【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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205話

「お疲れ様です、セキタンザン……ゆっくり休んでください」

 

 音を立てながら地面に沈んだセキタンザン。そんな彼にリターンレーザーを当てながら、マクワさんは小さく言葉を落としていく。その声はとても穏やかで、けど静かなはずのその言葉の奥には大きな悔しさも交じっているように聞こえた。けど、残念ながら今のボクに、そこを気にするだけの余裕はない。

 

「ノワ……」

「はぁ……はぁ……きっつい……」

 

 噴石が止んだおかげで、自身の身体を蝕む継続的なダメージはなくなった。けど、タールショットからのフレアドライブや、じしんとストーンエッジによる埋め立て等々、セキタンザンに受けた数々の攻撃がボクの身体にもしっかりと刻まれてしまっているため、想像以上に体力が消耗されている。ここまで長時間共有化を続けたことも相まって、少し立ち眩みも出始めてきた。

 

(かといって……ここで倒れるわけにはいかない……!!)

 

 マクワさんの切り札を倒すことはできたけど、マクワさんとのバトルに勝ったわけではない。まだマクワさんにはあと1人、アマルルガが残っている。インテレオンのおかげでかなり体力は削れているとはいえ、ここまでずっとボールの中にいたこともあって少しはスタミナが回復しているはずだ。対するこちらは、かなり消耗しているヨノワールと、まだまだ元気なマホイップ。けど、ポケモンの体力は残っていていても、肝心のボクの体力がほとんど残ってない。正直ヨノワールが倒されたら立てなくなる可能性が高い。マホイップには申し訳ないんだけど、今回はこのまま耐え抜く必要がある。

 

「ヨノワール……行ける……?」

「ノワ……」

 

 ヨノワールから伝わって来る、『主の方こそ大丈夫か?』と言う心の声。ボクと意識を繋げているのだから、当然ヨノワールもボクの身体の状態についてはよくわかっている。

 

(逆に心配されちゃったや。全く……ほんとヨノワールはしっかりしてるなぁ……)

 

 初めて出会った時も、ボクが落ち込んだ時も、決してボクから離れようとしなかった最高の相棒。確かに、今のボクはかなり限界が近い。けど、この自慢の相棒がいれば、不思議と今の状況でも疲労感がなくなっていくのを感じる。

 

「あとひと踏ん張り……だよ!!」

「ノワッ!!」

 

 頬を叩き、小さく拳を握って気合いを入れ直す。

 

 声をかけあって、心を昂らせる。

 

 最後のバトルに向けて、ボクとヨノワールはさらに心を深く繋げていく。

 

「……本当に、楽しい。この戦いを終わらせるのが、実にもったいない。それに、追い詰められているはずなのに、悔しいはずなのに……まだ……まだ最後の岩が残っている。それだけの事で、力が湧いてきます。……フリアさん、あなたも限界なのでしょう?」

 

 一方で、サングラスに左手の人差し指を当て、笑顔を隠さずに言葉を紡ぎながら、右手で最後のボールに手をかけるマクワさん。そんな彼は、ボクがもう限界が近いことをしっかりと理解しており、そのうえで語りかけてくる。

 

「僕のアマルルガも、少し休めたからと言ってダメージが無くなるわけじゃない。インテレオンから受けたダメージは小さくなく、しっかりと刻み込まれている。こちらも長くは戦えないでしょう……アマルルガ!!」

「ルオ……ッ!!」

 

 語りと共に現れる、マクワさんの最後のポケモンアマルルガ。元気よくボールから飛び出したアマルルガだったけど、地面に足をつけると同時に少しぐらつきを見せる。少し距離のあるボクからでも目視できるくらいに身体にしっかりと残っているねらいうちの痕が、アマルルガのダメージの深さと、マクワさんの発言の裏付けを物語っていた。

 

「楽しいバトルも、ここで終わらせなければなりません。ですが、先程も言った通りこちらも限界。ですから……」

 

 言葉を1度切り、深呼吸をするマクワさんは、息を吐いて落ち着いたと同時に、このバトル最後の攻撃の指示を行う。

 

「一撃で決めますよ。……アマルルガ、チャージ」

「ルオッ!!」

 

