【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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194話

「ヤー!!」

「ヘイ!!」

「「「「「へへイ!!」」」」」

 

 急に氷に閉じ込められた事に若干の苛立ちを乗せながら吠えるカミツルギと、それに対して絶対に勝ちたいという思いを乗せながら言葉を返すタイレーツ。お互いの気持ちと気持ちがぶつかり合うこの戦場は、自分がこの戦いの関係者ということもあってか物凄く心が揺さぶられる。けど、緊張しすぎるということも無く、思ったよりも落ち着いて戦況を見つめている私がいた。この辺りは後ろにフリアがいるのが理由かもしれない。

 

 ただ、それと同時に冷静な私の頭の中は、だからこその壁にもぶつかっていた。

 

(……うん。冷静になって考えてみても、やっぱりこのままだと勝てるビジョンが見えてこない。あれだけの啖呵を切ったんだから、何がなんでも勝ちたいんだけど……正直このまま戦っても絶対に勝てない……何かをしなきゃいけないんだけど、いったいどうすれば……)

 

 ここまで手を合わせてその実力の差というのを嫌という程思い知らされた。真正面から戦えばまず勝てない。なら、搦手を考える必要があるのだけど、私はまだ経験が浅いからフリアのように突飛な作戦をぱっと思いつくことは到底できない。タイレーツが器用なポケモンというわけでもないということも、この作戦の組み立てにくさに手を貸してしまっている状態となっている。

 

(どうすれば……)

 

「ユウリよ……」

「え?」

 

 頭の中で何をすればいいのかをぐるぐると考えていると、私の後ろに控えていたバドレックスから声をかけられる。その言葉に反応して振り返ると、バドレックスは私の目をじっと見つめながら、ゆっくりと言葉を続けていった。

 

「オヌシはヨの恩人である。故に、オヌシの意志は尊重しよう。……が、今のオヌシがあヤツに勝てる確率があまり高くなさそうに見えるのも事実である」

「……」

 

 バドレックスの正しい分析結果に私からの反論はない。フリアも難しそうな表情を浮かべている以上、同じことを思っているのだろう。けど、それは私もわかっていることなので特に気にする点ではない。私なんかが気づくことなのだから、この2人が気づかないはずがないのだから。

 

 だから、重要なのは次にバドレックスから伝えられる言葉。

 

「だからこそ、オヌシにはヨからアドバイスを送りたい。その形で、オヌシを手助けさせてもらおう」

「アドバイス……」

 

 予想通り、私が一番聞かなくてはいけない話をバドレックスがし始めたので、私はカミツルギに注意を向けながらもしっかりとバドレックスへと耳を傾ける。

 

「ユウリ。そしてタイレーツよ。オヌシたちの覚悟は確かにすさまじい。オヌシらの勝利と力への貪欲さは、ことバトルでの成長という面においてとても重要である。が……」

 

 ここまで喋って一度言葉を区切り、目を閉じるバドレックスは、数秒経った後ゆっくりと瞼を上げ、私の方をさらに鋭く見つめながら次の言葉を告げる。

 

「オヌシらの()()は、そこが限界であるのか?……オヌシらが抱く野望に対する覚悟、そこへ払える()()は、それだけであるのか?」

「背中……代償……」

 

 バドレックスが強調して言った言葉を繰り返す私。まだこれだけだと理解できず、つい私の思考が自分だけの世界を作り出しかける。

 

「ヤ―!!」

「っ!?タイレーツ!!『メガホーン』!!」

「ヘイ!!」

 

 そんな隙をカミツルギは逃さず攻めて来る。私も反応が遅れてしまったから慌てて技を指示するけど、今回もかろうじて技が間に合っただけで、攻撃のぶつけ合いは勿論こちらが負け。再びタイレーツが大きく後ろに下げられる。

 

 けど、そんな状況もお構いなしと、バドレックスは言葉を続けていく。

 

