レイスポスの口元に2本目の『キズナのタヅナ』を咥えさせることに成功したバドレックスは、ブリザポスの時と同じように青色の光を散らせながら、レイスポスとの繋がりも構築していく。
「……あぁ、実に懐かしいな」
「「「「「「!?」」」」」」
そしてその光が収まり、レイスポスにまたがるバドレックスがゆっくりと天を仰いだ時。バドレックスの口が動くと同時に、ボクたちの耳にはっきりと声が届いた。
「レイスポスの滑らかな毛並みも、ブリザポスの少し冷たいこの毛並みも、何もかもが懐かしや。長かった……ようやく、昔のものが帰ってき始めた……誠に嬉しや嬉しや……」
「バドレックス……声が……!!」
それはバドレックスが、ボクたちが理解できる言葉を話している証だった。今までは頭の中で響く言葉として、それもボクとカトレアさん以外は意味のわからない鳴き声としてしか受け取ることにできなかったそれを、今ははっきりと意味のわかる言葉として受け取ることが出来る。そのことに感動しながら言葉を零したボクの反応に、バドレックスもようやく話が出来ていることに気付き、慌ててこちらに確認を取ってくる。
「そういえば……オヌシら!!今ヨは、ちゃんと伝わる声で話せておるか!?」
「ああ、バッチリ聞こえるぜ!!」
「ピオニーさんを介さなくても、バドレックスの声をちゃんと聞けてるよ!!」
「そうか……そうか……!!」
その確認にホップとユウリが嬉しそうに返事を返すことで、ようやく不自由なく会話ができることに対して安堵の言葉をこぼすバドレックス。その表情はとても嬉しそうで、ともすれば、感動によって今すぐにでも泣いてしまいそうなほど、感極まった態度をとっていた。
「本当に良かったと」
「そうね。この姿を見たら、手伝ってよかったって本当に思えるわね。お疲れ様、バドレックス」
「だな。……バドレックス!!おめでとうだぜ!!」
「うむ……本当に良かったのである」
その姿を見て、今回の目的を達成できたことを改めて実感したマリィ、ヒカリ、ジュンはバドレックスに労いの言葉をかけていく。目元を拭いながら答えるバドレックスを見ていると、こちらも思わずつられてしまいそうだ。
「な……なんじゃこりゃあ!?頭デケェし乗ってるし、なんか白黒だぁ!?おいおい、これはどういうことなんだ!?」
「そういえば、ピオニーさんはずっと操られていたもんね」
「後で詳しく説明してあげると。今はこの子が、ピオニーさんの持ってきた『豊穣の王の伝説』ってことを知ってたらよかと」
「なにぃ!?この頭のデケェやつがか!?」
一方で、バドレックスと初めてこうして会話するピオニーさんは、今更な反応を示しながら声を荒らげる。確かにピオニーさんの視点で見ればこのような態度は理解できるけど、今はバドレックスとの話に集中していたい。幸い、ピオニーさんに対してはユウリとマリィが色々話してくれているので、ここは彼女に任せて、ボクたちはこのまま会話を続けさせてもらおう。
「どうやら愛馬を両方従え、ヨに力が戻ったおかげで人の言葉を話せるようになったみたいであるな」
「なんか、ちょっと不思議な感覚だね」
「今までピオニーさんの口からきいてたものね」
「これでピオニーさんが操られることがなくなったわけだよな!」
ボク、ヒカリ、ジュンの3人で、バドレックスの喋り方に新鮮さを感じていく。今までがちょっと変わった聞き方をしていたせいか、これがバドレックスの本来の喋り方だとしても、慣れるのには少し時間がかかりそうだ。
「ヨの声に慣れぬのなら、再び操って声を聞かせてもよいのであるが?」
「そ、それはピオニーさんがかわいそうだからやめてあげて?」
「フフ……わかっているのである」
ブリザポスから降り、2人の愛馬を従えながらボクたちの近くへ来たバドレックスは、少しいたずらな笑みを浮かべながらこちらへ来た。
(バドレックス……こんな表情も浮かべるんだね……)