 マクワさんの指示に力強く答え、アマルルガが口元に集めていくのは宇宙色に光るエネルギー。それはメロンさんのラプラスや、ボクのインテレオンを倒すのに用いられた、今アマルルガが放つことの出来る最高火力の技、メテオビーム。チャージ時間がかなりかかるこの技は、本来なら相手の大技に合わせたり、自分の安全を確保したうえで放つのが普通だ。

 

 けど、今回マクワさんは、何もせずに、そのままでチャージを始めている。

 

(……この一撃で決める気満々だし、なんならボクがこの攻撃を妨害したり、避けることすら考えていない感じだね)

 

 色々な策を巡らせていくマクワさんにしては珍しい、本当に力押しすることしか考えていない最後の攻撃。……いや、一応この後万が一マホイップが出てきたときも、メテオビームでとくこうを上げておけば有利ではあるから、先のことを考えていないわけではないみたいだけど……どちらにせよ、この攻撃でヨノワールが倒されてしまえばボクは意識を保てないだろうし、マクワさんもそこは分かっているだろうから本当に一応の保険でしかない。

 

 さっき思い浮かべた通り、この攻撃をやり過ごすだけなら、避けるなりチャージ中を叩くなりすればいい。そうすればボクが勝てる確率はぐんと上がる。けど……

 

(こんなことされたら……やるしかないよね!!ヨノワール!!)

(ノワッ!!)

 

 マクワさんの意気込みに応える。それ以外の選択肢なんてない。

 

(……行くよ)

 

 そうと決まれば、こちらもメテオビームに負けない力をためなければならない。幸い、ヨノワールの周りにはここまでの戦いによって積み上げられてきた沢山の岩石が転がっている。

 

 これらすべてを、自分の力に変える。

 

(目には目を、岩には岩を……なんてね)

(……ノワッ!!)

 

 ヨノワールが心で声を上げると同時に黒いオーラがあふれ出し、同時にヨノワールの周りに落ちている岩石が黒いオーラを纏いながら浮かび上がる。その様を見上げたヨノワールは、岩石たちと一緒に宙画浮かび上がり、右手を上に掲げる。すろと、ヨノワールの掲げている手の上に、黒い岩石たちがどんどん集まり始めた。

 

 それは、1つの大きな黒い球へと姿を変えていく。

 

「「……」」

 

 宇宙色の光線と漆黒の巨球。それぞれが放つ、暗くも綺麗で、見ているものを吸い込んでしまうかのような錯覚を見せる光は、時間とともにその輝きをどんどん強力なものへと成長させていく。

 

 同時に、ボクの右手にも、ずしりと重い感覚が伝わって来た。

 

 観客の声も再び静かになっていく。みんな、この攻撃が最後のそれだと気づいているから。

 

 ただひたすら緊張が走るだけの時間。それは数秒だったのか、はたまた数十分もかかっていたのか、凝縮され、濃密な時間となっている今となっては、体内時計は狂いに狂って役に立たない。けど、不思議とお互いの攻撃が準備完了になる時間はしっかりと把握出来た。

 

 その証拠に、静かな空間で、合図も何も無いこのフィールドで、ボクとマクワさんの声が、全く同じタイミングで重なった。

 

 

「ヨノワール!!『ポルターガイスト』!!」

「アマルルガ!!『メテオビーム』!!」

 

 

 同時に放たれるふたつの指示。その言葉に反応して、ヨノワールもアマルルガも全力で最後の技を放っていく。

 

 

「ノワ……ッ!!」

 

 

 短く声をあげながらボクと一緒に右手を振り下ろしたヨノワールは、上に掲げていた巨大なポルターガイストの球をアマルルガに向かって投げつける。

 

 

「ルオオオォォォッ!!」

 

 

 大きな声を上げ、溜めに溜めた力の封を一気に解き放ったアマルルガは、今までで1番太いメテオビームをヨノワールに向かって吐き出した。

 

 お互いを狙った両者の攻撃が、ちょうど中間地点でぶつかり合う。瞬間訪れたのは、まるでこの世から全ての音が消え去ったのではないかと錯覚してしまうほどの無音空間。しかし、その時間は一瞬で終わりを告げ、次の瞬間ボクとマクワさんを襲ったのは、一転して全てを塗りつぶすかのような衝撃音と風圧だった。

 

「「ッ!?」」

 

 荒れ狂うバトルフィールド。その余波を受けたボクたちは、耳や顔を覆いながら、吹き飛ばされないように身体を維持することに精一杯で、とてもじゃないけど声なんて出せない。最も、たとえ出せたとしても、技と技がぶつかり合う音が大きすぎて、それに全てかき消されることになるだろうけど。

 

(ヨノワール……頑張れ……ッ!!)

