【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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181話

『して、オヌシたちが聞きたいのは、愛馬が2体なのか1体なのか、その点であったな』

「うん。これまでの情報の残り方とか、村の人のお話的に、その説が濃厚かなと思ったのだけど……」

 

 ピオニーさんの身体の調子を確かめながら、今までのボクたちの会議を頭の中で整理して、ボクたちに質問を投げかけるバドレックス。質問の内容はボクたちが聞きたかったそれと全く一緒なので、ボクは素直に頷いて答えを待つ。するとバドレックスはなんでもないように答えた。

 

『うむ、フリアの言う通り、ヨの愛馬は1体だけでは無い。ヨは状況に合わせて、2体の愛馬を乗り分けていたのだ』

「やっぱり!!」

「そうだったのか……すっかり騙されてたぜ……」

「騙すというより、わたしたちが勝手に勘違いしているだけな気がするけどね」

 

 その答えがボクの予想通りだったので思わず声を出してしまう。一方で、ジュンはちょっと悔しそうな声をあげていた。結果としてはヒカリの言う通り、ボクたちが先入観に囚われた結果なため、騙すとはちょと違う気はするけどね。

 

『そもそも、ヨは愛馬()()と呼称していたから、オヌシたちには届いていると思ったのだが……そこはヨも固い考えをしていた。すまぬな』

「「「「「「え……?」」」」」」

 

 そんなことを考えていたら、バドレックスからまさかの解答が返ってきてボクたち全員で揃って変な声を出す。いや、正確にはコクランさんとカトレアさんは声を出していないけど……とにかく、改めてバドレックスとの今までの会話を思い出してみる。

 

「そう言われてみたら……確かに『愛馬たちにも逃げられてしまった』って言ってたような……」

「じゃあ、やっぱり愛馬は2人いたんだ?」

『確かにヨは見た目を忘れるほど記憶を欠落させてはいるが、さすがに数を間違えるほど弱ったつもりはないぞ?』

 

 ホップとユウリが、外の広場で話していたことを思い出しながらバドレックスに言葉を返すと、バドレックスも少し苦笑いを含ませながら返答してきた。確かにバドレックスの言う通り、そこまで言ってしまうともはや物忘れの粋を越えている気がしなくもない……いや、見た目を忘れている時点で大概だからやっぱりちょっと納得がいかない。……まぁここは気にしないでおこう。

 

「……って、今まで的確なアドバイスをしていたり、フリアの案に賛成していたり……コクランさん、絶対知ってて言ってたとね?」

「さて、何のことでしょう?」

「……性格悪かと」

「悪かったわね……意外とこういうところがあるのよ……」

 

 一方マリィは、ここまで的確なヒントを出してくれたコクランさんに対してジト目で訴えかけるような言葉を返していく。これに対して、相変わらずにこやかな表情を浮かべたまま誰がどう見ても分かるしらじらしさを残したまま、コクランさんはゆっくり返す。この表情にはマリィも思わずふくれっ面をしており、その様子を見たカトレアさんは、ため息をつきながらマリィに謝罪を入れていた。

 

「とにかく、バドレックスの愛馬は2人。その色は、黒と白の2種類ってコトでいいの?」

 

 このままではカオスまっしぐらになることを悟ったボクが、この空気を1回リセットするためにみんなの視線を集めてから、改めてバドレックスに質問をする。すると、バドレックスもこれ以上話が逸れることは本意ではないため、ボクの言葉に乗っかってきた。

 

『相違ない。ヨのパートナーは2体の愛馬である。見た目に関しては、ヨは記憶があいまいだったせいで全く思い出すことが出来なかったが……オヌシたちが調べて、ここで話し合ってくれたおかげでヨの記憶が刺激されて、少しずつだが記憶も戻ってきている。そのうえでオヌシたちに返そう。ヨの愛馬は黒と白の2体で間違いない』

「……なんか、こうしてはっきり告げられると調べた甲斐があるとね」

「謎解きみたいでちょっと楽しいかも」

 

 バドレックスから告げられる確かな情報に、思わずマリィとユウリが言葉を零す。マリィの言う通り、調べた結果が影響して、確実に前に進んでいるこの感じを見ると、本を読んだのは正解だったんだなと確信を持てる。

 

 これなら、ボクの読んだ本もきっと役に立つはずだ。

 

「ってことは、黒い愛馬も白い愛馬も捕まえなきゃだよな?」

「ならにんじんは2つともいるってことね」

「だが肝心のにんじんがどこにあるかわからないぞ……」

 

