【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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219話

 

 

「オーロンゲ、戦闘不能!!よってこのバトル、ホップ選手の勝ち!!」

 

 

「よっしゃあああっ!!やったぞゴリランダー!!」

「グラ……!!……グラッ!?」

「っとと、大丈夫かゴリランダー。もう休んで大丈夫だぞ」

 

 審判からの宣言を受け、勝者として次に進めることを心から喜んだオレは、その勢いのままゴリランダーに飛びついた。ゴリランダー自身も勝てたことが嬉しかったみたいで、オレのことを受け止めながら笑顔で返してくれた。しかし、ここまで頑張ってきた反動が来たのか、ゴリランダーがいよいよ自分で立てないくらいぐらついてきたので、慌てて支えて、もう大丈夫だということを伝える。

 

「グラ……」

「おう!!本当によく頑張ってくれたぞ!!お疲れ様だ」

 

 すると、オレの言葉に安心したのか抗うことをやめ、自身に襲いかかっている眠気に素直に従って瞼を閉じていくゴリランダー。リターンレーザーを当てボールに戻る瞬間には、もう規則正しい寝息が聞こえ始めていたので、今頃はボールの中でぐっすり寝ていることだろう。このままゆっくり休んで欲しい。

 

「オーロンゲ。お疲れさま」

 

 ゴリランダーを戻し、周りを見渡してみると、バトルコートの反対側ではマリィがオーロンゲを戻しているところだった。それを確認したオレは、オーロンゲの姿が完全に見えなくなったところで、マリィに駆け寄った。

 

「マリィ!!」

「ホップ?」

 

 オーロンゲのボールを腰のホルダーに収めたところで、オレが近づいてきたことに気づいたマリィも、こちらに向かって歩いてくる。

 

 バトルフィールドの真ん中で足を止めて向かい合うオレたち。

 

 歓声が降り注ぐ中、じっと目線を合わせるオレたちは、何か合図があるけでもなかったのに、ぴったりのタイミングで同時に右手を伸ばす。

 

「楽しかったぞ!マリィ!!」

「あたしも、楽しかった……いや、悔しいからやっぱり楽しくなかったと」

「うぇ!?そ、そういわれてもなぁ……」

「……ふふ、冗談と。ちゃんと楽しかったと」

「全く……冗談きついぞ……なんでバトル終わった後の方がひやひやするんだ?」

 

 握手をしながら交わす言葉は、さっきまでの鬼気迫る空気とはかけ離れた、いつものオレたちの空気に戻っていた。正直、勝者と敗者という明確な差がある以上、ちょっとくらいはぎくしゃくするんじゃないかという懸念がなかったわけじゃないけど、そこはやっぱりここまで一緒に冒険してきた仲。そもそもお互いの実力がほぼ拮抗しているのは知っている以上、どれだけ自信ありと言っても、なんだかんだ負ける可能性は常に頭の片隅にはおいてあった。この勝ちだって、今日たまたまオレが勝っただけで、明日も同じ結果になるかと言われたら絶対にノーだ。少なくとも、もうカビゴンの戦法はもう通用しないだろう。色々含めると、なんだかんだ、負け自体は納得できる。そういう点ではぎくしゃくする理由は案外ないのかもしれない。

 

「にしても、惜しかったなぁ……あとちょっとだったと……」

「オレのゴリランダーも限界だった。本当にどっちが勝ってもおかしくなかったぞ……」

「でも、今回はあたしのまけ。そこはもう決まって変わらないところと。……あたしのガラルリーグは終わりと」

「マリィ……」

 

 目を閉じ、少しうつむきながらそういうマリィに、オレの口が止まってしまう。やっぱり、表面上は平気そうな顔をしていても、心の奥では思うところがあったのだろうか。そんな不安な気持ちを感じながら見ていたけど、オレの不安なんて吹き飛ばすように、次の瞬間にはマリィの表情がいつものそれに戻っていた。

 

「だから、ちゃんとあたしの分までしっかり戦うとよ?明日からのバトル、観客席でしっかり見させてもらうけんね!!」

「……おう!!」

 

 マリィの口から伝えられる、明日以降への激励。こんなことを言われてしまうと、マリィの心配をする方がかえって失礼な気がしてくる。まだオレの次の相手は決まっていないから、どっちが上がって来るかはわからないけど、例えどっちが上がってきても、マリィが安心して見れる試合をしていきたい。

 

