【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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225話

「ミロカロス!!『ねっとう』!!」

「ミロッ!!」

 

 サイトウさんの最後の壁であるカイリキー。とても強力で、間違いなくサイトウさんの手持ちの中でいちばん強い彼相手に、私は時間稼ぎをしなくてはいけない。しかし、だからといって逃げ腰で勝てるような相手じゃない。だからこそ、ここは先手必勝。ミロカロスより打ち出されるのは彼女が1番得意としているねっとう。相手にみずタイプのダメージを与えながら、確率でやけども与える強力な技は、大きく湯気をたち登らせながら真っ直ぐ飛んでいく。

 

(これでちょっとでもひるんでくれれば御の字だけど……ただ『やけど』が嬉しいかと言われると……苦しいなぁ……)

 

 とても頼もしい仲間が放つ強力な技だけど、私の心は全然休まらない。なぜなら、本来ならカイリキーのような物理アタッカーに対して、とても優位に働く技であるはずのこのねっとうが、もしかしたらこちらに牙を剥く可能性がある。

 

(特性『こんじょう』……状態異常になったらむしろ強くなる、逆境を真正面から力でねじ伏せるサイトウさんとカイリキーらしい特性……でも、かといって『ねっとう』をやめるわけにもいかないのが何とも……)

 

 カイリキーほど力の強いポケモンが相手なら、こちらも相応の火力が必要になる。それに対し、れいとうビームだとみずタイプであるミロカロスでは火力が少し足りないし、アクアテールだとタイプは一致しているけど、近接戦が得意なカイリキーに対しては、物理が得意ではないミロカロスではどうしても頼りないと言わざるを得ない。

 

 時間稼ぎはこっちに分があるけど、時間稼ぎするだけの火力を持つには、やはりねっとうしかない。

 

(『やけど』になったらその時に考えよう。どっちにしろサイトウさんのカイリキーにはあの技があるから、攻め手を止めるわけにはいかない!!)

 

 真っすぐ飛んでいく高温の水は、寸分たがわずカイリキーのど真ん中に直撃する。

 

「リキッ!?」

 

 湯気と飛沫を両方まき散らし、苦悶の声をあげながら、しかしそれでも堂々と受けきるカイリキーは、一切ひるむことなく胸を張る。

 

「カイリキー!!『ビルドアップ』!!」

「リッキッ!!」

 

 ねっとうを受けながら全身に力を込めたカイリキーは、かけ声と共に、自身の身体を一回り大きくする。

 

 全身の筋肉は激しく鼓動を打ちながら隆起し、更に、灰色混じりの青色をしたカイリキーの身体が赤く変色。ねっとうで上がった湯気なんかよりもさらに強い蒸気を立ち昇らせるその筋肉からは、見るだけでこちらを戦慄させてくるような圧力と熱気があった。

 

(これ……『やけど』で『こんじょう』を発動させるかどうか以前の問題なんじゃ……)

 

「カイリキー。『インファイト』」

「っ!?ミロカロス!!全力で避けて!!」

「ミロッ!?」

 

 そんな見るからに危険な力が込められた筋肉を携えながら、4つの腕を構えるカイリキー。同時に私の頭をよぎるのは、『2秒間に1000発ものパンチを放てる』というポケモン図鑑の説明文。

 

(あんな筋肉でそんなに殴られたら絶対にやばい!!)

 

 脳内に響き渡る警鐘に本能のまま従い、ほぼ反射的に口から出た指示にミロカロスもすぐに従う。ネギガナイト戦で見せたれいとうビームによるラインをカイリキーから逃げるように引いたミロカロスはすぐさまその上を滑って退避を開始し、カイリキーから思いっきり距離を取る。その際にカイリキーの方は絶対に見ない。なぜなら、少し大げさかもしれないけど、ここまで離れても脳内の警鐘が治まらないのだからしょうがない。

 

 一方でひたすら逃げるこちらの事なんてお構いなしに拳を構えたカイリキーは、そのまま拳を連続して地面にたたきつける。

 

「っ!?」

「ミロッ!?」

 

 秒間500発の速度で叩きこまれる鉄拳は、地面に突き刺さると同時に地震を発生させる。その揺れはとてつもなく、技でもないのに、距離をうんと取ったミロカロスの足を地震で簡単に取ってしまう程。しかも驚くべきことに、地面を殴った時の衝撃で地面がめくり上がり、めくられたことによって地面から隆起した岩の塊がこちらに向かって飛んできた。

 

(さっきの揺れと言い、この岩の礫と言い、なんで普通に『じしん』や『ストーンエッジ』をするよりも規模が大きいの!?)

