【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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気づけばかなりのお話書いてますね。
定期更新がなんだか楽しくなっています。

あと今回ちょっとあとがき長いです。
いつも通りただの補足なので興味ない方は飛ばしていただいてもかまいませんので、今回もごゆるりと。


19話

 相棒に起こされて事情を聞き、慌ててホルダーだけ腰に着けて立ち上がる。服装はパジャマだけど正直着替える時間さえもおしい。

 

「森の奥の奴らは任せてもいい?」

「……!!」

 

 ボクが言葉をいい切る前に窓から飛び出して森の奥の方へ。それを一瞥してボクはすぐにアオイさんの部屋の扉を開け放ってかけ出す。

 

 アオイさんの部屋は預かり屋の2階にあるため恐らく侵入者がいるであろう1階の受付まで階段の手すりに座り、滑り降りながら腰のホルダーからボールをひとつ構える。少し素行が悪いかもだけど緊急事態ということで目を瞑って貰おう。1階まであと少しというところで手すりから腰を上げて飛び降り、着地と同時に前転して衝撃をにがしダッシュする。モンスターボールのボタンを押し、ボールが自分の手の中で大きくなったのを感じながら受付への扉も躊躇なく開ける。そして……

 

「ジメレオン、『みずのはどう』!!」

「な!?フォクスライ!?」

「フリア君!?」

「何故ここに!?」

 

 受付に押しかけようとしている4人の大柄な男と4匹のポケモンに今まさに襲われそうになっているスミレさんとヒマリさんが視界に入った。確認と同時に躊躇なくジメレオンに攻撃の指示。こんな時間にこんなことしてくる奴らがまともな人なわけが無い。相棒も忠告してくれたのだから尚更。

 

 フォクスライ2匹とガラルマッスグマ2匹が今まさに襲わんとしているところにジメレオンが勢いよくみずのはどうを放ち、フォクスライ1匹を押し返す。

 

 いきなりの攻撃に驚いた敵は少し下がって距離をとった。そこを確認してすぐさまスミレさんとヒマリさんの前に躍りでる。

 

「大丈夫ですか?!」

「ええ、大丈夫よ」

「ありがとうございます」

「気にしないでください……こいつらは?」

「……ポケモンハンターです」

「っ!?」

 

 ポケモンハンター。

 

 ポケモンを無理やり捕まえ、売り払ったりポケモンから取れる希少な素材や道具を乱獲し売り払って金を稼ごうと企む奴らの総称だ。普通にモンスターボールで捕まえるトレーナーと無理やり捕まえるのでは何が違うのかと言われると違いは2つある。

 

 1つは絆。

 

 モンスターボールで捕まえたポケモンとは個体によって差はあれど少なからずだけど主従や仲間としての絆が生まれる。それが生まれないということは野生のままということであり、凶暴性や暴れが多くなり、また人間への不信率も高まり、もし自力で脱出したら今度は何も関係ない人間に八つ当たりを始めて被害が拡大する。そのためモンスターボールで捕まえるというのはかなり大きな意味を持つ。

 

 そして2つ目。

 

 そもそもモンスターボールを使用せずに行う捕獲はポケモン保護法によって禁止されている。つまり普通に犯罪である。間違いなく1つ目が原因で作られた法律ではあるんだけど……まぁ細かいことはどうでも良くて……

 

 簡単に言ってしまえば今のボクの目の前にいる奴らは正しく犯罪集団。

 

(なんか、やっぱりどこの地方でもこういうのはいるんだね……)

 

 ギンガ団といいこいつらといいなんでこんなことを平気な顔をしてできるのか。正義のヒーロー面する気はないけどそれでも許せないことは許せない。ここでバシッと討伐……できればいいんだけど……。

 

「おいおい、ガキ一人でいきがってどうするつもりだ?んん?」

「はっ正義の味方ごっこか?いけ!マッスグマ、わからせろ!!」

「フォクスライもやれ!!」

 

 立ちふさがるは四匹のポケモン。手持ちを総動員しても相棒が抜けているため三匹しかいない。かなりの大立ち回りを要求されるけど……

 

「ラビフット、『にどげり』!!」

「バチンキー、『はっぱカッター』!!」

「モルペコ、『オーラぐるま』!!」

「ジメレオン、もう一回『みずのはどう』!!」

 