その表情は、ボクたちが出会ってすぐの頃ではとてもじゃないけど浮かべることの無かったはずの表情だった。力を取り戻したことによって、精神的の余裕が出てきた結果なのかもしれないね。
「さて、オヌシらよ。改めて礼を言おう。オヌシらのおかげで愛馬は戻り、全盛期の頃とまではいかなくとも、かなりの力を蘇らせることに成功した。全てをなくし、孤独の淵にいたヨを、オヌシらは掬いあげてくれたのだ。感謝してもしきれぬ」
「困ったときはお互い様だよ」
「ああそうだぞ!何度も言わせんなって!」
改めて頭を下げてきたバドレックスに対して、ボクとホップで言葉を返していく。ホップの言う通り、このやり取りは何度もしたやり取りだ。だから今のバドレックスには、ボクたちに気にせずもっと喜んでほしい。
「とはいうものの、やはり大きな借りではある。故に、何かお返しがしたいのであるが……」
「もう、律義なんだから……」
「王たるもの、借りたものを借りっぱなしでは、面目が立たんのでな」
けど、バドレックスにはバドレックスの仁義があるようで、こればかりは譲れるものではないらしい。そこまで言うなら、あまり否定しても可愛そうだし、バドレックスの好意を棒に振ることとなる。素直に受け取っておくとしよう。
「しかし、オヌシらに返せるものがぱっと思いつかぬのも事実……オヌシらの趣味や目的がてんでバラバラ故、これというものがないのである」
とはいったものの、どうもバドレックスも具体的な内容は思いついていないらしい。確かに、ここにいる面子全員を満足させるものとなるとかなりジャンルが広い。勿論、全員にそれぞれ満足いくものをプレゼントするとかすれば間違いはないのだけど、それはいくら何でもバドレックスへの負担が大きい。
「何か簡単なものがあればいいんだけど……」
「そうねぇ……」
「……ふむ。ではこうしよう」
ユウリとヒカリも特に何も思いつかないみたいでウンウンうなっていると、バドレックスが何かを思いついたかのような声を漏らす。
「オヌシらよ。ヨと戦ってみぬか?」
「「「「「「え?」」」」」」
その提案はまさかのバドレックスとの戦闘というものだった。
「話を聞くに、オヌシらの大半は今この地で行われている大会の参加者と聞く。その場で鎬を削るというのであれば、大会に対しての練習期間が必要のはずである。しかし、その貴重な時間をヨの力を取り戻すための時間に使わせてしまった。なら、その時間を取り戻すことこそが、オヌシらに対するお返しと判断したのだが……いかがであるか?」
「それは……」
バドレックスが言いたいことは何となく理解することはできた。けど、力を取り戻したばかりという不安定な状況で、いきなりそんなことをしてもいいのだろうか?たった今レイスポスたちを従えるのに力を使ったばかりということを考えても、少し思うところがあるのだけど……なんてことを考えていると、その考えを理解したうえでバドレックスが言葉を続けている。
「むしろ、力を取り戻してすぐだからこそ、少し闘わせてほしいのである。これはオヌシたちへの恩返しであるとともに、ヨの力の感覚を取り戻すための試運転だと取ってもらっても構わぬ」
「成程、そういう事か……」
追加の言葉でようやくバドレックスのしたいことの全部が見えてきたため、思わず声を漏らす。
ようやく戻ってきた力。けど、久しぶりの力すぎて、まだうまく扱える自信が今のバドレックスには存在しない。下手をしたら加減を間違えてしまうけど、実力が保証されているボクたち相手なら安心して戦える。だからこその、この提案という事なのだろう。
「バドレックス……いいんだな……!!」
「あとでやっぱダメって言われても……止まらないぞ……!!」
伝説とのバトル。そう聞いて嬉しそうな表情を浮かべるのはホップとジュン。バトルすることが大好きな2人はとても前向きな反応を示していた。特にジュンの方は、ブリザポスとの再戦を止められてしまっていたので余計に嬉しい提案なのだろう。今にもボールに手をかけてバトルできる状態となっていた。