「ま、あたしがあんたを応援し続けるかは、知らんけどね?」

「おい!!ちょっと感動したおれの気持ち返せ!!」

 

 ちょっと前言撤回したくなってきた。

 

 とはいえ、次のオレの対戦相手はユウリとサイトウさんのバトルの勝者という、どちらもオレたちの知っている相手だ。というか、そもそもこの大会は全員が知ってる面子。正直なところ、オレがマリィの立場でも、誰を応援するか分からないっていうのが本音ではあったりする。……まぁ、オレの場合はなんだかんだで1番付き合いが長いユウリにはなりそうだけどな。おそらく、さっきのマリィの発言もそんな心境を少し隠しながら、ついでにオレをからかうためにこういう言い回しをしたのだろう。

 

 あとは、『自分のことは気にせず、前だけ見てろ』と言いたかったのか。

 

(……どれもただの妄想だな)

 

 本人を目の前にこんなことに思考を回すなんてらしくないことをして、思わず呆れ笑いが出そうになる。

 

「ったく……」

「どうかしたと?」

「いや、なんでもないぞ」

 

 そんなオレの様子を見て、マリィがキョトンとした顔を浮かべながら聞いてきたので、オレは首を振りながら返し、続きを口にする。

 

「オレの夢はアニキを超えること。ここはその通過点だ」

「……」

 

 オレの独白を黙って聞いてくれるマリィ。その態度に甘え、オレはさらに口を動かす。

 

「だから次のバトルも、その次も……なんならジムリーダーのみんなにも勝ってアニキに挑む!!だからさ……」

 

 話している途中に段々と恥ずかしさが込み上げてきた。だから、それをちょっと隠すように、オレは笑顔を浮かべ、手を頭の後ろで組みながら、オレが結局何を言いたかったのかを伝える。

 

「応援はいいから、最後まで見てってくれよな!!後悔はさせないぞ!!っへへ!!」

「っ!?」

 

 オレの言葉を聞いて目を丸くするマリィは、しかしすぐにその目を少し細め、口元を緩めて軽く笑った。

 

「ふふっ、本気にしすぎと。ちゃんと応援してあげるったい。あたしたちのエール……ちゃんと届けるけん、あっさり負けたら承知せんとよ?仮にもあたしを下した人なんだから、気張りんしゃい」

「おう!!」

 

 喋りたいことを喋り終えたオレたちは、最後にハイタッチをしてバトルフィールドを離れる。その時の威力がなかなか強かったせいか、ハイタッチに使った右手は控え室に戻る間、ずっと痺れていた。

 

(……しっかり、受け取ったぞ)

 

 ただ1回勝てばよかっただけのジム戦とは違い、1戦勝つ毎にオレの背中にのしかかる重さ。自分が倒した人の思いを明確に感じる、この大会特有の空気。けど決して嫌じゃないこの重さと緊張感に、オレの心はまた震える。

 

「頑張るぞ!!」

 

 控え室への暗い道を歩きながら、オレは拳をギュッと握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 誰もいない控え室で、ポツリと息を漏らすあたし。

 

 既に服は着替え終わっており、身にまとっているのは白のユニフォームから、いつものピンクのワンピースと黒のジャケットスタイルに戻っている。

 

「……負けちゃったと」

 

 こうして誰の目もないところに行って、改めて振り返ってみると、心にずっしりと敗北の2文字がのしかかってくる。

 

 ジムチャレンジを突破し、ヨロイ島とカンムリ雪原をめぐり、そこから頑張った特訓期間。

 

 マスタードさんやシロナさん、カトレアさんにコクランさんという凄い人たちに師事してもらって、おそらくあたしの人生で1番本気で取り組んだ、とても濃密な時間。それがこのような結果に終わってしまったことに、少なくない虚しさを感じてしまう。

 

「あたしのリーグ、終わっちゃったと……」

 

 スパイクタウンのアピールのため、そして何より自分の新しく出来た夢のために頑張った結果は、順位だけを見れば初戦敗退というなんとも呆気ないものだった。もちろん、ガラル地方のみんなはあたしとホップの戦いをしっかりと見てくれていたし、そもそもジムチャレンジを抜けること自体がひとつのステータスとなるため、周りからの評価が落ちたり、変なことを言われるなんてことは絶対にない。むしろ、自惚れじゃないけど、あたしの年齢を加味すれば、期待のホープなんて持ち上げられる可能性の方がよっぽど高い。

 

 けど、あたしの目標はちやほやされることじゃない。

 