 

「ミロカロス!!『アクアテール』!!」

 

 相手の攻撃の規模の大きさにひっくり返りそうになるけど、とにかく今は守るしかない。飛んでくる岩の槍に対して水の鞭で立ち向かったミロカロスは、何とかこれらを叩き落とすことに成功する。アクアリングの小さな回復のおかげで、何とか迎撃するだけの体力は戻ったらしい。

 

「カイリキー!!投擲!!」

「リキッ!!」

 

 しかし、カイリキーの攻め手は休まらない。

 

 地面へのインファイトによって隆起した岩を4つ、それぞれの腕に抱えたカイリキーは、タイミングを少しだけずらして、ミロカロスに向かってやり投げの要領で投げてくる。

 

「はやっ!?」

 

 風きり音を奏でながら飛んでくる凶器は、速すぎて感想を言うだけでミロカロスとの距離を0にしてしまうほど。指示が出せなかったことに気付き、後悔しそうになってしまうけど、ここはミロカロスが反射的に反応し最初2つを身体をくねらせて避け、あとの2つをアクアテールで弾くことで何とか回避。指示を待たずに動いてくれたことに、感謝と謝罪の気持ちを心の中で思う。

 

 けど、まだ安心できない。

 

「構え!!」

「リキッ!!」

 

 今の1連の行動をしている間に、開けていた距離を一気に詰めていたカイリキーは、身体の色こそ赤色から青灰色に戻ってはいるものの、思いっきり力んで筋肉を隆起させ、構えを取ってミロカロスに攻撃する準備を整えていた。

 

(回避は無理!!迎撃しかない!!)

 

「『ねっとう』!!」

「ミロッ!!」

 

 身長の高いミロカロスが、至近距離まで来たカイリキーの上から潰すようにねっとうを叩きつける。距離が近い分、威力も温度も高くなっている全力の攻撃でカイリキーを押し流す作戦だ。距離がここまで近ければカイリキーも簡単に回避することはできないみたいで、この攻撃はしっかりとカイリキーに直撃する。ミロカロスに近づくまでの間に岩を拾っている姿も見かけていないので、岩による盾も無いはずだ。

 

「カイリキー。平気ですね?」

「リ……キッ!!」

 

 しかしカイリキーはこのねっとうに対して、そもそも盾なんていらないとばかりに、上側に生えている2本の腕でクロスチョップを打つような構えで受け止めていた。勿論、生身の身体で受けているからダメージは入っている。ねっとうを至近距離で浴びているから、きっとあの腕はやけどを負ってしまうだろう。けど忘れては行けない。このカイリキーは、こういった状態異常に強いということを。

 

「弾け!!」

「リキッ!!」

 

 サイトウさんの言葉と共に力を入れたカイリキーは、腕2本でねっとうを弾き飛ばす。腕にはやけどの痕が見えたけど、逆にこれがこんじょうを発動させてしまい、カイリキーの火力アップに一役買ってしまっている。

 

「ッ!!ミロカロス!!『アクアテール』!!」

 

 けどここに思考を向ける暇は無い。ねっとうを弾かれたということはすぐにでも攻撃が飛んでくる可能性があるということ。その攻撃を事前に防ぐため、頼りないけどすぐに打てる近接拒否のアクアテールを放つ。鞭のようにしなるミロカロスの尻尾の先端は、鞭の原理に則って音速に近い速度で振るわれた。

 

「掴んでください」

「なっ!?」

 

