220話
暗い道を1歩ずつゆっくりと進んでいくと、私の鼓膜を叩く音がどんどんと大きくなっていく。暗い道を進めば進むほど強くなるそれは、暗い道の出口にたどり着く頃には、目に入る光と一緒に最高潮に到達する。
(これでこの体験も8回目……でも、全然なれない……ううん。むしろ今日は、いつもよりもすご凄く緊張している……)
降り注ぐ大歓声の中胸に手を当ててみれば、初めてこの道を通った時よりもさらに鼓動が激しく動いていた。けど、緊張で身体が動かなかったり、胸が痛くてしんどいという気持ちは全然起きてこない。
むしろ、この状況を楽しんでいる節がある気がしてくる。
(不思議な感覚……)
暗い道を抜け、バトルフィールドに足を踏み込めば、私の鼓膜への声はさらに大きくなり、思わず声の壁に押されるのではないかと錯覚してしまうほど、前から圧力が飛んでくるのを感じた。やはりトリということで、みんなの気持ちも盛り上がっているということなのだろう。勿論、前3つの試合が凄かったということも影響していそうだ。
(これはあとでアーカイブを見ないとね)
緊張をしている割には、こうやってバトル後に楽しみを作り出せるあたり、やっぱり私の精神状態は予想以上に落ち着けてはいるらしい。これならバトルでもちゃんと頭は動いてくれそうだ。
「あ、サイトウさん……」
こうやって色々なことから今の自分の調子を確かめていると、既にバトルフィールドの真ん中に立って、目を閉じて集中しているサイトウさんの姿があった。その姿は、見ているだけですごく集中しているのがよく分かり、何もしていないはずなのに、周りから聞こえてくるたくさんの声を全部合わせても、彼女から発せられる空気の方が明らかに重かった。
嵐の前の静けさ。この言葉がこれほどぴったりなのもそうそうないだろう
その迫力を肌で感じた私は、けど、それに押されることなく1歩ずつ、暗い道を歩いていた時と同じように歩き出す。
(きっと、昔の私だとここで怯えていたんだろうなぁ)
昔の自分との相違点に少しだけ笑がこぼれそうになる。過去の私が、今の私を見るとさぞ驚くことだろう。過去の自分の反応を予想するという、ちょっと変なことをしながらも、私の足は止まらず、程なくしてサイトウさんの目の前まで移動した。
「……お待たせしました。サイトウさん」
「いえ、わたしも今来たところです。そんなに待っていませんよ」
私が声をかけると、瞑想をやめ、ゆっくりと瞼を開きながら、なんでもないように言葉を返してくるサイトウさん。それはさっきまで発していたプレッシャーの重さとは全然違い、まるで友達との待ち合わせをしていたかのような軽い言葉で返された。開かれた瞳もとても優しく、こちらを気遣うような温かさを感じさせてくれた。
とてもじゃないけど、これからバトルをする相手とのやり取りには全然見えない。
私たちが向かい合ったと同時に実況の人と解説の人が話を始める。それはつまり、私たちのバトルまであと少しだけ時間があることを表している。なので、その時間を潰す意味でも、私はサイトウさんと言葉を交わしていく。
「会場、すごい盛り上がりだね」
「ええ。きっとみなさん全員が本気で挑み、作りあげた空気なのでしょう。ここでこうして目を閉じると、彼らの意志をまだ感じられるような、そんな錯覚をしてしまいそうです」
「ですね……」
サイトウさんの言葉につられて一緒に目を閉じれば、確かにさっきまでここで闘っていたフリアたちの想いを感じるような気がする。
フリアたちが闘い、周りの観客が乗り、このバトルコート全体が盛り上がっていく。その瞬間を追体験するかのように、私の身体の中を、熱い何かが駆け巡っていく。
「私も……そんなバトルをしたい……!!」
「ええ……!!」
私とサイトウさん。2人でこれから起きるバトルへの意気込みを口にしながらゆっくりと目を開く。
その頃にはもう実況と解説の人の説明も終わったみたいで、私たちの首元につけられているマイクのスイッチが入った気配も感じた。けど、そんなことなんて気にせず、私たちは会話を続けていく。
「そう言えば、そこそこの期間一緒に過ごしましたが、こうやって直接戦ったことは、ついぞありませんでしたね」
「うん。どっちかというと、一緒に困難を乗り越えて戦う事の方が多かったもんね」