 もっと強くなって、もっと上に行きたい。

 

 最初はスパイクタウンのためだけだった目標も、フリアやホップ、ユウリに触発されて、いつしかとてつもなく大きなものへと成長していた。

 

 なのに、結果はこの通り。

 

 悔しいし、後悔だって大きい。ifの話は今でも頭をよぎる。

 

 けど同時に、決して目標が遠いけど見えないわけではないこともわかった。

 

 今回負けた一番の原因は、間違いなくカビゴンの対策が甘かったことだ。それも、落ち着いて振り返ることのできる今なら沢山対処法は思いつく。次に戦う時には絶対に勝てる。そんな自信もある。

 

 今日は負けてしまった。けど、チャンスはまだある。

 

 今日は手が届かなかったけど、その背中が見えないわけじゃない。

 

 あたしに足りないものがあったということは、あたしはまだまだ強くなれるという意味でもある。それなら……

 

(こんなところで腐ってるなんて……勿体なかと!!むしろこれをバネにもっと強くなる。それこそ、今日戦ったホップのように……)

 

 ホップに出来たのなら、同期のあたしに出来ない道理は無い。そう考えると、不思議とやる気が溢れてくる。

 

「みんな……もっともっと……頑張ろう!!」

 

 みんなが収まったダークボールを両手に抱え、あたしのこの溢れるやる気を、言葉としてみんなに向ける。そんなあたしのエールが届いたのか、中に入ってるみんなは、バトル終わりで疲れているはずなのに、それでもボールを揺らして答えてくれた。

 

 その事がとても嬉しくて……

 

「次は……絶対勝つけんね!!」

 

 あたしとみんなは、次の目標を定めて、心を燃やす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、すっげぇギリギリのバトルだったな!!第2試合以上にどっちが勝つかわからない試合だったぜ」

「本当にギリギリのところだったわね。こう言ったら失礼かもしれないけど、本当に運の差と言われてもおかしくないくらいの差だったわ……」

 

 シンオウ地方でもたくさんの試合を見てきたけど、ここまで互角だった試合は見たことない。絶対そんなことはないのだろうけど、もし今日と全く同じ展開で2人が闘ったとしても、明日はマリィが勝っている結果に変わっていてもおかしくない。そんなバトルだった。

 

「本当にまったくの互角……でも、流れが常に中間にあったってわけではなかったのよね」

「最初はマリィがゾロアークでひっかきまわしまくって、途中はホップがノリに乗りまくってたからな。正直あのカビゴンで全部持っていくと思ったぜ」

「わたしも、あのカビゴンをひっくり返すなんても無理だと思ったもの。そういう点では、マリィの方が対応はうまかったって言っていいのかもしれないわね」

「だが攻めは間違いなくホップだな。……こうしてみると、2人の戦闘スタイルってまるで真反対なのに、よくこんなに拮抗したよな……」

「普通はどちらかに思いっきり傾くのだけどね」

 

 これはどちらかが弱いというわけではなく、スタイルが真反対同士の人が闘うと、基本的に先に流れを取った方がそのまますべてを持っていくパターンが多いからだ。めぐりあわせやその日の調子次第で、実力が互角の人同時のバトルでも全然4タテ5タテなんてざらにある。それくらい、バトルにおいて流れというものは大きい。そんな流れの取り合いがしっかりあったし、なんなら完全に傾いている時すらあったのに互角になった。

 

 こんな勝負はめったに見られるものじゃない。

 

「本当に、退屈しないなぁ!!」

「本当に、楽しそうにするわねぇ」

「だって楽しいからな!!」

 

 良い笑顔でこちらを見てくるジュンにちょっと溜息をつきながら、ホップとマリィのバトル後のフィールド整備中のバトルコートを眺める。

 

「次がいよいよ今日最後のバトルね」

「ユウリ対サイトウ……だな。どっちが勝つと思う?」

「さぁ?正直、サイトウさんのバトルは、今回の参加者の中だと一番わからないのよね」

 

 フリアと一時期一緒にいたというのは知っているけど、深くかかわってきたわけではない。ユウリの強さはよくわかるけど、相手の力が未知数だ。

 

(かくとうタイプのエキスパートだというのは分かるけど……攻めがとにかく巧いのかしら?)