 新しく分かった情報によってにわかに騒がしくなる会議模様。ジュン、ヒカリ、ホップが、その続きとしてにんじんのありかについて話しているところに、ボクが最後の話題を持ち込む。

 

「にんじんのことも大事だけど、最後の本の内容……それも忘れないでね?」

「っと、そうだったわね……じゃあ最後。フリア、教えてくれるかしら?」

「うん、わかったよ。多分、ボクが本で調べた内容も結構大事だと思うからよく聞いてね?」

 

 そう前置きをしたボクは、自分が持ち帰った本、『キズナのタヅナ』から読み取れた情報をみんなに伝えた。前置きもあったためか、いつも以上にボクの話を真剣に聞いていたみんなは、ボクの話を聞き終えたと同時にバドレックスの方へと視線を向けた。恐らく、愛馬の見た目と同じように、ボクから話を聞いたことによって記憶を刺激され、また何かを思い出したのではないかということに期待しているのだろう。

 

 果たして、結果は……

 

『キズナのタヅナ……懐かしい響きであるな……いかにも、それこそが毎年ヨに捧げられていたものの正体である。タヅナがなければ、ヨが再び愛馬と共に野をかけることは不可能であろうな。フリアの話のおかげで、当時の光景を鮮明に明確に思い出すことが出来た。あのタヅナの感触……とても懐かしい……』

「バドレックス……」

 

 自身の手を見つめながらしみじみと呟くバドレックスは、少しだけ感傷に浸っていた。その姿が哀愁漂うものに見え、それを見たボクたちは、『絶対にバドレックスの力を戻してあげたい』とさらに強く思った。

 

「おし、じゃあ改めて今からやることを決めるぞ!!」

「まずはにんじんを手に入れる事ね。これがなければ話が始まらないわ」

「フリアの話的に、確かにタヅナも必要なんだろうけど、それ以前に肝心の愛馬が見つからんと意味が無いけんね」

『ヨもその方向に賛成である。そもそも、タヅナを作るのに愛馬の鬣も必要なのでな』

「なら尚更にんじんがマストになるわね」

 

 全員から情報が出終わったことと、バドレックスの姿を確認したみんなの議論がさらにまとまっていく。とりあえずは目下の目標を決めて、そこに突き進む形をとることになるだろう。そのための目標を、ジュン、ヒカリ、マリィが明確にしていく。

 

「にんじん探し……カンムリ雪原で育つ特産物って書いてたし、フリーズ村の人に聞いたら何かわるのかな?」

「でもココ最近不作なんだろ?譲ってくれるか不安だぞ……交換するにしても、オレたちから出せるものも限られてそうだしな……」

『最悪、タネさえ見つかればヨが何とかしよう。確かに全盛期と比べると力は無いが、種2つを成長させることは何とかできる……やもしれぬ』

「そういえば、そういうこと言ってたね……もしかしたら、タネを探す方が楽かもしれないね」

 

 にんじんに対しての不安要素をユウリとホップが挙げていくが、これに対してバドレックスが別案を出す。確かに、フリーズ村が今不作なのだとすれば、植える場所すらまだ見つかっていない手付かずの種が余っている可能性はかなり高い。バドレックスに負担を強いることにはなってしまうけど、本人が『出来る』と言っているのなら、そこは甘えてしまおう。

 

「まずはタネを確保して、次に黒いにんじんとつめたいにんじんが育つ畑を探して……なんだかにわかに忙しくなってきたね」

「なら早く行動しないとね!!さ、いこ!!」

 

 最初はなんの情報もないと思っていたのに、気づけばトントン拍子に進んでいく伝説の探検。それがとても楽しいみたいで、気づけばみんなの表情は笑顔に溢れていた。現に、寒さが得意では無いユウリまでもがここまで積極的に動くほど、みんなの平均テンションは上がっている。……まぁ、そんな彼女に腕を引っ張られる形で立ち上がったボクも、この状況はすごく楽しんでいるので、あまり人のことは言えないんだけどね。

 

「オレたちも行こうぜ!!」

「今回は外と民宿を行ったり来たりすることになりそうね……」

「それはそれでちょっとした研究みたいで楽しいぞ!」

「それもそうとね。それに……完全に力を取り戻したバドレックスを見るのも楽しみと」

 

 先に行くボクたちに置いて行かれないように、慌てて席を立つジュンたちの声を背に、ボクとユウリは外へと飛び出した。

 

「楽しいね、フリア!!」

「うん……そうだね」

 

 満面の笑顔を浮かべるユウリは、外の雪化粧も相まって、とてもきれいに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、まずはここの畑だな?」