「勿論、本来は褒められたものではない行動であろう。ヨもできれば薦めたくはない。が、今、この瞬間……そして、近くの大会で結果を出したいのであれば、オヌシは今できるものにどんどん手を出すべきである」

「今できるもの……」

 

 襲い掛かるカミツルギに対して、必死に緑色の角で抵抗していくタイレーツ。後ろに圧されながらも、それでもかろうじて耐え続けているタイレーツの姿を見ながら、バドレックスの言葉を自分なりにかみくだいていく。

 

「覚悟……背中……代償……今できること……タイレーツ、今のあなたが払って手に入れられるもの……あ!!」

 

 今も尚、()()()()()()()()()()()くらいついているタイレーツの姿を見て、バドレックスの言いたいことをようやく理解した。

 

(そうだ。弱気になっちゃダメなのに……もっと攻めなきゃなのに……全然その通りに動けていない!!)

 

 長期戦はダメだからと頭でわかっているのに、その後に行う攻撃はどれも中途半端で決め手に欠けている。そんな攻撃はたとえカミツルギに当たったとしても致命傷になんてなるわけがない。

 

 では何故私の攻撃は中途半端になってしまているのか。心の中ではずっと『攻めなきゃ』や、『長期戦は無理』と思っているのにだ。タイレーツも勿論そのことは理解しているのに、それでもカミツルギ相手には中途半端になってしまっている。その理由はなにか。

 

 それは今、この瞬間もフリアやバドレックスが後ろにいてくれているという安心感に、どこか委ねている自分がいるから。そして、攻めなきゃと言いながら、今のタイレーツは『下がりながら相手の攻撃を逸らして』いるからだ。

 

(どこかに甘えている自分がいる。また助けてくれるって考えてる自分がいる……それじゃあダメなんだ。そんなの、全然『はいすいのじん』じゃない!!)

 

 はいすいのじんは、自身を追い込むことによって力を引き出す技。けど、今の私たちはこの技で払った代償は、『このバトルが終わるまでタイレーツをボールに戻せない』という、実質なんにもリスクを背負っていない制約だけだ。

 

(バドレックスの言う通り、私たちにはまだまだ支払えるものがある……!!)

 

「ヤー!!」

「ヘイ!?」

 

 攻撃のぶつかり合いによって、もう何度目かも分からない弾かれを受けたタイレーツがこちらにころがってくる。けど、すぐさま立ち上がって相手を睨みつけるタイレーツ。そんな彼らの隣へと移動した私は、タイレーツからちょっと驚いたような反応の雰囲気を感じるけど、気にせず前を見続ける。そして、その状態で技を指示する。

 

「タイレーツ。『はいすいのじん』」

「ッ!?……へへイ!!」

「「「「「ヘヘヘイ!!」」」」」

 

 私の指示にさらに驚きに反応を見せたタイレーツ。それはそうだろう。だって、『はいすいのじん』という技は、全ての能力を引き上げる代わりに、そのバトルが終わるまで技の使用者を下げることは出来ず、またこの技は本来は場に出てから1回しか使えないと言われている技だからだ。今回タイレーツは既に1回はいすいにじんを行っている。つまり、本来ならはいすいのじんはもう行うことが出来ない。

 

 けど、それが私の思い込みだったら?技の発動条件を、『交換不能』ではなく、『自身に対して何かしらの負荷をかける』だと思い込むことが出来るのなら?それなら、バドレックスの言う通り、私たちはもっと自分たちを追い込むことが出来るはず。

 

 そのことを理解してくれたヘイチョーは、周りに声をかけて陣を作り上げる。出来た陣は、Vを逆さまにしたようなもので、その頂点にヘイチョーがいて、左右にヘイたちが構えている。槍の先端のようなその陣は、下がることを考えておらず、これからは直進しか出来ない攻撃的なものとなっており、またその陣をこのバトル中は二度と解くことは無いと言う制約を自分に課していくことで、まず1回、はいすいのじんを発動させる。ほのかに身体を赤く光らせるタイレーツの能力がまた一段階上昇する。

