【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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コレクレーの色違いが出なくて、永遠と走り回っています。


203話

 お互いの残りは2人。けど、同じ2人でも残りの体力には大きな差がある。どちらも最後の1人は場に出てきていないから万全だけど、1度場に出たアマルルガとマホイップの差を見ればそれは一目瞭然。インテレオンと激しい戦いをしたアマルルガと、エルレイドの強化のために一時的に場に出ただけのマホイップ。その消耗具合は比べるまでもない。

 

 有利なのは間違いなくボクの方だ。ともすれば、マクワさんは何がなんでも流れを取り戻すために、ここを分岐点として重く見るはずだ。

 

 そう考えると、次にマクワさんが繰り出すであろうポケモンも、自然と浮かび上がる。

 

(……ここだ。切るなら、ここしかない)

 

 恐らくマクワさんも、自分の次の手はバレていると思っているだろう。けど、それでも手を止めない。

 

 ボクとマクワさんの気持ちがシンクロし、お互い手を5人目の……否、6人目の仲間が入ったボールに添えた。

 

「……まだよ。まだ崩れ去って砂となってはいない……ここで返すために……全力で戦う!!」

「みんなが繋いでここまで来れた。この流れのままに勝つ。だから……ここで決め切る!!」

 

 6人目のボールを右手に持つと同時に、お互いの腕に着けたバンドが光り出す。

 

 その光は、このガラル地方でのバトルにおいてひとつの分岐点を表す切り札のひとつ。

 

 本来であれば、盛り上がり的に1番最後に残ったポケモンに切られるのが主流の使い方。けど、最後のポケモンに対して切られていないこの状況に文句を言う観客は誰もいない。むしろ、数多の試合を観戦し、目が肥え始めた観客にとって、こここそが勝負を決める大事な場面だという事がわかっている。

 

 マクワさんのアマルルガでは既に大きく体力が削れているから、この力を十全に発揮できない。

 

 ボクのマホイップでは、マクワさんの切り札に対して有効打がないから読み負けたら勝てない。

 

 だからこそ、お互いまだあとがあるこの状況こそが、自分の最後の切り札を切る場所だということを理解し、観客もその空気を感じ取っている。

 

「行きますよ……!!」

「行くよ……!!」

 

 マクワさんとボクの声が重なり、お互いの持つ6人目のボールが、赤い光を吸うと共に大きくなる。そして、完全に大きくなりきったと同時に、マクワさんとボクの声が再び重なった。

 

 

「山のような岩となれ!!セキタンザン、キョダイマックス!!」

「キミに託す。だから絶対勝って!!ヨノワール、ダイマックス!!」

 

 

 言葉と共に放たれる赤く巨大なボールは、空中で開くと同時にとてつもなく大きなポケモンが吐き出される。

 

 方や存在するだけで周りに熱を届ける竈の山。方や全てを鷲掴む大きな手。お互いを象徴する身体の部位を強く主張させながらバトルフィールドに君臨する。両者は、相手の姿を確認するなり、自身に気合いを入れるために声を上げ、その声につられるかのように空が一気に赤色に染まっていく。

 

 

「ダアアァァァァァン!!」

「ノワアアァァァァァ!!」

 

 

『わあああああぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

 その声は大気と、聞いた者の心も震わせながら同時に鼓舞していく。現に、この声を聞いた瞬間に観客からの歓声がさらに大きくなり、もはや叫び声と言っても過言では無い音が響き、そしてその声は徐々にボクとマクワさん、それぞれを応援する人への応援コールへと変わっていく。

 

 

「マ・ク・ワッ!!マ・ク・ワッ!!」

「フ〜リ、アッ!!フ〜リ、アッ!!」

 

 

 聞いてて少し恥ずかしい、けど、ボクの心も一緒に震わせてくれるそのコールは、今ここで戦っているボクたち全員の表情を強制的に笑顔にさせる。

 

「やはりヨノワールで来ましたね。マホイップは考えなかったのですか?」

「悔しいけど、マホイップだと今回みたいにセキタンザンが来たら苦しいですからね。それに、この状況だとマクワさんは絶対にアマルルガにはダイマックス権を切らないって読めてましたから!!なら、ヨノワールを出さない理由はありませんよ!!」

「……フフフ、本当に、あなたとのバトルは楽しいですよ」

 

 そんな中で交すボクとマクワさんの会話。こんな歓声の中でも不思議と聞こえてくるその声は、お互いの顔色と同じくらい弾んでいた。

 

 本当に楽しい。ずっと続いてくれればと思うほどに。けど、決着はつけなきゃいけない。だから……

 

