【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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217話

「行くぞバチンウニ!!」

「ニニニ……」

「バチンウニ……同じでんきタイプ対決ってこととね。モルペコ、連戦で辛いかもだけど、頑張ると!!」

「ペコ……ッ!!」

 

 今日初めて場に出て、元気いっぱいな姿を見せるバチンウニと、ウッウとのバトルで少なくないダメージを貰って、少しだけ辛そうな表情を浮かべているモルペコ。当たり前だけど、控えのポケモンも含めて不利な状況にあるのはあたしの方だ。けど、カビゴンにあれだけ暴れられたにしてはちゃんと巻き返している方だと思ってはいる。ここまで逆転できるのであれば、勝つことだってできるはずだ。

 

(ただ、お互いでんきタイプっていうのはちょっと面倒くさか……)

 

 でんきタイプの攻撃はでんきタイプに対して効果はいまひとつ。お互いのメインウェポンが封じられているこの対面は、互いに決定打がなく試合が長引きやすい。そうなってくると、まだまだ元気満タンなバチンウニの方がどうしても有利。

 

 それにこのバトルは、タイプ上は平等に見えて全然平等じゃない。

 

(ホップのバチンウニは、確か『ひらいしん』……)

 

 でんきタイプの攻撃をわざと自分へと向けさせるこの特性は、でんき技を受けるとダメージを無効化して自身の特攻を成長させる。幸い、バチンウニは基本的に物理で戦うポケモンだから、その点に関してはまだ被害は少ないけど、あっちの攻撃は通るのにこっちの攻撃が通らないというのは、ちょっとずるさを感じてしまう。……まぁ、そこに関しては、あたしのドクロッグもみずを無効にしちゃうからなんとも言えないんだけど。

 

 とにかく、現状あたしの攻撃手段が一部制限されているということは頭に入れておかなきゃいけない。

 

「モルペコ!『でんこうせっか』!!」

「ペコッ!!」

 

 モルペコの体力は少ないけど、かといってここで焦ってはいけない。長期戦上等。モルペコには頑張ってもらうしかないけど、あたしのスタイルは今は変えるつもりはない。

 

 あくまでじっくりと。

 

 幸い、バチンウニに攻撃の選択肢を縛られているとはいえ、こちらには素早さというアドバンテージが存在する。

 

(バチンウニは全ポケモンの中でもかなり遅い方!!今のモルペコなら、追い付かれることなく攻撃できるはずと!!)

 

 バチンウニを中心に周りを走りまくるモルペコ。動きの遅いバチンウニは当然こちらの動きを追いかけることはできず、せいぜいが視線でこちらを追うくらい。

 

「『タネばくだん』!!」

「ペッコ!!」

 

 これだけ動き回れば、どこから攻撃が飛んでくるかはあちら視点分からないはずだ。実際、でんこうせっかで走り回っている間に、だんだんとバチンウニの視線がモルペコから外れていく。だから、あたしはそこをつくようにタネばくだんを乱射させる。ただでさえモルペコの姿を見失っているのに、そこから更に大量の攻撃を投下することで、本人の意識をかき乱していく。バチンウニの視点から見れば、自分よりもはるかに大きく、そして明らかに硬いとわかるタネの雨が降ってくる様はさぞかし強烈なインパクトを受けることになるだろう。

 

(逃げ場もなければ避ける脚もない……さぁ、どうすると!!)

 

 ここまでやればさすがにどれか1つくらいは攻撃が当たってくれる。そう思い、モルペコへの指示を出しながらバチンウニとホップの動きに注目する。

 

「バチンウニ!!『びりびりちくちく』だ!!」

「『びりびりちくちく』……?」

 

 四方八方から攻撃が迫りくる。そんな絶望的な状況であるはずなのに、ホップの表情はむしろ笑顔。そんな自信満々のホップから告げられる技はびりびりちくちく。相手にぶつかって電気を流し、相手を文字通りびりびりと痺れさせてくるこの技は、かわいらしい名前に反してそこそこ威力の高い技とはなっている、しかし、そうもあたしにはこの状況を突破できる技とは思えなかった。そんなあたしの気持ちが思わず口から零れる。

 

 しかし、次の瞬間、あたしのこの気持ちを吹き飛ばすようなことが起きる。

 

「ニニ……!!」

「へへっ、いいぞバチンウニ!!」

「え……!?」

 

 その異変は、バチンウニの身体から伸びている棘にあった。

 

