「ローグッ!!」
バトルフィールドの真ん中で声をあげ、『次の対戦相手を速く出せ』と言わんばかりの意志を醸し出すオーロンゲ。その後ろには、同じように次を所望しているマリィが、笑顔を見せながらこちらを見つめていた。
(ったく……普段あまり表情が動かないくせに、こういう時にそんないい笑顔みせやがって……こっちもつられるぞ……!!)
めったに見せないマリィの表情に、こちらも思わず笑ってしまう。そんな昂ぶる気持ちのままバチンウニを戻したオレは、最後のポケモンが入ったボールを取り出し、マリィに向かって
「っ!?……そういうこととね」
「最後のポケモンなんだぞ?やっぱり派手にいかないとな!!」
自分でもわかるくらいに満面の笑みを浮かべながら、オレはマリィにある種の宣言をする。直接言葉には出していないけど、聡明なマリィならこれだけで十分に伝わってくれるはずだ。実際、オレの予想通り、マリィは懐からモンスターボールを取り出し、オーロンゲに向かってリターンレーザーを当て、ボールの中に戻した。
オーロンゲがボール戻り、お互い最後の1人が入ったポケモンを前に突き出す状態。ボールを握っている腕には両者とも赤いバンドが巻いてあり、そのバンドが同時に赤く光りだす。
「みんなのエールがあるったい!!絶対の絶対に勝つもんね!!」
「どっちが勝つかわからない?違う違う!ここからオレが勝つから最高なんだよ!!」
バンドからあふれ出た光はそのままボールに吸収され、大きさを一気に膨らませていく。そのボールをぎゅっと抱えたオレたちは、気合を入れて上空に向かって放り投げた。
「アニキが使わなくても、あたしは夢のために!!勝つために使う!!オーロンゲ!!キョダイマックス!!」
「ねがいぼしに込めたオレの夢と想い……今解き放つぞ!!ゴリランダー!!キョダイマックス!!」
大きくなったモンスターボールから現れる2人の巨大な影。オレの方に現れるのは、背中に背負っている大きな木の太鼓が成長し、まるでドラムのような形をした巨大な森と、その上に鎮座する森の王者。ゴリランダー本人の身体は少ししか成長していないが、代わりに髪の毛がとても長くなっており、その髪の先端にそれぞれバチを握ることで、森林化したドラム全てを叩けるようにしており、今も登場と同時に激しくバチを振るって音を奏でていた。
今までゴリランダーをダイマックスさせてもこんな姿にはならなかった。けど、ヨロイ島で特訓している時にいつの間にかできるようになっていたキョダイマックス。オレはこれをこいつの覚悟と受けとった。そんなオレの解釈を肯定するかのように、オレの切り札は両手でバチを握った姿で吠えた。
一方、マリィの方に現れたのも、ただ大きくなったオーロンゲ……というわけではない。全身に纏った髪の量はさらに増加し、自慢の筋肉質な四肢は延長されスマートな見た目となる。特に手足の先端は鋭い棘のような見た目となっており、ここから繰り出される攻撃はさぞ痛いだろう。
オーロンゲのキョダイマックスの姿。世界一高いビルを飛び越え、足先の髪をドリル状にして放つ蹴りはガラルの大地に大穴を穿つと言われている。そんな破壊の権化ともいうべき相手が、オレのゴリランダーの相手だった。
「グラアアアァァァッ!!」
「ロオオオォォォグッ!!」
雄たけびをあげる両者。キョダイマックス同士のぶつかり合い。
自分こそがこのバトルの大将を担っていると自覚しているからこそ……もうあとがないことを自覚しているからこそ……全力で自分を鼓舞して最後の戦いに挑む両者の姿がそこにあった。
「『ダイアース』!!」
「『ダイフェアリー』!!」
「グラアアアァァァッ!!」
「ロオオオォォォグッ!!」
叫び声と共に放たれるお互いのダイマックス技。
ゴリランダーは右手に茶色の、オーロンゲは右手にピンク色の光を携えて、バトルフィールドの中央にて拳を打ち付けあう。
激しい轟音を奏でながら巻き起こる破壊と破壊の衝突は、見ているこちらを風圧で吹き飛ばす勢いで吹き荒れ、思わず腕で顔を覆ってしまう程。それでも決して目は瞑らないオレとマリィは、今しがたお互いが放った技が相打ちになり、追加効果が発動していないとわかった瞬間、すぐさま次の手へ移行する。