(ノ……ワ……ッ!!)

 

 けど、意識を共有しているボクたちならこんな状況でも会話はできる。今のボクにできることなんて応援することだけだけど、それが少しでも力になるのであれば、何度でもヨノワールに声を届ける。

 

 四肢を地面にしっかりと押し付け、全力で光線を放つアマルルガと、投げた黒球に力を注ぐため、右手を真っ直ぐ向けた状態でオーラを滾らせるヨノワール。全力と全力のぶつかり合いは、どちらに傾くことも無くただひたすら拮抗して行く。その間も常に衝撃に晒されるボクとマクワさんは耐えながら、ただひたすら念を送り続けた。

 

 この念が先に伝わったのはアマルルガ。

 

 

「ルオオオォォォッ!!」

「ノ……ワ……ッ!?」

 

 

 アマルルガが叫び声をあげると同時にメテオビームの太さが倍になる。その変化は見かけ上なだけでなく、威力もしっかり跳ね上がっている。その証拠に、先ほどまで拮抗していたはずのバランスが少しずつ崩れ、徐々に黒い球がヨノワールの方へと押し返されていた。押し返してくる力の強さは、ヨノワールの腕を通してボクにもしっかりと伝わってくるのだけど、フィードバックとして帰ってきているからあくまでこの感覚は錯覚に近いそれなはずなのに、真っすぐ伸ばされているボクの腕も押し返されて、肘が曲り始める。

 

(ほんとに凄い……ボクはヨノワールの受けている感覚を追体験しているだけなのに、それでも腕を押し返される。この攻撃に込められた力と思いを強く感じる……ッ!!)

(ノワ……ッ!!)

 

 ボクを後ろに押しのける力は、間違いなく2つの技の衝撃によって起きた風圧だけのはずだ。けど、さっきボクが心の中で思ったような感覚にどうしても襲われてしまう程、アマルルガとメテオビームには圧があった。

 

 それほどまでの想い。けど、こっちだって負けない。

 

 アマルルガに念が届いているのなら、ヨノワールにだって届いている。次は、こっちの番だ。

 

 押しのけられそうな右腕に、そっと左手を添えて支える。そして目をとして深呼吸。

 

(マクワさんのような凄い人と戦えて本当に良かった。もっと戦いたいし、もっとぶつかりたい。……けど、もう終わらせなきゃいけない)

(ノワ……)

(うん……そうだね。これで終わりじゃない。戦いたかったら、またバトルすればいい。その時は、もっと楽しいバトルをしたいね!)

(ノワッ!)

 

 あまり感情を表に出さないヨノワールが、珍しく声を弾ませながら返事を返してくれた。それだけこのバトルを楽しんでくれたという事だろう。その様子がどうしようもないくらい嬉しくて、ボクの心も温かくなる。

 

(さぁ……行くよ!!)

(ノワッ!!)

 

 想いを込めると、それは黒いオーラとなってヨノワールの身体を包み込んでいく。そしてそのオーラは右腕を伝って手のひらへと進み、ほんのりとした温かさをボクに伝えて来た。

 

 そのオーラを、ボクとヨノワールは一気に、押され始めている黒い球へと注ぎ込む。

 

 

(いっけえええぇぇぇッ!!)

「ノ……ワ……アアアァァァッ!!」

 

 

「ッ!?」

「ルォッ!?」

 

 右手から真っすぐ解き放たれた黒いオーラは、余すことなく黒い球へと注がれていき、力を注がれた黒い球はその体積をどんどんと膨らませていく。

 

 ここまで力を注ぎこまれれば、戦況は当然変化していく。

 

 さっきまで押していたはずのメテオビームが逆に押され始め、ポルターガイストが地面に向かってゆっくりと進軍を始めていく。その様はまるで、黒く大きな星が墜落しているようにも見え、見ている者の心すらも押しつぶしかねない威力と圧力を内包し始める。現に、急に威力が上がり、メテオビームを押し返してきた黒い球を見て、マクワさんとアマルルガが一瞬怯むのがかすかに見えた。勿論すぐに態勢を立て直し、またさっきのように無理やりメテオビームの威力を底上げして、せめてイーブンには持っていこうと気合を入れ始めていく。