 

 これで2回。……まだ、削れる。

 

「『はいすいのじん』!!」

「「「「「「へへイ!!」」」」」」

 

 次の一言で、タイレーツたちは自身の身体の右と左斜め前にある、盾の役割をしている殻を自身の側面まで持っていき、完全に防御を捨てた構えを取る。ヘイチョーを担う子が特に前に展開をしていたこの盾も、これから行う行動には全く必要ない。

 

 普段は前に展開し、その隙間から瞳を覗かせているタイレーツたちが、ここまで顔を見せてくれているのはかなりレアかもしれない。

 

 これで3回目。タイレーツたちの纏うオーラも、さらに濃くなっている気がする。

 

「でも……まだ、行けるよね?!」

「「「「「「ヘイ!!」」」」」」

「うん!!だから……ッ!!」

 

 私の声に大きな声で発言するタイレーツたち。その声の大きさに習うように、私も大きな声で宣言する。

 

 

「『はいすいのじん』!!」

「「「「「「ヘイッ!!」」」」」」

 

 

 私の大声の宣言と同時に、タイレーツたちがお互いを鼓舞するかのように身体をぶつけ合い、気合いを引きしめ、高めあっていく。

 

 退路を捨て、陣の選択肢を捨て、盾を捨て、既に3つの事柄を捨てたタイレーツが最後に捨てるもの。それは己の体力。身体をぶつけ合って味方を鼓舞するとは言ったけど、この際、味方に対して手加減をしている子は誰も居ない。全員が全員、陣形を崩さない範囲で全力でぶつかり合って、どんどん士気を高めていく。当然そんなことをすれば、お互いに傷つけあうために相応のダメージを受けることになる。けど、『そんなこと知るもんか』とばかりにぶつかり合うみんなは、その熱気を力へと変えていき、いよいよもってタイレーツたちがオレンジを超えて赤いオーラを……いや、もはや炎と言っても差し支えないのでは?と思うほどの力を滾らせている。

 

 先ほど挙げた代償にさらに自分の体力をささげたその姿は、傍から見ただけでもすべてを圧倒するかの如く、覇気を放っていた。

 

 全能力4段階上昇。その強さは、すぐに証明される。

 

「タイレーツ、『メガホーン』」

「……ヘイ!」

「「「「「ヘイ!!」」」」」

 

 私の指示を聞いて自身の角を緑色に光らせたヘイチョー。彼の背中を押し出すように構えたヘイたちは、準備を整えたヘイチョーが声を上げると同時に声を返し、思いっきり地面を踏み込んで走り出す。すると、今までとはけた違いの速度と、地震でも起きるのではないかというくらい激しい踏み込み音をもって、タイレーツは爆ぜるようにその場から飛び出した。そのままカミツルギの身体ど真ん中に自身の角を叩きつけた。

 

「ヤ……タ……ッ!?」

 

 急に身体を襲うとてつもない衝撃に、思わず苦悶の声を漏らすカミツルギ。表情が全く変わらないのでどれくらい効いているのかはわからないけど、今日初めてのカミツルギの苦悶の声に、確かな手ごたえを感じる。特攻に等しいその一撃は、間違いなくカミツルギの身体の芯に叩き込まれたことだろう。

 

「スラ……ターン!!」

 

 先ほどと比べてとてつもない威力を誇るタイレーツからの攻撃。けど、カミツルギだってただやられるわけにはいかない。すぐさま反撃のリーフブレードを構え、自身をのこぎりのように回転させながら突っ込んでくるカミツルギ。タイレーツたちにとっては一度全員まとめて吹き飛ばされた、嫌なイメージのある技だ。けど、捧げる代償のありったけを払ったタイレーツにとって、カミツルギが何をして来ようともすることは変わらない。

 

「タイレーツ。『スマートホーン』!!」

「ヘイ!!」

 