「ええ。ですから今日、こうやってあなたと戦えるのがとても嬉しく、そして楽しみです」
「私も、テレビで見て想像するしかなかった対決が出来て、嬉しい!」
準備は整った。
私もサイトウさんも、懐から1つのボールを取り出して見つめ合う。
「不思議ですね……心が騒がしくて、ただただ待ち遠しいです。もうまもなく始まるのに、この時間さえ惜しい……」
「……」
あとは審判の人の合図を待つだけ。だけどその時間さえも、サイトウさんの言う通り物凄く待ち遠しい。
右手に持った私の先鋒が震える。
「行きましょう。今こそ、あなたたちの心を騒がせるような攻撃を見せる時!!」
サイトウさんが言葉を紡ぎながら目を閉じ、そして直ぐに開かれる。そうして私の視界に入るようになったサイトウさんの瞳からはハイライトが消えていた。それと同時に一気に膨れ上がるプレッシャーに、しかし私も押されないように気合を入れ、少し笑いながら言葉を返す。
「あの時の、背中に守っていただけじゃない!!成長した姿を今ここで見せる!!」
言葉と同時に2人揃って背を向け歩き出し、定位置へ。そこから改めて向かい合うと同時に、大きな声が会場に響く。
『では両者!!準備をお願いします!!』
「いざ参りましょう!!ユウリさん、お手合わせ、お願いします!!」
「こちらこそ!!ここまでの特訓の全てをぶつけるから、覚悟してね!!」
ポケモントレーナーの サイトウが
勝負を しかけてきた!
「お願いします、ルチャブル!!」
「お願い、アブリボン!!」
「チャボ!!」
「リリィ!!」
ついに告げられた開戦宣言と共に、私とサイトウさんから同時にボールが投げられる。現れたのはルチャブルとアブリボン。どちらも素早さが高く、且つ複合タイプの片方が相手にばつぐんを取ることの出来る組み合わせだ。また、どちらも素早さに重きを置いているポケモンであるため耐久力があまりないため、先も述べたタイプ相性も加味すると、決着はすぐに着く可能性が高い。
(速いポケモンで最初の流れを取る……考えることは同じだね)
サイトウさんとの意識疎通が図らずとも取れたのを確認した私は、早速行動に移っていく。
「アブリボン!!『マジカルシャイン』!!」
「ルチャブル、『つばめがえし』!!」
両者共に相手にばつぐんを取れる技選択。アブリボンを中心に広がる光を、右の翼を光らせたルチャブルが上から振り下ろすことで勢いを1度止めて、そこから右足のサマーソルトを放つことで完全に相殺しながら、ルチャブルは空に旅立つ。
「『かふんだんご』!!」
そんなルチャブルに対して、緑色に光る3つの球を投擲。空を華麗にまうルチャブルの動きを読むように放っていく。
「『みきり』!!」
「チャブ……」
対するルチャブルは、集中してこの攻撃を見つめ、順番に避けていく。1つ目は羽ばたいて自身の位置を少し高くして上を通り、そこから翼を畳んで急降下して、右と左にあった2つ目と3つ目の間をすり抜けていく。
「『フライングプレス』!!」
「『マジカルシャイン』を小さく!!」
攻撃を避けた時にした急降下の勢いをそのまま利用し、アブリボンに向かって突撃をするルチャブル。これに対して私がとった対処は、アブリボンに小さなマジカルシャインを纏わせること。自身を中心に小さな虹の球体となったアブリボンは、そのままルチャブルのフライングプレスを受け止め、球体の表面を利用してルチャブルの突撃を受け流す。
「リィ!!」
「チャボ!?」
インパクト同時に少し右にずれることによって、マジカルシャインの表面を滑ったルチャブルは、アブリボンの左側をすれ違うように通り抜けて、そのまま地面へと着地する。
「解き放って!!」
「リィ!!」
勢いよく着地したことによって、ルチャブルの方には明確な隙が生まれる。ここを狙ってアブリボンは、纏っているマジカルシャインの範囲を一気に広げ、光の波にルチャブルを巻き込むように攻撃する。
「『どくづき』!!」
「チャ……ボ!!」
これに対し、避けることが不可能と悟ったサイトウさんは、ルチャブルにどくづきを指示。これを受けて両手に紫の波動を纏ったルチャブルは、両手をくっつけて前に突き出し、簡易的な槍のような形を作って技を貫く。
範囲攻撃という、マジカルシャインの明確な弱い所をちゃんとついてきた防御方法だ。
「アブリボン!!そのまま『マジカルシャイン』を纏って突撃!!」
