【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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今回はお知らせがあります。


186話

「これが『カンムリ神殿』……」

『うむ。遥か昔、ヨとレイスポス、ブリザポスが共に過ごし、長い時を過ごした思い出の場所である』

 

 頂への雪道を歩ききったボクたちの目の前には、大きく立派でいて、しかし長い年月をかけて風化してしまった石造りの神殿がそびえたっていた。

 

 カンムリ神殿

 

 カンムリ雪原北部の山奥に位置するこの神殿は、ここに来る途中に寄った巨人の寝床にある石碑や、バドレックス本人の話によると、当時村の作物を食い荒らしていたレイスポス、及びブリザポスを服従させたバドレックスを称えた人間が、神木の苗木を囲うようにして建てたのがこの神殿だという。フリーズ村からも存在が確認できたあの大きな枯れ木がその神木だね。その大きさは近くに寄ることでますます実感することとなり、さすがにダイ木ほど大きいというわけではないけど、少なくとも神殿の2倍以上の高さはあることが確認できた。

 

 風化しているとはいえ、言う程ボロボロににはなっておらず、いまだにその荘厳さにてこちらを待ち構えて来る神殿の様は、雪によってうっすらと視界が悪くなっているところも相まって、寂しさと同時に神聖さも醸し出していた。

 

「話に聞いていた通りかなり風化している建物だけど……凄く綺麗だね」

「『昔に建てられた』っていうけど、巨人の伝説と言い、この神殿と言い、当時のカンムリ雪原の住民の建築技術の凄さがうかがえるわね……」

「なんだか、見ているだけで圧倒されそうと……」

 

 女性陣は、そんな見た目から感じ取った感想を思うままに口にしていく。別に会話を交わしているというわけではなく、それぞれが思わずと言った風に口を開いているけど、聞いている側としてはお互いに感想を言い合っているようにも見えた。

 

「この中にレイスポスとブリザポスがいるんだな……!!」

「さて……何が起きるか、楽しみだぜ!!」

 

 一方男性陣は、この中にいるであろう愛馬たちへと意識を向けている。これからこの神殿にいると思われる愛馬たちとバトルが起きるのか、はたまた別の何かが起きるのか、それはまだわからないけど、とりあえずこの2人が闘う気満々だというのは伝わってきた。些か早とちりしすぎな気もしなくはないのだけど、やる気がある分には構わないので放っておくとしよう。

 

『いよいよであるな』

「うん。慎重に行こう。大丈夫。バドレックスならできるよ」

『……そうであるな』

 

 そしてバドレックス。

 

 神殿を見つめるバドレックスは、少し緊張した面持ちで神殿を見つめていた。そんな彼を応援する言葉をかけると、ほんの少し、表情が綻んだ気がした。これで緊張がほぐれてくれるといいのだけど……。

 

『では、入るぞ』

 

 バドレックスの言葉に無言で頷き、先頭を進んで行くバドレックスに続いて行く。

 

 風化したからなのか、はたまたもともとそういう設計なのかはわからないけど、扉のない入口をくぐったボクたちは、いよいよ神殿の中へと足を踏み入れる。

 

 神殿の中は大きく2つのエリアに分かれており、その2つのエリアを階段によって真ん中で区切られている。

 

 階段を境に手前側は、入口から階段に向けて真っすぐ石畳の道が続いており、左右は土の地面に何本かの枯れ木が生えている状態となっていた。そして階段を上った奥側。こちらは手前側と違い、石畳の道はなくなっており、地面のほぼすべてが土となっている。一部黒い正方形の床があるけど、これについては素人目ではよくわからないので今は置いておこう。

 

 この奥側でまず目につくのが、この空間の一番奥にそびえたつ1本の大木だ。先ほども言った神木の苗木が成長し、そして枯れた姿。まるで神殿への来客を見下ろすかのように出迎えてくれたその木は、枯れているはずなのにどこか強い生命力を感じる。

 

 そして奥側にあるもう1つの目を引くもの。それが、階段を上ってすぐの左手に建てられた小さな小屋だ。

 

 その中には藁の束が敷かれていた。その姿は、ターフタウンで見かけた農業用に連れているポケモンを休める場所に似ており、これ単体で見ると普通だけど、神殿にあるものとしてはちょっとミスマッチなように見える。恐らくはレイスポスとブリザポスの寝床のような役割の場所なんだろうけどね。

 

 神木が高く成長している兼ね合い上、屋根が存在しないこの神殿はあまり建物の中という感じがしないけど、唯一屋根のあるこの小屋の下だけは落ち着いて身体を休めそうな気がした。そう考えると、この小屋はかなり大事なのかもしれない。