「『ダイジェット』!!」
先に動けたのはオレの方で、選んだ技はダイジェット。相手を攻撃しながら素早さをあげられるこの技は、ダイマックス技の中でもかなり強力な技の1つだ。右手と右側の髪で持っている、3つの大きなバチに風を纏わせて思いっきり振りかぶったゴリランダーは、オーロンゲの左横腹を薙ぐように技を振るう。
思いのほか素早く繰り出されたこの技に、オーロンゲの反応がわずかばかり遅れてしまい、綺麗に攻撃がヒットする。しかし、ただでやられるオーロンゲではない。
「掴んで!!」
「ロオオオォォォグッ!!」
自身の横腹に攻撃が当たったことを感じたオーロンゲは、しかしこの攻撃をしっかりとたえ、左腕と左横腹の間でがっちりと掴んでいた。どうやら右腕にまとっていた髪の毛を解き、横腹に持っていく事で筋肉を補強し、一時的な防御力の上昇を狙ったらしい。その作戦は見事刺さっており、こちらの攻撃をしっかりと受け止めることに成功している。
「『キョダイスイマ』!!」
「防ぐんだ!!」
攻撃を受けきったオーロンゲは、そのままバチをホールドした状態で今度は右足に髪の毛をまとめていき、筋力を増強した状態で右足を振り抜いてきた。バチを掴まれており、さらにドラムセットに座っている状態のゴリランダーは、簡単にこの攻撃を避けることができない。そこで、ドラムセットの中でもいちばん大きな太鼓を、自身の身体とキョダイスイマの蹴りの間に置き、右のバチを手放して太鼓を支えるのに手を使うことで盾として踏ん張った。しかし、それでも威力を殺しきれなかったのか、ゴリランダーがダメージを負いながら、ドラムセットごと後ろに無理やり下げられる。分かってはいたが、とんでもない威力だ。
「ほんと、すんげぇ馬鹿力だな……」
「あたしのエースをなめないで欲しか!!それに、『キョダイスイマ』の怖い所はここからと!!」
「グ、ラァ……ッ!!」
「っ、貰っちまったか!!」
マリィの宣言と共に現れるゴリランダーの不調。キョダイマックスした頼もしい姿をしているにもかかわらず、その瞼は少し下がっており、動きもどこかふよふよし始めていた。
キョダイスイマ。および、その追加効果、ねむけ。
キョダイオーロンゲがダイアークの代わりに放つことの出来るこのキョダイスイマは、名前の通り相手に猛烈な眠気を与える技だ。さいみんじゅつやうたう、くさぶえのような技で起こるねむり状態とは違い、完全に寝ることはないが、眠気でこちらの行動が中断されてしまう可能性が出て来る状態異常だ。
ここだけ聞けばねむりの下位互換のように聞こえるけど、ねむりと違ってこちらはなかなか解除されない。長くじわじわと、こちらの行動をゆっくり縛っていく。それがこのねむけだ。
この先、オレのゴリランダーはこの眠気にしばらく襲われ続けるだろう。この状態であの強力なオーロンゲと戦わないといけない。
「けど、動けないわけじゃない!!気合を入れろゴリランダー!!」
「グ……ラアアアァァァッ!!」
身体を襲ってくる強烈な眠気に何度も舟をこぎながらも、叫び声をあげて何とか意識を繋ぐゴリランダー。これならまだ何とか戦うことが出来るだろう。けど、睡魔と戦っている間はマリィにとっては絶好の攻撃チャンス。
「頑張って起きなくてもよかとよ?そのままおねんねさせてあげちゃうと!!オーロンゲ!!もう一回『キョダイスイマ』!!」
「ロオオオォォォグッ!!」
マリィの声と共に、全身の髪をまずは両足に集中させ、思いっきり上空に飛び出したオーロンゲ。これだけの巨体がいきなり大ジャンプしたことに、観客たちは全員口を開けて驚いた表情を見せている。
ある程度の高さまで飛んだところで、今度は両足に回していた髪の毛を右足だけに集中。そのまま纏った髪の毛をねじれさせ、巨大なドリルの形に変えて、ゴリランダーへと真っすぐ落ちてきた。まるで小さいときに見た、特撮ヒーロー、イルカマンの必殺キックのようだ。
「ゴリランダー、行けるか?」
「グラ……ッ!!」
迫りくる攻撃に対して、首を振って何とか眠気を飛ばしながら返事をするゴリランダー。
この技を返すには、オレたちも全力の一撃をもって迎撃するしかない。