「ボクもすごく楽しいです。けど、だからこそ勝ちで終わらせたい!!」

「ええ。ですから……あなたのその切り札を超えてみせる!!」

「ヨノワール!!『ダイアース』!!」

「セキタンザン!!『ダイアース』です!!」

 

 

「ダアアァァァァァン!!」

「ノワアアァァァァァ!!」

 

 

 主の指示を聞くと同時に雄叫びを上げながら地面を殴る両者。その部分を起点とし、一気に拡がっていく破壊の衝撃は、お互いの中間地点でぶつかり合い大爆発。衝撃音とその余波、そして土煙をこれでもかというくらいにぶち撒け、ボクたちの視界を一瞬で奪っていく。

 

 あまりにも豪快な切り札同士のバトルの幕間けに観客のボルテージもさらに跳ね上がり、声援によってスタジアムが揺れているのではと錯覚してしまうほど盛り上がりを見せていく。

 

「セキタンザン!!『ダイバーン』!!」

 

 そんな盛り上がりを切り裂くような指示がボクの耳に届いてくる。先にしかけてたのはマクワさんだ。

 

(土煙で前が見えないけど、『ダイアース』を打ってきた方向は覚えてる。キョダイマックス状態だから機動力があまりないことを考えれば、攻撃の方向はまだ読める!!)

 

 頭の中でおおよそ攻撃が飛んでくる方向に当たりをつけ、そちらの方を集中してバトルフィールドをじっと見つめる。すると、フィールド全体を覆っている土煙が微かに揺れるのが見えた。

 

「来た!!ヨノワール!!2時の方向に『ダイロック』!!」

 

 それを確認したボクは、予想を確信に変えてヨノワールに指示。再びヨノワールが地面を殴ると、今度は地震ではなく巨大な岩の壁が現れる。同時にフィールドを覆う土煙が吹き飛び、その先から大きな火の玉が飛んできた。

 

 着弾地点はたった今ヨノワールが生やした岩の壁のど真ん中。

 

 肌を焦がす熱を帯びた炎塊は、しかしヨノワールを襲うことはなく、岩の壁にしっかりと受け止められることとなる。

 

 いわタイプはほのおタイプに強い。その相性に則って、マクワさんの攻撃を防ぐことに成功したボクは、すぐさまヨノワールに指示を出す。

 

「ヨノワール!!そのまま岩を殴り飛ばして!!」

 

 

「ノワッ!!」

 

 

 ボクの指示を聞いたヨノワールは目一杯拳に力を込めて、岩を殴りぬける。すると、岩の壁が岩石のとなって、ダイバーンが飛んできた方向へと飛んでいく。

 

 いわタイプを持ちながらほのおタイプも持っているセキタンザンにとって、自身と同じいわタイプも弱点を突かれる攻撃だ。よってこの岩石の弾幕は大きなダメージ源となる。ダイバーンを打ったことで、マクワさん側の行えるダイマックス技があと1回しかないことも加味すれば、この攻撃をセキタンザンのダイマックス技で防がれたとしても、十分におつりが返って来る。というか、むしろそれを狙っての一撃だ。

 

(攻撃が通ればそれでよし。攻撃を防がれたとしても相手のダイマックスが切れるからそれもよし。マクワさんはどっちの手を……)

 

「その程度の岩で、僕たちに選択を迫れるとでも?岩の扱いならこちらの方が何倍も上手ですよ!!セキタンザン!!」

 

 

「ダアアァァァァァン!!」

 

 

「ッ!?」

 

 マクワさんがどのような行動に出るか視線を送っているところに響く、マクワさんの指示とセキタンザンの叫び声。同時にセキタンザンは重い脚をゆっくりと上げ、思い切り地面に叩きつけてしこを踏むような行動をとる。すると、セキタンザンの前にまるで盾のように、地面から物凄い勢いで岩の壁が現れて、どんどん上に向かって伸びていく。

 

 

「でかい身体そのものが強さ!!全身で痛みを味わえ!!『キョダイフンセキ』!!」

「ダアアァァァァァン!!」

 

 

「これ、やばッ!?」

「ノワッ!?」

 

 

 甘く見ていたつもりはなかったけど……いや、ボクの想像をはるかに超えたということはボクがマクワさんを甘く見ていた証拠だ。そこは反省をする。けど、それにしたって現れた岩の壁は大きく、身長が42Mはあるはずのキョダイセキタンザンよりもはるか高くそびえるそれは、ヨノワールが呼び出したダイロックの2倍はあるのではないかと思われるほどの大きさだ。当然こんな壁をさっきヨノワールが放った岩石の弾幕程度では突破することはできず、キョダイフンセキにせき止められてそのすべてを地面に落とすこととなる。そして、ダイロックをすべて防いだキョダイフンセキは、そのままヨノワールを押しつぶさんと、ゆっくりとこちらに倒れて来る。

