【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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208話

 空中をテレポートしながら飛び回るオーベムは、倒れたマタドガスを確認しながら悠々とセイボリーさんの近くに帰ってくる。その姿からは余裕が感じられ、この先も圧倒してやろうという意志を滾らせている。

 

「『テレポート』……あれ普通にやばい技だよな」

「野生のポケモンが使う分にはただ逃げられるだけの技だけど……トレーナーが手足となって指示を出した瞬間、いつでも奇襲できる最強の移動技になるものね」

 

 もちろん1回テレポートするだけで消費される力はかなりのものだ。それだけテレポートという技は繊細で難しい。けどセイボリーさんはそういった技を得意とする家系の産まれだ。幼い頃からこの手の特訓は受けているだろうし、そもそも産まれがらにしてこの方面に高い適性を持っているはずだ。まぁ、本人が軽く話してくれた過去的に、あまり掘り返されたくは無い事柄ではあるみたいだけどね。

 

(あれで落ちこぼれって、見る目ないわね~……ポケモンの『テレポート』を自身のサイコパワーを使ってサポートしてあげるなんて、できる人なんかそうそういないのに)

 

 確かに、目で見える範囲の超能力は微弱なサイコキネシスしかないけど、ポケモンのサポートという点ならかなりいい線いっていると思う。それを落ちこぼれというのは、やっぱり明確に目で確認できないと評価されないということだろうか。残念ながら、わたしはその辺の事情に明るくは無いから、よくわからないのだけど。

 

(……っと。いけない、少し脱線しちゃった……ちゃんと見なきゃね)

 

 バトルに関係ない思考を振り払って前を見ると、テレポートであちこち現れるオーベムを見ながらクララさんが3人目のポケモンを繰り出すところだった。

 

「ドラピオン!!行っちゃってェ!!」

 

 クララさんの3人目のポケモンはドラピオン。あくタイプとどくタイプを併せ持つ彼は、正しくエスパータイプに対する最強のカードのひとつになるだろう。ここが重要どころとわかっているセイボリーさんも、一瞬だけ表情が固くなる。

 

「ドラピオン……勝負をかけてきたな」

「ええ。タイミングとしては悪くはないわよね。オーベムの技構成がわかった以上、現状ドラピオンに使える技はあまりないし」

「『サイコキネシス』は無効にされるし、『メテオビーム』はチャージがいる。『テレポート』は攻撃技じゃないし、オーベムの『いわなだれ』じゃあドラピオンは痛くも痒くもなさそうだもんな」

 

 ジュンがあげていくオーベムの技構成を聞いて、やはりドラピオンに対しては有効打がないようにも見える。セイボリーさんもそれを理解しているためか、今回は素直に交換しようとボールを構えていた。メテオビームで上がったとくこうは少しもったいないけど、賢明な判断だろう。

 

「オーベム。ここは一旦引いておきましょう。戻って━━」

「ドラピオン~。この間に『どくびし』、撒いちゃおォ?」

「……やはりそう来ますよね」

 

 セイボリーさんがポケモンを交代する合間に飛んできたクララさんの指示はどくびし。同時にドラピオンの身体から撒かれる毒の針は、踏もうものなら問答無用で毒になる、どくタイプの場づくりの有名な技。まきびしやステルスロックと同じく、交代してきたポケモンに効果を及ぼす技の1つだ。

 

「交代の隙間を縫って『どくびし』……けど、わかってもこれ止められないよな」

「今のオーベムの技でドラピオンと戦う選択をできるのは、未来視を持っているか、バカのどっちかしかいないわよ。わたしでもそうする。でも、だからこそクララさんはこのタイミングでドラピオンを出した。本当によくわかってるわね」

 

 地面に怪しい紫のトゲが散らばる中、セイボリーさんも交代先のポケモンを繰り出す。

 

「頼みます、ココロモリ!!」

 

 セイボリーさんの次のポケモンはココロモリ。エスパー、ひこうタイプである彼なら、ひとまずどくびしを受けることは無い。けど、結局後続は受けることになるから、ひとまずはこの子でできる限り、毒になったとしても大丈夫な場を作りたいと言ったところからの選出か。あとは、マタドガスの残した毒霧の対処も兼ねてだろう。

 

 オーベムのメテオビームによる爆風でかなり弱まっているとはいえ、まだほんのり残っている。これだけ薄まっているのなら気にしなくてもいいような気がするけど、一応の安全策を撮りたいということだろう。

 

「ココロモリ!!『エアスラッシュ』です!!」

 