「ええ。近くにお墓もあるし、ここの畑ならまだ土は死んでいないから野菜も育つと思うわ」

「本で読んだところとも一致してるし間違いなさそうだね」

 

 ジュン、ヒカリ、ボクの3人でしゃがみこみ、目の前に広がっている小さな畑の土を触りながら、自分たちがまとめた情報と差異がないかを確かめていく。

 

 あれから場所は変わって、ここは再び『巨人の寝床』。その中でも、今回は崖下に位置している『いにしえの墓地』と呼ばれる場所にボクたち6人は来ていた。というのも、ボクたちの予想よりも早く野菜のタネが見つかったため、だったらそのままの勢いでにんじんも作ってしまおうということで、半ばその場のノリのようなテンションでここまで来てしまった。

 

 経緯を順番に話すと、まず民宿を出たボクたちは、村の中心部にある畑にて腕を組んで唸るような声をあげながら悩んでいたおじさんがいたため、その人に声をかけ『にんじんのタネは知りませんか?』と質問をしてみた。するとボクの予想通り、不作の影響もあってかタネがかなり残っているらしく、そのタネの扱いに困っていたので、ボクたちの持っているものと交換してもらうことを条件に、無事に2粒のタネをいただくことに成功した。ちなみにこの時に渡したものは、カンムリ雪原に来てすぐに挑んだ、ダイマックスアドベンチャーの協力報酬であるマックス鉱石なんだけど、どうやらこれを使えば野菜を巨大化させることが出来るんだとか。どういった仕組みなんだろうか……。

 

 話しを戻そう。

 

 意気揚々と外に出てみれば、まさかの物々交換一回で目当てのものが手に入ってしまったので、それをもってバドレックスの下にとんぼがえりしたボクたちは、バドレックスにちゃんと野菜のタネであり、くろいにんじんにもつめたいにんじんにも成長することが出来ることを確認してから次の手順へと移行した。その際、野菜のタネが紙袋に包まれていることに、バドレックスがちょっとした感動を覚えていたけど、これもまた関係ないのでスルーしておく。

 

 タネを無事に手に入れたボクたちが次に行うのが、この野菜の成長だ。

 

 愛馬を呼ぶのに必要なくろいにんじんとつめたいにんじんの作成。本によるとそれには、お墓に近い畑と雪が深い畑が必要らしい。この畑の位置に関しては、バドレックスが自然を感じとる力によっておおまかな位置を確認できるらしいので、そこはバドレックスの力を頼りにし、道案内役として同行してもらう形で再びフリーズ村より歩き出した。その結果、お墓に近い畑はここ、『いにしえの墓地』にあることがわかり、あの会話に戻るというわけだ。

 

「バドレックスからも見てどう?いいにんじんはつくれそう?」

『そうであるな……』

 

 一応ボクたち……特に、食材について高い知識を持っているヒカリからはお墨付きを得ることの出来た畑だけど、それはあくまでも一般的な目線と野菜を作る場合に限る。今回作るのはあくまでも愛馬用の野菜だ。決してボクたちが食べるためのものではない。となると、本当に求められる質の水準を満たしているかどうかはバドレックスに聞いた方が確実だ。これでタネを埋めた後に、『実はここではありませんでした』となってしまえば、また野菜のタネをもらいに行く手間がかかってしまうからね。そのための確認をバドレックスに振ると、土に手を触れたバドレックスは、静かに、そして少し嬉しそうに頷く。

 

『ここなら十分の栄養もある。ヨのちからと合わせれば、タネを1つ成長させることも可能であろう』

「やった!!」

「じゃあ、ここにタネをまけばいいだな?」

『よろしく頼む』

 

 バドレックスの返答は是。そのことに飛んで喜ぶユウリと、さっそくタネを1粒つまんで、土に植え始めるホップ。優しく土を掘り、そこに種を植え、ゆっくり土をかぶせ、最後にぽんぽんと軽くなじませるように手を当てるその作業は、なぜか見ているこちらまでもがちょっと緊張してしまう瞬間だった。

 

「ふぅ……終わったぞ!」

『うむ!子気味良い土さばきであったぞ』

「おう!!」

 

 その手際はバドレックスも満足いくものだったらしく、とても嬉しそうに目を細めながら頷いた。

 

 豊かな土に野菜のタネ。お墓の近くという条件も満たしている。あとはこのタネを成長させるだけだ。

 

『次はヨの番であるな。今こそ、『豊穣の王』の力を見せようぞ!!オヌシら、少し距離を……』

「ああ!!……いよいよ『豊穣の王』の本気だな!!」

「ちょっと楽しみとね」

 