 後ろから走ってきてくれる影に頼もしさを感じながら再度みずのはどう。四つの技がそれぞれの相手に当たりさらに後ろに退けらせることに成功。

 

「いきなり大きな音を立てて扉開けるからびっくりして起きちゃったぞ……」

「まだ少し眠い……けど!」

「流石にここは下がれんね」

「お母さん!おばあちゃん!!」

 

 ユウリ達がボクの横に並んで立つ。その間にアオイさんが家族のもとへ駆け寄っていき無事を確かめ合っていた。どうもボクが音を立てすぎたみたいで皆起きてきたらしい。申し訳ないという気持ちがありながらも、ことこの場面においてはみんなの力を借りないと正直どうしようもなかったからありがたい。

 

「一人一殺ってことで大丈夫?」

「「「任せて!」」」

 

 三人から力強い返事を受けてうなずきで返す。ボクの相手はフォクスライ。クスネの進化系で、あまり褒めたくはないけどパッと見た感じ悪事を働けるだけの力はあるように見える。レベルも向こうの方が高いだろう。

 

「せめて有利に立ち回らないと……」

「何ごちゃごちゃ言ってやがる!人数増えたくらいで調子に乗るなよ?フォクスライ、『つじぎり』!」

「ジメレオン、『ふいうち』!」

 

 いまひとつながらうまく刺さりフォクスライが少しひるむ。

 

「そのまま『とんぼがえり』!」

 

 ホルダーから一個ボールを取り出してジメレオンを下げてマホミルを投げる。フェアリーで有利を取って勝ちに行く。

 

「何やってるフォクスライ!!『つじぎり』ではやく仕留めろ!!」

「ラァイ!!」

「ミュ!?」

 

 出てきた瞬間に攻撃を受けて弾かれるマホミル。けど、いまひとつというのが想像以上に受けるダメージを抑えてくれている。

 

「マホミル、『ドレインキッス』!!」

「マァ、ミュ!!」

 

 お返しにたたきつけるのはばつぐんの技。レベル差はあるもののばつぐんでそこそこのダメージをもぎ取りつつ回復していく。

 

「ちょこまかと……フォクスライ、『でんこうせっか』!!」

 

 右に左に縦横無尽に駆け回るフォクスライ。壁や天井をも足場とするその軽やかさにマホミルは右往左往してしまう。落ち着いて動きを観察しようにも思いのほか早いその動きにあまり動きの速い方ではないマホミルではなかなかいつけない。

 

「マミュ!?」

「大丈夫!?」

 

 着々と増えてしまう傷にどうするか悩んでしまう。

 

(どうすればいいか頭の中で作戦を組み立てて早く突破口を見つけないと……)

 

「やればできるじゃねえか!ここでちゃんと仕事すればメスのフォクスライ侍らせてやるからもっとやる気出せよ?」

 

 その言葉に吠えてやる気を出し、さらに走りまわるフォクスライ。発破のかけ方は最悪だけどそれで現に結果が出ているから何とも度し難い。テンションが上がったことによってさらにスピードを上げて走り回るフォクスライにマホミルがさらにあわあわとしだす。ここはもう一度ジメレオンに戻してスピード対決をした方がいいかもしれないけど……

 

「ありがとう、あなたが口走ったおかげで突破口が見えた!」

「ああん?」

 

(相手がどれだけ速くても関係ない方法……これしかない!)

 

「マホミル、『メロメロ』!!」

「マ~ミュ!」

「ライ!?」

 

 かわいらしく相手を誘惑するマホミルにまんまと捕まり目をハートにして惚けだすフォクスライ。メロメロ状態になったフォクスライはその足を止めてひたすらマホミルを見つめることしかできない。

 

「お、おい!フォクスライ!!何してる!!」

「ラ~イ~……」

「性別教えてくれてありがとうございます。これであなたにはもう苦戦しない!!」

 

 マホミルは♀しか存在しないポケモンだ。相手が♂だとわかってしまえば脳死でメロメロを打てる。自分のマホミルがどっちの性別かを覚える必要がないからね。勿論メロメロ状態は見とれて行動しづらくなるだけで行動しないわけじゃない。だからここはさらに相手の足を止め、さらにほかの敵を巻き込む!!