 

(くっ、『ダイナックル』で壊して……いや、時間も間に合わなければ威力も足りない!!かくとうタイプが得意なエルレイドならまだしも、ヨノワールじゃこれを止めきれない!!ってなると……)

 

 視線を彷徨わせるボクの視界に映ったのは、先のやり取りで地面に転がった岩石の残り。

 

(これを使うしかない!!それでもダメージは貰っちゃうけど、セキタンザンにも相応のダメージを与えてやる!!)

 

 

「ヨノワール!!岩石を使って『ダイホロウ』!!」

「ノワアアァァァァァ!!」

 

 

 ボクの指示を聞いたヨノワールはすぐさま力を解放。雄たけびと共にヨノワールの周りからは闇の波動が広がり、その波動が岩石に触れると岩石が闇を纏いながら浮き上がる。

 

 

「放って!!」

「ノワッ!!」

 

 

 浮き上がった岩石は、倒れて来るキョダイフンセキの威力を少しでも削ろうと次々と突き刺さっていく。ダイロックとして飛ばされただけでは防ぐことはできずとも、ダイホロウの力を上乗せした岩石であれば、それ相応の威力となってキョダイフンセキの威力をそいでくれる。ヨノワールとのタイプ一致もあってさらに威力も上昇だ。

 

 しかし、これはあくまでもキョダイフンセキの威力を削いでくれるだけ。

 

「その程度の石ころでは、僕の岩は止められない!!」

 

 そんなマクワさんの言葉を証明するかのように、キョダイフンセキは体積を削られながらも、それでもなおゆっくりと、ダイホロウもろとも押しつぶさんと倒れてきている。やはり威力では向こうの方が何枚も上手だ。

 

 だけど、そんなことは分かっている。

 

「止められないのは分かっている。だから、本命はこっちじゃない!!」

「それはどういう……」

 

 ボクの言葉に疑問の声を上げるマクワさん。だけど、その返答はボクがするよりも先に、フィールドに現象として起きる。

 

 

「ダンッ!?」

「セキタンザン!?」

 

 

 キョダイフンセキの壁の後ろにいたセキタンザンが突如声を上げ始める。残念ながらセキタンザンの様子は、ボクからだとキョダイフンセキの壁が邪魔しているから確認できないけど、ボクの作戦通りに事が進んでいるのなら、今セキタンザンにはヨノワールの放ったダイホロウがしっかりと直撃していることだろう。

 

「成程、『キョダイフンセキ』の壁を透過して『ダイホロウ』をぶつけてきたというわけですか!」

「『キョダイフンセキ』を止められないのはすぐにわかりました。できるのはせいぜい威力を落とすだけ。でも、それだけで満足できるほど、ボクたちは謙虚じゃありませんよ!!」

 

 岩石を媒体に発動したダイホロウはキョダイフンセキにぶつけ、ゴーストのエネルギーだけで発現させた、椅子やカップ、ティーポットを象った実態を持たないダイホロウは、透過させて本体を殴る。こうすることで、キョダイフンセキへの攻撃量は減るけど、その分セキタンザンへとダメージを叩き込むことはできる。これで一方的にやられるなんてことはない。

 

「思い切りましたね……もし失敗すれば不利なんてレベルではないですよ……」

「外れるわけがありませんからね」

「……全く、本当に頭の回転が速い」

 

 マクワさんの言う通り、攻撃が外れたり避けられたりすればセキタンザンへのダメージはなく、抑えられえるはずだったキョダイフンセキのダメージは増え、こちらは大きな痛手となる。けど、この攻撃のやり取りでダイマックス技は使い切っているため、お互いの技を相殺する手段はもうなく、そのうえキョダイフンセキの壁があるから、マクワさんがこちらの攻撃を視認することはできない。壁をすり抜けてくる攻撃を視認したとしても、その頃には攻撃を避けられる距離じゃない。

 

 つまり、現時点でセキタンザン側は、どうやったってこうげきを防ぐ術が無い。だからこそ『外れるわけがない』。

 

 ダイホロウの直撃音と共に、地面が揺れながら音を立てる。恐らくダイホロウを貰ったセキタンザンが、追加効果で防御をダウンさせられながら身体を少し崩した音だろう。これでひとます、ボクたちがやりたいことはできた。

 

 けど、安心はできない。

 

「ヨノワール!!備えて!!」

 

 相手に攻撃が当たれば、次はこちらの番。

 