 その予想通り、まずは風の刃で残っていた毒霧を全部吹き飛ばす。これでもうマタドガスの残したものは無くなったから安心して戦うことが出来るだろう。けど、この毒霧を消すという手段に一手使っているということは、この隙にクララさんも何かを仕掛けることが出来てしまう。

 

「ドラピオン~もう1回『どくびし』っちゃおうゥ~」

 

 クララさんが選ぶ技はまたどくびし。これによって、どくびしの効果がもうどくびしにパワーアップしてしまう。こうなるとセイボリーさんはますます耐久力を落とされることとなってしまう。いや、クララさんは多分ここまで考えてドラピオンを選んでいる可能性すら怪しんでしまう。

 

(出来れば戦いたくない相手ね……)

 

 現在進行形でドラピオンから放たれた毒の針たちは、ゆっくりと辺りにちらばろうと落下を始める。

 

 このどくびしが地面に着くと同時に、またバトルが繰り広げられるだろう。そう予想したわたしは、視線をココロモリに向けようとしたところで、視界に端に映った()()()()()()()()()()()()()()に気づく。

 

「申し訳ないですが、その『どくびし』は却下です」

「ドラッ!?」

「ドラピオン!?」

 

 それは本来は毒霧を消すために放たれたもので、役目を終えたその攻撃はそのまま直進してスタジアムに壁にぶつかるはずだった。しかし、ココロモリのサイコキネシスによって軌道を変えられ、毒霧を消したエアスラッシュは、今度は空中にとんでいるどくびしを回収して、そのどくびしと一緒にドラピオンの方に飛んでいく。

 

「既に撒かれた『どくびし』は地面に刺さっているため、ココロモリでは吹きとばせません。ですが、まだ空中にあるものなら、お返しは間に合いますよね?」

「グゥ……」

 

 エアスラッシュとともにドラピオンに突き刺さる毒のとげ。ドラピオンはどくタイプを持っているため、どく状態にこそならないものの、まきびし部分のとげは普通に刺さる。いくら甲殻に身体が覆われているドラピオンと言えども、大量のまきびしを一気にぶつけられれば、甲殻や節の間と言ったドラピオンの脆い部分に刺さるものもいくつか現れる。大きなダメージになることはないけど、それでも少なくない痛みは走っているはずだ。

 

「このまま畳みかけます!!さらに『エアスラッシュ』を!!」

 

 地味な痛みにたじたじの様子を見せるドラピオンに向かってさらに放たれる風の刃。次々と突き刺さるその攻撃は、地味な痛みで怯んでいるドラピオンを更に怯ませていく。

 

「ド……ラ……ッ!?」

「ウググ~……ドラピオン!!『つじぎり』ィ!!」

 

 飛んでくる風の刃にしびれを切らして、両腕のハサミを黒く染めながら振り回す。やたら目ったら振り回されるハサミは、なんとかエアスラッシュとどくびしの嵐を弾いて行くけど、相変わらずココロモリは安全地帯である空中から悠々と攻撃してくる。あくタイプがあるから、得意のエスパータイプで殴ることはできないけど、それを補って余りある位置的有利を手にしている。やはり空を飛んでいるポケモンはこういうところが強い。

 

「フハハハ!!その悪あがき、いつまで続けられますかね?もっと『エアスラッシュ』です!!」

「コロ~ッ!!」

 

 圧倒的優位。

 

 マタドガスに散々苦しめられていたあの立場から一転、自分が押している状態だと理解したセイボリーさんは高らかに声を上げながら攻撃を指示する。一見調子に乗ってどんどん攻撃をしているように見えるけど、その実ドラピオンが頑張って弾いたどくびしを再びドラピオンに返すかのように技を放っているせいで、せっかく痛みから逃げたはずのドラピオンに再び小さなダメージを積み重ねていく。本来なら緻密な技の操作が求められるけど、そこはセイボリーさんが自身のサイコキネシスを送ることによってサポートをし、一方的な状況を作り上げている状態だ。

 

 あんな高笑いを上げながらも、やるべきことはちゃんとしているし、その技術はかなり素晴らしい。高笑いをしても許されるレベルだ。

 

(……まぁ、細かすぎて普通の人はなかなか気づきにくい所だから、変なところに敵は作っていそうだけど)

 

 現に、上空から風の刃を乱射し、針と一緒にどんどん攻撃しながら高らかに笑う様は、悪役が暴れているようにしか見えない。セイボリーさんの胡散臭さも相まって、どんどんヒールみが増していく。

 