「よし、行くぞゴリランダー……オレたちの特訓の一番の見せ所だぞ!!」
「グラァッ!!」
オーロンゲに奪われ、彼がジャンプした際に投げ捨てられた3本のバチを木の根を操って回収し、再び6本のバチを構えたゴリランダーは、眠い眼を擦りながらも全力でドラムをたたき始める。
海を越え、聞いたものの気持ちを心から高ぶらせ、湧き上がるリズムによって沢山の人を虜にするその音色は、人ならざるものにも影響を与える。その証拠として、このバトルフィールドの地面から沢山の根っこが生えてきた。
準備は整った。
「ゴリランダー!!『キョダイコランダ』!!」
「グラアアアァァァッ!!」
6つのバチによる乱打によって、ドラムから雄々しく、楽しく、そして力強い音が鳴り響き、その音に呼応するように根っこが荒れ狂う。まるで踊るように暴れる木の根っこは、音が盛り上がるにつれてどんどんと1か所に集まっていき、ねじれるようにくっついて1つの大きなドリル状の山となる。それはまるで、空から落ちて来るオーロンゲの蹴りと対を成しているようにも見える。
「グラアアアァァァッ!!」
「ロオオオォォォグッ!!」
その技が今、オーロンゲの渾身の蹴りとぶつかり合う。
バチバチと音を立てながら空気をびりびりときしませる衝撃は、ダイマックスをしてすぐの時よりも明らかに強くオレとマリィに叩きつけられる。その衝撃に一瞬身体が吹き飛びそうになるものの、ここで吹き飛ばされるわけにはいかないのでぐっと力を入れて踏ん張る。むしろマリィの方が心配になって一瞬視線を向けるけど、あっちもあっちで気合で耐えているようだ。
(なら、なおさらここで倒れるわけにはいかないな!)
風圧に耐えながら、未だにぶつかり合っている飛び蹴りと根っこのぶつかりを見つめるオレとマリィ。
お互いの攻撃力が互角なためか、ぶつかり合った状態から全く動かない2人は、この状況を変えるためにお互いが出来る範囲で行動していく。
オーロンゲは更に体重を右足に乗せ、そのうえで右足の髪の毛の形をより鋭くすることで貫通力を上げて、木の根を貫こうと画策。一方でゴリランダーは、より速く、より力強くドラムをたたくことで木の根を太くさせ、質量を上げていくことで対策とした。
貫通力か。はたまた質量か。
お互いが攻撃の仕方を変えて数十秒。遂にこの均衡が崩れる。
「ロォグッ!?」
崩れたのはオーロンゲの方だった。
ドラムを叩けば叩くほど威力をあげられるゴリランダーに対して、空中から攻撃しているオーロンゲは、初撃は強いが継続力がない。そのため、どんどん力が強くなっていくキョダイコランダに押し負ける形となり始めていく。
「オーロンゲ!!」
「ロ……グッ!!」
それでも決してあきらめないオーロンゲは、気合でこの状況を乗り切ろうと声をあげる。
けど、ここまで来たらこちらのものだ。
「このまま押し切るぞ!!ゴリランダーァッ!!」
「グラアアアァァァッ!!」
さらに声をあげてドラムを乱打するゴリランダー。技を放った時と比べて、およそ2倍以上の根っこが生え始めたこのフィールドにおいて、もうゴリランダーの攻撃を止めるすべはない。
伸びに伸びた木の根っこは、オーロンゲの周りにもその触手を伸ばし始め、攻撃と相打ちになっている物とは別の根が足に絡みつき始める。その結果、オーロンゲの技は止まり、勢いが完全になくなった。
「ログッ!?」
「オーロンゲ!!急いで防御すると!!髪の毛を解いて!!」
キョダイスイマによる飛び蹴りを完全に止められたオーロンゲは、思わず困惑の表情を浮かべるものの、マリィの指示ですぐに正気を取り戻し、右足に集中していた髪の毛を解放。すぐさま全身を覆うように操り、来たるべき衝撃に対する防御姿勢を取った。
「ゴリランダー!!押し込めェ!!」
「グラアアアァァァッ!!」
相手が攻撃をあきらめたのなら、あとは存分に攻撃を叩き込むだけ。オーロンゲの四方より伸びた巨大な根たちが、オーロンゲに卒倒して、その大きな身体を叩きつける。地響きと土煙が巻き上がり、キョダイコランダが直撃したことを確認した。それと同時に、こちらのキョダイマックスが終わりを告げ、大きな音と共に赤い光が霧散し、ゴリランダーが元の姿に戻ってしまう。