 

 色々考えてみるけど、やはりどれも憶測の粋を出ない。今までとは別ベクトルで予想が出来ないカードになっていた。

 

「もしガン攻めなら、ユウリがどんな手でいなすのかが楽しみだな!!」

「そういう点では、ユウリのスタイルもちょっとわかりづらくはあるのよね」

 

 対するユウリは、フリアを参考にしている動きはいくつか見受けられはするんだけど、ここ一番ではホップのようなごり押しを見せる時もある。しいて特徴を上げるのなら、その択の通し方が異様にうまく、戦っていくうちにゆっくりと相手の動きを無意識に読んでいっているような……

 

(そう考えると、一番近いのはもしかして……)

 

「キュキュイ!!」

「ってちょっと、ほしぐもちゃん!?」

 

 ユウリについていろいろ考えていると、わたしの懐からいきなりほしぐもちゃんが声をあげながら出て来る。

 

 ユウリが試合をするにあたって、ポケモンが登録されているボールを6つ以上持つことを禁止にされているということもあって、今日はわたしがこのほしぐもちゃんを預かっていたのだけど、どうやら、一番なついているユウリの試合の始まりを本能で感じ取ったみたいで、今までおとなしくボールの中にいたのに、ここにきて我慢できずに飛び出したみたいだ。

 

「ほしぐもちゃん、ポフィンあげるから今は落ち着きましょ?ね?」

 

 観戦すること自体は別に構わない。むしろ、気にならない方がおかしいだろう。けど、現状ほしぐもちゃんはシロナさんですら知らないと言っていた未確認のポケモンの可能性が高いポケモンだ。当然そんなほしぐもちゃんのことを周りの人が知っているわけもなく……

 

『おい、何だあれ……ポケモン?』

『わぁ、かわいい!!』

『ガラルにいたっけか?』

『もしかして新種!?』

 

 

「お、おい、大丈夫か?」

「大丈夫じゃないわよ。ちょっと待って……」

 

 

 わたしたちの周りだけがほんの少しだけ騒がしくなる。

 

 未確認のポケモンということもあるし、何よりもガラルのポケモンではない可能性があるこの子をあまり人眼に見せるわけにはいかない。だから小声でジュンに返し、1度ほしぐもちゃんを布で隠しながらボールに戻す。

 

 ガラル地方では、生息していないポケモンを連れてくるのは禁止にされている。誤魔化すにしても、ポケモンでは無いことを強調しながらしなきゃいけない。軽くジュンと目を合わせながら、言葉を合わせていく。

 

「おいおい、また変な小道具か?昔から人形作るの好きだよな」

「別にいいでしょ。()()()()()()()()()で使う道具でもあるんだから、そこは文句言わせないわよ」

 

 ポケモンコンテストという言葉を少し強調しながら、そしてほしぐもちゃんをボールに入れたことを確認しながら、ほしぐもちゃんを隠していた布をしまう。

 

 ガラル地方にはポケモンコンテストは無いため、もしかしたら話が通じない可能性もあるけど、そこは自分の名前がどれだけ通っているかの勝負だ。

 

『なんだ、コンテスト用の小道具か~』

『コンテストって?』

『知らないの?ホウエン地方とかシンオウ地方で有名なポケモンを魅せるための……』

『え、まって、そういえばあの人見たことあるかも……』

『もしかしてヒカリさん!?』

 

 色々覚悟をしながら耳をすませば、知っている人から話が広がり、わたしの名前が徐々に上がり始める。そうすれば、もうほしぐもちゃんについて話している人は誰もいなくなった。

 

 どうやら賭けには勝ったみたいだ。

 

 その分、プチ騒ぎになるかもしれないけど、そこは代償ということで大人しく受けるとしよう。サインくらいなら全然答えられる。

 

「ふぅ……一段落ね」

「良かったのか?」

「仕方ないでしょ?」

 

 ジュンの言葉に言葉を返しながら、あたしはほしぐもちゃんの入ったボールを口元に寄せる。

 

 

「ごめんなさいね、ほしぐもちゃん。本当なら外に出してあげたいのだけど……ほしぐもちゃんはちょっと目立ちやすいから……」

 

 

 わたしの声に対して、小さく揺れることで反応を返してくる。その反応からは、少し残念そうな感情を受け取った。ほしぐもちゃん側から見たら当然の反応だろう。

 

「その代わり、ちゃんと見えるようなところに置いてあげるから……それで我慢してちょうだい」

 

 その反応を見たわたしは、ほしぐもちゃんがボールの中にいても試合が見えるように、膝元に置いて真正面を向ける。すると、それが嬉しかったのか、今度はさっきよりも少し大きくボールが揺れた。