「う~ん、意見は分かったけど……」
「ほんとに大丈夫と……?」
「心配の方が流石に強いわよ?」
一方で女性陣は未だに乗り気ではない。特に、大会に参加していないヒカリは全くと言っていいほどメリットがないため、バドレックスへの心配に思考が振り切れているようだ。それに対して、バドレックスは次の返答を返す。
「もしヨに勝つことが出来れば、オヌシたちの手伝いも全力でするとしよう。ユウリとマリィに対しては、バトルの相手やいろいろな相談を、ヒカリに対しては野菜の無償提供であるな。力が戻った今、豊穣の力も存分に扱える故、料理好きのヒカリに手を貸せると思うのだが……」
「野菜の……無償提供……!?」
バドレックスの提案でヒカリの目の色が変わる。
カンムリ雪原に来て、あまり食材が潤沢ではないということもあり、少し料理の時に窮屈な思いをしていたヒカリにとって、この提案はまさに天からの啓示なようなもの。今まで抑制されていたこともあって、ヒカリのやる気が一気に跳ね上がる。と同時に、ヒカリの料理を更に食べられると分かったユウリも同じように燃え上がっていた。
「フリア!!絶対に勝つわよ!!」
「ヒカリの美味しい料理が食べられるのなら、私も頑張るよ!!」
「うわぁ、分かりやすい」
「これはもう止められなさそうとね。ま、あたしはあたしで頑張らせてもらうと!」
2人の後ろに炎が幻視できるほどやる気を滾らせている姿に、ついつい苦笑いを零してしまうボクとマリィ。こうなってしまったからにはもう止める人はいない。マリィはマリィで、ジムチャレンジの参加者ということもあり、なんだかんだ伝説とのバトルを楽しみにしている節があったので、すぐさま意識を切り替えて準備を始めていく。
「さて、あとはオヌシだけだが……?どうする、フリア?」
「……そんなの、決まってるでしょ!」
準備を終えたみんなからの視線を受け、そしてバドレックスからの質問を受けながら、ボクは腰のボールを1つ取って、それを真正面のバドレックスに構える。
ボクだって、レイスポスとのバトルをお預けされているんだ。不完全燃焼感は否めなかったので、この申し出はありがたい。バドレックスがいいというのなら、喜んでその勝負を受けるだけだ。
「うむ。みな合意と見てよいな?」
バドレックスからの最後の確認作業に頷くボクたち。この中で唯一動けていないのは、いまだに現状を把握し切れていないピオニーさんだけだ。
「こ、これは何が起きてんだ?なんか話的にバトルが始まりそうな流れになってるが……それでいいのか?」
「うむ。これよりヨとフリアたちでバトルを行う。それに際しピオニーよ。オヌシに審判を頼みたいのだが、問題はあるか?」
「オレが審判!?そうか……」
そんなピオニーさんを審判役に任命するバドレックス。一から説明するのも時間がかかってしまうので、端的に説明を終えたバドレックスだけど、それに対してピオニーさんは一瞬考えるしぐさを見せるけど、すぐに表情を切り替える。
「おっし、何が何だかわかんねぇけど、とにかく任せろ!!なんかお面白そうだし、しっかりと勤めさせてもらうぜ!!」
「うむ、感謝する」
経験からくる切り替えの早さなのか、はたまた何も考えていないのか。どちらかはわかんないけど、とりあえず今の状況に適応を見せたピオニーさんが、ボクたちとバドレックスから離れながらも、両者の真ん中に位置するような場所に移動していく。
「では始めるとしようか」
「うん……あ、使うポケモンはそれぞれ1人の方がいい?」
「そうであるな。さすがのヨも力を取り戻してすぐの今、41ものポケモンとのバトルはきついのでな」
「うん。わかった」
最後にバドレックスとバトルのルールを決めて、ボクたち全員がポケモンを1人選んで構えを取る。
「みんな、行くよ!!」
「「「うん!!」」」
「「ああ!!」」
「来い!!人の子よ!!」
バドレックスが 現れた!