 バチバチと音を立てている棘は、なんとタネばくだんが当たる直前にその長さを一気に伸ばし、タネばくだんをその場に縫い止めてしまう。表面がかなり硬いはずのそれをやすやす貫いてしまうあたり、かなりの鋭さがあると見て取れる。しかも、後続で飛んでくるものも全てしっかりと受け止めており、棘を伸ばしたバチンウニが、タネばくだんのドームによって姿が隠れてしまっている状態になっていた。

 

(攻撃全部受け止められたと……棘を伸ばして止めたのも凄かけど、それ以上にこれだけの攻撃をしっかり受け止められる筋力が凄か)

 

 タネばくだんは、そのでかい見た目通り質量がかなりある。それを全く動じることなく受け止めるということは、それだけ筋肉が鍛えられている証拠だ。この特訓期間中、さぞ厳しい訓練をしてきたのだろう。

 

「お返しするぜ!!バチンウニ!!回転!!」

「二二ィ!!」

 

 攻撃全てを受け止め終えたバチンウニは、もう攻撃が来ないことをホップに聞いた後、その場でぐるぐると回って、自身が突き刺したタネばくだんを棘から外しながら、周りへ飛ばしてばらまいていく。

 

「モルペコ!!」

「ペコ!!」

 

 当然撒き散らされたこのタネばくだんは、投げ返された側のモルペコに帰ってくる。勢いこそ落ちてはいるけど、体力が削られているモルペコはこのダメージさえも受けたくない。名前を呼ぶだけでそのことを察してくれたモルペコは、でんこうせっかを自分で判断して発動。無造作にばらまかれるタネばくだんの隙間を何とか縫って避けていく。

 

 被弾こそゼロに抑えることはできたものの、急な反撃に態勢を崩しているモルペコ。これがバチンウニ以外だったら手痛い反撃を貰っている所だろう。その事だけはちょっと安心。

 

「バチンウニ!!今度はこっちから行くぞ!!『びりびりちくちく』で駆けまわれ!!」

「ニニィッ!!」

「……は?」

 

 なんて思ったら、またもやホップから変な指示が飛び出してくる。

 

 びりびりちくちくで駆けまわれ。なんて言葉だけでは全くもって意味が分からないあたしは、どう対処すればいいのかが分からなくて、少しだけ動きが止まってしまう。

 

 この間に準備を始めたバチンウニがした行動は、身体を丸めてボール状になること。

 

 丸まったバチンウニは、傍から見たら黒いボール……にしてはとげとげしてて、とても遊び道具には向いていなさそうだけど……とにかく黒い球にしか見えない。しかし、そんな姿を維持しているのは一瞬で、次の瞬間にはバチバチという音とともに黄色に光りだす。と同時に、その場でバチンウニが縦回転。身体から飛び出している棘がスパイクとなって地面に刺さり、それが回転することによってバチンウニ本体が動き始めた。

 

 ……って、ちょっと仰々しく説明したけど、要はバチンウニが棘球になって、激しく回転しながらこちらに転がってきたという事だ。

 

「ちょちょちょちょ!?それなんと!?と、とにかくモルペコ!!逃げて!!」

「ぺ、ペコッ!!」

 

 急遽襲い掛かる黄色の棘球から、慌てて逃げるように指示をするあたし。いきなり始まってしまった鬼ごっこに、本能が逃げることを選択したモルペコは、すばやさが上がっていることもあって、ものすごい勢いで距離を離す。

 

(い、いきなりのことでちょっとびっくりしすぎたと……よくよく考えたら、今のモルペコについてこれるポケモンなんてほとんどいない。落ち着いてみれば、ちゃんと攻撃する隙があるはずとね)

 

 距離を離したことによって生まれた余裕を使って思考を回すあたし。

 

 動きが遅いバチンウニが急に元気よく動き出したからびっくりしたけど、よくよく見ればそこまで速く転がっているわけではない。これならモルペコのオーラぐるまの方がよっぽど速い。落ち着いて戦えばまだ何とかなる。

 

「バチンウニ!!慣れてきたか?だったらギアを上げるぞ!!」

「ニニィッ!!」

「……え?」

 

 なんて思っていたら、ホップからさらに指示が飛んできて、それと同時にバチンウニの電気出力と回転速度が一気に跳ね上がる。そうすれば当然前に進む推進力も上がり結果として━━

 

「ニニニニィッ!!」

「いっけぇ!!爆走バチンウニ戦車だぞ!!」

「意味わかんなと!!モルペコ!!ダッシュ!!」

「ペッコォッ!?」

 