 緑色だった角は鈍色へと変化。技の準備が完了と共に、先ほどと同じように爆発音を奏でながら突っ込む。

 

「ヤー!!」

「へヘイ!!」

 

 万物を切断する刀と、全てを攻撃に変換した最強の鉾がぶつかり合う。どちらも自身の身体をぶつけているはずなのに、ぶつかったときに響き渡る音は金属同士が激しくこすれ合う不協和音。甲高く、聞くだけで背筋に悪寒が走るようなその音は、今までのバトルであれば、タイレーツが弾かれて転がされることによって途切れていたけど、今回は逆だった。

 

「「「「「「ヘイ!!」」」」」」

「ヤッ!?」

 

 ずっと負け続けていた鍔迫り合いをついに押し切ったタイレーツ。のこぎりのように高速回転していたその身体は、タイレーツに弾かれたことによって回転を止められて、四肢に纏っていた緑色の光も霧散させられる。

 

 千載一遇のチャンス。

 

「タイレーツ!!『インファイト』!!」

「へヘイッ!!」

「「「「「ヘイッ!!」」」」」

「ヤ……!!」

 

 このチャンスを逃さないために、両の拳に渾身の力を込めて突っ込むタイレーツ。カミツルギも身の危険を感じ取ってすぐさま反撃に出ようとするけど、カミツルギが構えを取る前にタイレーツが懐に潜り込んだ。

 

「行って!!」

「へヘイ!!」

 

 ようやく手に入れた攻撃チャンス。これで決めるべく、タイレーツから繰り出される拳の嵐は、カミツルギの身体を正確に貫いて行く。カミツルギの身体に拳がぶつかるたびに聞こえてくる重い打撃音が、木々に反響して聞こえてくる。

 

「ピュイ!!ピュイ!!」

 

 いよいよ見えてきたバトルの終わりに、懐に隠れていたほしぐもちゃんも表に出て応援するかのように声をあげてくれた。それと同時に、カミツルギの後ろの方で小さく青色の光がほとばしり始める。その光は、ヨロイ島の巣穴でも見た覚えのある光だった。

 

「あれは……ウルトラホール!?」

「うるとらほーる……?あれの名前であるか?」

「うん。このカミツルギはあの穴を通ってこっちに来たんだ。カミツルギがウルトラビーストならまた出て来るかもって思ったけど、やっぱり出てきた!!ユウリ!!」

「わかってる!!タイレーツ!!あの穴に押し込んで!!」

「ヘイ!!」

 

 ついに現れたウルトラホール。あの穴に押し込めばカミツルギは元の世界に戻って、私たちの完全勝利になる。ようやく見えた希望の光に、タイレーツたちの力が更に入っていく。カミツルギもどんどん苛烈になっていく攻撃に対して耐えきれなくなっていき、ついに……

 

「ヤッ!?」

「飛んだ!!」

 

 タイレーツの拳に負けて後ろに吹き飛んだ。そのままウルトラホールまで飛んでいき、あとちょっとでカミツルギを追い返すことが出来る。しかし、すんでのところでカミツルギが最後の抵抗を見せた。

 

「ヤー!!」

 

 穴のギリギリで踏みとどまったカミツルギが、最後の力を振り絞って、自身の身体の周りに赤い剣を躍らせて構えを取る。

 

 つるぎのまい。さらにグーンと強くなったカミツルギのこうげき。恐らくその火力は、4回はいすいのじんを行ったタイレーツにも勝るとも劣らない……ううん、間違いなく勝っていると言っても過言ではないはずだ。攻撃のぶつかり合いになってしまえば、さっきと同じように弾かれてしまう事だろう。

 

 けど、それはあくまでも、攻撃力だけを見た場合だ。

 

「タイレーツ!!最後に行くよ!!『インファイト』!!」

「へヘイ!!」

「「「「「ヘイ!!」」」」」

 