しかし、足を止めて技を構えている以上、遠距離攻撃をしているこちら側に行動の自由がある。
範囲攻撃故の一点に対する火力の低さは、相手との距離で補う。
「なら、正々堂々真正面から打ち抜きましょう!!ルチャブル、こちらも前進!!」
「チャボ!!」
しかし、アブリボンが近づいて威力が上がっているはずのマジカルシャインに対して、ルチャブルは逆にさらなる前進を見せて来る。
タイプが一致しており、且つ弱点をつけるこちらのフェアリータイプの技に対し、弱点はつけるものの、自身とタイプが違うせいで少しだけ威力が低いはずのルチャブルだけど、それでも声をあげ、気合を入れて真っすぐ突き進む。
(かくとうタイプ使いだから何となくわかっていたけど、やっぱりホップやジュンみたいな力押し系の動きだ……!!)
マジカルシャインを大きくしたため、さっきみたいな受け流しはもうできない。だからこのルチャブルを止めるためには、こっちも力押し勝負を仕掛けないといけない状況になってしまっている。……けど。
「やりようはまだあるよね……アブリボン!!
「リィ!」
「チャボ!?」
その状況でアブリボンはあえてマジカルシャインをやめる。すると、前に進もうと力んでいたルチャブルの推進力がから回って、つんのめった状態でアブリボンの方に飛んでいく。予期せぬ挙動のため、その動きは遅く、アブリボンの動きが速いこともあって、このどくづきを少し右に動くだけで簡単に避ける。
「『マジカルシャイン』を再発射!!」
「リリィ!!」
「チャブ!?」
攻撃を避け、ルチャブルがちょうど真横に来たところで再びマジカルシャイン。妖精の力を宿した虹の光は、至近距離で大きく爆ぜ、空中で無防備な隙をさらしていたルチャブルに直撃。彼を大きく外に吹き飛ばす。
「ルチャブル!!壁を使って跳ねてください!!」
「チャボ!!」
しかし、サイトウさんもただではやられない。
攻撃を避けられないと悟ったサイトウさんは、ルチャブルに攻撃を受ける覚悟をさせ、そのあとのことを考えて行動していた。
身体を丸めて攻撃を受けえる態勢を取っていたルチャブルは、被害を最小限に抑えながら壁に足をつけて着地し、そこからばねが跳ね戻るようにこちらに勢いをつけて飛んでくる。
「『どくづき』!!」
「チャボ!!」
「避けて!!」
「リィ!」
反動を利用したこの攻撃は、私が思っているよりもスピードが速く、攻撃を避けようと直ぐに動いたアブリボンでも素早さが足りずに攻撃が少し掠る。しかもその部分が翅部分という自身の機動力の根幹を担うところだったため、ダメージはあまり入っていないものの、アブリボンが姿勢を崩して地面に足をつけてしまう。
「ルチャブル!!」
「チャボ!!」
その隙を見逃さないサイトウさんは、攻撃を終えて反対側の壁に辿り着いたルチャブルに再度突撃を指示。もう一度壁を使って跳ねたルチャブルが、右腕に紫色の波動を纏って飛んでくる。
この攻撃は避けられないし、ここまで勢いがついていたらマジカルシャインでも勢いに負けて突破されるだろう。だから、ここで大事なのは避けることではなく、攻撃を
「アブリボン!!身体に『かふんだんご』!!」
「リィ!」
それを理解したアブリボンは、身体の周りに緑色の綿を集めていき、自分の身体を隠す準備を整える。
アブリボンを中心に、徐々にその体積を増やしていく緑色の花粉は、身体が小さいこともあって、アブリボンの身体を完全に隠しきる。
「読めてますよ!!『つばめがえし』!!」
この防御態勢にサイトウさんがとった行動は、何もしていない左腕によるつばめがえし。むしタイプの攻撃を纏っているアブリボンにとっては天敵となる攻撃。実際に、到達と同時に左腕を振り下ろしたこの攻撃によって、防御用に固めていたかふんだんごは簡単に飛び散り、中身が少し見えるようになる。
「『どくつき』です!!」
「チャボ!!」
アブリボンを守る鎧が剥がれた。そこを突く本命の攻撃をルチャブルは全力で放ち、辺りに技が直撃した音が響き渡る。
こうかはばつぐん。
ルチャブルの渾身の一撃は、受けたものを吹き飛ばし、地面を転がった。
もっとも、転がったのは
「チャボッ!?」
「なっ、『みがわり』!?」
「今!!『マジカルシャイン』で突っ込んで!!」
「リリィ!!」