 

「ユウリ、ホップ、マリィ!みんなを下がらせて!!」

 

 ボクの合図に戦っていたみんながそれぞれの手持ちを下がらせる。いきなりの行動に敵が全員こちらをいぶかしむ顔をして一瞬動きが止まる。この隙に決める!!

 

「マホミル、『てんしのキッス』!!」

 

 メロメロで動きがおぼつかないフォクスライにさらに混乱が入り動きがしっちゃかめっちゃかになっていく。ぐるぐる回ったり寝転がったり、果てはつじぎりやでんこうせっかを味方に放つまでになったその様は見ていてとても滑稽でそんな場合じゃないのに思わず吹き出しそうになる。

 

「おい!お前のフォクスライ邪魔なんだよ!」

「さっさと混乱治すか下げるかしろよ!!役に立たねぇな」

「おいこっち攻撃するな!!」

「うるせぇな!おいフォクスライ!!ちゃんとしやがれ!!」

 

 あまりにもひどい状態に自分のポケモンにイライラをぶつける相手があまりにも無防備すぎてこちらにとってチャンスでしかない。

 

「『ドレインキッス』!」

「『にどげり』!」

「『はっぱカッター』!」

「『オーラぐるま』!」

 

 そんな隙を見逃すボクたちではなく、ここぞとばかりに攻撃を仕掛ける。それも混乱している個体はそのままにそれ以外の奴らに的確に攻撃を当てていく。勿論仲間割れに巻き込まれるつもりもないので距離も丁寧にとって攻めつつ、されど密着せずに。間合い管理をしっかり行った戦い方は相手を思いのほか削っていき、ボクたちのコンビネーションも完璧なこともあってかこちらに被害をほぼ出さずに相手をかなり追い込む。味方の仲間割れとこちらのちまちまとした攻撃に相手はさらにイライラを募らせていき、とうとう堪忍袋の緒が切れる。

 

「ああもううざいなぁ!マッスグマ!その役立たずに向かって『とっしん』!!」

 

 混乱しているやつを戦闘不能にする気満々の本気の突進がフォクスライに直撃する。反動ダメージもあってお互いかなりダメージが入ったもののこれで正気に戻ったのか混乱もメロメロも解除されてしまった。けどその代償はかなり大きく、相手はかなり消耗している。

 

「よし。いい感じだぞ!!もうちょっとで勝てる!!」

「流石フリアやね。一手でここまで変わっちゃった」

「運がよかっただけだよ」

「でもおかげでこっち優勢なんだもん。やっぱりフリアは頼りになるよ。さぁ、一気に決めちゃおう!!」

 

 作戦がばっちり決まってこちらの士気がかなり上がっていく。それはポケモンたちにも伝染しており、みんなやる気に満ち溢れている。一方向こう側は度重なる仲間割れにしっちゃかめっちゃかなうえトレーナーがむちゃくちゃになっているからやる気はダダ下がり。このままなら押し切れる。

 

「畜生、てめぇのせいでめちゃくちゃじゃねぇか!!」

「ちっ、うっせぇなぁ……は、じゃあ取り返せばいいんだろ?」

 

 さっさと抑え込んで森の奥で戦っている相棒のもとに駆け付けようと思ったときに向こう側のトレーナーが浮かべる嫌な顔。変な悪寒が走ってしまい体が震えてしまう。

 

(いったい何を……)

 

「フォクスライ、『バークアウト』」

 

 静かに放たれた黒色の波動は確かな悪意を持って真っすぐ放たれる。

 

()()()()()()()()()()()()

 

「壊せフォクスライ!!」

「しまっ!?」

 

 ボクたちの間を綺麗にすり抜けて放たれたそれは寸分たがわずアオイさんたちめがけて飛んでいく。予想外の攻撃に誰も反応できずに攻撃がそのままアオイさんたちに牙をむく。

 

「きゃああ!?」

「アオイ!!」

「あなただけでも!」

 

 ヒマリさんとスミレさんがアオイさんを抱きしめて盾になろうとしているところに慌てて駆け寄ろうとして……

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「マミュ!?」

「マホミル!?」

 