 セキタンザンが攻撃を避けられなかったように、こちらも目の前に迫る壁がでかすぎてどうやったって避けることが出来ない。岩石媒体のダイホロウも全て打ち終わり、いよいよキョダイフンセキがこちらに倒れて来る。だから、せめてもの抵抗としてヨノワールに防御態勢を取らせて、少しでモダメージを減らす。

 

 腕をクロスに構え、防御態勢をとるヨノワール。そんな彼に対して、巨大な岩盤がダイマックスしたヨノワールをその上から押しつぶす。

 

 

「ノ……ワ……ッ!!」

「うぐっ……ヨノ……ワール……頑張れ……!!」

 

 

 岩盤が倒れると同時に捲きあがる噴石と、その中から聞こえてくるヨノワールのくぐもった声。間違いなく大きなダメージを負っているけど、こればかりはヨノワールを信じるしかない。

 

 お互い使えるダイマックスエネルギーを使い切ったため、ここで頭上に広がっていた赤い空がゆっくりと青色を取り戻していくと同時に、力が霧散していく音が聞こえる。噴石が舞っているため、あまりしっかりと場を確認することはできないけど、おそらくセキタンザンとヨノワール、両者のダイマックスが切れて、元の姿に戻っているはずだ。

 

 その予想は当たっており、程なくして元の姿に戻った両者のにらみ合い状態へと状況は変化していく。けど、ただの睨み合いにしては、とてもおかしなことに状況はなっていた。

 

「ダン……」

 

 セキタンザンはダイホロウの影響で防御を削られており、その影響でまだ身体を少し傾けており。

 

「ノワ……ッ!?」

 

 ヨノワールは上空から降って来る噴石の雨によって、少しずつ体力を削られていた。

 

「くっ……攻撃は勿論だけど、追加効果も厄介すぎる……」

 

 ダイマックス技にはすべて何かしらの追加効果がある。当然キョダイフンセキにも追加効果があり、その追加内容は、受けた側の場に噴石を降らせ続ける、技名をそのまま冠した『キョダイフンセキ状態』にするというもの。この場になっている間は、その場に立つポケモンの体力が常に削られていく、言ってしまえばステルスロックの強化版みたいなもの。現に今も、ヨノワールの頭上からは噴石が降り注いでおり、決して小さくないダメージがしっかりと刻み込まれている。

 

 ダイマックスの撃ち合いに関しては、与えているダメージも場の状況も、どちらもこちらが負けていると言っていいだろう。エルレイドが作ってくれた流れを活かせなかったことに、悔しさが募る。

 

「ヨノワール……キバナさんと貴方のバトルビデオを見た時からずっと楽しみにし、そして警戒してきました。なんとしてでも貴方を倒し、そのうえで僕は目標を達成したいから。しかも、その思いが功を奏して幸運にも、今まさに貴方を倒すチャンスがやってきた……絶対に負けたくない。貴方を超えて、トーナメントを駆け上がり、ダンデさんを倒し、僕はいわタイプが、そしてアマルルガが最強であることを証明します!!」

 

 一方で戦いを有利に進めているマクワさんは、ここに来て優勝宣言を口にする。この言葉には実況の人も観客も大盛り上がり。会場の空気までもが、マクワさんを持ち上げてどんどん空気が変わっていく。このバトルを彩る、熱い言葉としてみんなは受け取ったのだろう。

 

 けどボクには、今の言葉が自分を追い込み、鼓舞する覚悟の言葉にも聞こえた。

 

(凄いなぁ……)

 

 フィールド状況だけじゃない。このスタジアムの空気をまるっと自分のものにする手腕。まるでスターと戦っているかのようなそのカリスマ性。思わず呑まれそうになってしまう。けど……

 

「負けられないのは、ボクだって同じです」

 

 マクワさんに絶対的な目標があるように、ボクにだってもう破りたくない約束がある。

 

(あれをしたら……痛いんだろうなぁ)

 

 ヨノワールに降り注ぐ噴石を見ていると、ついつい足がすくんでしまいそうになる。これからあの痛みが自分に返ってくると想像したら本当に怖いし、少し逃げたいという気持ちも湧いてくる。

 

(でも、1番痛いのはボクを信じて前にいるヨノワールなんだ。今ボクと戦っているのは、この怖さを跳ね除ける覚悟を持って戦っているマクワさんだ。そして、ボクがもう破りたくないと誓った約束は、この先にしかないんだ!!)