 目の前に振られる高速の攻撃。けど、この攻撃を完璧に見切ったカイリキーは、残っている下側の腕2本で完璧に受け止め、ミロカロスの尻尾をホールドする。

 

「ミロカロス!!『ねっと━━』」

「カイリキー、『ビルドアップ』からの『じごくぐるま』!!」

 

 ホールドしてきたカイリキーを引き剥がすために今度はねっとうを当てようとするミロカロスだけど、そのミロカロスがねっとうを吐き出す前に、全身に力を入れて再び身体を赤色に変え、腕の筋肉を隆起させたカイリキーが、ジャイアントスイングするかのようにミロカロスを振り回す。その際に込められた力が強すぎて、振り回される側のミロカロスはそこに遠心力も載せられて身体が伸びきってしまい、とてもじゃないけど攻撃をできる状態ではない。

 

「ミ……ロ……ッ」

「リキッ!!」

 

 それでも何とか身体を起こしてねっとうを当てようとするけど、速度に乗ったカイリキーの回転がさらに加速。その速さのせいでさらに強くなった遠心力によって、ミロカロスは再び身体を伸びきった状態にさせられてしまう。そのままさらに数秒スイングされることによって、ミロカロスは完全に目を回して抵抗が出来ない状態になる。

 

「叩きつけなさい!!」

「リキッ!!」

 

 もうミロカロスに打つ手なし。それを確認したサイトウさんがとどめを指示。その言葉に従ったカイリキーが、じごくぐるまの勢いを維持したままミロカロスを叩きつける。

 

 響き渡る地響きと衝撃音。ミロカロスがどうなったかなんて見るまでもない。

 

 

「ミロカロス、戦闘不能!!」

 

 

 地面に体を横たえると同時に、周りを漂っていたアクアリングがゆっくりと消えていく。ここまで私の想いを背負って耐え続けてくれたミロカロスがついに倒れてしまった。

 

「リキッ!!」

「ありがとう、ミロカロス」

 

 カイリキーがポージングを取り、身体をまた青灰色に戻しながら喜んでいるのを横目に、私はミロカロスにお礼の言葉を告げ、ボールに戻す。

 

 これで私も最後の1人まで追い詰められる。それに、ねっとうによるやけどでこんじょうは発動してしまっているから、カイリキーの火力は跳ね上がってしまっている。けど、こんじょうはあくまでも、『やけどによる火力ダウンを防げる』のであって、『やけどのスリップダメージまで抑えられる』わけではない。それに、あれだけねっとうを浴びているのであればかなり体力は削れているはずだ。

 

(カイリキーの戦い方も何となくわかった。あの『ビルドアップ』……本来は自分の攻撃と防御を成長させる技だけど、サイトウさんのカイリキーは少し違う。1回『ビルドアップ』するだけでかなり攻撃と防御を成長できる代わりに、技を何か1つでも使ったら元に戻るんだ。急な火力アップは確かに怖いけど、逆に言えば相手の攻撃タイミングがわかりやすいという事。それなら……!!)

 

 カイリキーとの戦い方を頭の中で浮かべながら、私は最後のモンスターボールを構える。

 

(いよいよ、あなただけだね……)

 

 この中にいるのは、私の始まりのポケモン。

 

 ガラル地方を巡るための第1歩。

 

「行くよ……エースバーン!!」

「バスバースッ!!」

 

 ヒバニーから進化し、ここまで来た私の相棒。

 

「あなたから始まった冒険……その集大成を見せるよ!!」

「バースッ!!」

 

 私の声に呼応するように、天に向かって吠えるエースバーン。

 

 やる気は十分。ミロカロスがつないでくれたバトンをしっかりと握ったエースバーンは、自身の名前に含まれている言葉通り、『エース』の役割を果たすために、全力で地面を踏みしめる。

 

「『でんこうせっか』!!」

「バスッ!!」

 

 私の指示と共に、クラウチングスタートから駆け出したエースバーンは、一瞬でカイリキーの懐へ潜り込む。

 