 

 神殿の中を説明するとこんな感じだろうか。先ほども言った通り屋根がない建物なので、あまり屋内という感覚がしないこの神殿。中に入ったボクたちを待ち受けているのはこれらの景色だったけど、逆に言えば、この景色しか目に入ることはなかった。

 

「……いないね」

『外出しているさなかであったか……』

 

 ボクとバドレックスが言うように、今この神殿にレイスポスとブリザポスの姿はない。もしかしたら、好物の匂いを探して走り回っているのかもしれない。

 

「う〜ん……藁を触っても冷たさしか感じないわね……最近までここにいたかどうかも分からないわ……」

「っていうか、霊体と氷の身体ってそもそも体温しっかりあるのか?」

「……それもそうね」

 

 ヒカリが小屋の中にある、寝床に使っていたと思われる藁に触れて、最近までここにいたという痕跡を探ろうとしてみるけど、ホップのツッコミ通り、彼らに高い体温があるとはとても思えないのですぐに断念。他にも、足跡などで何か分かることはないかと周りを散策してみるけど、特にそういった類のものは、逆に多すぎてあてにならなかった。

 

 探しても見つからないことと、どこに行ったか分からないことから、またフリーズ村を襲っているのでは?なんて嫌な想像が膨らんでしまい、少しだけ焦りそうになってしまう。

 

『大丈夫なのである』

 

 そんなボクたちの心境を察したバドレックスは、ボクたちに一言告げ、その身体を淡く青色に光らせる。

 

『確かにアヤツらは今近くにはおらぬ。しかし、同時にフリーズ村にも行ってはおらぬ』

「レイスポスたちの位置がわかるの?」

『何となく、ではあるがな』

 

 ユウリからの問いに答えたバドレックスが、ゆっくりと身体の光を消し、ボクたちの方へと視線を向ける。

 

『今は大体巨人の寝床と雪中渓谷の狭間くらいであるな。おそらく1番好物の匂いが残っていた所を探っておったのだろう。村の方には好物がないのが分かっているゆえ、今も襲おうとは思っていないみたいであるな。フリアとジュンに簡単には勝てないということを理解しているのも、あまり行こうとしない理由やもしれぬ』

「ほっ……それなら良かったと」

「さすがに今村に行かれたらやばいもんな」

 

 バドレックスの言葉にとりあえず安心といった表情を浮かべるマリィとジュン。ボクたちも、言葉こそ残していないけど、同じように一息ついていた。しかし、あまり悠長なことをしている余裕もない。そこを理解しているバドレックスはすぐに言葉を続ける。

 

『だがいつアヤツらの気分が変わるかは分からぬ。すぐに取り掛かるに越したことはないであろう』

 

 バドレックスの言葉に頷くボクたちは、改めて気を引きしめる。

 

『ヒカリよ。にんじんはあるな?』

「ええ。ここにしっかり」

 

 バドレックスに声をかけられたヒカリは、頷きながらカバンからにんじんを取りだす。つめたいにんじんとくろいにんじん。どちらもヒカリが管理していたと言うだけあって、新鮮な状態をある程度保たれた状態となっていた。

 

『うむ。それをアヤツらの寝床の横にあるカゴの中に入れて欲しいのである。それでにんじんの匂いを漂わせ、レイスポスたちをおびき寄せるのである』

「このカゴね。……カゴが2つあるのだけど、どちらがどちらのカゴとかあるのかしら?」

『ふむ……特に気にしなかったであるな……それに、例えちゃんと決まっていたとしても、さすがにヨもそこまでは覚えておらぬ。少し不安ではあるが、ヒカリの采配に委ねるぞ』

「わかったわ」

 

 つめたいにんじんとくろいにんじんを抱えたヒカリは、小屋の端に備えられているカゴの前に辿り着く。けど、カゴが2つあり、どちらがどちらのカゴかがわからない。バドレックスもここまでは覚えていないようで、判断をヒカリに委ねると、委ねられたヒカリはカゴ近くの地面を観察し始める。

 

「そうねぇ……地面のへこみが激しいこっちがブリザポスのカゴとでも予想しようかしら?」

 

 片方のカゴは綺麗だけど、もう片方のカゴは地面が凸凹していた。愛馬たちの足跡自体はフリーズ村についていた物から判別できたため、そこからどっちがどっちのカゴかをそれとなく予想したヒカリが、凹凸の酷い方につめたいにんじんを、綺麗な方にくろいにんじんをセットしてこちらに帰って来る。