ルチャブルが渾身の力を込めてはなった一撃は、アブリボンがかふんだんごの中に隠れている時に作り上げたみがわり人形に当たっており、本体であるアブリボンには、身代わりを作る際に消費するダメージはあれど、どくづきによるダメージは1つも入っていない。
右腕を振り終えたルチャブルは、攻撃の後隙と目の前に突然現れたみがわり人形に驚きすぎて、すぐに動ける状態ではない。
そんなルチャブルの真上から差し込む1つの影。
今のやり取りの間に上に飛んだアブリボンが、マジカルシャインを携えた状態でルチャブルに突っ込む。
「チャブッ!?」
「ルチャブル!!」
こうかばつぐんの技を当てられたと思ったら逆に当てられていた。そのことに少なくないショックを受けたサイトウさんが思わず声をあげる。
「このまま追撃行くよ!!『かふんだんご』からの『マジカルシャイン』!!」
「リリィ!!」
「耐えてください!!『つばめがえし』です!!」
こうかばつぐんの技を不意を打たれる形で受けてしまったせいで大ダメージを刻まれたルチャブルは、地面を転がりながらアブリボンから距離を取る。そんなルチャブルを逃がさないように、アブリボンが追撃のかふんだんごをばらまいて行く。
これに対してルチャブルは両手両足に白い光を纏い、つばめがえしのかまえ。1つ目の球を右手を振り下ろして裂き、2つ目を左手を右から左に薙いで消す。続く3つ目と4つ目を、サマーソルトをしながら両足で消し、最後のひとつを今度は前へ縦回転してかかと落としで消していくという、華麗な5連撃でいなしていく。
一瞬見とれそうになるつばめがえし捌きだけどぐっと堪え、この一連の動きをしている間に、アブリボンに指示を出して再びマジカルシャインを纏った状態で突撃。この突撃に対してどくづきを構えるのは間に合わないので、両腕のつばめがえしをクロスに構えることでルチャブルは受け止めた。しかし先のやり取りで浮いてしまっているため、空中で攻撃を受けている故に衝撃を吸収しきれないルチャブルは、そのままアブリボンに押されるように下がっていく。けど、そんな中でも膝をしっかりと畳んでいるルチャブルは、この状態が続くようならアブリボンを蹴飛ばして、その勢いでまた壁まで飛んで、そこから跳ね戻って攻撃を返してくる準備をしているように見える。
「もうそれはさせない……アブリボン!!上!!」
「っ、そう簡単にはさせてくれませんか……」
今ルチャブルがアブリボンに押されているのは、空中で踏ん張りが効かない状態だからだ。ここからまた1度でも足をつけられたら、この有利展開が返される。それをさせない為にも、突撃の方向を上に向けることで、今押しているルチャブルごと上空に連れ去ってしまおうという考えだ。
ルチャブルの反撃を的確に呼んで行われたこの行動に、少しだけ表情が崩れるサイトウさん。
「ですが、別に構いません!!ルチャブル、構えをといてください!!」
「え?」
「チャボ!!……ッ!?」
しかし、すぐに表情を引き締めたサイトウさんは、ルチャブルに抵抗を辞める指示を出す。その意味がわからなかった私は、つい声を漏らして思考を止めてしまう。その間にも戦況は進み、つばめがえしを止めたルチャブルは、顔面にアブリボンの突撃を受け、身体を大きく仰け反らせる。
「まさか……アブリボン!!『マジカルシャイ』を今すぐ強く放って!!」
「遅いです!!『つばめがえし』!!」
「チャボッ!!」
と同時に、ようやくサイトウさんの狙いに気づいた私は、慌てて技を指示する。しかしルチャブルの方がひと足行動が速く、指示を受けてすぐに準備に取り掛かる。
攻撃を受けて仰け反った勢いを利用してそのままバク宙をするルチャブルは、またサマーソルトを行い、右足でアブリボンを掬いあげるように攻撃。これをもろに貰ってしまったアブリボンは動きを止めてしまい、その隙にアブリボンの真上を取ったルチャブルは、その場から両腕をクロスさせ、クロスチョップのような軌道で両腕のつばめがえしを叩きつけられる。
「リィッ!?」
「アブリボン!!」
まさかの反撃と、地面にたたきつけられたことによって動きが鈍るアブリボン。そんなアブリボンに向けて、ルチャブルは翼をたたみ、空中から一気に急降下。
「ルチャブル、『どくづき』!!」
「チャ〜……ボッ!!」
その状態で右腕に紫のオーラを纏いながら突き出し、まるで流れ星のような速度で落ちてくる。
(速い!?)