『クララ姐さん!!負けないでくだせぇ!!』

『勝ってお嬢とワン・ツーフィニッシュを見せてくだせぇ!!』

『あんな胡散臭いやつ、あの時の姐さんの勢いでつぶしちゃいやしょう!!』

『空飛んで逃げるなんてなんてやつだ!!』

『逃げるな卑怯者ォ!!』

 

 その証拠というわけじゃないけど、ふと横に視線を向ければ、顔に独特のペイントを施し、クララさんの姿がプリントされたハンドタオルを掲げたり、振り回したりしながら、少し過激な言葉で応援をする軍団がいた。恐らくクララさんのファンと思われる集団だろう。他の地方と違って、ジムチャレンジの頃から観戦ができるこの地方ではこの時点から根強いファンを獲得する人も多いって聞いたけど……実際にこうして目の当たりにするとその熱気がよくわかる。もしかしたら、わたしが気づかなかっただけでフリアにもこのようなファンがいたのかもしれない。

 

「……なんだか急にアウェー感出てきましたね……ですが気にせず攻め立てるのです!!」

「コロッ!!」

 

 さすがにここまで観客の声が大きければセイボリーさんの耳にも入って来るけど、そんなことで集中力は欠かさずにどんどん攻撃していく。大きなダメージが入るわけではないけど、小さいダメージをどんどん積み重ねられていくドラピオンは、かなり動きづらそうで、とても苦しそうな表情を浮かべていた。

 

 けどここで、クララさんからの予想外の指示が飛び出す。

 

「ええいチクチクうっとおしいィ!!ドラピオン!!こうなったらあのどくばりを無茶苦茶に利用するぞォ!!針で『つぼをつく』ゥ!!」

「ドラッ!!」

「は?」

 

 指示が飛ぶや否や、今まででつじぎりを振り回していたドラピオンの手がピタリと止まり、身体を広げてどくびしの針を受け入れ始める。当然そんなことをすれば、エアスラッシュとどくびしの雨が全てドラピオンに降り注ぎ、次々と攻撃が刺さっていく。しかし……

 

「な、なぁ……エアスラッシュはともかく、『どくびし』の針がドラピオンに当たるたびに、ドラピオンの身体が赤く光ってないか?」

「……いくら何でも奇想天外すぎるでしょ」

 

 身体を赤く光らせる度にどんどんやばい雰囲気を醸し出していくドラピオン。それは、沢山の攻撃を受けてボロボロの身体になっているはずなのに、全く手負いの状態というのを思わせないほどの覇気をみなぎらせている。

 

 つぼをつく。

 

 自身の身体にあるツボを刺激することによって、能力を活性化させる変化技。その際、自身の能力がランダムで1つぐーんと成長する。何が成長するかを狙うことはできず、本当に何が上がるのかわからない一種のギャンブルなんだけど……

 

「今、何が上がったのかしらね……いえ、全部合わせてどれくらい上がったのかしらね」

「正直今のドラピオンには勝てる自信ないぞ……」

 

 あれだけ何回も発動していれば、正直どこが上がろうと関係ない、下手したら全ステータスがとんでもないことになっている可能性がある。ここまでくれば、一種の戦略兵器と言っても差し支えない可能性がある。

 

「やっちゃえドラピオン!!今までやられた分すべてをお返しだァ!!『つじぎり』ィ!!」

「ドラァ……ッ!!」

 

 指示を受けた瞬間飛び出すドラピオン。けど、ドラピオンが飛び出したとわかった時にはもうすでにドラピオンの攻撃は終えた後で……

 

「コ……ロ……」

「……はえ?」

 

 気づけばセイボリーさんの真横に、目を回したココロモリが落ちてきていた。どうやらドラピオンが、極限にまで上げられた攻撃と素早さに物を言わせて、ココロモリのいる位置まで大ジャンプ。そこから弱点を突く鋭いつじぎりによって、一撃で落とされてしまったらしい。らしいというのは、速すぎて誰も目にで追えていないから。

 

 

「コ……ココロモリ、戦闘不能!!」

 

 

 そのあまりにも圧倒的な姿に、審判の人も思わず宣言が遅れてしまう。それほどまでに強力かつ素早い一撃だった。ただ、その分代償も大きかったらしく、攻撃を終えたドラピオンは、クララさんの横で膝をついた。

 

「ドラピオン……平気ィ? 」

「ド、ドラ……」

「ごめんねェ……ついカっとなっちゃったァ……」

 