「グ……ラァ……」
元に戻ったゴリランダーは、キョダイコランダに使った体力の大きさと、ここまで眠気に無理やり耐えていた反動、そして、1つ目のキョダイスイマで受けたダメージがたたって猛烈な虚脱感に襲われており、身体がふらふらし始める。それでも、自前のドラムに手をつき、決して倒れないのはエースとしての意地だろう。本当に頼れる相棒だ。
一方で、未だ巻き上がっている土煙で姿が確認できないオーロンゲ。バチンウニの電撃を少量と、こちらのキョダイダイマックス技をもろに受けているのならば、戦闘不能になっていてもおかしくはない。むしろ、今のゴリランダーの状況的に倒れていてくれと願うまである。
「ロ……グ……ッ!!」
「オーロンゲ……よく耐えてくれたと!!」
「……へへっ、やっぱり、あまくないぞ」
「グラ……」
しかし、そんなオレの願いをあざ笑うかのように、いつもの姿に戻ったオーロンゲが、ボロボロになった身体を引きずりながらも、こちらをじっと見つめて両足で立っていた。
「まだ……勝負はついてなかと!!」
「ロォォグッ!!」
「『ソウルクラッシュ』!!」
声をあげ、身体に鞭を打ちながらこちらにダッシュしてくるオーロンゲ。右腕に髪の毛と光を携えた状態で、今にも寝てしまいそうなゴリランダーに向かってそれを振り下ろす。
「ゴリランダー!!『10まんばりき』!!」
「グラ……ッ!?」
これに対し、全身を使った攻撃で迎え撃とうとするゴリランダー。しかし、眠気と疲れによって思うように動けなかったゴリランダーは、相手の攻撃を受けきることが出来ずに吹き飛ばされる。
「ゴリランダー!?」
「グ……ラ……ッ!!」
それでも何とか空中で態勢を整えたゴリランダーは、受け身を取ってすぐさまオーロンゲを視界にとらえる。しかし、今の攻撃がクリーンヒットしてしまったゴリランダーは、着地と同時に片膝をついてしまう。
「オーロンゲ!!このまま追撃!!」
「ログ……ッ!?」
「くっ、こっちもダメージが……ッ」
この隙に追撃を仕掛けようとするオーロンゲ。しかしこちらも抱えているダメージは馬鹿にならない。その証拠に、今にも崩れそうなほど膝が笑っており、いつもの力強さはもはや何も感じられなかった。なんなら、オレが押しても倒れそうなほどに、今のオーロンゲは頼りない。
けど、こっちのゴリランダーももう眼が閉じかけている。
(ダメージではこっちが勝っているのに、状態異常が蝕んでくる!!)
もはやいつ眠ってもおかしくないその様子に、見ているこちらがハラハラしてしまう。
方やボロボロの身体で、方や今にも倒れてしまいそうなほど不安定な状態。どちらが有利でどちらが不利かだなんてもう分からない。今この瞬間にも、吹けば飛んでしまいそうな両者は、それでも自身の立場と意地が、ここで倒れることを拒否していく。
(あと一撃……それが限界だ……)
本当なら、ダイマックスが切れたあとも長く戦いたかった。けど、お互いの強すぎるキョダイマックスがそれを許さなかった。ダイマックス中のやり取りだけで、ここまでお互いが消耗するとは思わなかった。
「オーロンゲ!!頑張って!!これが最後と!!『ソウルクラッシュ』!!」
「ロ……オォォォグッ!!」
お互い満身創痍。そんな状況で先に動いたのはオーロンゲ。先程叩き込んだ攻撃をもう一度放つために、また右腕に力を込めて、1歩、また1歩とゴリランダーの方へ進んでいく。
「ゴリランダー!!目を覚ますんだ!!」
「グ……ラァッ!!」
早く反撃しないと、このままでは真書面から技を受けて終わってしまう。必死に呼びかけるオレの声に、ゴリランダーも反応して、最後の力を振り絞って前の敵を見る。
「頼む!!ここが正念場なんだ!!ゴリランダー!!『ドラムアタック』!!」
「グ、ラアアアァァァッ!!」
眠気に抗って最後のドラム演奏を行うゴリランダー。しかし、それでもいつもよりもドラムのビートが遅いため、ドラムアタックによって出てきた根っこに勢いが足りない。
このままでは絶対にソウルクラッシュに勝てない。
「グラァァッ!!」