「リキッ!?」

「速い!」

 

 そのあまりの速さに、カイリキーとサイトウさんの表情が揺れた。

 

「『ブレイズキック』!!」

「バースッ!!」

 

 驚きで反応が少し遅れているうちに、右足に炎を纏ったエースバーンが、カイリキーの左横腹めがけて思いっきり足を右から地面と水平に放つ。これに対して何とか反応したカイリキーは、左腕2本を持ち上げて何とかガード、しかし、火傷しているところに更に炎を叩きつけられたことで、痛みから苦悶の表情を浮かべる。

 

 けど、ブレイズキックは確かに止まった。

 

「『じごくぐるま』!」

「リキッ!!」

 

 止まったエースバーンを捕まえるべく、残った右腕2本でエースバーンを捕獲しようと動くカイリキー。ここでつかまれば、ミロカロスと同じように倒される。

 

「カイリキーの左腕を軸に回転して『ブレイズキック』!!」

 

 絶対につかまるわけにはいかないエースバーンは、左腕に止められた右足を器用に使う。

 

 カイリキーの左腕にぶつけている右足の首を曲げて左腕に引っ掛けた後に、脚の筋肉を使って自身の身体を、ひっかけているカイリキーの左腕を軸に、身体を地面と水平状態にしたまま回転。そのまま回れば自分の背中とカイリキーと背中で十字の背中合わせになるように動き、背中がぶつかり合う寸前で左足に炎を纏わせてカイリキーの後頭部めがけてドロップキックを放つ。

 

「回避して確保!」

「リキッ!!」

 

 これをダッキングすることで回避するカイリキー。そのまま右腕を頭の上に持っていくことでエースバーンの左足を掴もうとする。

 

「『とびはねる』!!」

 

 当然捕まるわけにはいかないエースバーンはこれからも逃れるべく行動。ブレイズキックを外した左足から炎を消し、左膝を曲げてカイリキーの肩に載せ、そこを足場にして大ジャンプ。カイリキーの魔の手から空へと逃げおおせる。遠距離技の無いカイリキーには、手の届かない場所だ。

 

「『ビルドアップ』からの『インファイト』!!」

「リキッ!!」

「バスッ!?」

 

 これに対してカイリキーは、身体を赤色に変えながら地面を殴打。ミロカロスの時と同じく、地面を殴った衝撃で岩の塊を作り出し、今度はそれを殴ってエースバーンの方と飛ばしてきた。

 

 来ると思っていなかった遠距離技に、エースバーンの表情が一瞬強張る。

 

「『かえんボール』!!」

「バスッ!!」

 

 けど、私はこの攻撃を一度見ているから落ち着いて指示が出来る。

 

 私の指示を聞いたエースバーンは、炎の球を作り出してオーバーヘッドキック。飛んでくる岩の塊に対して飛ばし、ぶつかると同時に爆発させることで、飛んでくる岩全てを粉砕していった。

 

 爆炎で両者の視界が覆われているところに着地するエースバーン。同時に煙が晴れ、カイリキーの身体も青灰色へと戻り、開幕位置と同じ場所にて、お互いが目を合わせる。

 

「リキ……」

「バス……」

「やりますね……!!」

「サイトウさんこそ……!!」

 

 最初の戦いは体力だけ見ればエースバーン微有利。けど、そのやり取りはほぼ互角と言ってもいいようなもので、周りの観客の声も一連のやり取りのレベルの高さに驚き、この試合中一番響き渡る歓声を上げた。けど、その声がほとんど聞こえないくらいには私もサイトウさんも、お互いの事しか見えていない。

 

(火力は負けているけどスピードは負けていない。突破口はここしかないね。でも、それは相手も知っていること……ってことは、サイトウさんは力をうまく使えるような立ち回りをしてくるはず、具体的には……)

 

「『ビルドアップ』!!」

「リキッ!!」

「やっぱり……カウンター狙い……」

 