 あれだけの攻撃の前に身体を無防備でさらし、さらに傷ついた状態で普段の何倍もの力を無理やり引き出せば、身体に帰って来る反動はすさまじいものになる。その結果、戦闘不能とまではいかないにしろ、今のドラピオンはかなり衰弱しているように見える。

 

「うゥ……ここまで強化されたドラピオン、もっと戦わせたいけど……流石にダメよねェ……休んでくれる?」

「ドラ……」

 

 クララさんの少し申し訳なさそうな声と共にボールに戻っていくドラピオン。とんでもない作戦をしたかと思えば、こういうところの引き際はちゃんとわかっているらしい。

 

「なんか、すげぇもん見たな……」

「ほんとね……でも、とにかくこれでまたクララさんが有利になったわよ」

 

 セイボリーさんが3人。クララさんが2人失っている状況。有利状況から一転して、一気に差をひっくり返されたセイボリーさんは、さすがに動揺が顔に映る。確かに、あの状況からあんなことをされたらわたしだって面を喰らうかもしれない。

 

 けど、今はトーナメント。どれだけ心を乱されたって、誰も待ってはくれない。

 

 今のドラピオンに関しては完全な自己だ。そう割り切って次に行くしかないのだけど……

 

(さて、セイボリーさんはうまく切り替えられるのかしら?)

 

 流れは間違いなくクララさんが握った。これを取り返すには、かなりの集中力が必要になる。そんなときに、今みたいに動揺したままだと間違いなくクララさんに飲み込まれる。そこが気になったわたしは、未だにフリーズしているセイボリーさんへと視線を向けた。

 

「……本当に、何てでたらめな……」

「言っとくけど、うちだって想定外だからねェ?」

「……わかってますよ」

 

 分かっている。けど納得はいっていない。そんな表情を浮かべるセイボリーさんは、ゆっくりと手を次のボールにかけていく。

 

「だから、絶対に仕返しします!!フーディン!!」

 

 その理不尽をばねにして、目に闘志を宿らせるセイボリーさんが5人目であるフーディンを繰り出す。どうやら、動揺に関してはもう大丈夫そうだ。

 

「さっきのはごめんだけど、それはさせねーぞォ!!この勢いのままうちが勝つ!!行っちゃって!エンニュートォ!!」

 

 セイボリーさんが不利の中で行われる3回目の同時呼び出し。現れたのはフーディンとエンニュート。どちらも素早さととくこうが高く、その代わりに耐久に難があるポケモンだ。決着が着く時は一瞬だろう。

 

「フーディン!!『サイコキネシス』です!!」

「エンニュート!!『こうそくいどう』!!」

 

 準備が出来たと同時に、お互いが技を発動。セイボリーさんが得意技で仕掛け、その攻撃をエンニュートが素早さを強化して走り出し、攻撃を避けていく。

 

「『ヘドロばくだん』!!」

 

 攻撃を避けたエンニュートはすかさず反撃。速くなった足を生かし、フーディンの周りを走り回って、相手の視界を翻弄しながら毒の塊を叩き付けようとする。

 

「『テレポート』!!」

 

 対するセイボリーさんはこれをテレポートで回避。姿を消したフーディンは、エンニュートから離れたところで再び攻撃を構える。が、ここに来てフーディンの頭に毒の泡が出てくる。

 

「そう言えば『どくびし』がありましたね……」

「気をつけてねセイボリちん。時間はうちの味方なんだからァ!!エンニュート!!『こうそくいどう』!!」

 

 フーディンが毒になったのを確認して、すぐさまこうそくいどう。おそらく、相手の攻撃を避けることに集中して、そのまま毒で削る作戦だろう。たとえ相手が特攻をしかけてきたとしても、素早さをここまで上げていけば回避も難しくない。なんなら、スピードバトルにおいては、相手に先に技を振らせて、そこにさし返すように技を繰り出した方が圧倒的に有利な展開を作れる。そうなってしまえば、毒で削れるよりも早くエンニュート自身の技で決めることも可能だ。

 

 早く攻めなければ毒で倒れ、しかし焦ればエンニュートのカウンターを貰う磐石の構え。先行しておりかつ相手を毒にしているからこその展開を存分に活かしているクララさんに対して、セイボリーさんがどのような作戦に出るのか。

 

(どう足掻いても攻めに出るしかなく、しかも速攻で決めないとイーブンにすらならない。まずはこのエンニュートに対して、どう切り込むのかしらね?)