 

 けど、もう逃がさない。

 

 

「ヨノワール……ッ!!『ポルターガイスト』ォォォ!!」

「ノワアアアァァァッ!!」

 

 

 ヨノワールと一緒に、雄たけびをあげながら最後の力を注ぎ込む。

 

「ッ……アマルルガ!!こちらも全力を!!」

「ル……オ……ッ!」

 

 どんどん膨らみ、どんどん押してくる特大ポルターガイストに、マクワさんとアマルルガの表情がどんどん焦りへと変わっていく。それでも何とか打開を図ろうと、出来ることをやろうと頑張るマクワさんたちだけど、ポルターガイストが止まる気配は全くない。

 

 黒い隕石が、アマルルガを光線ごと押しつぶさんと突き進む。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光線はかき消され、ついにポルターガイストが地面に落ち切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……うわぁ!?」

 

 ポルターガイストが地面に落ちた瞬間耳をつんざぐような轟音と、全ての物を一瞬で吹き飛ばす暴風が吹き荒れ、ここまでの戦いで消耗していた身体に鞭を打って、何とか耐えていたボクの身体は支える力が足りなくなってしまい、後ろに倒れ込んでしまう。そのまま何度かもんどりうちそうになりかけたけど、そんなボクを何かが優しく受け止めて止めてくれた。けど、衝撃を受けたことによる身体へのダメージで飛びそうになっている意識を何とか保つことに精一杯で、受け止めてくれた存在に意識を向ける余裕がない。今はとにかく自分を守って意識を続かせ、このバトルの最後を見届けたい。

 

 目を瞑り、全身に力を入れて緊張感を保ち、何とか意識をつなげ続ける。その間も、何かに包まれている故か、耳に入ってくる音はかなり小さくなってきてはいる。けど、地面が震えている感覚はボクを包んでいる物を通り越して伝わってくるあたり、まだポルターガイストによる衝撃は収まっていないらしい。

 

 そのまま何かに包まれてながら待つこと数十秒。ぎゅっと目をつむったまま耐えていると、ようやく地面が揺れる感覚が消えていったのを感じた。

 

「……もう、大丈夫なの?」

 

 音と揺れがなくなったのを感じたところでボクは目を開く。本当ならヨノワールに聞けばいい所なんだけど、今までの出来事で集中力は切れ、ヨノワールとのリンクも切れてしまい、感覚共有もなくなってしまっているので、外の確認は目で行うしかなくなっていた。

 

「あれ……これって……」

「マホッ!!」

「うわぁ!?」

 

 そんなボクが目を開けると、視界に広がるのは水色の世界。そして鼻孔をくすぐるのは甘く、けどミントも混ざったさわやかな匂い。思わず心地よくなってしまいそうないい匂いに心が安らいでいくのを感じていると、突如目の前に現れるのは上からさかさまの状態でぶら下がってきたマホイップ。まさかの登場の仕方に思わずびっくりしていると、周りが少しずつ明るくなっていく。ここまできて、ようやく吹き飛ばされそうなボクを受け止めてくれたのがマホイップで、同時にこの周りにあるのがクリームであることが分かった。

 

「受け止めてくれたんだ……ありがとうね、マホイップ」

「マホホ~」

 

 クリームが徐々に落ちていくのを、マホイップを腕に乗せて頭を撫でながら待つ。3回ほどゆっくりと頭を撫でたくらいで完全にクリームの防護壁がなくなり、バトルフィールドがきれいに見渡せるようになった。外の空気に触れ、甘い匂いが徐々に薄くなっていく中、ボクの目の前に現れたのはいつもの姿に戻ったヨノワールだった。

 

「ヨノワール……」

「ノワ……」

 

 向かい合うボクたち。

 

 アマルルガがどうなったのかは見ない。いや、見なくても結果は分かっている。

 

「……お疲れさま!」

「ノワ」

 

 

「アマルルガ、戦闘不能!!よってこのバトル、フリア選手の勝ち!!」

 

 

『ウワアアァァァッ!!』

 

 

 ヨノワールと拳をぶつけあうなか響く、審判からの決着の宣言。同時にあふれる観客からの叫び声に震える大気。

 

「マホーッ!!」

 

 ガラルリーグ1回戦第1試合。

 

 マホイップの嬉しそうな叫び声に微笑みながら、ボクとヨノワールはハイタッチを交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ってください、アマルルガ、お疲れ様でした」