 

「はは、ほしぐもちゃんも楽しみにしてるんだな」

「いよいよユウリのバトルだもの。それは……ね?」

「だな!!」

 

 ひとまず、ほしぐもちゃんのことが落ち着いたので視線をバトルコートに戻す。すると、ちょうど整備が終わり、次のバトルの準備が出来たところだった。

 

 今日最後のバトルまで、あと僅かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 騒がしかった控室から、とうとう人の声が消えて数十分。その間、ただひたすらに目を閉じ、意識を集中させ、ただただ戦う準備を進めていたわたしは、ふと感じ取った空気から、そろそろ自分の出番が来るということを悟る。

 

 この控室は防音性能が高いため、観客の声やバトルルによる音は聞こえてこない。ダイマックスなどによる地響きに関しても、それを想定して頑丈に作られているスタジアムは建物にまで影響はない。あったらむしろ困ってしまう。

 

 だから本来なら、この場所から外の様子を知る方法はないのだけど……普段から修業を行い、場の空気を感じ取ることの出来るわたしは、何となく雰囲気で前試合の終わりと、整備の完了を感じた。

 

「……」

『サイトウ選手。次の試合の準備が整いました。準備の方をお願いします』

 

 目を開くと同時に呼びかかるリーグスタッフの人の声。

 

「……行きましょうか」

 

 深呼吸を一つ落とし、気合を入れ、しかし心は落ち着け……わたしはゆっくりとバトルコートへ足を進める。

 

 相手はユウリさん。去年ダンデさんの下へたどり着いた、あのマサル選手の妹。

 

 一緒に旅をしたこともあるし実力も知っている。その時点でも強かったのに、そこからさらに成長しているのだとしたら、間違いなく強敵となっているだろう。けど、絶対に負けない。

 

「あの子の隣に立つために……わたしもここで止まるわけにはいかないですから……!」

 

 思い浮かぶのはラテラルタウンでジムリーダーを務めるいとこの存在。

 

 一度生死をさまようことで手に入れてしまった不思議な力。

 

 結果としては彼の味方となっているけど、当時のわたしは酷く取り乱してしまった。

 

(もう、あんな思いをしたくない)

 

 だからこそ、わたしは強くなりたい。彼を守れるくらいに。そのためには、まずは彼の横に立たなければならない。そのためにも……

 

「勝たせてもらいますよ……ユウリさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユウリ選手。次の試合の準備が整いました。準備の方をお願いします』

「はい!!」

 

 いよいよ来た。

 

 最初は4人いた部屋から人の声がなくなって、少し寂しい気持ちを感じながらも待ち続けて、ようやく呼ばれた私の名前。

 

 ドキドキと高鳴る心臓はさらに速くなり、私の体温をあげていく。

 

 みんなはどうなったんだろうか。誰が勝って、誰が負けてしまったんだろうか。もし、このバトルに勝った時、私は誰と戦うことになるのだろうか。

 

 なにより、フリアは……勝ったのだろうか。

 

 沢山気になることが浮かんでは消え、私の頭の中をたくさん埋め尽くしていく。

 

 けど、今はもっと大事なことがある。

 

「まずは目の前……サイトウさんに勝たなくちゃ……!!」

 

 自分からフリアに向かってあんなことを言っておいて、私がここで負けてしまったら格好がつかなさすぎる。それだけは絶対に嫌だ。

 

(それに、少なくともウルガモスと戦った時は、私はサイトウさんのかなり後ろにいたんだ。当り前だけど、油断なんてできない)

 

 あの時、私とセイボリーさんは途中で怯えて動けなくなってしまった。けど、フリアとサイトウさんだけは前に立ってた戦っていた。

 

 あの時の差を、どれだけ埋められているのだろうか。

 

「……行こう!!」

 

 その差を確かめるために、私は足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホップ

夢に向かって一歩前進。それはそれとして人の良さが少し出ています。

マリィ

マリィさんは落ち込むというよりも、そこからばねにして伸びそうなイメージですね。

ヒカリ

色々セーフ。機転が利きますね。

ジュン

観戦楽しい。

サイトウ

目標はオニオンさんを守るため。久々登場ですので、改めて。

ユウリ

いよいよ満を持して登場。約束のため動き出します。




次回投稿日はいよいよ碧の仮面配信日ですね。作者は早くチャデスと会いたくて会いたくてたまりません。



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