 

「置いてきたわよ。こんな感じでいいかしら?」

『うむ。問題ない。さぁ、あとはじっくり待つとしようぞ』

「と言ってもどこで待つんだ?さすがにここだとバレバレだと思うぞ……?」

『神木の根の影に隠れるのである。あれだけ成長した根であれば、死角も多分にある。ここにいるものたちが身を隠す余裕は十分にあろう』

「成程……じゃあ早く動くぞ!」

 

 ヒカリが合流したところで、あとはひたすら待つだけの状態となったボクたちは、ホップからの質問に対して、バドレックスが返答しながら紹介してくれた場所に移動して、その身を隠していく。場所で言えば、にんじんが置かれている場所が階段を上ってから左側手前の位置だとすれば、今のボクたちの位置は対角線の右奥側だ。ここまで離れて、且つ物陰に隠れていれば、見つかることはないだろう。……レイスポスの索敵はちょっと不安だけど、どちらにせよ今のボクたちにできることはじっとしているだけだ。

 

 しいて問題をあげるとすれば、今ボクたちがいるのは極寒の山の頂だという事。正直、身体を温めることの出来ないこの制止の時間が一番きつかったりする。

 

「うぅ……いい隠れ場だとは思うけど……やっぱり寒い……」

「ユウリ、大丈夫?コクランさんから温まる飲み物貰ってるから、よかったら飲んで」

「ありがとフリア……」

 

 そうなればこちらで一番被害が出るのはユウリだ。すぐさまカバンから魔法瓶を取り出し、ユウリに飲ませてあげながら、少しでも温まればと思い、身体をさすって温めてあげる。

 

「ふぅ……少しはましになったかも……」

「ならよかった。魔法瓶はもう一つ貰ってるから、安心していいからね」

「うぅ……本当にありがとう~……」

 

「……あれで付き合ってないの?っていうか、フリアってあんな子だった……?」

「ヒカリから見ても異常なんね……あたしがおかしいわけじゃなくてよかったと……」

『あの2人は誠に仲が良いな。良きことである』

 

 ユウリを元気づけている間に、かすかに何か聞こえてきた気がするけど、それ以上にユウリの体調が心配なので今はスルーしておこう。……いや、物凄く気にはなるし、なんかもやっとするけど……うん今はこれでいい気がする。

 

「それにしても、ここを根城にするってことは、やっぱりバドレックスとの思い出に浸りたかったのか?」

「可能性はありそうだよな」

『そこに関しては……おそらく違うであろうな……』

 

 そんなボクたちのやり取りにあまり興味を持っていなさそうなホップとジュンは、愛馬たちへと話の内容を移していく。なぜわざわざここを根城に選んだのか。そのことが気になったホップとジュンは妄想を膨らませていくけど、バドレックスはこれを否定する。

 

『アヤツらはフリーズ村での一幕で、確かにヨの言葉に一瞬耳を傾けてくれた。しかし、そのあと力を失ったヨの姿を見て侮りを始めたのだろう。一種の下剋上のつもりなのだろうな』

「そういう事か……だったら、しっかりと見返してやらないとな!!」

「おう!!次こそはしっかりと決着をつけてやるぜ!!」

 

 バドレックスの言葉にさらにやる気を滾らせるホップとジュン。特にジュンは、フリーズ村での戦いが中途半端だったせいで不完全燃焼ということもあり、余計にやる気を募らせていた。勿論、ジュンと同じ立場であるボクも、少しだけ決着をつけたいという気持ちはあるため、気合は十分だ。けど、バドレックスは少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべながらボクたちの方を向いてきた。

 

『意気込んでいるうえ、ヨからのお願いでここまでついてきてもらって悪いのだが……やはり最後の仕上げはヨに任せてほしいのである』

「うぇ!?なんで!?」

 

 当然この発言に驚きの表情を見せるジュン。あれだけ意気込んでいたし、ここに来るまでもこちらに準備を問うてきたから、こちらはすっかりやる気だったのだ。そんな時にこんなことを言われてしまえば、誰だってこのような反応になってしまう。そんなジュンに対して、少し目を垂れさせながら、しかしはっきりとした口調で、バドレックスは言葉を続ける。

 

『落ち着くのである。ちゃんと理由はある。1つ。アヤツらは気位の高いポケモン。故に、アヤツらよりも力が上であることを証明せねばならぬ。だのに、オヌシらに押さえてもらったところをヨがいいとこどりしても意味がない。きっと、今はよくてもすぐに離れてしまう。ならば、やはりここはヨが自力で、このタヅナを用いて従えないと意味がない気がするのである』