力を取り戻し、威厳を取り戻した豊穣の王が、ボクたちの前に立ちはだかった。
☆
「お願い、エルレイド!!」
「エルッ!!」
「行くぞ、レイスポス!!ブリザポス!!」
「バクロォース!!」
「バシロォース!!」
ボクが繰り出したポケモンはエルレイド。両肘の刃を伸ばしながら高らかに声を上げるエルレイドは、目の前でブリザポスに乗りながら、2人の愛馬に指示を出すバドレックスをじっと見つめる。
「行くよ、タイレーツ!!」
「頼むぜアーマーガア!!」
「行くと!ズルズキン!!」
「行くぜギャロップ!!」
「やるわよエテボース!!」
ボクとバドレックスの準備が出来たのに続いて、ユウリ、ホップ、マリィ、ジュン、ヒカリの順でポケモンを繰り出していく。本当なら再戦の意味も合わせて、ボクはインテレオンを、ジュンはヘラクロスを選択することも考えたのだけど、防御力が厚くなりがち且つ、現在バドレックスが乗っているのがブリザポスであるということを念頭に置いてこのチョイスをしたという形だ。ジュンに関しては、そのあとのレイスポスにも戦えるという意味でギャロップを選出していそうだけどね。ヘラクロスの得意技は両方レイスポスには通らないし。
「では手始めに……レイスポス!『シャドーボール』!!ブリザポスは『つららおとし』である!!」
「クロォース!!」
「シロォース!!」
バドレックスの合図をもとに、黒い球と氷の槍が射出される。さらに、この攻撃に合わせてバドレックス自身がサイコキネシスを打つことによって、三位一体の攻撃となった。
「エルレイド!!『つじぎり』!!」
「エテボース!!『アイアンテール』!!」
その攻撃に対し、まずはエルレイドとエテボースが弾速のあるシャドーボールを弾くために前に出て技を振るう。
「アーマーガア!!『はがねのつばさ』!!」
「タイレーツ!!『インファイト』!!」
「ギャロップ!!『フレアドライブ』!!」
続いて飛んでくる氷の槍に対しては、こおりタイプに強い技ですべてを打ち消す。シャドーボールと比べ質量がある攻撃なため、こちらはさっきよりも1人多いメンバーで対処する。そして最後のサイコキネシスは……
「ズルズキン!!前に出ると!!」
あくタイプを含むズルズキンが前に出ることによって、タイプ相性で打ち消していく。
「ふむ。流石のコンビネーションである」
「攻めるよ!!」
「アーマーガア!!」
「ギャロップ!!」
ボクたちの動きを冷静分析するバドレックス。さっき言った通り、今の行動はバドレックスにとって小手調べという事だろう。力の使い方を振り返るためにはわからなくはない行動だけど、申し訳ないけどこちらは最初から全力だ。ボクの言葉を合図にホップとジュンが指示を出し、ギャロップとアーマーガアが前に走り出す。
「クロォース!!」
「ギャロップ!!『スマートホーン』!!」
「アーマーガア!!『はがねのつばさ』!!」
これに対してレイスポスが前に出てシャドーボールをばらまき始めるが、はがねのつばさとスマートホーンを連続で繰り出し、飛んでくるシャドーボールに何度もぶつけることによって爆発音を発生させ、攻撃を防ぎながらレイスポスの動きをそいでいく。
「ブリザポス!!」
「シロォース!!」
これに対し、ブリザポスがつららおとしにて援護を開始。アーマーガアとギャロップの上空から氷の柱が現れ、次々と落下をはじめる。
「エテボース!!『ダブルアタック』!!」
「ズルズキン!!『ドレインパンチ』!!」
だけどこの氷の柱は、マリィとヒカリの援護によって全て砕かれる。
「エルレイド!!」
「タイレーツ!!」
バドレックスからの小手調べを弾いてすぐに行われるアーマーガアたちと愛馬たちによる攻防。この隙を見逃さず前に走り出すのはエルレイドとタイレーツ。2人の視線は、バドレックス……ではなく、彼が乗っているブリザポスに向かっていた。
(愛馬と一緒にいることによって力を増すのであれば、まずは足を担っているブリザポスから仕留める!!)