 タネの前に移動するバドレックス。彼の力の本領を発揮する瞬間はここだ。伝説として語り継がれる豊穣の力を間近で見られることにさらに期待を膨らませたジュンとマリィは、目を少し光らせながらバドレックスを見つめている。勿論他のみんなも声を出さないだけで期待を込めた眼差しを向けていた。

 

『では……行くぞ!!』

 

 そんな中、バドレックスが気合を入れた声で、豊穣の力を解き放つ。

 

『ンム、ムイ!カム ムイ!カム カムーィ!!』

 

 そんな王様が行ったのは、不思議な呪文と共に行われる、少し変わった踊りだった。短いながらも不思議な力を感じた踊りと呪文を同時に行い、それが終わるとと同時に両手を上にあげたバドレックス。すると、今さっきタネを植えた畑が薄い青色に光りだす。その神秘的な光景に本来なら見とれるはずだったのだが、一部の人たちにとってはそれどころじゃなかった。

 

「……ふふっ……な、なんでピオニーさんまで……」

「く……くそっ……な、慣れたと思ったのにこんなところで……」

 

 いきなりお腹を抑えながらうずくまるのはマリィとジュン。なぜこんなことになったかというと、たった今行った踊りを、通訳役として未だについてきているピオニーさんも、てゅわわってる状態で踊りだしたから。青い光を放ち、コオリッポのような態勢のまま浮いたピオニーさんが、いきなり踊りだしたことに衝撃を受けてしまい、元々この状態のピオニーさんがツボだった2人はあえなく撃沈。他のメンバーも、何とか耐えてはいるけど、ジュンとマリィにつられそうになってしまっている。かく言うボクもそんなに余裕はない。

 

 しかし、そんなボクたちのことなんてお構いなしに状況は進んで行く。

 

 暫く青色の光を発していた畑は、その光を徐々に小さくしていき、やがて先ほどと同じ色の畑の姿に戻る。一見何も起きてない失敗かのように感じるその光景だけど、さらに数秒経った後に、軽い地震のような揺れが起きる。その振動につられて畑の方に視線を向けてみると、畑の中心……ちょうどホップがタネを植えた場所に、黒色の何かが生えている状態となっていた。

 

「すぅ……ふぅ……よし。あれが例の野菜なのかな?」

「みたい……かな?採ってみる?」

 

 地面から顔を出すそれを目的のものと感じたボクとユウリは、深呼吸をひとつ。心を落ち着けてから、改めて黒いにんじんと向き合う。そしてそれを採取するため、にんじんの前に腰を下ろし、ユウリと一緒に手を添えて、一気に引っこ抜く。

 

「「せ〜のっ!!」」

 

 息のあった掛け声とともに景気よく引っこ抜かれた黒いにんじんは、ボクたちが普段食べるものと比べると、名前の通り黒く、そして少しだけ細長くてくねくねした見た目となっていた。……正直、見た目だけの話をするのであれば、あまり美味しそうには見えないというのが初見の印象だ。しかし、目的の物を手に入れたことに変わりは無い。早速バドレックスに見てもらい、確認を取ってもらおうと目の前に掲げてみる。

 

「バドレックス、綺麗に収穫出来たよ。どうかな?」

『うむ、良い出来である。これならヨの愛馬も飛んで喜ん……っ!?』

「「バドレックス!?」」

 

 黒いにんじんの評価は概ね良好だったものの、その判定をしている途中にバドレックスが膝をつき、少しだけ息を切らせてしまう。その姿に慌てたボクとユウリが慌てて駆け寄る。さすがにこの状況にはびっくりしたみたいで、笑いの引っ込んでしまったジュンたちもそばまで走ってきた。

 

 とりあえず代表して、ボクが背中を撫でながら様子を確認する。

 

「大丈夫?」

『あ、ああ……問題ない。しかし……高々種1つ成長させるのにこの疲労……なんと嘆かわしいことか……』

「バドレックス……」

 

 タネを一瞬で成長させる。その様は、ボクたちにとっては物凄く神秘的に写ったものの、バドレックスにとっては自身の弱体化を突きつけられる結果となってしまったことに、少なくないショックを受けているみたいだ。その様子を見て、ユウリが寂しそうな声を上げる。しかし、バドレックスの表情はすぐに切り替わった。

 

『だがこの嘆きとも間もなく別れの時。さぁ人の子たちよ。次に畑に赴こうぞ』

 

 あと少しで、完全とは言わないもののバドレックスは力を取り戻すことが出来る。そう思えば、この疲労も今のバドレックスには耐えられるものということか。ここにいる誰よりも本気なバトレックスに、思わず微笑んでしまいそうな表情を軽く叩いて、気合いを入れ直したボクたちはバドレックスについて行った。

