話でしょう?その点に関してはあなた方が話していた通りです」

「ボクたちが話してた……あ!」

 

 ここまでコクランさんに言われてようやくコクランさんの言いたいことが理解できた。

 

「勿論、わたくしの考えが外れている可能性はありますが……少なくとも、今みな様が考えているどの案よりも遠回りになりづらく、何か得られるものもあるかと思いますよ」

「ありがとうございます!!」

「なぁ、どういう事だ?」

 

 一方でボク以外のみんなは未だに理解できていないらしく、コクランさんとの会話を終えたボクにみんなの視線が集中してきた。その疑問に対して、ボクは自分でも驚くくらいテンションの上がった声で喋りだした。

 

「さっき言ってたことだよ!伝承がここまで伝わっているのなら何か物として残っている可能性があるんでしょ?ならそういった書籍が一番保管されている可能性があるのって村長さんの家じゃない?」

「成程……確かに、それなら村長さんの知識がなくても納得はいくと」

「でも、村長さんの家にあげてもらえるかな……?」

「最悪あがらなくても、本なりなんなり、関係のあるものだけでも見せてもらえばいいんじゃないか?」

「とにもかくにも、最初の目的地がわかったのならまずは動かない?ここで待っているよりも早く動きましょ?」

「ヒカリに賛成と。この後愛馬も探すことを考えたら、時間には余裕を持ちたかと」

 

 ようやく定まってきた目的にすぐにでも行けるように準備を整えておくボクたち。そのタイミングでジュンが話を終えたらしく、こちらに近づいてきた。

 

「お、なんだなんだ?もしかしてこれから行くところが決まったのか?」

「まあね。だから早くジュンも準備していくよ」

「おう!!」

『ふむ、ヨがいろいろ話しているうちに話がまとまったのであるな』

 

 ボクたちの様子を見て、この場所を離れて何かをすることを悟ったバドレックスが、改めてこちらを見つめて来る。

 

『愛馬の情報、何か見つかればまたヨに教えてくれると助かるのである』

「任せて!……って、自信満々に言うことはできないけど、善処はするよ」

『今のヨにとっては、手を貸してくれるだけで助かるのである。……任せたぞ』

「……ふがっ!?」

 

 そう言い残し、バドレックスはピオニーさんの支配を解除して、どこかへ溶け込むように消え去っていった。

 

「ありゃ?おめぇら、頭……でっけぇ……くない?っつーか、立ったまま寝てたのか!?」

「フリア……あなたたちは先に村長の下へ行きなさい……この人はあたくしとコクランが見ておくわ……」

「見ておくのはおそらくわたくしだけですがね……」

「何かしら……?」

「いえ、何もありません」

「あはは……」

 

 意識を取り戻したピオニーさんは、今の状況がわかっていないのか、周りをきょろきょろしているため教えるにしろごまかすにしろ、説明に時間を要することだろう。その部分をカトレアさんがコクランさんに押し付けげふん……コクランさんと引き受けてくれそうだったので、苦笑いを浮かべながらもその提案に甘える。

 

「じゃあ行ってきます!……コクランさん、頑張ってくださいね」

「お気遣い、感謝します」

「ちょっと……どういう事よ……!」

「おし、じゃあ行くぞ!!」

「なんだなんだぁ!?なぁ、何が起きてんだぁ!?……っつーか、身体がなんかみょーだし、ド・さみぃし……へ……へ……へっぶしょぉい!!」

「わたくしの方から説明しますから、まずは民宿へ入って温まりましょう」

 

 カトレアさんのことを軽くスルーしながら、ボクたちは村長さんの家の方へと足を運んでいく。村長さんの家は、この村の南側の少しだけ高台になっている位置に建てられている。家の形もほんの少しだけ豪華に見え、一応初めて来た人でもそれとなーくどれが村長の家かわかるようにはなっている。ボクたちも今朝訪れたばかりの場所なので、後ろから聞こえてくるピオニーさんとコクランさんのやり取りを聞き流しながら村長の家へと特に迷うことなく赴いた。

 

「ごめんくださ〜い。先程来たばかりで、またお時間取らせて申し訳ないんですけど、少しお話いいですか?」

 

 程なくしてたどり着いた村長さんの家。朝は玄関のところに立っていたため、特に呼び出したりすることも無く声をかけることができたんだけど、今は同じ場所に姿が見当たらなかったので、家の中にいるのではと予想したボクは木製の扉を4回ノックし、少し声を張って呼びかけてみる。呼び鈴やモニターと言った道具はこの村には無いので、あとは届いていることを願って待つだけだ。……こういうところは、やっぱりちょっと不便に感じるかもしれないね。いや、ボクの家にも、それらの道具はどっちもないから言えた義理じゃないんだけどさ。

 

(家……家かぁ……そういえば、母さんは今頃どうしてるのかなぁ……もしかしたら、ガラル地方の中継を見ていたりするのかな?)