「おい!続けて『バークアウト』打ちまくれ!!」

「ラルトス!『ひかりのかべ』!!」

「俺たちもマホミルの援護をするぞ!!」

 

 さらに飛んでくる四つのバークアウトを見て反射でラルトスを追加で呼びひかりのかべを慌てて展開。それでも防ぎきれないものをホップたちがはっぱカッターやひのこなどで相殺していく。とりあえず大丈夫そうなのを確認してマホミルに駆け寄る。

 

「大丈夫?マホミル」

「マ……マミュマミュ!」

 

 どうも急所に当たったらしくかなりのダメージを負っているもののいまひとつだったためかまだ平気と頑張って笑顔で答えてくれた。

 

「ごめんねマホミ━━」

「マミュ!」

 

 ボクのせいでと続けようとしたところでボクの口元に指をあててくるマホミルに、「私が聞きたいのはそんな言葉じゃない」っていわれている気がしてすぐに訂正する。

 

「……うん、そうだね。守ってくれてありがとう」

「マミュ!……ミュ!?」

「っとと」

 

 どういたしましてと言わんばかりに答えるマホミルだったけどやっぱりダメージは少なくなかったみたいで少し体制を崩す。このまま戦うのはちょっと辛いかもしれない。ふと視線を上げるとそこには少しショックを受けたような顔をするアオイさん。さっきの攻撃がなかなかに心に来たみたいだった。

 

「マホミル。君にしかできない事を頼んでいいかい?」

「マミュ!!」

 

 敬礼をしてふよふよと飛んで行ったマホミルはアオイさんの腕の中にすっぽりと収まった後、あまいかおりを漂わせて心を落ち着かせていく。マホミルのかわいらしさもあってアオイさんの顔は緊張した顔からほぐれていった。これであちらのメンタルケアは大丈夫だろう。ひかりのかべを中心にいまだに耐えてくれているみんなの元にすぐに戻る。

 

「ごめん、お待たせ」

「マホミルたちは大丈夫と?」

「うん。マリィたちが稼いでくれたからだよ。ありがとう」

「ううん、むしろ私たちも反応遅れちゃったからフリアのマホミルにケガさせちゃった。ごめんね?」

「それ、ボクがマホミルに言ったら怒られちゃったからちゃんとお礼の言葉に言いかえてね?ユウリ」

「……うん、そうだね」

「そのためにも早く終わらせるぞ!」

 

 相手のバークアウトの波を乗り切り改めて並び立つボクたち。ひかりのかべをさらに張りなおしてボクのそばに降り立つラルトスは少し心配そうな顔をしていた。

 

「大丈夫だよ。マホミルは無事。ラルトスのおかげで皆も守れた……ありがとね、心配してくれて」

 

 そっとラルトスの頭をなでる。安心したのか若干気持ちよさそうな顔をし、表情をキリっと変える。他者の気持ちを察知することに長けているラルトスは他の誰よりもアオイさんの不安やマホミルの覚悟を感じ取っていたはずだ。だからだろうか。ラルトスから感じる力がいつも以上に大きいのは……

 

「さあ行こう、ラルトス。みんなを……守るんだ!!」

「ラル!!!」

「……え?」

 

 大声で答えたラルトスの体が青く発光していく。つい昨日も見たその光。進化の兆候。

 

「ラルトスが……キルリアに進化した……!」

「キル!!」

「……うん!行くよキルリア!『ドレインキッス』!!」

「キィィィ、ルッ!!」

 

 そっと口づけを落とされた左手は今までよりも明らかに強い光を放っており、明らかに威力が上がったのが見て取れた。その拳をしっかりと構えフォクスライの懐に一気に踏み込み叩きつける。ラルトスのころよりも勿論上がっているスピードに本来ならフォクスライの方が早いものの、その落差に驚き反応できずに直撃。

 

「ライッ!?」

「うぉおッ!?」

 

 吹き飛ばされたフォクスライは持ち主のもとに吹き飛ばされて戦闘不能となる。目を回しているフォクスライになんか目もむけずにボクのもとへ帰ってきて再び戦闘の構えを取るキルリア。よっぽどマホミルたちを傷つけられたことが許せなかったのかものすごく集中しているキルリア。そのキルリアに気圧されて怯むフォクスライたち。その一瞬の隙をみんなが見逃すはずもなく全員で再び一斉攻撃。その攻撃が終わるころには敵側のポケモンが全て戦闘不能になっていた。