「エルレイド!!『せいなるつるぎ』!!」
「タイレーツ!!『インファイト』!!」
つららおとしをしたばかりで明確な隙が出来たブリザポスに肉薄したエルレイドとタイレーツは、ばつぐんの技を叩き込むべく力を込めて全力で腕を振り切る。
「良き狙いと連携である」
ボクたちの動きに感嘆の声を漏らすバドレックスだけど、その言葉に反応する余裕はない。そのままエルレイドとタイレーツの技を見守っていると、ブリザポスの懐に入り込んだ両者の技が、ブリザポスに吸い込まれるように飛んでいく。
「おし、入るぜ!!」
「まずは一発!!」
まずはファーストヒット。それを確信したジュンとボクが声を出す。
「久しぶり故少し不安だが……うむ、できそうであるな……カムゥ!!」
しかし、エルレイドたちの技は、
「「なっ!?」」
「エルッ!?」
「ヘイッ!?」
バドレックスが何かをしたせいか、どうやらブリザポスとレイスポスの場所が入れ替わったらしく、バドレックスはいつの間にかレイスポスに跨っていた。そのせいでかくとうタイプの技であるエルレイドたちの技は、ゴーストタイプの身体をすり抜けて不発に終わってしまう。急に起こったその現象にボクたちは驚きの声を隠せず、そのまま少し固まってしまった。当然そんな隙を逃すバドレックスではない。
「やるぞレイスポスよ!!『アストラルビット』である!!」
「バクロォースッ!!」
バドレックスの掛け声に反応したレイスポスは、周りにシャドーボールのような黒い球体を出現させる。それは大きさこそ野球ボールほどのものだけど、フリーズ村で見たシャドーボールよりもはるかに威力が高いことが、見た目でわかるほどには力が凝縮されていた。そんな黒い球体に、今度はバドレックスが力を注ぐことによって、その威力と色をさらに深くしていく。
あれはやばい。
「エルレイド!!バック!!」
「タイレーツ!!下がって!!」
すぐさまその結論に至ったボクとユウリは慌てて後退を指示。しかし、ブリザポスを倒すために大振りになっていたせいか、すぐに身体を動かせる状況にない。
「アーマーガア!!『ひかりのかべ』だぞ!!」
エルレイドとタイレーツの状況がまずいと判断したホップがすかさずフォロー。翼をはためかせ、両者の中間に飛び込んだアーマーガアが、ひかりのかべの展開をギリギリ間に合わせる。
「この一撃、オヌシらに受け止められるかな?」
「ガァッ!?」
「アーマーガア!?」
しかし、放たれたアストラルビットの威力がとてつもなく高いため、受け止めるために展開されたひかりのかべを一瞬のうちに破壊し、その後ろに隠れていた3人に直撃してしまう。
「エルレイド!!大丈夫!?」
「エ……エルッ!!」
幸い、ひかりのかべで威力が下がってくれたことと、その際に起きた僅かな時間のおかげで防御行動を取る事は出来たため何とか致命傷こそ避けたものの、決して少なくないダメージを負ってしまった。それはタイレーツとアーマーガアも同じらしく、2人とも戦闘状態こそ解除していないものの、その表情はかなり険しくなっていた。
「ほう、余裕を持って耐えるのであるな……かなり本気で打ち込んだのであるが……」
「この耐えで『余裕を持って』って言われるのかよ……」
バドレックスの呟きに、悪態をつくように吐き捨てるホップ。正直ボクも同じ気持ちだ。一撃でこれほどの被害を生んでおきながらこう言われるのは、さすがに気持ち的に来るものがある。
「エテボース!!『ダブルアタック』!!」
「ズルズキン!!『かみくだく』!!」
しかしやられてばかりのこちらでは無い。今の隙に走り込んでいたエテボースとズルズキンが、いつの間にかバドレックスの後ろに回り込んで技を発動していた。今度は愛馬ではなく、その上に跨るバドレックスを標的としている。
「速い!」
「足がダメなら頭よ!!」