 

 ふと自分の家のことを思い出したので家族のことをそれとなく考えてみる。ヒカリやジュンのように、ボクの動きをテレビで追ってくれていたら少し嬉しいね。

 

「って、出てこない……?」

「すぐに出てくることはなくても、声の返事くらいはあると思ったけど……」

「すっごく静かだな……」

 

 なんてことを考えながら待っていたんだけど、中から村長の声どころか、物音1つも返ってくる気配がない。この様子だと、今は出かけてしまっている。ということだろうか。

 

「村長さんなら今でかけてるよ」

「え?」

 

 みんなで村長さんの家の前でとどまっていると、少し離れたところから2人組のおばあさんが声をかけてきた。そちらに視線を向けると、穏やかな表情を浮かべたおばあさんがこちらを見つめていた。どうやらおばあさんたちは村長の行方を知っているみたいだ。

 

「どこに行ったか分かったりしますか?」

「確か、『巨人の寝床』の畑を調べに言っているはずだから、急ぎの用事なら探しに行くといいよ。場所はこの村から南東の、『氷点雪原』を抜けてずっと左に行ったところにあるはずだよ」

「ありがとうございます!!」

 

 質問をしてみたら予想通りの答えが返って来る。今も首を長くして待っているバドレックスのためにも、少しでも早く情報を集めたいボクたちにとってはとてもありがたい。早速その情報に則って走りだそうとしたときに、ヒカリがボクに待ったをかける。

 

「あ、フリア。どうせなら愛馬について、おばあさんたちにも聞いてみない?今まで『豊穣の王』についてしか聞いてなかったけど、もしかしたら愛馬については知っている人がいるかも……勿論、あまり可能性は高くないけど……」

「確かに……」

 

 豊穣の王とセットである以上知らない可能性の方が高いけど、それでも聞かないよりはましだ。聞いたところで損もロスも特にないし、聞いておいていいだろう。

 

「すいません。あの木彫りの像の、馬の方について何か知っていることってあったりあします?」

「『豊穣の王』とかいうのの次はあの馬についてかい?」

「はい、ちょっと気になっちゃって……」

「好奇心旺盛で、若くていいねぇ……」

「それよりも、馬のことについてよねぇ!?それならおばさん、すこし知ってるわよ」

「ほんとか!?」

 

 特に期待せずに質問をしてみたら、まさかの解答にホップがテンションをあげて返答する。周りのみんなも、おばあさんたちの言葉を今か今かと待っていた。そんなボクたちのテンションの変わりようなんてつゆ知らず、おばあさんたちはいつも通りマイペースに返していく。

 

「確か……そう、雪のように白いお姿だと、私は教えられたねぇ」

「雪のように真っ白……この地にぴったりだな!!」

「とても綺麗そうな気がする……」

 

 おばあさんから聞かされた情報は、バドレックスから得ることの出来なかった見た目の情報だ。ここに来て手に入ったわりと大きな情報に、ジュンとユウリが楽しそうに想像していく。ボクも頭の中に、真っ白で猛々しい姿の愛馬を想像し始めた。

 

「そうだっけ?あたしゃ、それはそれは美しい、黒い毛並みって聞いたけど……」

「「「「「「え?」」」」」」

 

 しかし、そんな想像に待ったをかけるのがもう1人のおばあさんの言葉。そのおばあさんによると、どうやら愛馬の見た目は黒色の毛並みをしているらしい。最初の情報と真逆だ。

 

「いやいや、わたしは白って教えられたよ」

「い~や、あたしゃ黒って聞いたね」

 

 そこから始まるのはおばあさんによる情報のぶつかり合い。正直、ここまで平行線だと第三者からしたらどちらも嘘にも聞こえてしまう。

 

「やっぱり、自分の目と耳で確かめるしかないみたいね」

「うん、あたしもそう思うと……とりあえず、ありがとうございました」

 

 その様子に溜息を吐きながらヒカリが言葉を零す。それに頷いたマリィが、もはやボクたちのことなんて眼中にない2人のおばあさんにとりあえずと言った感覚でお礼を言って走り出す。勿論、ジュンたちもおばあさんたちを置いて走り出した。

 

「うん……やっぱりそううまくいかないか。けど、一応覚えておこっと……」

 

 一度期待をあげられただけにちょっと残念な結果。だけど、もしかしたらちょっとは重要かもしれない。そう思ったボクは、今の情報を頭の片隅にとどめながら、マリィたちを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




記憶

記憶がなくなるほど衰弱した結果があの技範囲と種族値なら、全盛期はこの姿でもかなり強そうですよね。その時の彼も見てみたいです。

グータッチ

みんなでグータッチ。微笑ましいですね。




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