 

「くっ、お前ら!撤退だ!!時間稼ぎは十分だろ!逃げるぞ!!」

 

 その言葉を合図に外へと走り出すハンターたち。時間稼ぎという言葉にみんなが思案顔になるもののすぐにホップが思いつき答える。

 

「そうだヒマリさん、スミレさん!窓から外見た時に預かり屋の庭の方がものすごく騒がしかったぞ!もしかしたらこの間に……」

「預かっている子たちが危ない!?お母さんはここにいて、私は見てくるわ!!」

「ま、まって!私も行く!!」

 

 預かり屋から飛び出していくヒマリさんとアオイさん。二人だけでは危ないと思い慌てて追いかけるボクたちは、二人の背中を見失わないようにとにかく追いかける。真っ暗な森の中で視界も悪く、何回か見失いそうになるもののあの騒がしかった場所から向こう側も移動したのか預かり屋の建物からかなり近い位置で皆止まっていた。そこにいたのは……

 

「な、何だよこれ……どうなってやがる」

「お、おいお前ら!何があった!!」

 

 ポケモンを捕まえる機械は粉々に砕かれて、それを操っていたであろう人たちが、軒並み縄で縛られて拘束されている状態であった。もしかしてと思い、腰のボールを確認するとカタカタと空だったはずのボールが動いていた。

 

「ははは……仕事はっや……」

 

 ボクの相棒が一晩でやってくれました。いや、流石すぎる。

 

「さて、あとはこの四人も同じように縛って終わりかな……?」

「誰がやってくれたのかわからないけど……外がもう解決しているのは助かったぞ」

「けど、誰がやったと?フリア?」

「でもフリアは私たちと戦ってたけど……」

「ははは、まぁ……ね?」

 

 いや、特に隠すこともないんだけど今は説明している時間もないのでとにかく捕らえちゃおう。

 

「ははは……終わりだ。こんなガキたちに取り押さえられて……俺たちはもう捕まるんだ……」

 

 自分たちの負けを悟った敵が絶望的な顔をしながら呟く。申し訳ないけどただの自業自得でしかないのでさっさとお縄についてもらう。ご丁寧にも近くに予備の縄も置いてあったのでこれを使えば残りの人たちも縛ることができるだろう。その縄をもって近づこうとしたときだった。

 

「だったら……せめて全部ぶっ壊してやる!!」

 

「っ!?」

 

 言葉とともに放たれるポケモン。そのポケモンが出てきた瞬間巻き起こる砂嵐。あまりの強さに前が見えず、ぼんやりと緑色のシルエットが見えるだけ。だけどそれだけわかれば十分。こんな特徴的なポケモン一匹しかいない。

 

「バンギラス!」

 

 

 よろいポケモンバンギラス。

 

 

 そのポケモンがなぜか()()()()()()()()()()

 

 

「暴れろバンギラス!!」

 

 

「グギャアアアア!!!」

 

 

 指示を聞いているのか聞いていないのか。それすらもわからないまま暴れるバンギラス。じしんやストーンエッジが飛び交い、呼び出した本人でさえ巻き込まれて吹き飛んでいた。幸いにも直撃ではなかったため意識を失っているだけだがこのままバンギラスが暴れ続けたらいつ怪我人が、果ては死人が出てもおかしくはない。何とかしなくては。

 

 

「グギャアアアア!!!」

 

 

 相棒を繰り出して無理やり止めようと構えた時に口にエネルギーをため始めるバンギラス。そのまがまがしい黄色い波動は見ただけでかなりの威力があるのが感じ取られた。というよりその技をボクは知っている。

 

(はかいこうせん!?)

 

 まずいと思う前に放たれた破壊を具現化したその攻撃は預かり屋の屋根を一部壊して通過していった。

 

 それも倉庫部分の一部を巻き込んで。

 

「「っ!?」」

「フリア!?ユウリ!?」

 

 ホップの声を無視して砂嵐の中駆け抜ける。倉庫の一部が壊れた。それはつまり卵に被害がある可能性があること。

 

(あんな攻撃が卵に当たったらっ!!)