 速度で追いつけないことを知っているから、あらかじめビルドアップをして、突っ込んできたところを捉える作戦で来るカイリキー。でんこうせっかに合わせて一撃叩き込まれるだけで、こちらはかなり苦しい状況になるだろう。けど、さっきも言った通り、サイトウさんのカイリキーは1度技を打てばビルドアップは解けてくれる。なら、対処は簡単で、技を振らせればいい。

 

「『かえんボール』!!」

「バスッ!!」

 

 あちらの作戦に対して、こちらは遠距離から火力のある技を放って、相手に技で防がせる作戦に出る。これが、相手が速いポケモンなら難しいところだけど、カイリキーは足が速いポケモンでは無い。反応の速さから、身のこなしで避けることはあっても限界はあるはずだ。

 

(幸い、戦いの影響で石ころは地面にいっぱいあるから、こっちの弾数に困ることは無い……何回も打てば、いつかは技を使うはず!!)

 

 地面の石をリフティングして火球に変え、次々と蹴り出して弾幕を張るエースバーン。これに対してファイティングポーズを取ったカイリキーは、細かいステップやダッキング、スウェーなどで回避していくけど、数が多すぎて徐々に被弾の数が増えていく。

 

「カイリキー!!『インファイト』!!」

「リキッ!!」

 

 堪らず技による迎撃を選んだカイリキーは、上側の2本の腕でまた地面を殴って岩を隆起させて防御。そのまま岩を殴って礫を飛ばしてくる。

 

「『とびはねる』!!」

 

 この岩の弾幕に対してエースバーンは自分から突っ込み、岩そのものを足場にして、その間を飛びまわりながらカイリキーへと向かっていく。

 

「バスバースッ!!」

「いいよエースバーン!!」

 

 飛んでくる岩から岩へ次々とジャンプするエースバーンの動きは絶好調。瞬く間にカイリキーとの距離を埋め、再び至近距離の間合いとなる。

 

「『ブレイズキック』!!」

「バースッ!!」

 

 勢いに乗ったエースバーンは、そのまま両足に炎を纏わせてドロップキック。とびはねるの速度も加わって、さらに轟々と燃え盛る焔は、傍から見てもかなりの威力を内包しているように見える。当たれば大ダメージは間違いないし、インファイト後の疲れを見せているカイリキーに避けるすべは無い。

 

(取った!!)

 

「『かみなりパンチ』!!両手をぶつけ合いなさい!!」

「リキッ」

「え?」

 

 そんな中急に告げられるサイトウさんの謎の指示。この言葉に理解が追いつかない私は、カイリキーの動きに注視する。すると、カイリキーはインファイトに使わなかった下側の拳2つに電気を纏わせて、拳同士を打ち付けあった。

 

(一体何を……)

 

「放電!!」

「リキッ!!」

「バスッ!?」

「なっ!?」

 

 瞬間起きるのは視界を真っ白に染めるスパーク。

 

 でんきタイプでは無いし、かみなりパンチという突出して威力が高いわけではない技によって起きるスパークは、破壊力自体はそんなにない。実際、エースバーンのブレイズキックを止めることは出来ないだろう。けど、一番の問題は、このスパークの光で、一瞬とはいえこちらの視界を潰してくること。

 

 目の前が急に白くなったことで、エースバーンの身体の軸が少しブレ、ブレイズキックの威力と軌道がちょっと揺れた。それによって、少し屈むだけで避けられるようになったカイリキーが、しゃがんで回避。

 

「『じごくぐるま』!!」

 

 そのまま頭上を通り過ぎるエースバーンの右足をキャッチし、ミロカロス同様ジャイアントスイングの態勢へ。このまま行けば、大ダメージがエースバーンを襲うだろう。けど、エースバーンはミロカロスと違って足技を主力に戦う故に抵抗ができる。

 

「『ブレイズキック』!!」

 

 じごくぐるまを防ぐために、掴まれていない左足に焔を纏ったエースバーンが必死に抵抗。自身の右足を掴むカイリキーの4本の腕をとにかく蹴って外しにかかる。一方のカイリキーは、徐々にスイングの速度を上げてエースバーンに抵抗する気力を失わせようと企む。