 さっきまでよりもさらに速度の上がったバチンウニが、とんでもないスピードでモルペコを追いかけてきた。その速度は、おかしなことにオーラぐるまでかなり素早さがかなり上がっているはずのモルペコを追い抜かす勢いだった。

 

「ほんと!!カビゴンと言い、バチンウニと言い、変な方に突き抜け始めてるとね!!」

「技の使い方が広がったって言って欲しいぞ!!」

「やってることの根本が変わってなかと!!」

 

 バイウールーもカビゴンも、そしてこのバチンウニも、あれやこれやと色々な手を使っているように見せて、使っている技は根本的には2つ以下。その技だけでできる限り押し込もうと、決まった動きしかしていない。それなのにこうも戦い方が変わって見えてくるあたり、やっぱりジュン辺りに変な知識を吹き込まれたと考えてよさそうだ。

 

 なんて、文句ばかり言ってられない。

 

(ツッコミどころは満載だけど、この状況が理にかなっていて、かつやばいのは変わらなか。なぜかわからないけどすっごく速いし、すっごく痛そう。あんなものに轢かれたらひとたまりもなかと!!何か止められるものは……)

 

「あ、モルペコ!!タネばくだんを使うと!!」

「ペコ!!」

 

 迫りくる棘球を何とかして止めるために考えている途中で、あたしの目に映ったのは先ほどのやり取りでばらまかれたタネばくだん。先ほども言った通り、硬い殻に覆われたこのタネは、先ほどは針に刺さって止められはしたものの、転がる球となった今なら、回転を止める障害物になりえる可能性が高い。たとえ止められなかったとしても、威力や回転力がちょっとでも落ちてくれれば、それだけでモルペコが止められる可能性がある。そこを狙って、まずはモルペコに、背中にタネばくだんを背負うように立ってもらう。

 

 この時点で、あたしの狙いが相手に筒抜けになる可能性はある……というか、間違いなくばれてはいるけど、だからと言ってこの回転はすぐに止められるものではない。ばれたところで意味はないだろう。実際、モルペコがポジションについても、バチンウニは止まることなく突っ込んできていた。

 

「モルペコ!!ジャンプ!!」

「ペコッ!!」

 

 猛進してくるバチンウニをギリギリまで引きつけて、モルペコにぶつかる寸前で大ジャンプ。モルペコに当たることの無かったバチンウニの戦車は、あたしの狙い通り転がっていたタネばくだんにぶつかり、派手な音を立てる。

 

「そんなものじゃ、バチンウニは止まらないぞ!!」

「ニニィ!!」

 

 しかし、バチンウニにとってこの程度では障害物になりえないようで、タネばくだんを派手な音を立てながら破壊し、再びモルペコの方に向き直って突進を再開した。やはりこれくらいで止まるほど、やわな攻撃ではないみたいだ。

 

 けど、確かにスピードは落ちている。

 

(とりあえずバチンウニの行動を抑える方法は見つかった。ならあとは時間だけ……!!)

 

「モルペコ!!もう一回!!」

「ペコッ!!」

「何度やっても無駄だぞ!!」

「ニニィ!!」

 

 時間稼ぎと威力減衰。この2つを求めて、あたしはもう1回同じことをする。勿論もさっきと同じで、また1つタネばくだんが音を立てて壊れていく。

 

(もうちょっと……!!)

 

 まだ時間が足りないあたしはもう一度繰り返し、やっぱり同じことが起きて、また1つのタネばくだんが壊れる。これでバチンウニの速度は目に見えて落ち始めたけど、それでもまだかなりの威力を秘めているのが見て分かるし、この攻撃を避けるために奔走している今のモルペコがこの攻撃を受けると間違いなく倒れることも理解できる。

 

(速く……速く……!!)

 

 けど、あたしの欲しい時間はまだ訪れない。いつもなら全く気にならないのに、今日に限ってはこの時間がものすごく長く感じる。それはモルペコも同じで、だんだんと吐く息を荒げていくモルペコの姿から、限界が近づいてくることも伝わってくる。

 

 そんな焦りからか、ついにモルペコの足がもつれ、でんこうせっかが解けてこける。

 

「モルペコ!?」

「バチンウニ!!今だぞ!!」

「ニニィッ!!」

 

 態勢を崩したモルペコを狙って猛進し始めるバチンウニ。このままいけば間違いなくモルペコにぶつかって、戦闘不能に持っていかれるだろう。

 

(くっ……流石にここまでか……)

 

 むしろここまで頑張ってくれたことにお礼を言いたい。そんな気持ちで、少し気持ちが落ち込んで行ったときに、モルペコの様子が変わる。

 