 

 空いた穴から飛んでくる二つのかげ。よく目を凝らさなくてもわかる。ボクとユウリが見させてもらった二つの不思議な卵。

 

 茶色の水玉と紫と白の縞々の卵が空を舞っていた。

 

(あのまま落ちたら割れちゃう!!)

 

「ユウリは縞々の方をお願い!!」

「任せて!!」

 

 どちらがどちらを担当するかすぐに決めて走りこむ。けどこのままじゃあ間に合わない。

 

「「届ぇぇぇ!!」」

 

 右手を限界まで引き延ばしてヘッドスライディングの要領で飛び込んでいく。そのかいもあってか右の手のひらに卵が乗っかかる感覚を感じる。

 

「「っ!!」」

 

 同時に手前に引き寄せて体に抱きしめて、勢いを殺しながら転がっていく。数回転して何とか止まったのちに卵を確認して……

 

「「よ、よかったぁ……」」

 

 いつも以上にどこか強くなっている月の光に卵を照らし、卵に傷がないことを確認する。他に飛び出してきた卵もないことからとりあえず卵は大丈夫だろうと信じたい。

 

「フリアの方は大丈夫?」

「大丈夫、こっちは傷もついてないよ」

「それならよかっ━━」

 

「フリア!!ユウリ!!」

「早くそこから逃げて!!」

 

「「!?」」

 

 ホップとマリィの言葉にハッとする。そうだ、まだバンギラスが残っている。そう思いバンギラスの方を見るともうすでに次のはかいこうせんの準備を終えてこちらを向いているバンギラスの姿が。

 

(これまずっ!?)

 

 いまからだと相棒を呼ぶ時間はない。かといって転がって勢いを殺したばかりだから体勢も悪く走って避けられる気もしない。

 

(せめてユウリと卵だけでも……っ)

 

 自分の身を犠牲にしてでも助けようと動いたとき、ふと頭の中に疑問が残った。ボクが卵の傷を確認した時、確かにおかしなことがあった。

 

(そういえば……()()()()()()()()()()()()?)

 

 ふと上を向けばまるで真昼かと言わんばかりにさんさんと輝く月。夜なのに日照り状態となっていた空。そして……

 

「ウインディ、キュウコン!『ソーラービーム』!!」

 

 ほとばしる二本の緑色の光線。陽の光を吸収し放たれた暖かいその攻撃はバンギラスを貫き、ばつぐんのダメージを受けたバンギラスはそのまま地に伏した。

 

「アオイさんからの通報を受けてきたジュンサーです!指名手配中のポケモンハンターたちの確保に参りました!!」

 

 どうやら一階に降りる前にアオイさんが通報していたらしく、すぐさま駆けつけたジュンサーさんが大声で宣言するとともに外からさらにパトカーのサイレン音が鳴り響く。この日照りはキュウコンの特性、ひでりによるもの。そこからのソーラービームで見事バンギラスを仕留めたということだ。

 

 バンギラスも倒れ、ポケモンハンターも無事全員逮捕。もう大丈夫だろう。

 

「「よかったぁ……」」

 

 危うくはかいこうせんが直撃しかけた緊張感から解き放たれて力が抜けてしまうボクとユウリ。卵は抱えたままゆっくりと地面に座り込んでしまう。

 

「二人とも大丈夫ですか!?」

「大丈夫だよ。アオイさんが通報してくれたおかげだよ」

「ありがとうね、アオイ」

「うぅ、ご無事で本当に良かったぁぁ」

 

 涙目になりながら駆け寄ってくるアオイさんに感謝しながらそっと卵をなでる。

 

「いきなり駆け出したから何があったのかと思ったら卵があったんだな」

「二人して飛びだして地面転がるから何が何だかわからなかったと」

「その子たち……たしかあり得ないところで見つかった卵ですよね?お母さんに見せてもらったんです?」

「うん、そうだよ。ってほかの卵は大丈夫だった!?天井穴開いちゃったから瓦礫とかにつぶされてない?」

「その点はおばあちゃんか確認してて大丈夫だったって言ってました!!」

「それなら安心……つっかれたぁ……」

「キルキル?」

「キルリアもお疲れ様」

「キル!」

「あ、フリアさん!マホミルちゃんありがとうございました!!」

「マミュ!!」

 