この速度だとみがわりによる回避も間に合わない。スピードが乗っている分強力なこの攻撃を耐える手段もアブリボンには無い。
けど、まだ手はある。
「アブリボン!!『ねばねばネット』!!」
「リリィ!!」
「なっ!?」
地面に落ちた状態で、空にいるルチャブルに対して粘着性の強いネットを発射する。
「チャ!?」
目の前にいきなり展開された糸の壁にルチャブルは当然回避できない。まるでルチャブルの身体を包み込むかのように覆っていくねばねばネットは、ルチャブルを核とした繭を作り上げていこうとする。
「よし、捕まえた!!」
「このタイミングで『ねばねばネット』……本当に上手いですね……ですが!!ルチャブル!!腕を前に!!」
「ッ!!」
繭で包まれて上手く声を出せないながらも、サイトウさんの声を聞いたルチャブルは、紫のオーラを纏っている右腕だけを前に突き出し、繭の中からどくづきだけを飛び出させた状態になる。
ただ繭の中から腕を出すだけなら大して問題では無い。一番の問題は、ねばねばネットの繭に包まれながらも、ねばねばネットにルチャブルが抵抗しなかったせいで、
「っ!?アブリボン!!避けて!!」
「リリッ!?」
本来は繭で包んでルチャブルを動けなくしたところで、トドメのマジカルシャインをぶつけるはずだったのに、肝心のルチャブルの落下速度を止めることが出来ていないせいで根本的な解決が出来ていない。故に、ルチャブルの攻撃はネットで包む前の勢いと変わらずアブリボンに向かって突き進む。
そう、地面に落ちて、現状上手く動くことが出来ない彼女に向かって。
「リッ!?」
「アブリボン!!」
避けようと必死に身体を動かすも、ルチャブルの速度に追いつけなかったアブリボンはそのまま被弾。こうかばつぐんの大ダメージを受けた彼女は、そのまま私の足元まで飛ばされ、目を回して倒れた。
『アブリボン、戦闘不能!!』
「ルチャブル、『つばめがえし』」
「チャ……ボッ!!」
アブリボンの敗北宣言と同時に、つばめがえしで繭を壊して自由の身になるルチャブル。ネットの粘着によってかなり素早さを落とされているようには見えるけど、体力はまだ残っているように感じた。
「ありがとう。アブリボン……ごめんね」
アブリボンをボールに戻しながら、私は少し辛そうな顔を浮かべながらも、こちらを見てくるルチャブルと視線を合わせる。
(……強い)
わりと渾身の策だったのに、その上をいかれてあっさりとアブリボンを倒された私は、冷や汗を少し流しながら次のボールを構える。
開幕の流れの奪い合いは私の完敗。間違いなく不利状況からのスタート。
けど、何故か私の心の中は、ワクワクで埋めつくされていた。
サイトウ
バトルにはいる時に、目のハイライトが消えるあの瞬間が最高に大好きです。
ルチャブル
先発彼なのは、どことなくXY&Zを思い出しますね。
ついに今日配信。この作品が出ている頃には、私も旅立っているでしょう。新しい場所の冒険、楽しみましょう。