「ありがとう、ヨノワール、マホイップ。ゆっくり休んで」

 

 バトルが終了して、お互いの手持ちをボールの中に戻していく。未だに歓声が鳴りやまない中、ボクはボールを腰のホルダーにしっかりと着いたことを確認して、マクワさんの方へ歩き出した。時を同じくして、マクワさんもハイパーボールを腰につけながらこちらに向かって歩いてくる。

 

 歩み寄ったボクたちは、バトルフィールドの中心で向かい合い、右手を出す。

 

「マクワさん、ありがとうございました!」

「ええ、こちらこそ。よいバトルでした」

 

 固く握手を交わしながらお互いの健闘を称えあう。

 

(本当にいいバトルだった)

 

 お互いいろんな策を練って、だめなら次策を組み立てて、そして時には相手の戦略さえ自分の策として組み込んでいく。そんなやり取りが、戦っている側からしてもとても楽しかった。次バトルする時は、今日とは全く試合展開になることだろう。策を組み立てる人同士のバトルは、そういうところが少し楽しみだ。そうじゃなくても、今からマクワさんが行ってきた作戦について語るのがちょっと楽しみで……

 

「『ステルスロック』を使った反射勿論、『ストーンエッジ』で檻を作ったり、セキタンザンの『じょうききかん』の活用だったり、相手にしててその引き出しの多さに本当に━━」

「そう一気にまくしたてられると恥ずかしいですが、嬉しくもありますね。ですが、今はするべきことがあるでしょう?」

「え?……あっ……」

「っとと……」

 

 マクワさんのしてきたことに対して若干興奮気味に言葉を返していると、膝の力が抜けて視界がガクッと揺れる。そういえば、自分がいまかなり無理をしてここに立っていることを忘れていた。

 

「もう限界なのでしょう?話なら何時でもできます。まずは部屋に戻り、身体を休ませましょう。お互いのポケモンたちもかなり消費していますしね」

「……ですね。想像以上につかれているみたいです……すいません……」

「気にしないでください。さ、もどりましょうか」

 

 マクワさんの手を貸してもらい、何とか身体を持ち直したボクはマクワさんに礼を言う。ボクからの礼を受けたマクワさんは、マクワさん自身が入ってきた方の入口に歩きだし、背中を向けながらこちらに手を振ってきた。なんというか、バトル中のニヒルな笑顔だったり、サングラスを指で持ち上げたりと、最後までああいったかっこいい動作がとても様になる人だ。

 

(本当に、ありがとうございました!!)

 

 そんな彼の背中を見送ったボクは、もう一度心の中でお礼を言いながら、少しおぼつかない脚で控室の方へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 バトルフィールドから退場した僕は、控室に返ってきていた。とはいっても、バトル前にいた部屋とは違うようで、この部屋には誰もいない。そのため、今この部屋は先ほどまでの歓声が嘘のように静かだ。もっとも、今の僕にとっては好都合ではあるが……

 

 誰も入ってこないように控室の鍵を閉め、1人でこの部屋に引きこもる。悪い癖だとわかっていても、どうしても負けた後はいろいろ考えて、塞ぎ込んでしまう。

 

 あの時ああすれば。この時この作戦なら。頭に浮かんでは消えるのは、先の戦いに関する後悔ばかり。

 

 フリアさんにはああいわれましたが、僕の本性なんてそんなものです。

 

「フリアさんに、失礼なことを言って無いでしょうか……」

 

 そしてまた1つ、僕の思考をマイナスに落としていくことが浮かんでいく。どうやら、今回の負けは想像以上に僕の心を追い詰めていたみたいで。

 

 これで僕のガラルリーグは終わりを告げる。その事実が、どうしようもなく苦しくて。

 

「……本当に、どうしようもないくらい……悔しいですね……」

 

 見上げた時に目に映る照明の光が、サングラス越しに目に染みた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ポルターガイスト

最後の一撃はどことなく某手裏剣をリスペクト。かっこいい。

メテオビーム

もはやか○は○波ですね。そうなって来ると、先のポルターガイストも元○玉みたいです。

マクワ

原作設定で、負けた後は控室に引きこもってしまう記者泣かせな選手という設定があるので独白を。負けた側にもちゃんとストーリーはありますよね。




ようやく第1試合終了……やはりフルバトルはボリュームが凄いことになりますね……




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