「ペッコ……!!」

「ッ!?やっときた!!」

 

 黄色の姿から徐々に身体の色を黒色に変えていくモルペコ。ようやくはらぺこスイッチが発動し、モルペコがまんぷくからはらぺこに変わった。

 

 この瞬間を何よりも待っていた。

 

 だって、この状態になれば、モルペコが一番火力を出せる技を打つことが出来るのだから。

 

「モルペコ!!意地を見せると!!『オーラぐるま』!!」

「ペコ……ペッコッ!!」

 

 普段の姿だとでんきタイプの技になってしまい、バチンウニのひらいしんによって吸収されてしまう。しかし、はらぺこ状態のモルペコなら、オーラぐるまのタイプはあくタイプとなって、バチンウニに吸収されることはない。これなら安心して真正面から対決を挑むことが出来る。

 

「このための時間稼ぎか……いいぞ!!真正面からぶつかってやる!!バチンウニ!!」

「ニニィッ!!」

 

 此方の狙いにようやく気付いたホップだけど、真正面からのぶつかり合いが大好きなホップはこの作戦に乗って来る。

 

 有利は不利かなんて関係ない、楽しそうだからそっちに乗る。

 

 実にホップらしい理由で、挑んでいるこちらも気持ちいいくらいだ。

 

「モルペコ!!」

「バチンウニ!!」

「ペッコッ!!」

「ニニィッ!!」

 

 漆黒の滑車と電撃の棘球。

 

 2つの攻撃が高速で駆け回り、バトルフィールドのど真ん中でぶつかり合う。

 

「ペコ……ッ」

「ニニ……ッ」

 

 お互いの攻撃がきれいに相殺し、滑車と棘玉、両方の回転が止まって、お互いが技の状態を解かれながら、一定の距離を取って立ち止まる。

 

 ようやく攻撃を止められた。なら、今度はこちらが追いかける番だ。

 

「もう一度『オーラぐるま』!!」

「ペッコォッ!!」

 

 漆黒の滑車を呼び出して再びかける準備をするモルペコ。一方でバチンウニは、転がるための事前準備に少し時間がかかる兼ね合いで、まだあの棘球状態に移行していない。

 

 このままなら、先にこっちが攻撃を当てられる。

 

「バチンウニ!!『びりびりちくちく』だ!!」

 

 それでも何もしないわけにはいかないホップは、何とかするために同じ技を選択する。しかし、やはり予備動作の多さが足を引っ張って、どう見ても丸まる前にモルペコが到達する未来しか見えない。

 

(取った!!)

 

 攻撃動作に入っているため避けることも不可能。この攻撃が決まれば、戦闘不能にはならなくても、体力関係は逆転するはずだ。モルペコもそのことを理解し、いつも以上に足を動かして滑車を回し、全力で突撃する。

 

 時間にすれば1秒にも満たない。それほどの速さでバチンウニの元にたどり着いたモルペコは、激しい音を立てながら、漆黒の滑車ごと体当たりをかまし……

 

「ペ……コ……」

「……え?」

 

 

「モルペコ、戦闘不能!!」

 

 

 何故か()()()()()()()()()()()()()

 

 何が起こったのか分からなかったあたしは、一瞬だけ頭が真っ白になり、1歩も動けなくなる。しかし、程なくして倒れたモルペコ越しにバチンウニの姿を確認し、その正体を知る。

 

「自分の針を……全部前に……」

「へへっ、凄いだろ!!」

 

 そこには、自身の身体から生えている棘を全て前に向け、巨大な1本の針として、まるで槍のように真っ直ぐ突き出しているバチンウニの姿があった。その槍を持って、モルペコの突撃に対してカウンターをしたのだろう。あれだけの速さを持って槍の先端に突撃すれば、モルペコが倒されるのも納得出来る。もっとも、モルペコの速さがありすぎたため、全部は受けきれなかったのか、バチンウニもかなり苦しそうな顔は浮かべているけど。

 

 ただそれ以上に、あたしの残り手持ちが1人になってしまった方がずっと心に来た。

 

(この子が倒れたら、あたしの負け……)

 

 明確に近づいてくる終わりの足音に、少し手が震える。

 

「ロン……」

「っ!?」

 

 そんな手に握られているボールから、あたしに最後の仲間の声が聞こえてきた。

 

「……あたしを励ましてくれていると?」

 

 不安がっているあたしを元気づけるようなタイミングで紡がれるオーロンゲの声。その声に背中を押されたあたしは、自然と頬が緩んだ。

 

(全く、まだ負けてないのに何を怯えてるんだか……らしくなかと!!)