 今回の戦いで進化したキルリアと色々頑張ってくれたマホミルもしっかりと労う。少し心配顔をしていたキルリアと元気よくボクに飛び付くマホミル二人ともしっかり撫でてあげると、どちらも気持ちよさそうな表情を浮かべる。色々驚きの夜だったけどこれにて一件落着だ。

 

「さて、最後にこの卵を元の場所に返して……」

 

 ヒマリさんに渡そうと思ったその時、今度は卵が発光しだす。

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 ボクとユウリの抱える卵が両方震え青白く光だしピキピキという音が鳴り出す。

 

「まさか……今孵化!?」

 

 アオイさんの言葉に答えられる人は誰もおらず、ただただ驚きでその様子を見ることしか出来ない。どんどん強くなる光に、けど目を離せなくてじっと見つめて数秒間。光が弾け、謎だった卵からついにポケモンが姿を表す。その中身は………

 

「……ブイ?」

「……エェレ?」

 

 ボクが抱えていた茶色の水玉からはよく知るポケモン、イーブイが。

 

 そしてユウリが抱えていた紫と白の縞々の卵からは紫色の体をしており、頭には4本の角のような突起物。舌を出し、おしりからペタンと座っている姿はどこか人間の赤ちゃんのような印象を受ける。

 

 後にエレズンと教えてもらう、でんき、どくタイプのあかごポケモン。それがこの不思議な卵の中身だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ポケモンハンター

最近ではアニメでスイクンを狙ってましたね。

メロメロ

卵回ということでなんだか性別に関することのお話が多くなりましたね。
たまたまです()
マホミル可愛い。
そしてついでにマホミルが凄くけなげなことを……すこしかいててつらかったです()

キルリア

ここで進化させました。
20レべで進化と考えるとむしろ遅い?

相棒

まだ出てこないです。
う~ん、じらすつもりはないんですけどせっかくならもっといいところで出してあげたい気がするのも事実。
一応解放タイミングはもう決めてはいます。

最初から混乱

これが意味するものとは?
剣盾から始めた人には絶対にわからないだろうなぁと。
むしろこれを知っていたらだいぶ昔からポケモンやってる人な気がします。

バンギラス

このポケモンがはかいこうせん打ってるの見ると某映画の
仮面のほにゃららさんを思い出します。
きっとハッサムとニューラを持っているんでしょうね()



イーブイ
ノーマルの二匹から+卵はコウノトリが運ぶというお話から鳥ポケモンから選出ということでウォーグルの子に。
卵の色もイーブイの毛色が茶色だから。
もともとバルジーナの予定だったのですがタイプが気に入らなかったので……あとハゲタカですし。
そんなことを言うとウォーグルは鷲なのでどっちにしろおかしいのですがそこはこじつけです()
エレズン
でんきタイプとどくタイプの複合なので親をそれぞれの単タイプから。
色はエレズンの体色から。
それぞれのポケモンの選出理由は卵のお話にイーブイは欠かせないという個人的な感想と、エレズンは実機でもここで受け取ることができます。
ここでもらった方は多いのでは?
私もここで貰い、手持ちに入れました。




気づけばかなり書いている預かり屋編。
本当なら軽く職場体験からの卵ゲットのはずが

キルリアに進化させたい

じゃあ戦闘挟もうか

じゃあアニメふうにちょっと悪いやつらを

じゃあこの状況下で手加減とか縛りやってる場合じゃないよね?

相棒の活躍場所も作らなきゃ

って感じにどんどん後付けで増えていきました。
実はここでイーブイの卵が出てきたのも最初のころは考えていませんでした。
というのも本来イーブイの卵は初めてカレーを作った回で出そうと思ったのですが、理由はとあるNPCがブイズのみでテントを張っているからです。
そこで卵を貰おうと考えたのですが……実はそのNPCがいるのキルクスタウン(六つ目のバッジ前)なんですよね。
何を思ったのかそのNPCが3番道路にいると勘違いをしてしまい……いくらなんでも遅すぎるということでここに回しました。
エレズンは最初から考えていたんですけどね。

というわけで作者のガバガバ構成のせいでかなり長くなってしまった預かり屋のお話でした。

さて、このイーブイとエレズン、どうなるんでしょうね(棒読み)









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