 

「この技、一応入れておいて正解でしたよ……フーディン!!『トリックルーム』!!」

「はェ!?」

 

「『トリックルーム』!?」

「……まさかの技ね」

 

 期待を込めてセイボリーさんを見ていると、放たれた指示はまさかのトリックルーム。不思議な空間を作り出すこの技は、空間内の素早さを逆転させる効果がある。速いものは遅く、遅いものは速くなるここでは、先ほどこうそくいどうで素早さを上げまくったエンニュートの素早さは逆転。今は全く動かない身体に目を白黒させていた。

 

「なんでフーディンにそんな技入れてるのかなァ!?」

「あなた対策ですよ。いろいろ考えた結果、こうするのが一番効果的でしたので」

「確かにうちに刺さってるけどォ……でも、身体が重いのはそっちもでしょォ?エンニュート!!『ヘドロばくだん』!!」

 

 しかし、クララさんの言う通り、それは同じくスピードアタッカーであるフーディンも同じだ。

 

「確かに、エンニュートの動きを止められはしたけど、これだと足の速いフーディンも動けないぞ?」

「……なるほど、それなら確かにフーディンには関係ないわね」

「え?」

 

 ジュンもそのことに対して疑問をあげるけど、わたしはその先の意図に気づいた。そんなわたしにジュンが声をかけるけど、わたしの言葉よりも先にセイボリーさんが動く。

 

「『テレポート』!!そして『サイコキネシス』です!!」

「フ……ッ!」

「エンッ!?」

「そういうことォ!?」

 

 飛んでくるヘドロばくだんをテレポートで避け、死角からサイコキネシスで攻撃するフーディン。この行動を見て、ジュンもようやく理解を示す。

 

「そっか、移動を全部『テレポート』に任せれば、そもそも素早さなんていらないのか」

「相手が遅ければ自分の足で、相手が速ければこの技の組み合わせで、常に相手の速さの上から攻撃を叩きつける。本当に理にかなった戦法ね。この作戦に囚われたエンニュートに、もう逃げ場はないわ」

 

 そこから始まるのはフーディンによる一方的な攻撃。エンニュートは動けず、次々飛んでくるサイコキネシスをもろに食らい続けてそのままダウンする。

 

 

「エンニュート、戦闘不能!!」

 

 

「倒し切っちゃったぞ……凄いな……」

「けど、この作戦の一番の要はここからよ」

「え?」

 

 エンニュートをボールに戻すクララさんを見ながら、わたしはこの戦法の一番の目的を見据える。

 

「……くゥ、ごめんドラピオン!!また頑張ってェ!!」

「ド……ドラ……ッ!!」

 

 クララさんから繰り出されるのは、身体を気遣って戻されたばかりのドラピオン。その姿を見て、ジュンが疑問を口にする。

 

「なんでドラピオンなんだ?まだ回復しきってないだろうし、ここで出すならそれこそ戦いっぱなしの方がよかったんじゃあ……」

「クララさんのドラピオン以外の手持ちは切り札とペンドラーでしょ?けど切り札はできる限り温存しておきたい」

「ならペンドラーを出せば……って、そういう事か!!」

 

 ここに来てようやく気付いたジュン。

 

「そう。クララさんがペンドラーを出さなかった理由は、彼の特性に答えがあるわ」

 

 クララさんのペンドラーの特性は『かそく』。フリアのメガヤンマと同じく、時間が経てば経つほど速くなるその特性は、本来とても強力だ。けど、その特性がこのトリックルーム下ではとんでもないことになる。

 

「速くなるはずの特性が、空間のせいでどんどん遅くなっていくのか……さしずめ『しっそく』だな」

「いやな特性ね……間違ってないけど」

 

 だからこそここではペンドラーは出せない。よって、手負いのドラピオンを引き出すことに成功したというわけだ。クララさんとしては。このトリックルームを少しでも消費させる時間稼ぎをしたいから。

 

「技ひとつでまたひっくり返ったな……もうセイボリーさんの方が有利だぞ」

 

 どんどんひっくり返る戦況に、ジュンの興奮が納まらない。

 

 そのテンションに、わたしも少し引っ張られる。

 

「本当に、目が離せないわね」

 

 それは久しぶりに、わたしもバトルをしてみたくなるほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つぼをつく

あまりいい思い出のある技ではないでしょう。主にレイド関連で……なので、むしろここでは八茶けさせました。さしずめ針治療ですね(たぶん違う)

トリックルーム

素早さを逆転させるダブルバトルの花形。いつの時代も、この技は一定の需要がありますよね。私も好きです。

しっそく

もはやデメリット特性。ジャイロボール使いにはありがたい……?




フルバトルラッシュ。私の引き出しが持つかが心配です。まだ大丈夫ですけどね。




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