 

『さぁ、次は雪の深い畑である』

 

 次に行く場所は、『雪中渓谷』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ンム、ムイ!カム ムイ!カム カムーィ!!』

 

 巨人の寝床を中心として、フリーズ村のある北西とは逆の北東に進んだところにある『雪中渓谷』。フリーズ村と同じく、雪化粧に彩られた美しい道を進むこと数十分。そんなに深いところまで行かないところに、バドレックスの求める畑は存在していた。

 

 畑の質を確認して、再びタネを植えたホップの合図を聞いたバドレックスが、あの不思議な呪文と踊りをすぐさま行い、ホップが植えたタネが少しの地響きと共にまた芽をのぞかせる。流石に2回目となると、みんなもピオニーさんの不思議な踊りにも耐えられようになっており、視線を少し逸らしはするものの、なんとか吹き出すことなくバドレックスの踊りを見送ることに成功していた。そんなボクたちの目の前には、薄い水色をし、自分の腕や太ももなんて目じゃないほど丸々と太ったにんじんが成っていた。先ほど手に入れた黒いにんじんと比べるとすべてが真逆の形となっており、とてもじゃないけど同じタネからできたものと信じられないほどの変貌ぶりだった。

 

「「せ~のっ!!」」

 

 そんなにんじんを、今度はジュンとヒカリが一気に引き抜くことで、その姿を地上へと表した。

 

「これがつめたいにんじんかぁ……って冷たっ!?」

「ちょぉ!?いきなり手を離さないでよジュン!!」

「わ、わりぃ……けどそれ、名前通り無茶苦茶冷たいぞ……素手で触るだけでしもやけしそうだ」

「そ、そんなに冷たいのね……」

 

 急に手を放してしまったジュンに変わって、厚い手袋をつけたヒカリが大切そうににんじんを抱える。下が雪だから落としてもクッションになりそうだけど、つめたいという事と、丸々と大きくなっているこの姿を見ると、氷のような脆さを感じてしまうから、出来る限り落としたくはない。もしかしたら杞憂かもしれないけど、本当に割れたら……いや、砕けたらそれこそ大変だ。

 

『ふぅ……ふぅ……これで2つとも……出来たであるな……』

「バドレックス、大丈夫と?」

「きつかったらちょっと休んでいくか?」

 

 今日2回目の能力行使によって、激しく体力を消耗してしまったバドレックスを労わるマリィとホップ。彼本人から、『今は作物2つを育てるのが限界』と言った旨を伝えられているので、その心配度はさらに高いだろう。できることなら、ここでいったん休憩をはさんで、バドレックスの体力を回復させてから戻ることが望ましい。

 

『そうであるな……人の子たちよ、すまぬが少し休憩を……』

 

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 

 

「バクロォース!!」

「バシロォース!!」

 

 

 バドレックスが腰を下ろそうとした瞬間に響き渡る2つの大きな叫び声。いきなり鼓膜を殴ってきたその大きな声に、ボクたちもかなりびっくりさせられた。

 

「な、なに!?」

「なんか、凄い大きな声がしたぞ!?」

 

 ユウリとホップの声が聞こえるけど、みんな声の主を見つけるために視線を動かすことに集中していてそれどころではない。そんな中、唯一落ち着いた態度を取っていたバドレックスが、ぼそっと呟いた。

 

『この声は……来たのだな……ヨの愛馬、レイスポスと、ブリザポスが……!!』

「レイスポスと……ブリザポス……」

 

 鳴き声によって記憶を刺激されて名前を思い出したのか、鳴き声の正体と思われる存在の名を口にするバドレックスの方に、ここにいるみんなの視線が集まった。

 

 豊穣の王と愛馬の再会が、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ダイマックス鉱石

野菜を大きくする……効能は勿論、使い方もよくわからないですよね。大きな株もこのせいで……?

バドレックス

今作では明確に2つのタネとなってますが、実機ではタネはたくさん植えてあって、そのうちの1つしか目を出さなかった。という形ですね。今回はにんじんを2つとも出したいのでこの形に。

にんじん

冷たい方はともかく、黒い方は……うん……美味しいんですかね?

愛馬

いよいよ登場。




最近になってスカーレットの方を、フリアさんの手持ちでクリアしました。キャラメイクも寄せて遊んだので、本当にそこにいるような感じがして楽しかったですね。兎にも角にも、SV両方ともエンディングまで行けて満足です。さぁ、今度はダイケンキが降臨するので備えないといけないですね。……ハピナス、常設にならないかなぁ……()




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