 本当に本当の最後のぶつかり合い。穴のギリギリで耐えているカミツルギを押し込むべく、タイレーツが最後の突撃を行う。これに対して、カミツルギもつるぎのまいで鍛え上げられた四肢に緑色の光を纏って待ち構える。

 

 拳と剣の最後のぶつかり合い。その勝敗はすぐについた。

 

「ヤ……ッ!?」

「へ……イ……ッ!!」

 

 天秤はタイレーツの方へ傾く。なぜなら、はいすいのじんで上昇しているのは攻撃だけではなく、全ての能力だ。攻撃だけが上がるつるぎのまいと違って、実際のぶつかりで重要な素早さや防御も一緒にあがることもあって、こういった遠距離からの助走をつけた一撃は今やタイレーツの方が有利になっている。速さの分だけさらに重く、防御の分だけさらに固くなった一撃は、攻撃しかあげていないカミツルギに対しては必殺の一撃となりえた。

 

「へ……へーイッ!!」

「「「「「へへイ!!」」」」」

「ヤ……タ……ッ!?」

 

 正真正銘最後の一撃。タイレーツの拳はカミツルギの緑の刃を打ち砕き、トドメの一撃を貰ったカミツルギは、その身体をウルトラホールへと落としていく。

 

「さよなら、カミツルギ。元の世界ではちゃんと生きるんだよ?」

「ピュピュイ!!」

 

 飛んでいくカミツルギの姿を見送りながら、そんな言葉をなげかける私。この言葉が終わると同時に、カミツルギを飲み込んだウルトラホールはゆっくりと閉じていった。

 

「……へーイッ!!」

「「「「「ヘイヘーイッ!!」」」」」

 

 最後に残ったのは、このバトルの勝者であるタイレーツの、万感の思いを込めた叫び声だった。

 

(勝てた……よかった……)

 

 その姿を見て、私は心の底から安堵した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘイ……ッ!?」

「タイレーツ!!」

「ピュイ!?」

 

 ウルトラホールが消え、カミツルギとの激闘が終わってすぐ。ホッと一息ついたのも束の間、激闘が終わったことによる安心感と、はいすいのじんを複数回行うために払い続けた代償のしっぺ返しがここに来て同時に襲ってきたのか、タイレーツが身体を崩してしまう。それが心配になった私とほしぐもちゃんは、慌てて駆け寄って身体を抱きしめる。

 

「本当によく頑張ったね。かっこよかったよ……ありがと……」

「ヘイ~……」

 

 ぎゅっと抱きしめて、さっきまでの激闘を制したことを心の底から褒めてあげる。抱きしめながら頭を撫でてあげると、とても気持ちよさそうな声が聞こえてきた。タイレーツも喜んでくれているようで、労っている私もとても幸せな気分になっていた。もちろんこの労いはヘイチョーだけでなく、他のヘイたちにも等しくしてあげていく。この6人だったからこそ、勝ちを手繰り寄せることが出来たから。

 

 一通り撫でて、そして抱きしめていったところで、再びタイレーツが少しだけ顔を痛みで歪めたので、私は次にやることへ意識を向けていく。

 

「早く怪我を治してあげないとだよね。タイレーツ、民宿まで我慢出来る?そこまで行かないときずぐすりが……」

「その心配は不要である」

 

 激しいバトルで傷ついた身体を癒そうとした時に、後ろから投げかけられる声。バドレックスのものであるそれに反応して振り返ると、私の視線と交差するように緑色の球が飛んできて、タイレーツへとぶつかった。

 

「ふぇ!?」

「安心するのである。攻撃技では無い。……というより、ここで追い打ちはなかなか鬼畜ではあるまいか?」

 

 いきなり飛んできたその球に驚いて変な声を挙げてしまうけど、バドレックスの説明と、球が当たった後に光に包まれたタイレーツを見て、ようやくバドレックスがしてくれたことを理解した私は、そっと息をこぼした。

 