 

 振り回されて力尽きるのが先か、はたまた痛みとやけどから手を離すのが先か。

 

 意地のぶつかり合いによる耐久勝負の結果は、徐々にエースバーンに傾くことになる。

 

「リキ……ッ!!」

 

 手を蹴られ、やけどが広がっていくカイリキーの手が徐々に離れていき、ついに腕のうち1本がエースバーンの足からはがされる。相変わらずじごくぐるまの速度は遅くはならないけど、このまま手が離れたら、エースバーンは叩きつけられるよりも先にすっぽ抜けて、叩きつけられることを避けることが出来るだろう。

 

「カイリキー!!ここで決めるのは諦めて早めに攻撃を!!」

「リキッ!!」

 

 このままでは全力の力で叩きつける前に逃れられてしまう。そう判断したサイトウさんは、この一撃でエースバーンを仕留めることを断念し、確実にダメージを与えるために、残っている腕だけでも力を込めてエースバーンを叩きつける判断をした。

 

「エースバーン!!」

「バスッ!!」

 

 叩きつけられるとわかった私はエースバーンに声をかける。エースバーンもこれだけで私が何を言いたいのかわかったらしく、自身の足を掴むカイリキーの手への攻撃を加速させていく。

 

「バスッ!?」

「リキッ!?」

 

 エースバーンが足の動きを加速させると同時に、エースバーンの身体が持ち上がる。それと時を同じくして、エースバーンの足からまた1つ、カイリキーの腕が外れる。けど、腕はまだ2本残っている。

 

 せめて、あと1つは外したい。

 

「頑張って!!」

「バスッ!!」

「カイリキー!!」

「リキッ!!」

 

 私の声援を受けて気合を入れるエースバーンと、サイトウさんの返事に声と行動で答えるカイリキー。けど、ここでも軍配が上がったのはエースバーン。最後の力を振り絞って打ち出したブレイズキックは、カイリキーの腕をまた1本引きはがし、ついに足を掴む腕が1本だけとなる。結果、エースバーンが叩きつけられる前に、脚を掴む力が足りずにエースバーンがすっぽ抜けた。これで地面に叩きつけられることはなくなった。

 

「バスッ!?」

 

 けど、エースバーンが高速で振り回されていた事実は揺るがない。すっぽ抜けた時もその速度を維持したまま飛んでいったエースバーンは、受け身を取れずに地面を転がる。

 

「大丈夫!?」

「バ……バスッ!!」

 

 私の近くまで転がったエースバーンに慌てて声をかけると、傷ついた身体に表情をゆがめながらも、元気に声をあげて答える。

 

 これでまたお互いの立ち位置は最初の状態へ。しかし、体力は確実に減っている。

 

 

 

 

 いよいよ決着をつける時だろう。

 

 

 

 

「エースバーン……」

「カイリキー……」

 

 お互いの相棒を呼ぶ声が重なり、私とサイトウさんの手が同時に、相棒が入っていたボールへと伸びる。

 

 その腕に巻かれているのは、ダイマックスバンド。

 

「行くよ!!」

「行きますよ!!」

「バスッ!!」

「リキッ!!」

 

(バトルの決着は……ダイマックスで決める!!)

 

 サイトウさんとの長くて、けど短いバトルは、最後のやり取りへと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カイリキー

ビルドアップとじごくぐるまが原作と少し違いますね。どちらもポッ拳の方を参照させていただいています。ポッ拳のように、動きがしっかりあって激しいと、見ていてとても楽しいですね。勿論、実機のエフェクトも好きなのですが。

エースバーン

実はSVで現状憶えられないブレイズキック。まぁ、バシャーモも内定していますし、遺伝で復活しそうではありますけど……対戦ではかえんボールを使いそうですし、それゆえに亡くなったのでしょうか?命中安定技として残しておいてもよさそうでしたけど……




前話に引き続き、また1日遅れの投稿、すいません。次話からは、また4日ペースに戻れそう……だと思います。多分。きっと。メイビー……




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