「確かに……一理あるね……」

 

 まずはひとつ目の理由。それに対してある程度納得してしまい、ボクは思わず声を漏らすと同時に、バドレックスの手元に握られた2つのタヅナに視線が行く。

 

『そして2つ目。先ほどアヤツらは気位の高いポケモンと言ったが、同時に脅威となるものには自ら近づかぬ慎重さも兼ね備えておる。荒くれ者ではあるが、愚者ではないのだ。特に、フリーズ村で一度闘い、そして勝てない相手と理解しているフリアとジュンに対しては、ますますの警戒を持っていると予想できる。となると、オヌシらが出るよりもヨが単独で近づいた方が警戒心を保たれない可能性がある』

「……」

 

 そのまま告げられる2つ目の理由。それを聞いたジュンは、すっかり口を閉ざしてしまう。その様がいつもの彼らしくなく、バドレックスもついつい不安そうな表情を浮かべてしまう。

 

『以上の理由から、誠に勝手とわかっておるが、それでもヨに託して欲しい。……よいか?』

 

 それでもここは譲りたくないと声をかけるバドレックス。そんな彼に、ジュンは伏せた顔を一気に持ち上げ、バドレックスの手を握る。

 

「良いも何も、バドレックスの想い、確かに感じたぜ!!そういう事ならオレはしっかり見守る!!頑張れよ!!」

『ジュン……感謝する!』

 

 ジュンからの返答は完璧な肯定。その返答が嬉しかったのか、バドレックスも笑顔で頷く。

 

 少し荒れそうな空気が漂ったけど、これなら安心そうだ。

 

「さて、そうと決まったならそろそろ静かにするわよ。あまりうるさくして隠れている場所がばれたら元も子もないからね」

『っと、それもそうであるな。オヌシら……』

「「「「「……」」」」」

 

 バドレックスの言葉に無言で頷き、ボクたちは木の根に隠れて小屋のカゴと神殿の入り口に視線を向ける。

 

 声を殺して入口を見張ること数十分。思ったよりも少し時間がかかったところで、ボクたちの耳元に鈴の鳴るような軽い音と、地響きがしそうなほど重い音が聞こえる。

 

(……来た)

 

 その2つの特徴的な足音の持ち主は、ボクたちの目的のポケモンであるレイスポスとブリザポスだ。彼ら2人はゆったりとした動作にて神殿の中に戻ってきて、自身の寝床である階段の上の小屋の方へと歩いていく。

 

「クロォース?」

「シロォース?」

 

 すると2人は、小屋の中にあるあるものに視線を奪われる。言わずもがな、ヒカリがセットしたにんじんだ。

 

「クロォース!」

「シロォース!」

 

 いきなり現れた好物にテンションの上昇を隠せない彼らは、高く嘶きながらにんじんの入ったカゴへと走り出す。

 

『かかった……ここからは集中するゆえ、身体操作も切る。ピオニーの介抱、頼んだぞ』

 

 そういうや否や、ボクたちからの返事を聞く前に光を失ったピオニーさんが、ゆっくりと地面に崩れ落ちる。それを慌てて受け止めたジュンとホップは、ゆっくりとその身体を木の根にもたれ掛かるように寝かせる。この間にも愛馬たちは、好物を目の前に嬉しそうにしながら、ついに口をにんじんにつけた。

 

 にんじんに集中している今こそが、絶好のチャンスだ。

 

(ゆくぞ!!)

(頑張って……!!)

 

 ピオニーさんを介していないため、頭の中に直接響く形となったバドレックスの声に心の中で返す。この言葉に小さく頷きを返してくれたバドレックスは、意を決して愛馬たちに向けて身体を飛び出させる。

 

「クロ!?」

 

 その行動に一番最初に気づいたのは、周りの情報収集に視覚を使わないレイスポス。好物の匂いに気を取られていたせいで反応こそ遅れてしまったものの、持ち前の素早さをもって素早くバドレックスから距離を取る。これに対しバドレックスは、レイスポスに対してアクションを行うことは不可能だとすぐに判断し、目標をブリザポスへとむける。

 

「シロッ!?」

「カムゥッ!!」

 

 レイスポスが逃げたことによってようやくバドレックスが近づいてきたことに気づいたブリザポスは、レイスポスに続くように逃げようと動き出す。しかし、レイスポスに比べて素早さがかなり低いブリザポスは、そのまま逃げ切ることは出来ずに背中にバドレックスを乗せてしまう。

 

「シロォース!!」

「カム……クラウゥ……ッ!!」

 