そう確信したゴリランダーは、根っこを自分の腕に巻き付かせて、まるでオーロンゲの髪の毛のように纏っていく。これを直接ぶつけることによって、最後の攻撃の威力を底上げするつもりらしい。
これなら、威力は申し分ない。オーロンゲともやり合える。
右腕にピンクの光を携えた者と、右腕に根を纏わせた者。両者の距離がゆっくり近づき、そしてある程度詰まったあたりで同時に飛び出した。
その動きはとても俊敏とはいえなかったけど、それでも確かに、今両者が出せる最高速度を持って走り出していた。
「ロオオオォォォグッ!!」
「グラアアアァァァッ!!」
雄叫びを上げ、力を決め、ついに両者が、バトルフィールドの中心で拳をぶつけ合う。
もう何度目か忘れた、攻撃と攻撃のぶつかり合い。
けど、今回は風圧に怯みすらせず、オレもマリィも目を逸らさない。
これがこのバトルの、最後の攻防になるから。
「「いっけえぇぇぇぇぇッ!!」」
「ロオオオォォォグッ!!」
「グラアアアァァァッ!!」
重なる4つの声と2つの攻撃。当たり前だけど、キョダイマックス技同士のぶつかり合いと比べれば威力は低い。けど、感情という一点を見れば、この一撃にかける想いは先ほどのぶつかり合いよりも比にならないくらい大きい。
だって、この勝負が決まる運命の一撃だから。
喉がつぶれるくらいの叫び声をぶつけ合うオレとマリィ。その声に押され、ゴリランダーとオーロンゲも死力を尽くす。
拮抗した2つの技が、びりびりと空気を痺れさせながらぶつかり合うこと数秒。この攻撃のぶつかり合いは、突如として終わりを告げる。
「グラッ!?」
「ログッ!?」
ぶつかり合っていたお互いの右腕が、どちらかの力が少しぶれたせいですれ違う形となり、そのまま両者の顔面に突き刺さる。同時に攻撃を受けた両者は、それぞれの主の下まで吹き飛んだ。
「ゴリランダー!!」
「オーロンゲ!!」
共にあおむけに倒れる両者。だけど、このまま倒れてしまうと戦闘不能になってしまうため、それを拒否するために気力だけで意識をつなぎ止め、ゆっくり、ゆっくりとその身体を起こしていく。
膝は笑い、身体はボロボロになり、もう限界なんてとうに越えている。それでも、ここで倒れるわけにはいかないから。
1分かけてゆっくり起き上がり、地面に両の足をつけて立つ両者は、そのままお互いを見つめ合う。
まだ戦うのか。はたまた立っているだけなのか。
観客も、審判も、この状況をどう判断すればいいのかわからず、ただひたすら固唾を飲むことしかできない。
けど、不思議と、オレとマリィにはこの勝敗がわかっていた。それを理解したオレとマリィは、ゆっくりと目を閉じた。
そんな中、先に動いたのは……
「グ……ラ……ッ」
ゴリランダー。
眠気と傷によって立つことすら難しいゴリランダーは、声を漏らしながら膝をつく。
「ゴリランダー……よくやったぞ……ありがとな……」
ゴリランダーに対し、オレはお礼を述べる。
同時に聞こえる、ドサリという何かが倒れる音。その音を聞いたと同時にオレは走り出し……
「この勝負、オレたちの勝ちだぞ!!」
目を回して倒れたオーロンゲを確認した後、ゴリランダーに飛び付いて、心の底から喜びをあふれ出させた。
1回戦、第3試合の勝者が、オレに決まった瞬間だった。
オーロンゲ
身体に纏う髪の毛によって筋力をサポートするのなら、纏う場所を変えれば強化具合を変えられるのでは?と思い、この形に。一方で、飛び蹴りでガラルの大地に大穴を開けられるというのは公式設定だったりします。こんな技で相手を眠らせるって、むしろ永眠してしまいそうなのですがそれは……
ゴリランダー
遂にお披露目キョダイマックスゴリランダー。ヨロイ島でちゃんと大スープを飲んでましたからね。ホップさんたちからしたら、いつの間にかできるようになっててさぞびっくりしたでしょう。ちなみにマリィさんのオーロンゲも、ヨロイ島でちゃっかりいただいています。
第3試合もこれにて決着。本来ならもう少しダイマックス後のやり取りを書くつもりでしたが、ゴリランダーもオーロンゲも、ダイマックスした瞬間パワフルに動いてくれたのでこの形に。書いててとてもパワフルだなぁとわたし自身思いました。