 

 目を閉じて深呼吸をし、心を入れ替えてぐっと前を向く。それだけで、あたしの中に巣食っていた不安が全部吹き飛んだ気がした。

 

「行くよ!!オーロンゲ!!」

「ローグッ!!」

 

 高らかに声をあげながら飛び出してきたのは、ルミナスメイズの森で出会って、ここまでずっとあたしを支えてくれた頼もしい仲間であるオーロンゲ。

 

 長い髪の毛を全身に巻きつけて、筋力を強化しているこの子は、カイリキーおもねじ伏せると言われるほどのパワーを発揮できるポケモン。それでいて、特性のいたずらごころによりいろいろな搦め手も得意とするとても器用な子だ。

 

「来たな!オーロンゲ!!」

 

 そんなオーロンゲを見て嬉しそうな顔を浮かべるホップ。バトルもいよいよ終盤を迎え、それに応じてホップの心も盛り上がっている証だ。

 

「このままオーロンゲもやっつけてやろうぜ!!バチンウニ!!『びりびりちくちく』だ!!」

「ニニィッ!!」

 

 ホップの指示を受けて、バチンウニが再び棘を一か所に集中し、一本の槍となる。その姿のまま電気を纏い、オーロンゲに向かって飛び出す姿は、電気の矢のようにも見えた。

 

 当たれば当然痛い。……いや、痛いではすまないダメージを貰うことになるだろう。

 

(本当に、凄い力技と……)

 

 この技の使い方を覚えるのに、この特訓期間を凄く大切に使っていったのだろう。

 

 けど、筋力勝負だというのなら、こっちだって負けていない。

 

「オーロンゲ!!」

「ロンッ!!」

 

 あたしが一言声をかけると、オーロンゲは右手を前に突き出して右腕に纏っている髪を解いて行く。すると、髪が触手のようにうねりを見せながら動きだす。その状態で待ち構えたオーロンゲは、飛んでくるバチンウニをしゃがんでかわし、すれ違いざまに棘の部分のみをからめとる。

 

「ニニィッ!?」

「なっ!?」

「力押しは確かに凄いけど、元の筋力はオーロンゲの方が上と!!」

「ローグッ!!」

 

 髪の毛でがっしりと掴んだオーロンゲは、電気によって痺れこそ感じてはいるけど、筋肉が痺れた際に起きる収縮によって、逆にバチンウニを強く握りしめていた。とはいえ、電気による継続ダメージは蓄積していくため、この手は速く離してしまいたい。

 

 だから、オーロンゲの全力を叩きつける。

 

「オーロンゲ。『ソウルクラッシュ』」

「ログッ!!」

 

 自由に動く左手をぎゅっと握りしめ、渾身の力をもってバチンウニを殴りぬく。

 

「ニッ!?」

「バチンウニ!?」

 

 技の工夫によって威力や素早さが上がっているとはいえ、元の能力が上がっているわけではない。ましてや、体力が少ないバチンウニ。モルペコとのぶつかり合いが予想以上に身体に負荷がかかっていたこともあってか、バトルフィールドの壁際まで吹き飛ばされたバチンウニは、ひっくり返って目を回していた。

 

 

「バチンウニ、戦闘不能!!」

 

 

「今までいろいろ策を講じて対応してたけど……オーロンゲなら、ホップのごり押しにも対抗できる力を持っていると!!」

「ローグッ!!」

 

 両腕を掲げ、自身を鼓舞するオーロンゲと共に、目の前のホップたちを見据える。

 

 これでお互い5人の仲間を失い、とうとう最後の1人ずつとなる。

 

「ここからは……純粋な殴り合いと!!」

 

 あたしとホップの戦いが、終盤を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バチンウニ

棘のまま転がる姿は、某忍者の肉弾針戦車。もしくは、某コピーするピンクの悪魔のニードルの技、『ローリングタックル』に似ていますね。ゲームがゲームなら無敵判定ももっていそうです。また、もう一つの『1つに束ねて~』のくだりは、同じく某ピンクの悪魔さんより、『チックもどき』という技を参考にしてます。バチンウニの身体が凄いことになっていますね。

オーロンゲ

遂に登場マリィさんの切り札。筋肉を髪の毛で強化する、長毛巨魔さん。ホップさんの切り札と合わせて、とてもムキムキなマッチアップになりそうですね。




次回、ナイスバルク。(たぶん違う)




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