 背中に乗ったバドレックスを振り落とそうと必死に身体を振り回すブリザポス。対するバドレックスは、手に握った『キズナのタヅナ』をブリザポスの口に引っ掛けようと動かしていく。

 

「クロ……」

 

 お互いのしたいことを必死に貫こうとする姿に、レイスポスはどうすればいいのかわからなくなっており、その動きを止めている。これなら今のバドレックスを邪魔されることはないだろう。

 

 バドレックスの手に持つタヅナが、少しずつブリザポスの口に回っていく。

 

「行ける……!!」

「あとちょっと……!!」

「頑張れ!!」

「ふがっ!?……なんだぁ?ドタドタとド・うるせぇぞ……ってなんじゃこりゃぁ!?」

 

 ボクとユウリ、そしてホップで声をあげながら応援しているところに、ようやく意識を取り戻したピオニーさんが、今の現状に驚いて声を上げる。しかし状況はそれどころではないので、残念ながら今はピオニーさんの方に意識を向けている暇はない。こんなことをしている間も、バドレックスの持つタヅナは、ブリザポスの口に入っていく。そして……

 

「……ムゥ!!」

 

 バドレックスが声をあげると同時に、タヅナへと力を注いでいく。すると、バドレックスの手元からブリザポスの口元へと青色の光が伝っていき、そのままブリザポスとバドレックスの身体がまぶしく輝きだす。その輝きに視界を奪われ、少しの間目を瞑ってしまうけど、程なくして視界は元に戻り、ボクたちの前に神殿の風景が戻って来る。けど、視界が戻った後の神殿は、とある存在のおかげで別の空気をはらんでいた。

 

 その風景の真ん中に立つのは、ブリザポスを完全に従えたバドレックス。

 

「カム……クラウン……」

「シロォス……」

 

 感慨深そうに呟く両者は、おそらく昔のようにお互いを支え合う主従関係に今、戻った。

 

「クロ……」

 

 さっきまで一緒に謀反を起こしていた仲間が急に寝返ってしまったことに対して、思わず声を零すレイスポス。そんな彼が後ずさりしながらその様を眺めていると、昔の力の一端を取り戻したバドレックスがゆっくりと右手をレイスポスへとむける。それはまるで、『お前もこちらに戻って来い』と言っているような気がして。

 

「クロォース!!」

 

 しかし、これに対してレイスポスは最後の抵抗とばかりにシャドーボールを繰り出していく。黒い球の流星群は、バドレックスを仕留めるために猛進していく。

 

「クラウ、カム!!」

「シロォ!!」

 

 対するバドレックスは、ブリザポスと共に声を上げながら周りに氷を出現させる。それは、ジュンと戦っていた時の物と似ているようでその実、まるで槍のようにさらに鋭く冷たくなっていた。当時に比べ、威力が明らかに上がっているのが対峙しなくてもよく分かる。

 

「カム……」

 

 バドレックスの周りに浮かぶ無数の氷槍が、バドレックスの振り下ろされた右手を合図に、レイスポスに向かって飛来する。

 

「クロッ!?」

 

 レイスポスのシャドーボールのすべてを弾いた氷槍は、そのままレイスポスの足元に突き刺さり、レイスポスの足を止めてしまう。そして……

 

(……レイスポスよ。またヨと共に野を駆けようぞ)

 

 足を止められたレイスポスに、バドレックスからそっと、2本目の『キズナのタヅナ』がひっかけられた。

 

 その時放たれた青色の光は、地面に突き刺さる氷槍に反射して、思わず見とれてしまう程綺麗な姿をしており……

 

 

「カムゥ!!」

「クロォース!!」

 

 

 その様は、王の帰還を祝福しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カゴ

2人いるので2つ分。足跡に関しても自己流ですね。だってブリザポスの体重、800キロですし……

バドレックス

やはり従える瞬間は一人で頑張ってもらいたく、この流れに。バドレックスが従え、某勇者のようなポーズを取る瞬間って凄くかっこいいですよね。私は鳥肌が立つくらい見とれてました。

王の帰還

某ゲームの九州の王を見たせいか、少しうつってますね。それだけ衝撃が凄かったです。




前書きで言っていたお知らせですが、次の投稿予定日である4/22から少しだけ私情により時間が取れない可能性が高いです。そのため、次話投稿が遅れます。26までには出そうと思いますので、ご了承くださいませ。

新アニポケ、なかなか興味を惹かれてしまいました。サトシさんのいない寂しさはありますが、これからどうなるのかのワクワクも同時にあるので、ゆっくり楽しもうと思います。




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