「『かふんだんご』である。完全に体力を戻すことは不可能ではあるが、少なくとも、かなり回復はできるはずである。気分は如何程であるか?小さき英雄たちよ」

「「「「「「へへイ!!」」」」」」

「うむ、良かったのである」

 

 かふんだんごを受けたタイレーツたちは目に見えて傷が治っており、返事の声も大分明るいものへと変わっていた。とは言っても、これはあくまでも応急処置だ。民宿に戻ったら、ちゃんと手当てしてあげよう。

 

「お疲れ様、ユウリ」

「フリア!ありがと……って、フリアは大丈夫!?背中は……」

「あはは、ボクの背中のダメージはヨノワールが感じたもののフィードバックだから、実際に怪我したわけじゃないから大丈夫。ヨノワールも、バドレックスの『かふんだんご』で治して貰ったからもう平気だよ」

「よ、よかった~……うぅ……」

「っとと、ユウリ!!」

 

 フリアの無事を知った私は、タイレーツと同じように緊張から解放されて思わず膝をつき、同時に今ここが極寒の世界だということを思い出して、身体を震わせる。

 

「ユウリこそ大丈夫?はい、温まって~」

「え、ちょ……」

 

 タイレーツをボールに戻しながら身体を震わせていると、カイロを持ったフリアの手が私のほっぺを包んでくる。

 

「ふふぃふぁ……?」

「お疲れ様ユウリ。今回は助けられちゃった。……ありがとね?」

 

 そういいながらゆっくりと私を褒めてくれるフリア。その手がとても温かくて。

 

「で、でも最初はむしろかばわれて……」

「それでもだよ。そこから1人で戦って、カミツルギを退けたのはユウリの実力でしょ?自分の成長には胸を張らなきゃ」

「自分の……成長……あ……」

 

 フリアの言葉で思い出されるのはウルガモスと戦った時のこと。あの時は最終的には勝ったけど、途中心がくじけてフリアに守られてしまった。けど、今回はその逆だ。

 

「怪我をしたヨノワールをかばって前に出て、タイレーツと一緒に全力で挑む姿、かっこよかった!」

 

 バドレックスの援護があったけど、それでも確かに自分1人で勝つことが出来た。

 

「これはユウリとのバトル……気が抜けないね~。楽しみにしてる」

「っ!!」

 

 その言葉は、とても私の心に刺さって、同時にフリアに認められたような気がして……

 

「ユウリ?大丈夫?」

「え?」

 

 フリアに心配されて最初は実感がわかなかったけど、どうやらその言葉がとても嬉しくて、頬の暖かさに少し液体が混じっていたようだった。それを気にしたフリアが、更にぎゅっと抱きしめながらあやしてくれた。

 

「本当に……お疲れ様……」

「……うん」

 

(私……ちょっとは隣に立てる人に……なれたのかな……?ううん……もっと、成長しなきゃ……!!)

 

 その温かさに甘えながら、私はさらなる成長を心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、フリアにされていたことを思い出して、1人悶絶しちゃったのは内緒……です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はいすいのじん

説明がある通り、実機では交換不可になる代わりに全能力上昇。そして、場に出てから一度しか使えないという技なのですが……正直こういった積み技をする場合はその場にとどまるのがほとんどなので、実質代償はないですよね。立ち回りでタイプをごまかせるアニポケ的戦闘においては、ますます意味のない制約です。なので、ここでは制約を選べ、そのうえで能力を上げるという方向性に。

小ネタ

実は実機でもはいすいのじんを何回も使う方法があったりします。それは、はいすいのじんを行う前に、くろいまなざし等で逃げられない状態にされている場合ですね。こうなると、『はいすいのじんでにげられない』というテキストが出ず、これがキーなのかこれから何回でもはいすいのじんが行えるという……やっぱり、本気を出せば何回でもできそうですね。




というわけで、タイレーツ強化回でした。さぁ、書きたいこともかけたので、ようやく……




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