 

 けど、ここで逃げたら昔と同じ、またあの時間に戻ってしまう。それだけは絶対に嫌だ。

 

「シンオウ地方で挫折して、無気力になって、それでも約束をどうしても守りたかったから、また立ち上がって……」

 

 ヨノワールの身体が、黒い渦に包まれていく。同時に肌に、少しだけピリピリとした痛みが走り始める。

 

(今ここにユウリがいたら、絶対止められちゃうね)

 

 痛みとともに、頭の中にこの地方で1番一緒に行動した大切な人を思い浮かべ、そんな彼女に心の中で頭を下げながらながら、ボクは言葉を続ける。

 

「ようやくここまで来た。ようやく何かをつかみかけてきた。約束を守るためのピースを……」

 

 ヨノワールを包む渦が強くなり、ボクの視界と聴覚に違和感が生まれていき、そして直ぐに消えていく。

 

「もう、手放さない。今度こそ、現シンオウチャンピオンと……コウキと一緒に、昔描いた夢と約束を叶えたいから!!だから!!」

 

 黒い渦の中で佇むヨノワールの姿が変わる。

 

 赤のモノアイはボクの目と同じ水色へと変わり、首元に集まっていく闇はボクが着けているマフラーを象るように纏われた。身体全体はほんのり黒くなり、そしてお腹の口の両端から水色の焔を零しているその姿。

 

 自身を包む渦を右手の一振で振り払いながら、ボクとヨノワールが完全に繋がった姿が顕現する。

 

「これは……っ!!」

 

 この姿のヨノワールをみて会場が、そしてマクワさんが驚愕の声をあげる。けど、そんなこと一切気にせず、ボクは言葉を続ける。

 

「マクワさん……貴方に優勝は譲らない。このトーナメントを勝ち上がって、ダンデさんに勝って、対等な立場になって……今度こそ約束を果たすのは……ボクだから!!」

「ノワ……ッ!!」

 

 マクワさんの優勝宣言を優勝宣言で返す。

 

 見たことの無いヨノワールの姿と、ボクの言葉を聞いた実況と観客の声がさらに盛り上がる。

 

 そして、ボクの対面にいるマクワさんは、そんなボクたちを見て、驚愕に染まっていた顔を直ぐにニヒルな笑みに変える。

 

 その笑顔につられて、ボクも笑ってしまう。

 

「「優勝は、譲らない!!」」

 

 お互いの声とともに、このバトルが佳境を迎えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見たこともないヨノワールの変化。これは色々な人の心を揺るがした。

 

『なんだあの見た事のないヨノワールは!!ここに来て、フリア選手のさらなる隠し球かー!!!!!』

 

 バトルを実況している人は興奮と共に声をはりあげた。

 

「はっはっは!!……本当に面白いなぁ、きみは!!」

 

 ガラルが誇る無敗のチャンピオンは、そのヨノワールと戦うことを想像して、心と身体を震わせた。

 

「うむ。よく研ぎ澄まされている。完璧に物にしたのだな」

 

 そのチャンピオンの師であり、今は孤島にて隠居している老人は、嬉しそうな声を上げた。

 

「ふふ、ちゃんとものにしたのね。ほら、あなたのおかげで凄いことになってるわよ」

「別に……あたくしは何もしてないわ……」

「その割には、少し表情が嬉しそうに……いえ、失礼いたしました」

 

 寒冷の地で見守っていた3人は、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「うおおおおっ!!なんだあれ!?」

「キバナさんと戦ってた時にも起きてたあれね。わたしたちに内緒にしたまま、ちゃっかり完成させちゃって……頑張りなさいよ」

 

 昔から共に過ごし、共に成長した友は、その変貌ぶりに驚きながらも、嬉しそうな表情を浮かべた。

 

 そして……

 

「今年はレベル高いな……これ本当に1回戦か?それにあのヨノワール……凄い力だ……」

「ほんとに凄いですね……目が離せないです……」

 

 前年の覇者と鋼の少女は、バトルのレベルの高さと、見たことの無い姿の変わり方に虜になり……

 

「フリア……お前は……そんなことを考えて……」

 

 そんな2人と共に観戦していた光を失っていた少年は、親友の心からの言葉とその成長ぶりに、少しだけ目に、光を取り戻しかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キョダイフンセキ

本文である通り、場をキョダイフンセキ状態にし、4ターンの間体力の1/6を削るという技です。1/6ってかなり脅威ですよね。

ダイホロウ

正直ポルターガイストと役割がかなり被ってますよね。実機でも技エフェクトはまんまポルターガイストです。

観戦者

誰が誰だか分かりますよね?




前話で話した通り、次話は少し遅れます。最遅で7月11日からの再開となりますので、ご了承頂けたらと思います。気になるところで切ってしまい、すいません。




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