「いただくと!!」
完全に死角を取った鋭い一撃。そんじょそこらの相手なら間違いなくここで決まる連携。
「だが、まだ反応できるのである!!」
だけど、やはりこの攻撃も届かない。
「今度はバドレックスが消えた!?」
「いや違う!ブリザポスの上に戻っていると!!」
さっきまでレイスポスの上にいたはずなのに、エテボースたちの攻撃が当たる時には、レイスポスと位置を入れ替えていたはずのブリザポスの上にバドレックスが移動していた。
「次はブリザポス!行くぞ、『ブリザードランス』!!」
「バシロォース!!」
先ほど行われたレイスポスとの連携の対を成すように、今度はブリザポスとの連携技を構えるバドレックス。ブリザポスが嘶きながら地面を踏みしめると、地面から氷が突き出し始め、先ほど攻撃を空ぶったエテボースとズルズキンをがっしりと固めてしまう。
「受け取るがいい!!」
固まったエテボースたちはバドレックスにとっては格好の的。そのまま右手にブリザポスのつららを集中させ、自身の力を注入。一本の巨大な氷の槍を完成させたバドレックスは、サイコキネシスによる斥力を重ねながらその槍をエテボースたちに向けて投擲した。
「エテボースたちを助けるぞ!!ギャロップ!!『フレアドライブ』!!」
「グロォーッ!!」
このままだとまずいと判断したジュンが、すかさず炎を纏いながらエテボースたちへタックル。エテボースたちを閉じ込めていた氷を、槍が到達する前に何とか溶かし切って、ズルズキンを背中に、そしてエテボースの尻尾を口に咥えながら、ギャロップが猛ダッシュを行って攻撃範囲から逃れていく。
「助かったわジュン」
「ありがと」
「気にすんな!それよりも……やっぱ強ぇな……」
ヒカリとマリィの言葉に返しながら額の汗を拭うジュンに、ボクたちは頷きで返す。
「ふむ、やはり慣れ親しんだ技は身体が覚えているものであるな……さぁ、人の子よ、どうする?」
バドレックスの言葉を聞きながら、ボクたちは仕切り直すように自分の下に仲間を戻し、場はいったんの仕切り直しとなる。けど、ボクたちの顔は一様に険しく、ただひたすらにバドレックスから発せられる圧に半歩だけ下がっていた。
(攻撃の後隙はちゃんとある。けど、その隙をあの瞬間移動のせいで消されているから攻撃が当たらない……でも、バドレックスはテレポートはできないはず。もしそれが可能なら、タヅナを引っかけるのだってもっと簡単なはずなのだから……ってコトは、何かこの瞬間移動にはからくりがある……ってことだよね?)
「オヌシらの本気。ヨに見せてみるがよい!!」
「バクロォース!!」
「バシロォース!!」
「「「「「「絶対に負けない!!」」」」」」
それでも、ボクたちの闘志は全く消えていない。
(そのからくり……絶対に見破る……!!)
ボクたちの豊穣の王とのバトルは、まだ始まったばかりだ。
力
実機ではこの時点で全盛期に戻っているらしいですが、個人的には愛馬を片方戻した時点で全盛期というのは少し気になったところがあるのでこの形にしました。この作品では、これでもなお全盛期ではないあたり、全盛期は更にやばそうですね。
声
力が上がったことに伴って、普通にしゃべられるようにもなっています。これは力が増えたこともそうですが、バドレックスの過去と思われる話に、『人語を解しそれを諌めると言った』という文言があったので、『昔は喋ることが出来たのでは?』と思いこの形に。やはり言葉を喋るポケモンは、少し特別感がありますよね。
瞬間移動
結論を言えば、バドレックスが覚える技より考えています。ただし、フリアさんが言う通りバドレックスはテレポートは覚えません。ではどの技でしょうか?
ようやくかけたバドレックス戦。愛馬を両方出した理由が少しずつ明かされていますね。私個人としても、ようやく話せるという気持ちです。